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一章
迷宮の主
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「なるほど……これじゃあ攻略なんてほぼ不可能だね。ゴールドランカーが束になったって通常攻撃じゃ歯が立たない」
「ええ、しかもこの空間には四大属性の精霊共が全くいません。これではいくら高位のウィザードや魔導士であろうとも魔法を発動出来ません」
僕達は今、このダンジョンの最奥部に来ている。つまり、ダンジョンの最下層、どん詰まりの空間。ちなみにセイジっていうのは、ウィザードや魔女の上位のジョブなんだ。
多くの経験と実績を上げると、上位のジョブにクラスチェンジ出来る事があるらしいけど、それはごく少数みたいだね。
ここに来るまで、僕達は多くの魔物を倒してきた。素材をギルドに提出したら、当分の間は遊んで暮らせるんじゃないかな?
それに、レアなお宝もそれなりにゲット出来た。そして残るは目の前に鎮座してこちらを値踏みするように見ているこいつだ。
「ダンジョンは魔力の濃度が極度に濃縮された結果発生するもの。本来私達のような存在はこのような場所を好むのですが、この者はご主人様と同質の存在かもしれません」
つまり、闇の力を持つかもって事か。
おそらくコイツは『ミスティウルフ』。闇に溶け込むような漆黒の身体で素早く動きまわる為、その姿を視界に捉える事すら困難な事からそう言われている。
だけど、その本質は太古から存在する神獣らしい。ドラゴンやギガンテスのような一国を亡ぼすような魔物とも互角に戦える存在。だけど、そんな存在がなぜこんなダンジョンの奥深くにいるのかな?
見た目は牛や馬程の大きさもある狼だ。全身が黒い体毛に覆われており、その体毛に魔力を流すと一本一本が鋼のように硬くなるという。つまり、普通の剣や槍はその刃が通らない。
かと言って、この空間には精霊がいないから魔法が使えない。一般の冒険者じゃあお手上げだ。世界中にごく少数だけ存在していると言われる伝説級の武具を達人が持っていれば何とかなるかも知れないけどね。
でも僕なら、こいつにも対処できる。そんな確信があるんだよね。ここの濃密な魔力は、実に心地よい。
「ここに人間が来るのは久しぶりだな。たった二人で辿り着くとはかなりの手練れか、それとも多くの犠牲を払った上での生き残りか」
ミスティウルフが赤い瞳をこちらに向けながら静かにそう語った。
強者の風格とでもいうか、いきり立つでも威圧するでもなく、僕達を見定めている。そんな感じだ。でも、ただそれだけの事なのに、恐ろしい程の圧を感じる。ノワールがいなかったら逃げ出したくなってるかも知れないね。
「残念ながら、僕達は最初から最後まで二人でここまで来たんだ」
「ほう?」
僕の答えに、ミスティウルフの目が細められた。そして同時に発せられる圧が強くなった。これは僕達を強者と認識して警戒を強めたのかな?
「それで、お前達は我を倒しに来たのか? 今までの数多の人間を倒してきた我を」
「う~ん……」
そう言われると、ちょっと考えてしまうなぁ。
そもそも、ここまでの魔物は意思相通が出来ないヤツばっかりで、目に入ったヤツは皆殺しとばかりに襲ってきた。勿論、こっちはノワールの能力でどこにどれだけの敵がいるか把握してるから、迎撃態勢ばっちりで迎え撃ってきたんだけど。
だけどこのダンジョンの主は会話が成り立つし、最初から戦う意思があるようには思えない。それなら、少し話してみたいという気持ちにもなるよね。
だから、僕はこう答えた。
「それは、君と話してみてから決めるよ」
「フフフッ! ハハハハ! 面白い小僧だ。この我を見ても恐れるどころか、話してみたいだと?」
「そうだね」
「よかろう。我の事を話そう。貴様も我に話せ。ああ、我を騙せるとは思うな。我にはそういうスキルがある」
へえ……真贋を見抜くスキルか。いろんなスキルがあるんだな。僕にも味方にバフを掛ける常時発動型のスキルがあるけど、みんな持っているのかな?
それから暫くの間、僕とミスティウルフはお互いの事を話した。時折ノワールを交えながら。
ミスティウルフも会話自体が数十年ぶりらしく興が乗ってきたようだ。
「なんと……闇精霊が突然消えたのは、四大精霊共の仕業だったのか」
このミスティウルフ、僕と同じく闇属性の存在だったみたい。過去、闇の力を存分に使えた頃は神獣として名を馳せたが、ある日突然その力を使えなくなってしまった。世界中渡り歩いたけど闇の精霊はどこにもおらず、辿り着いたのがこのダンジョンだったみたい。
「ダンジョンという場所は魔力も濃く、ここならば精霊の力を借りずともそこそこの力を発揮できるからな」
「なるほど」
ミスティウルフは別にダンジョンの管理者とかそういう存在ではなく、単純にこの場所にいる最強の存在というだけ。ここに攻めてくる魔物も稀にいるし、来なければ上層に上がって狩って喰らう。
魔物が溢れて人間の街を襲うのも、ミスティウルフの関知するところではないらしい。
「我がこの場から去れば、別の魔物が最強を争い、ここに居座るだけだろう。それだけここの魔力は濃く、魔物にとっては居心地が良い」
「では、君がここからいなくなっても、ダンジョンは消滅したりしない?」
「うむ。この地面の下に魔核というものが埋まっている。強力な魔力を宿した石のようなものだ。それを破壊せぬ限りはダンジョンは消えぬだろう」
へえ……実は今までのダンジョンに関する資料っていうのは、想像を積み重ねて作られていた部分も多分にあったっていう事が分かった。
一説では魔物が溢れてくるのはダンジョンの主が命令してやっているだとか、ダンジョンの主を倒せばダンジョンは消滅するだとか言われてたけど、全くそんな事はなかった訳だね。
「広い世界にはここだけではなく、様々なダンジョンがある。ここに関してはそうだというだけで、他は知らぬ」
そもそも、このダンジョンの正しい情報が伝わらないのも、ここまで来た者が誰一人として生きて戻っていない事も理由の一つだろうね。おそらく他のダンジョンもそうなんだろう。ミスティウルフみたいな規格外が居座ってたんじゃ、普通の人間には勝てっこないよ。
「それで、そこの娘は何者だ? 妙に事情に詳しいようだが?」
「ああ、彼女はノワール。封印されていた闇の大精霊だよ」
「なんだと!?」
さすがのミスティウルフも、僕の言葉に驚きを隠せないみたいだ。
「ええ、しかもこの空間には四大属性の精霊共が全くいません。これではいくら高位のウィザードや魔導士であろうとも魔法を発動出来ません」
僕達は今、このダンジョンの最奥部に来ている。つまり、ダンジョンの最下層、どん詰まりの空間。ちなみにセイジっていうのは、ウィザードや魔女の上位のジョブなんだ。
多くの経験と実績を上げると、上位のジョブにクラスチェンジ出来る事があるらしいけど、それはごく少数みたいだね。
ここに来るまで、僕達は多くの魔物を倒してきた。素材をギルドに提出したら、当分の間は遊んで暮らせるんじゃないかな?
それに、レアなお宝もそれなりにゲット出来た。そして残るは目の前に鎮座してこちらを値踏みするように見ているこいつだ。
「ダンジョンは魔力の濃度が極度に濃縮された結果発生するもの。本来私達のような存在はこのような場所を好むのですが、この者はご主人様と同質の存在かもしれません」
つまり、闇の力を持つかもって事か。
おそらくコイツは『ミスティウルフ』。闇に溶け込むような漆黒の身体で素早く動きまわる為、その姿を視界に捉える事すら困難な事からそう言われている。
だけど、その本質は太古から存在する神獣らしい。ドラゴンやギガンテスのような一国を亡ぼすような魔物とも互角に戦える存在。だけど、そんな存在がなぜこんなダンジョンの奥深くにいるのかな?
見た目は牛や馬程の大きさもある狼だ。全身が黒い体毛に覆われており、その体毛に魔力を流すと一本一本が鋼のように硬くなるという。つまり、普通の剣や槍はその刃が通らない。
かと言って、この空間には精霊がいないから魔法が使えない。一般の冒険者じゃあお手上げだ。世界中にごく少数だけ存在していると言われる伝説級の武具を達人が持っていれば何とかなるかも知れないけどね。
でも僕なら、こいつにも対処できる。そんな確信があるんだよね。ここの濃密な魔力は、実に心地よい。
「ここに人間が来るのは久しぶりだな。たった二人で辿り着くとはかなりの手練れか、それとも多くの犠牲を払った上での生き残りか」
ミスティウルフが赤い瞳をこちらに向けながら静かにそう語った。
強者の風格とでもいうか、いきり立つでも威圧するでもなく、僕達を見定めている。そんな感じだ。でも、ただそれだけの事なのに、恐ろしい程の圧を感じる。ノワールがいなかったら逃げ出したくなってるかも知れないね。
「残念ながら、僕達は最初から最後まで二人でここまで来たんだ」
「ほう?」
僕の答えに、ミスティウルフの目が細められた。そして同時に発せられる圧が強くなった。これは僕達を強者と認識して警戒を強めたのかな?
「それで、お前達は我を倒しに来たのか? 今までの数多の人間を倒してきた我を」
「う~ん……」
そう言われると、ちょっと考えてしまうなぁ。
そもそも、ここまでの魔物は意思相通が出来ないヤツばっかりで、目に入ったヤツは皆殺しとばかりに襲ってきた。勿論、こっちはノワールの能力でどこにどれだけの敵がいるか把握してるから、迎撃態勢ばっちりで迎え撃ってきたんだけど。
だけどこのダンジョンの主は会話が成り立つし、最初から戦う意思があるようには思えない。それなら、少し話してみたいという気持ちにもなるよね。
だから、僕はこう答えた。
「それは、君と話してみてから決めるよ」
「フフフッ! ハハハハ! 面白い小僧だ。この我を見ても恐れるどころか、話してみたいだと?」
「そうだね」
「よかろう。我の事を話そう。貴様も我に話せ。ああ、我を騙せるとは思うな。我にはそういうスキルがある」
へえ……真贋を見抜くスキルか。いろんなスキルがあるんだな。僕にも味方にバフを掛ける常時発動型のスキルがあるけど、みんな持っているのかな?
それから暫くの間、僕とミスティウルフはお互いの事を話した。時折ノワールを交えながら。
ミスティウルフも会話自体が数十年ぶりらしく興が乗ってきたようだ。
「なんと……闇精霊が突然消えたのは、四大精霊共の仕業だったのか」
このミスティウルフ、僕と同じく闇属性の存在だったみたい。過去、闇の力を存分に使えた頃は神獣として名を馳せたが、ある日突然その力を使えなくなってしまった。世界中渡り歩いたけど闇の精霊はどこにもおらず、辿り着いたのがこのダンジョンだったみたい。
「ダンジョンという場所は魔力も濃く、ここならば精霊の力を借りずともそこそこの力を発揮できるからな」
「なるほど」
ミスティウルフは別にダンジョンの管理者とかそういう存在ではなく、単純にこの場所にいる最強の存在というだけ。ここに攻めてくる魔物も稀にいるし、来なければ上層に上がって狩って喰らう。
魔物が溢れて人間の街を襲うのも、ミスティウルフの関知するところではないらしい。
「我がこの場から去れば、別の魔物が最強を争い、ここに居座るだけだろう。それだけここの魔力は濃く、魔物にとっては居心地が良い」
「では、君がここからいなくなっても、ダンジョンは消滅したりしない?」
「うむ。この地面の下に魔核というものが埋まっている。強力な魔力を宿した石のようなものだ。それを破壊せぬ限りはダンジョンは消えぬだろう」
へえ……実は今までのダンジョンに関する資料っていうのは、想像を積み重ねて作られていた部分も多分にあったっていう事が分かった。
一説では魔物が溢れてくるのはダンジョンの主が命令してやっているだとか、ダンジョンの主を倒せばダンジョンは消滅するだとか言われてたけど、全くそんな事はなかった訳だね。
「広い世界にはここだけではなく、様々なダンジョンがある。ここに関してはそうだというだけで、他は知らぬ」
そもそも、このダンジョンの正しい情報が伝わらないのも、ここまで来た者が誰一人として生きて戻っていない事も理由の一つだろうね。おそらく他のダンジョンもそうなんだろう。ミスティウルフみたいな規格外が居座ってたんじゃ、普通の人間には勝てっこないよ。
「それで、そこの娘は何者だ? 妙に事情に詳しいようだが?」
「ああ、彼女はノワール。封印されていた闇の大精霊だよ」
「なんだと!?」
さすがのミスティウルフも、僕の言葉に驚きを隠せないみたいだ。
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