23 / 206
一章
狼の爪
しおりを挟む
ダンジョンでのクエストを終え、ゴールドランクに昇格した僕は、収入も安定してきたので、少しいい物件に引っ越した。前の家じゃちょっと手狭なんだよね。ほら、同居人が増えたから。
ノワールも冒険者として活動していく以上、人型でいる時間が多い。そしてコイツ、アーテルだ。
ダンジョンの最下層にいたミスティウルフ。それが僕の眷属になり、共に行動する事になったんだけどね。
「我も人型になって冒険者になってみたいのだ!」
そう言って聞かない。まあ、ノワールだけが表に出て、自分は自由がない身というのも可哀そうなので了承したんだけどね。
「君、女の子だったの?」
「ん? なんだ、今まで知らなかったのか?」
……分かる訳ないだろ。確認した訳じゃないし、話し方はなんか偉そうだったし。
「声で分かるだろう?」
「犬の鳴き声でオスメスの判別は出来ないんです、人間は」
「なんと……さらりと我を犬扱いしおって。さすがだな、主人よ」
人間の姿になって仁王立ちしながらアーテルが威張る。
身長は僕と同じくらい。ミスティウルフだった時と同じ黒髪は背中まで届く長いストレートヘア。顔は勝ち気そうな美人だ。年上に見えるね。均整のとれた身体はいかにもバネがありそうだ。
しかし、素っ裸なのはいただけない。精霊と違って雌雄の区別があるんだから、もっと恥じらいというものをだね……
「よし、服を買いにいくぞ。影に入ってくれ、アーテル」
「イヤだ。我も外を歩きたいのだ!」
「君みたいな美人が裸で外を歩いてると大変な事になるんだよ」
「むぅ……」
こんな具合に、アーテルはとにかく外に出たがる。まあ、気の遠くなる年月をダンジョンの中で過ごしていたんだから、中に引きこもるのを嫌がる気持ちは分かるんだけどね。
「服と装備を買ったら、そのまま冒険者ギルドで登録もしよう。だから少し我慢してくれ」
「そうか! 分かったぞ!」
だけどこういう風に餌をちらつかせると素直になる。現金だよね。そこが可愛いんだけど。そんな訳で、僕とノワール、そして影の中に隠れたアーテルは買い物へ出かけた。
まずは服屋さん。ここではアーテルを隠したまま、ノワールに服を選んでもらう。それにアーテルがダメ出しする感じでお気に入りを絞っていく。
そして買い込んだ後、人気のない裏通りへ移動してアーテルに着てもらう。意外とワイルドだね、これ。ゆったりめのカーゴパンツにゴツいブーツはくるぶしが隠れるくらいの長さ。
上半身はうっすらと割れた腹筋が見える程短い、長袖のトップス。胸がその、豊かなので目のやり場に困るな。せめて上に羽織るものくらいはと思い、小物が入れられるポケットがたくさん着いた袖なしの革製のベストを着てもらう。
次は装備を整えないとね。
「アーテルはどんなスタイルで戦うの?」
「ん? 我は闇魔法とコレだな」
そう言って、にゅっと拳を突き出してきた。
「まあ、正確には爪と牙と圧倒的な膂力とスピードが武器なのでな」
そうなんだよね。武器を持って戦うのは人間と人型の魔物のみ。元々が大精霊のノワールも、神狼のアーテルも、存在そのものが武器と言える訳なんだよなあ。
一応冒険者としての見た目もあるので、ノワールには短剣を二本装備してもらってるけど、彼女は器用に使いこなしている。
アーテルはどうだろうか? 逆に邪魔になりそうな気もするんだよなぁ。
そんな事を考えているうちに、最近よく使っている武器と防具の店先に着いた。僕がゴールドランクに昇格してからは、店主も愛想がよくなったよ。
「おう、らっさい! 今日はなんだ? 新顔か?」
「うん、この子の装備を揃えたいんだけど、格闘戦メインなんだ」
「ほう? 拳闘士か? 珍しいな!」
徒手空拳で戦う事を得意としたジョブをケンプファーと呼ぶ。己の肉体そのものを武器として戦うジョブはかなりレアだ。それもそうだよね。重い防具は妨げになるし。リーチの長い武器もない。卓越した技量を必要とするジョブだ。
ちなみにノワールは双剣士という事にしている。
「そうさなぁ……ケンプファーなら殴る蹴るだろ? これなんかどうだい?」
店主が勧めてきたのは変わった手甲だった。手首まですっぽり隠れる長めのグローブなんだけど、手の甲に三本のかぎ爪が付いている、先端が鋭く、突いてよし、切り裂いてよし。リーチも中指一本分程長くなる。
使わない時は上に折り返してカバーを掛けられるようになっていて、安全面も大丈夫そうだ。
「うむ! これがいい!」
アーテルも目をキラキラさせながらその変わり種のグローブを凝視している。
「じゃあご主人、これと、胸、肘、膝の防具を」
「まいどあり!」
「ところで、このグローブは何ていう武器なのかな?」
代金を渡しながら店主に訊ねてみた。でも店主は首を傾げるばかり。
「さあてなあ? ケンプファーってヤツが少ないもんだから、それ用の武器ってのも中々流通しなくってよ。敢えて言うなら鉤爪だろうなぁ」
そうなんだ。見た目そのまんまだね……
ともあれ、購入した武具を装備して、僕等は冒険者ギルドへと向かった。
ノワールも冒険者として活動していく以上、人型でいる時間が多い。そしてコイツ、アーテルだ。
ダンジョンの最下層にいたミスティウルフ。それが僕の眷属になり、共に行動する事になったんだけどね。
「我も人型になって冒険者になってみたいのだ!」
そう言って聞かない。まあ、ノワールだけが表に出て、自分は自由がない身というのも可哀そうなので了承したんだけどね。
「君、女の子だったの?」
「ん? なんだ、今まで知らなかったのか?」
……分かる訳ないだろ。確認した訳じゃないし、話し方はなんか偉そうだったし。
「声で分かるだろう?」
「犬の鳴き声でオスメスの判別は出来ないんです、人間は」
「なんと……さらりと我を犬扱いしおって。さすがだな、主人よ」
人間の姿になって仁王立ちしながらアーテルが威張る。
身長は僕と同じくらい。ミスティウルフだった時と同じ黒髪は背中まで届く長いストレートヘア。顔は勝ち気そうな美人だ。年上に見えるね。均整のとれた身体はいかにもバネがありそうだ。
しかし、素っ裸なのはいただけない。精霊と違って雌雄の区別があるんだから、もっと恥じらいというものをだね……
「よし、服を買いにいくぞ。影に入ってくれ、アーテル」
「イヤだ。我も外を歩きたいのだ!」
「君みたいな美人が裸で外を歩いてると大変な事になるんだよ」
「むぅ……」
こんな具合に、アーテルはとにかく外に出たがる。まあ、気の遠くなる年月をダンジョンの中で過ごしていたんだから、中に引きこもるのを嫌がる気持ちは分かるんだけどね。
「服と装備を買ったら、そのまま冒険者ギルドで登録もしよう。だから少し我慢してくれ」
「そうか! 分かったぞ!」
だけどこういう風に餌をちらつかせると素直になる。現金だよね。そこが可愛いんだけど。そんな訳で、僕とノワール、そして影の中に隠れたアーテルは買い物へ出かけた。
まずは服屋さん。ここではアーテルを隠したまま、ノワールに服を選んでもらう。それにアーテルがダメ出しする感じでお気に入りを絞っていく。
そして買い込んだ後、人気のない裏通りへ移動してアーテルに着てもらう。意外とワイルドだね、これ。ゆったりめのカーゴパンツにゴツいブーツはくるぶしが隠れるくらいの長さ。
上半身はうっすらと割れた腹筋が見える程短い、長袖のトップス。胸がその、豊かなので目のやり場に困るな。せめて上に羽織るものくらいはと思い、小物が入れられるポケットがたくさん着いた袖なしの革製のベストを着てもらう。
次は装備を整えないとね。
「アーテルはどんなスタイルで戦うの?」
「ん? 我は闇魔法とコレだな」
そう言って、にゅっと拳を突き出してきた。
「まあ、正確には爪と牙と圧倒的な膂力とスピードが武器なのでな」
そうなんだよね。武器を持って戦うのは人間と人型の魔物のみ。元々が大精霊のノワールも、神狼のアーテルも、存在そのものが武器と言える訳なんだよなあ。
一応冒険者としての見た目もあるので、ノワールには短剣を二本装備してもらってるけど、彼女は器用に使いこなしている。
アーテルはどうだろうか? 逆に邪魔になりそうな気もするんだよなぁ。
そんな事を考えているうちに、最近よく使っている武器と防具の店先に着いた。僕がゴールドランクに昇格してからは、店主も愛想がよくなったよ。
「おう、らっさい! 今日はなんだ? 新顔か?」
「うん、この子の装備を揃えたいんだけど、格闘戦メインなんだ」
「ほう? 拳闘士か? 珍しいな!」
徒手空拳で戦う事を得意としたジョブをケンプファーと呼ぶ。己の肉体そのものを武器として戦うジョブはかなりレアだ。それもそうだよね。重い防具は妨げになるし。リーチの長い武器もない。卓越した技量を必要とするジョブだ。
ちなみにノワールは双剣士という事にしている。
「そうさなぁ……ケンプファーなら殴る蹴るだろ? これなんかどうだい?」
店主が勧めてきたのは変わった手甲だった。手首まですっぽり隠れる長めのグローブなんだけど、手の甲に三本のかぎ爪が付いている、先端が鋭く、突いてよし、切り裂いてよし。リーチも中指一本分程長くなる。
使わない時は上に折り返してカバーを掛けられるようになっていて、安全面も大丈夫そうだ。
「うむ! これがいい!」
アーテルも目をキラキラさせながらその変わり種のグローブを凝視している。
「じゃあご主人、これと、胸、肘、膝の防具を」
「まいどあり!」
「ところで、このグローブは何ていう武器なのかな?」
代金を渡しながら店主に訊ねてみた。でも店主は首を傾げるばかり。
「さあてなあ? ケンプファーってヤツが少ないもんだから、それ用の武器ってのも中々流通しなくってよ。敢えて言うなら鉤爪だろうなぁ」
そうなんだ。見た目そのまんまだね……
ともあれ、購入した武具を装備して、僕等は冒険者ギルドへと向かった。
12
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる