Bye and Hello

えみあ

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第1話 サヨナラ、そしてコンニチハ【2】

生まれてこの方、俺は人生に「平等」というものを感じた事がない。
何でもかんでも「運」でも終わってしまう。
現に今、俺は窮地に立たされているのだから。
「討身四季、17歳。桐島高校2年。間違いないね??」
俺に話しかけてきているのは、日本国の法を守護している立派な公務員。警察官だ。
何でこんな事になっているかって?
「イヤフォンしながら自転車、運転しちゃダメでしょ。危ないし。」
という訳だ。
俺は学校の帰り道、自転車で帰宅している時に捕まった。
「平等」とか「運」だとか言ったがお前のせいだろ。と言われたら仕方ない。
仕方ないが。
自転車こぎながらイヤフォンしてる輩なんか俺以外にもいるだろ!?
俺だけじゃないだろ!?
そう言った意味で、人生は俺に「平等」を与えないし、
「運」も与えちゃくれない。
「次は気を付けるように。」
法的措置をその場で済ませ、再び帰路についた。
しばらく自転車をこいでいると、
頬に水滴が落ちてきた。雨だ。
早く家帰って洗濯物入れなきゃな。
良く利用する路地に入った瞬間、謎の違和感に包まれた。
雨のせいか。雨の匂いが強くなっていく中、家に向け再び出発しようとしたものの、違和感は拭えない。
いや、でも何かおかしい。と、
左腕が消えた。
何を言っているんだと思われるだろうが。
左腕が消えた。
「ヒィットォッ」
軽快な声が人気のない通りに響いた。
が、俺は何がなんだか分かる状況ではない。
軽快な声が俺には、
届かない。
入ってこない。
聞こえない。
聞こえたくない。
何故、左腕が消えたのか。
変に冷静になっている自分に驚く。
あれれ、可笑しいな。
痛くて仕方ない筈なのに。
今まで遭遇した事無い状況にいる筈なのに。
「持ってるんだろォゥ??お前サンの。俺が貰うぜェェ????」
足音が近付いてくる。
怖い。恐い。こわい。コワイ。
俺は、逃げた。
左腕は無くとも、足はある。
逃げた。
自転車なんか、いらない。要らない。居らない。
死にたくない。
逝きたくない。
終わりたくない。
そう思い、走っていたら、バランスを崩して地に転げた。
次に認識したのは。右脚がない。
あれ、おかしいな、無かったのは左腕だけだった筈なのに。
「逃げないでヨォ。俺チャン、哀しいぜェェ?」
右腕が炎と化している男が寄ってくる。
そうか、左腕と右脚。
焼かれたのか。
俺と16年の齢を共に歩んできた左腕と右脚は焼かれてしまった。
とても残念な事でとても悲哀な出来事だった。
それより残念な事は。もう俺には逃げ場がないこと。
バランスを崩した以上、もう立ち上がる事は出来ないだろうし。
もう逃げることも出来ないだろう。
あーあ。俺、死ぬのか。
意識が遠のいていく。
「フヘッ。痛くないように、奪って、あげる、カラネェ????」
最期に聞こえてきたのは。その声だった。
最期くらい。
もう少しカッコ良く死にたかった。
サヨナラ。最後まで「平等」を与えなかった世界よ。
そして
コンニチハ。俺が「平等」を与える世界よ。
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