残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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一章

謎の力

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 冒険者ギルド、ギルド長執務室にて。

「で、実の所はどうなのよ? アンタも本気でやった訳じゃないんでしょ?」
「まあな」

 テーブルを挟んでソファに腰を下ろし、差し向かいで話しているのはギルド長のサマンサと、副ギルド長のイヴァンだ。
 会話の焦点は先日の模擬戦の件。
 結果だけ見ればショーンの圧勝でイヴァンが遊ばれたような見方も出来た。

「ただ、ヤツも全然本気は出しちゃいねえ。信じられるか? 四属性全部無詠唱だ」
「……」
「しかも、一瞬で後ろを取られた」

 イヴァンは今思い出しても冷や汗が出る。あくまでも模擬戦だ。殺さないように威力を抑えているのは分かる。しかしショーンは、ウィザードでありながらその魔法を牽制にしか使っていないのだ。
 
「本気でやってもアイツにゃ勝てる気がしねえよ。アイツの性格が温厚でよかったぜまったく」
「あなたがそう言うのならそうなのでしょうね。彼の気性が荒かったら、今頃冒険者ギルドは血の海かも知れないわ」

 サマンサがショーンとノワールにゴールドとアイアンのタグを渡し、彼等二人がギルドから去った後、掲示板に貼り紙をした。
 今回の共同クエストの結果、誰が(どのパーティが)何の魔物をどれくらい討伐したかである。要はクエストの貢献度ランキングのようなものだ。
 また少ないながらも出てしまった犠牲者の名簿。さらには懲罰対象になった者。

 そして、ギルド内に騒めきが起こったのは、一番最後にあった一文。

【下記の者、今クエストの実績を鑑み、ゴールドランクに昇格するものとする。ショーン】

 当然、不平不満の嵐になった。ゴールドランカーともなると、周囲に与える影響も大きくなるため、このような形で告知するのが一般的なのだが、今回はその対象者が問題だった。
 残滓。魔法もロクに使えない出来損ないウィザード。今まではデライラの腰巾着でブランズに昇格し、今回はノワールのおかげでアイアン、そしてシルバーを飛び越えてゴールドへ。
 ここ最近、そのような評価は改められてきているが、共同クエストに参加しなかった者や、参加はしたがイヴァンとの模擬戦を見ていなかった者にとっては寝耳に水の話だ。
 クエストの貢献度ランキングも最上位という訳ではない。質は良かったが提出した量が少なかったからだ。それにオーガの素材が混じっていた事も、ギルドは隠蔽した。六階層以降にまで進んでいた事が明るみになれば、今にも増してショーンへの風当たりが強くなってしまうだろうと予想しての措置だ。
 そんなギルド内で巻き起こっていた怒声の嵐の最中にもしショーンがいたら。自分なら全員ぶっ飛ばすだろうなと、イヴァンは苦笑する。

「戦術、反応、状況判断、技術、どれを取っても一級品だ。なんであんなヤツが埋もれてんだよ」
「一緒にいたパートナー……かしらね」

 現に、イヴァンとの模擬戦を見ていなかった者は、今回の戦果もノワールの力による所が大きいと見ている。それに今までも、デライラがショーンを引っ張っていた印象だ。どうしても、存在感が薄くなってしまう。

「なるほどな……で、その、以前の相棒なんだがな」
「デライラの事かしら?」
「ああ。妙な事を言っていた」
「妙な事?」

 ダンジョンの外での事情聴取でデライラが言っていた、ショーンと離れてから思うように動けなくなったという事。

「お前、何か心当たりがあるか?」
「……」

 サマンサは顎の指をあてて、考え込む仕草をする。これは昔からのクセのようなもので、それを久々に見たイヴァンは僅かに頬を緩ませる。

「これは古い資料に書かれていただけで、私も見た事はないのだけど……味方の能力を上げたり、逆に敵の能力を下げたりする魔法があったみたいなの」
? 現存しないって事か?」

 イヴァンのその質問に、サマンサは肯定の意味の無言で返した。そして付け加える。

「火水風土、どの属性にも属さない不可解な魔法。あり得ないでしょ、そんなの。私は眉唾物だと思っているわ」
「ほーう? でもよ、その四属性をどれも使えなかったショーンのヤツが、いきなり全部使いこなしてる事を考えると、中々興味深いと思わねえか?」
「確かにそうね……でもあなた、その思慮深さをどうして業務に活かせないのかしら?」
「さて、と」

 話題が切り替わりそうになった途端、イヴァンは席を立ち、部屋を出ていこうとした。

「ちょっと用事思い出した。じゃあな!」
「あ、ちょ――もう!」

 部屋を出たイヴァンは、背中に聞こえるサマンサの小言に苦笑いを浮かべながら考える。

(模擬戦の時のヤツの動きは、恐らく身体強化だ。あんなモン、ウィザードの動きじゃねえ。ちょっと試してみるか……)

 何かを思いついたらしいイヴァンの表情は、これから悪戯を仕掛ける時の少年のような無邪気さだった。
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