残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
20 / 206
一章

圧倒

しおりを挟む
 取り敢えず、ダンジョンの最下層までは見て回ったし、アーテルがいなくなってもダンジョン自体は存続するとの事なので、僕達は上層に戻る事にした。
 しばらく豪遊できるくらいの素材も手に入れたし、それを小出しに換金していけば生活に困る事もないだろう。

「それじゃあ五階層まで影泳ぎで戻る。アーテルは暫く影の中で隠れててくれる?」
「うむ。止むをえまいな」

 このダンジョンのボスを連れて帰ったら大騒ぎだしね。一応魔物を使役するテイマーっていうジョブもあるんだけど、神託でそれを授からないとまず無理だ。なので、アーテルをこのままの姿で連れ歩くのは非常にマズいんだ。
 かと言って、人型になってもらってもお前は誰だ? って事になるでしょ? 
 ダンジョン内で迷子を拾いましたなんて言っても、誰が信じるもんか。そんな訳でアーテルは暫く影の中だ。

 影泳ぎで五階層の一番奥まで一気に移動する。まったく便利な魔法だなこれ。付近に誰もいない事は、予めノワールの“目”で確認済み。僕とノワールはズルズルと影から浮かび上がった。
 そこからは出会った冒険者達には適当に挨拶をしながら上層へと戻っていく。予め影の中に仕込んでおいた大きめのバッグに素材をパンパンに詰め込み、それらしく『成果』を上げたように見せるのも忘れない。
 そしてダンジョンから出ると、明るい陽射しが目に刺さる。そしてダンジョン内とはまるで違う、清浄な空気を胸いっぱい吸い込んだ。
 すると、僕達に声を掛けてくる者がいた。

「おーい! 戻って来たんならこっちの台帳に名前を書いてくれ」

 ギルドの職員さんかな?
 ああ、はい。記帳ですね。これでダンジョンに突入した者と戻って来た者を照らし合わせて、行方不明者を捜索したりする訳だ。

「お? あんたがショーンか。ちょっと本陣に行ってくれるか? 副ギルド長が待ってるはずだ」
「あー……」
「ははは。そう嫌な顔すんなって。ちょっと事情を聞きたいそうだ」
「分かりました。あっちの陣幕が本陣ですね?」

 頷く職員を背中に、かなり立派な陣幕というか、大型のテントを尋ねた。副ギルド長や、お目付け役の役人さんがいるんだろうね、この中。

「アイアンランカーのショーンです。入ります」
「おー、待ってたぞ。入れ」

 副ギルド長の声だ。

「失礼します」

 テントの中に入って一礼すると、簡易折り畳み椅子を勧められた。二脚あったので、そこにノワールと共に座る。

「あー、デライラから詳細は聞いている。が、お前さんの話も聞きたくてな。それをこっちで擦り合わせて判断する」

 なるほど。どちらかが嘘をついている可能性もあるという事を念頭に入れて、か。

「はい。実は……」

 僕はノワールが闇の大精霊である事は伏せ、デライラのパーティメンバーから受けた嫌がらせやダンジョンに入ってからの尾行、デライラを人質に取っての恫喝、隙を見て弓使いを殺害して逆襲した事を正直に話した。ああ、直接手を出したのはノワールじゃなくて僕って事にした。

「ほう? こう言っちゃなんだが、お前さんは『残滓』って呼ばれてたんだろ? アイツらは言動にはちょいと問題があったが、ブロンズランカーにしちゃ腕は立つ方だったんだが?」
「腕が立つ? 冗談ですよね? オーク如きに一対一で後れを取るような連中ですよ。それに指揮能力もない」
「つまり、アイツらはお前さんにとって、敵じゃないと?」
「ええ。そもそも、連中が僕を尾行していた事は知っていましたし」

 そこまで言うと、副ギルド長は腕を組んで唸り始めた。

「お前さんがアイアンに上がれたのはそっちのお嬢さんの腕が立つからだってもっぱらの噂だからな。ちょっと試させてもらっていいか?」
「試す、ですか?」
「ああ。ちょっと付き合ってくれりゃいい」

 副ギルド長がニッと白い歯を出して笑う。
 ちょっと、笑顔が獰猛なんですけど!? なんで獲物を見つけたみたいな顔になってるんですか!?

 そして僕達はテントから出て、少し開けた場所に移動した。ちなみに人目はそれなりにある。もう嫌な予感しかしないなぁ。

「あの、僕もう帰っていいですか?」
「まあまあそう言うなよ。せっかくなんだからよ?」

 副ギルド長はそう言いながら木剣を構える。その様子を見ていた野次馬が野次馬を呼び、結構の数の観客が出来てしまった。

「あーあ、残滓のヤツ、気の毒に」
「副ギルド長、事務能力が足りねえから副ギルド長なんだって話だぜ? 腕はギルド長より立つって話だ」
「おいそこの! 聞こえてんぞコラァ!」
 
 そんな野次馬と副ギルド長のやり取りを聞きながら、深いため息をつく。どうしてこうなった……

「さあ、お前さん、ウィザードなんだろ? 武器を使うなら適当なのそこから持っていきな。準備が出来たらいつでもいいぜ?」

 ダメだこの副ギルド長脳筋だ。ってか、バトルマニアだ。もうやるしかないよねコレ。
 仕方ないから、僕は二本の細剣を模した木剣を持ってきた。これが一番短槍に近いだろう。

「それじゃあ行きますよ?」

 まずはオーソドックスに火の魔法を足下に叩き込む。

「おっ!?」

 まあ、腕が立つらしいのでこれは避けるだろうね。じゃあ、避ける方向を潰しておこうっと。
 前後左右、一歩分の場所に、今度は水の魔法。だいぶセーブしてるから、当たると痛い程度にしてるけどね。

「うぉっ!? ちょっ、まっ……」

 おお、凄い! 水弾を木剣で叩き潰した!? しかも真っ直ぐ間合いを詰めて来る!?
 凄いな! よし、それなら!

「ぐおおおっ! このクソッタレがぁ!」

 僕は正面から土の魔法で石礫を放った。一つ一つは小さいけど、幕を張るように大量に。これじゃあ被弾は免れない。しかしそれにも怯まず、左手で顔をガードしながら尚も突っ込んできた。
 流石だなぁ。これだけやっても引かないんじゃ、並のウィザードやウィッチじゃ間合いに入られてジ・エンドだよね。
 だけど、僕は普通のウィザードじゃない。顔をガードして視界を狭めたのは悪手だよ!
 風の魔法。圧縮した空気を僕と副ギルド長の真ん中の足下へ叩き込む。すると、盛大な土煙が上がりお互いの視界を遮った。すかさず僕は身体強化魔法を掛けて素早く移動する。勿論、副ギルド長の背後に。

「ちっ!!」

 既に背後に回り込んでいる僕に向かって、副ギルド長がバックステップしてくる。勿論、正面にいると思い込んでいる僕の攻撃を警戒しての事だろう。でも。

「勝負あり、ですかね」

 僕はそっと木剣の切っ先を副ギルド長の背中に押し当てた。

「降参だ」

 副ギルド長はそう言って両手を上げた。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

処理中です...