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一章
許した訳じゃない
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「あのね、ショーン。確かにあんたの悲しみの全てはあたしには分からない。でも……世間的にはあんたのやってる事は、明らかにやりすぎなの」
……?
何を言ってるんだ? こいつらは僕の家族を殺し、そしてここでも僕を突け狙って殺しにきたじゃないか。
「どうしてこんなクズを庇うの? やっぱりデライラもこいつらの仲間なの? こんな所まで僕を追って来て、一体何をするつもりだったんだろうね?」
「世の中の人には、あんたがペットを殺された腹いせに、この人達を殺した。そういう風にしか見えない! ペットの為に人を殺すのが正しい事なの!?」
なるほどね。一般論としてはそうかも知れない。だけど、そんな事じゃないんだ。なぜ分からないんだろう?
「デライラ。君の一番大切なものは何?」
「え? 家族……とか?」
僕の問いかけに、デライラからお誂え向きの答えが返ってきた。
「じゃあ身勝手な理由でその家族を殺されたら、君はどうするの? 犯人を目の前にして、許せと諭されて、納得できるの?」
「……」
「分からないなら試してみようか? 僕が君の家族を殺してあげよう。それで僕を許せるのなら、僕も彼等を許そう」
デライラは剣を握りしめ、ブルブルと震えている。そして唐突に、両膝を地に突き、僕に向かって頭を下げた。
「ショーン、お願いよ。彼等の事はあたしに任せて。あんたはこれ以上自分の手を汚さないで。優しかったショーンに戻って。お願い……」
彼女の瞳からは涙が溢れている。デライラの涙なんて、子供の頃以来だ。
だけど……響かないな。
「僕をこんな風に変えたのは、君達だ。だけど、今回は幼馴染のよしみで君に任せる。ただ……」
――ヒュオン!
僕は右手に持っていた短槍を横一文字に一閃した。穂先から風の刃が飛んでいき、岩壁に深い亀裂を作る。風の精霊に命じて作り出した風の魔法。その威力にデライラや泥沼の中の二人のみならず、ポーターの二人も凍り付く。
「僕はもう以前の僕じゃない。君達くらい、いつでも殺せる事を忘れるな」
そう言って僕はその場を立ち去った。僕の怒りと憎しみはデライラにも伝わっているはずだ。
「ご主人様?」
「ん?」
「あれで良かったのですか?」
僕はノワールの言葉に苦笑する。
「デライラはね、ああ見えてとても頑固なんだ。それにノワールが言ったんじゃないか。彼女は生かせって」
「そうですが、あの男二人は……」
うん、ノワールからすれば不満が残るかもしれないね。でも、あそこで僕が引かなければ。
「デライラが命懸けで止めようとしただろうね。そうすれば、彼女も無事では済まない」
「ああ……」
あの斧使いと双剣使いを殺す事は、同時にデライラをも殺す事になるかもしれない。その事についてはノワールも納得してくれたようだ。
ちなみにノワールは人型で僕にピッタリと寄り添って歩いている。何故そんなにくっついて歩くのかと聞いてみたら、僕から溢れる魔力がとても美味しいのだそうだ。まあ、僕としてもイヤな事ではないし、このまま下層に行ってみようか。
△▼△
デライラは後続の冒険者が来るのを待っていた。
弓使いはもう死んでしまったけど、斧使いと双剣使いは地上に戻ってギルドに引き渡すつもりだ。同じギルド構成員を暗殺しようとしたなど、どの道極刑は免れないだろう。
しかし、この二人以外にもポーター二人を守りながら地上に戻るのはかなり困難だ。地下三階層というのは自分には荷が重い。
なので、後続のアイアンランク以上のパーティが来たら、護衛してもらいながら地上に戻ろうというつもりだ。
同時に、デライラは一つの決意をした。
(あたしも、このままじゃダメだ……!)
自分がパーティから抜ければ、残滓なんて異名を持つショーンは冒険者なんてやっていける筈はないと思っていた。
それでもショーンは、どんなに罵倒されようが嫌がらせを受けようが、決して折れずに自分の出来る事で貢献しようとしてきた。それを精神的に支えていたのがあの黒ウサギだったのだが、ショーンにとって黒ウサギがそれほど大切な存在だったとは知らなかった。明らかに、コミュケーション不足だったと反省している。
実際に、冒険者の間では評判が悪いショーンだが、彼が採取した素材は状態も良く、市場での評価は高いらしい。
何よりも、ショーンと一緒にいた時の自分の能力。今になって思えば、明らかにショーンが何らかの力を持っていたに違いない。しかしデライラはそれを自分の力だと勘違いしてしまった。それなのに、上から目線でショーンが冒険者を辞めるように仕向けてしまった。
今回の一連の事件は、全て自分が未熟だったせいだ。もう一度、一から鍛え直そう。デライラはそう固く誓った。
そして、それぞれの思惑が交錯しつつ、ダンジョンでの魔物の間引きは進んでいく。
……?
何を言ってるんだ? こいつらは僕の家族を殺し、そしてここでも僕を突け狙って殺しにきたじゃないか。
「どうしてこんなクズを庇うの? やっぱりデライラもこいつらの仲間なの? こんな所まで僕を追って来て、一体何をするつもりだったんだろうね?」
「世の中の人には、あんたがペットを殺された腹いせに、この人達を殺した。そういう風にしか見えない! ペットの為に人を殺すのが正しい事なの!?」
なるほどね。一般論としてはそうかも知れない。だけど、そんな事じゃないんだ。なぜ分からないんだろう?
「デライラ。君の一番大切なものは何?」
「え? 家族……とか?」
僕の問いかけに、デライラからお誂え向きの答えが返ってきた。
「じゃあ身勝手な理由でその家族を殺されたら、君はどうするの? 犯人を目の前にして、許せと諭されて、納得できるの?」
「……」
「分からないなら試してみようか? 僕が君の家族を殺してあげよう。それで僕を許せるのなら、僕も彼等を許そう」
デライラは剣を握りしめ、ブルブルと震えている。そして唐突に、両膝を地に突き、僕に向かって頭を下げた。
「ショーン、お願いよ。彼等の事はあたしに任せて。あんたはこれ以上自分の手を汚さないで。優しかったショーンに戻って。お願い……」
彼女の瞳からは涙が溢れている。デライラの涙なんて、子供の頃以来だ。
だけど……響かないな。
「僕をこんな風に変えたのは、君達だ。だけど、今回は幼馴染のよしみで君に任せる。ただ……」
――ヒュオン!
僕は右手に持っていた短槍を横一文字に一閃した。穂先から風の刃が飛んでいき、岩壁に深い亀裂を作る。風の精霊に命じて作り出した風の魔法。その威力にデライラや泥沼の中の二人のみならず、ポーターの二人も凍り付く。
「僕はもう以前の僕じゃない。君達くらい、いつでも殺せる事を忘れるな」
そう言って僕はその場を立ち去った。僕の怒りと憎しみはデライラにも伝わっているはずだ。
「ご主人様?」
「ん?」
「あれで良かったのですか?」
僕はノワールの言葉に苦笑する。
「デライラはね、ああ見えてとても頑固なんだ。それにノワールが言ったんじゃないか。彼女は生かせって」
「そうですが、あの男二人は……」
うん、ノワールからすれば不満が残るかもしれないね。でも、あそこで僕が引かなければ。
「デライラが命懸けで止めようとしただろうね。そうすれば、彼女も無事では済まない」
「ああ……」
あの斧使いと双剣使いを殺す事は、同時にデライラをも殺す事になるかもしれない。その事についてはノワールも納得してくれたようだ。
ちなみにノワールは人型で僕にピッタリと寄り添って歩いている。何故そんなにくっついて歩くのかと聞いてみたら、僕から溢れる魔力がとても美味しいのだそうだ。まあ、僕としてもイヤな事ではないし、このまま下層に行ってみようか。
△▼△
デライラは後続の冒険者が来るのを待っていた。
弓使いはもう死んでしまったけど、斧使いと双剣使いは地上に戻ってギルドに引き渡すつもりだ。同じギルド構成員を暗殺しようとしたなど、どの道極刑は免れないだろう。
しかし、この二人以外にもポーター二人を守りながら地上に戻るのはかなり困難だ。地下三階層というのは自分には荷が重い。
なので、後続のアイアンランク以上のパーティが来たら、護衛してもらいながら地上に戻ろうというつもりだ。
同時に、デライラは一つの決意をした。
(あたしも、このままじゃダメだ……!)
自分がパーティから抜ければ、残滓なんて異名を持つショーンは冒険者なんてやっていける筈はないと思っていた。
それでもショーンは、どんなに罵倒されようが嫌がらせを受けようが、決して折れずに自分の出来る事で貢献しようとしてきた。それを精神的に支えていたのがあの黒ウサギだったのだが、ショーンにとって黒ウサギがそれほど大切な存在だったとは知らなかった。明らかに、コミュケーション不足だったと反省している。
実際に、冒険者の間では評判が悪いショーンだが、彼が採取した素材は状態も良く、市場での評価は高いらしい。
何よりも、ショーンと一緒にいた時の自分の能力。今になって思えば、明らかにショーンが何らかの力を持っていたに違いない。しかしデライラはそれを自分の力だと勘違いしてしまった。それなのに、上から目線でショーンが冒険者を辞めるように仕向けてしまった。
今回の一連の事件は、全て自分が未熟だったせいだ。もう一度、一から鍛え直そう。デライラはそう固く誓った。
そして、それぞれの思惑が交錯しつつ、ダンジョンでの魔物の間引きは進んでいく。
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