17 / 206
一章
許した訳じゃない
しおりを挟む
「あのね、ショーン。確かにあんたの悲しみの全てはあたしには分からない。でも……世間的にはあんたのやってる事は、明らかにやりすぎなの」
……?
何を言ってるんだ? こいつらは僕の家族を殺し、そしてここでも僕を突け狙って殺しにきたじゃないか。
「どうしてこんなクズを庇うの? やっぱりデライラもこいつらの仲間なの? こんな所まで僕を追って来て、一体何をするつもりだったんだろうね?」
「世の中の人には、あんたがペットを殺された腹いせに、この人達を殺した。そういう風にしか見えない! ペットの為に人を殺すのが正しい事なの!?」
なるほどね。一般論としてはそうかも知れない。だけど、そんな事じゃないんだ。なぜ分からないんだろう?
「デライラ。君の一番大切なものは何?」
「え? 家族……とか?」
僕の問いかけに、デライラからお誂え向きの答えが返ってきた。
「じゃあ身勝手な理由でその家族を殺されたら、君はどうするの? 犯人を目の前にして、許せと諭されて、納得できるの?」
「……」
「分からないなら試してみようか? 僕が君の家族を殺してあげよう。それで僕を許せるのなら、僕も彼等を許そう」
デライラは剣を握りしめ、ブルブルと震えている。そして唐突に、両膝を地に突き、僕に向かって頭を下げた。
「ショーン、お願いよ。彼等の事はあたしに任せて。あんたはこれ以上自分の手を汚さないで。優しかったショーンに戻って。お願い……」
彼女の瞳からは涙が溢れている。デライラの涙なんて、子供の頃以来だ。
だけど……響かないな。
「僕をこんな風に変えたのは、君達だ。だけど、今回は幼馴染のよしみで君に任せる。ただ……」
――ヒュオン!
僕は右手に持っていた短槍を横一文字に一閃した。穂先から風の刃が飛んでいき、岩壁に深い亀裂を作る。風の精霊に命じて作り出した風の魔法。その威力にデライラや泥沼の中の二人のみならず、ポーターの二人も凍り付く。
「僕はもう以前の僕じゃない。君達くらい、いつでも殺せる事を忘れるな」
そう言って僕はその場を立ち去った。僕の怒りと憎しみはデライラにも伝わっているはずだ。
「ご主人様?」
「ん?」
「あれで良かったのですか?」
僕はノワールの言葉に苦笑する。
「デライラはね、ああ見えてとても頑固なんだ。それにノワールが言ったんじゃないか。彼女は生かせって」
「そうですが、あの男二人は……」
うん、ノワールからすれば不満が残るかもしれないね。でも、あそこで僕が引かなければ。
「デライラが命懸けで止めようとしただろうね。そうすれば、彼女も無事では済まない」
「ああ……」
あの斧使いと双剣使いを殺す事は、同時にデライラをも殺す事になるかもしれない。その事についてはノワールも納得してくれたようだ。
ちなみにノワールは人型で僕にピッタリと寄り添って歩いている。何故そんなにくっついて歩くのかと聞いてみたら、僕から溢れる魔力がとても美味しいのだそうだ。まあ、僕としてもイヤな事ではないし、このまま下層に行ってみようか。
△▼△
デライラは後続の冒険者が来るのを待っていた。
弓使いはもう死んでしまったけど、斧使いと双剣使いは地上に戻ってギルドに引き渡すつもりだ。同じギルド構成員を暗殺しようとしたなど、どの道極刑は免れないだろう。
しかし、この二人以外にもポーター二人を守りながら地上に戻るのはかなり困難だ。地下三階層というのは自分には荷が重い。
なので、後続のアイアンランク以上のパーティが来たら、護衛してもらいながら地上に戻ろうというつもりだ。
同時に、デライラは一つの決意をした。
(あたしも、このままじゃダメだ……!)
自分がパーティから抜ければ、残滓なんて異名を持つショーンは冒険者なんてやっていける筈はないと思っていた。
それでもショーンは、どんなに罵倒されようが嫌がらせを受けようが、決して折れずに自分の出来る事で貢献しようとしてきた。それを精神的に支えていたのがあの黒ウサギだったのだが、ショーンにとって黒ウサギがそれほど大切な存在だったとは知らなかった。明らかに、コミュケーション不足だったと反省している。
実際に、冒険者の間では評判が悪いショーンだが、彼が採取した素材は状態も良く、市場での評価は高いらしい。
何よりも、ショーンと一緒にいた時の自分の能力。今になって思えば、明らかにショーンが何らかの力を持っていたに違いない。しかしデライラはそれを自分の力だと勘違いしてしまった。それなのに、上から目線でショーンが冒険者を辞めるように仕向けてしまった。
今回の一連の事件は、全て自分が未熟だったせいだ。もう一度、一から鍛え直そう。デライラはそう固く誓った。
そして、それぞれの思惑が交錯しつつ、ダンジョンでの魔物の間引きは進んでいく。
……?
何を言ってるんだ? こいつらは僕の家族を殺し、そしてここでも僕を突け狙って殺しにきたじゃないか。
「どうしてこんなクズを庇うの? やっぱりデライラもこいつらの仲間なの? こんな所まで僕を追って来て、一体何をするつもりだったんだろうね?」
「世の中の人には、あんたがペットを殺された腹いせに、この人達を殺した。そういう風にしか見えない! ペットの為に人を殺すのが正しい事なの!?」
なるほどね。一般論としてはそうかも知れない。だけど、そんな事じゃないんだ。なぜ分からないんだろう?
「デライラ。君の一番大切なものは何?」
「え? 家族……とか?」
僕の問いかけに、デライラからお誂え向きの答えが返ってきた。
「じゃあ身勝手な理由でその家族を殺されたら、君はどうするの? 犯人を目の前にして、許せと諭されて、納得できるの?」
「……」
「分からないなら試してみようか? 僕が君の家族を殺してあげよう。それで僕を許せるのなら、僕も彼等を許そう」
デライラは剣を握りしめ、ブルブルと震えている。そして唐突に、両膝を地に突き、僕に向かって頭を下げた。
「ショーン、お願いよ。彼等の事はあたしに任せて。あんたはこれ以上自分の手を汚さないで。優しかったショーンに戻って。お願い……」
彼女の瞳からは涙が溢れている。デライラの涙なんて、子供の頃以来だ。
だけど……響かないな。
「僕をこんな風に変えたのは、君達だ。だけど、今回は幼馴染のよしみで君に任せる。ただ……」
――ヒュオン!
僕は右手に持っていた短槍を横一文字に一閃した。穂先から風の刃が飛んでいき、岩壁に深い亀裂を作る。風の精霊に命じて作り出した風の魔法。その威力にデライラや泥沼の中の二人のみならず、ポーターの二人も凍り付く。
「僕はもう以前の僕じゃない。君達くらい、いつでも殺せる事を忘れるな」
そう言って僕はその場を立ち去った。僕の怒りと憎しみはデライラにも伝わっているはずだ。
「ご主人様?」
「ん?」
「あれで良かったのですか?」
僕はノワールの言葉に苦笑する。
「デライラはね、ああ見えてとても頑固なんだ。それにノワールが言ったんじゃないか。彼女は生かせって」
「そうですが、あの男二人は……」
うん、ノワールからすれば不満が残るかもしれないね。でも、あそこで僕が引かなければ。
「デライラが命懸けで止めようとしただろうね。そうすれば、彼女も無事では済まない」
「ああ……」
あの斧使いと双剣使いを殺す事は、同時にデライラをも殺す事になるかもしれない。その事についてはノワールも納得してくれたようだ。
ちなみにノワールは人型で僕にピッタリと寄り添って歩いている。何故そんなにくっついて歩くのかと聞いてみたら、僕から溢れる魔力がとても美味しいのだそうだ。まあ、僕としてもイヤな事ではないし、このまま下層に行ってみようか。
△▼△
デライラは後続の冒険者が来るのを待っていた。
弓使いはもう死んでしまったけど、斧使いと双剣使いは地上に戻ってギルドに引き渡すつもりだ。同じギルド構成員を暗殺しようとしたなど、どの道極刑は免れないだろう。
しかし、この二人以外にもポーター二人を守りながら地上に戻るのはかなり困難だ。地下三階層というのは自分には荷が重い。
なので、後続のアイアンランク以上のパーティが来たら、護衛してもらいながら地上に戻ろうというつもりだ。
同時に、デライラは一つの決意をした。
(あたしも、このままじゃダメだ……!)
自分がパーティから抜ければ、残滓なんて異名を持つショーンは冒険者なんてやっていける筈はないと思っていた。
それでもショーンは、どんなに罵倒されようが嫌がらせを受けようが、決して折れずに自分の出来る事で貢献しようとしてきた。それを精神的に支えていたのがあの黒ウサギだったのだが、ショーンにとって黒ウサギがそれほど大切な存在だったとは知らなかった。明らかに、コミュケーション不足だったと反省している。
実際に、冒険者の間では評判が悪いショーンだが、彼が採取した素材は状態も良く、市場での評価は高いらしい。
何よりも、ショーンと一緒にいた時の自分の能力。今になって思えば、明らかにショーンが何らかの力を持っていたに違いない。しかしデライラはそれを自分の力だと勘違いしてしまった。それなのに、上から目線でショーンが冒険者を辞めるように仕向けてしまった。
今回の一連の事件は、全て自分が未熟だったせいだ。もう一度、一から鍛え直そう。デライラはそう固く誓った。
そして、それぞれの思惑が交錯しつつ、ダンジョンでの魔物の間引きは進んでいく。
12
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる