23 / 23
番外編
バレンタイン 2
しおりを挟む
13日の夜に先輩から「明日遅くなってもいいからうちに来てくれ」とメールが来た。
これは先輩もチョコを用意してくれたのかなとわくわくしながら、バイト終わりに先輩の下宿を訪ねた。
「先輩、これ、バレンタインチョコです」
「おー、ありがとう。
開けてもいいか?」
「はい、どうぞ」
僕がうなずくと、先輩は袋の中からチョコを取り出した。
「お、これか。
絵も描いてくれたんだな」
先輩は板チョコを1枚ずつ見ながら、絵にコメントしたり、ちょっと笑ったりする。
そして「先輩大好き!」と書いた最後の1枚を目にすると、驚いたように目を見開いてからニヤけた顔になったが、それでも茶化さずにいてくれた。
「ありがとうな。
それじゃあ俺からも」
そう言うと先輩は、机の本立てからクリアファイルに挟んだ1枚の紙を僕に手渡した。
「こ、これは……」
それは1枚のカラーイラストだった。
モデルは明らかに僕だ。
それは別にいいのだが、問題はその格好で、絵の中の僕は全裸に幅広のピンク色のリボンをぐるぐると巻いて、「Happy Valentine」と書いたハート型のプレートを持っていた。
ご丁寧なことに、ナニだけは赤い細めのリボンが巻かれていて、なぜか臨戦体勢のそれは先っぽだけがむき出しで、しかもその先っぽは異様に丁寧に描き込まれている。
その上どことなく恥ずかしそうな表情の僕の口元からは、「先輩、僕を食べてくださいっ……♡」というセリフのフキダシまで出ていた。
「あ、ありがとうございます」
内容が内容だが、それでも先輩の、しかもものすごく気合いの入ったカラーイラストだ。
先輩の大ファンの僕にとってうれしくないはずがない。
僕が礼を言うと、先輩は「おう」と返事をした。
「高橋が喜んでくれて良かったよ。
それじゃあ、さっそく再現しようか」
「えっ!」
ものすごく当たり前のことのように告げられた先輩の言葉に、僕は反論する。
「おかしくないですか?
これを再現したら、どう考えても先輩から僕へのプレゼントじゃなくて、僕から先輩へのプレゼントになりますよね?!」
僕の反論に、先輩はニヤリと笑う。
「たしかにこれの再現だけなら俺がプレゼントもらう方だけど、高橋がこれを再現してくれるのなら、俺からもここには描いてないようなプレゼントをいっぱいしてやるつもり、というか、プレゼントせずにはいられない状態になると思うけど」
そう言った先輩の色っぽい表情に「プレゼント」の内容を想像してしまい、僕はうろうろと視線をさまよわせる。
「というわけで、これ、今日の衣装な。
自分で巻けるか?」
そう言ってピンク色の幅広のリボンと、赤色の細いリボンを出して来た先輩に、僕はうつむいて答える。
「……いえ、先輩、巻いてください……」
「おう、いいぞ」
答えるが早いか、僕に近寄って来てセーターに手をかけた先輩に、僕はおとなしく身を任せた。
これは先輩もチョコを用意してくれたのかなとわくわくしながら、バイト終わりに先輩の下宿を訪ねた。
「先輩、これ、バレンタインチョコです」
「おー、ありがとう。
開けてもいいか?」
「はい、どうぞ」
僕がうなずくと、先輩は袋の中からチョコを取り出した。
「お、これか。
絵も描いてくれたんだな」
先輩は板チョコを1枚ずつ見ながら、絵にコメントしたり、ちょっと笑ったりする。
そして「先輩大好き!」と書いた最後の1枚を目にすると、驚いたように目を見開いてからニヤけた顔になったが、それでも茶化さずにいてくれた。
「ありがとうな。
それじゃあ俺からも」
そう言うと先輩は、机の本立てからクリアファイルに挟んだ1枚の紙を僕に手渡した。
「こ、これは……」
それは1枚のカラーイラストだった。
モデルは明らかに僕だ。
それは別にいいのだが、問題はその格好で、絵の中の僕は全裸に幅広のピンク色のリボンをぐるぐると巻いて、「Happy Valentine」と書いたハート型のプレートを持っていた。
ご丁寧なことに、ナニだけは赤い細めのリボンが巻かれていて、なぜか臨戦体勢のそれは先っぽだけがむき出しで、しかもその先っぽは異様に丁寧に描き込まれている。
その上どことなく恥ずかしそうな表情の僕の口元からは、「先輩、僕を食べてくださいっ……♡」というセリフのフキダシまで出ていた。
「あ、ありがとうございます」
内容が内容だが、それでも先輩の、しかもものすごく気合いの入ったカラーイラストだ。
先輩の大ファンの僕にとってうれしくないはずがない。
僕が礼を言うと、先輩は「おう」と返事をした。
「高橋が喜んでくれて良かったよ。
それじゃあ、さっそく再現しようか」
「えっ!」
ものすごく当たり前のことのように告げられた先輩の言葉に、僕は反論する。
「おかしくないですか?
これを再現したら、どう考えても先輩から僕へのプレゼントじゃなくて、僕から先輩へのプレゼントになりますよね?!」
僕の反論に、先輩はニヤリと笑う。
「たしかにこれの再現だけなら俺がプレゼントもらう方だけど、高橋がこれを再現してくれるのなら、俺からもここには描いてないようなプレゼントをいっぱいしてやるつもり、というか、プレゼントせずにはいられない状態になると思うけど」
そう言った先輩の色っぽい表情に「プレゼント」の内容を想像してしまい、僕はうろうろと視線をさまよわせる。
「というわけで、これ、今日の衣装な。
自分で巻けるか?」
そう言ってピンク色の幅広のリボンと、赤色の細いリボンを出して来た先輩に、僕はうつむいて答える。
「……いえ、先輩、巻いてください……」
「おう、いいぞ」
答えるが早いか、僕に近寄って来てセーターに手をかけた先輩に、僕はおとなしく身を任せた。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる