残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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一章

五属性同時行使

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 街はずれの森に出た僕達は、アーテルが言う武器に施すエンチャントについて語りながら、のんびりと街に向かって歩いていた。

「まず必要なのは、それなりに出来のいい武器だな。ただ魔力でコーティングするだけならクズみたいな武器でも構わんのだが、エンチャントするとなるとそれなりの品質が求められる」

 ほうほう。流石は神狼、博識だね。でもアーテルさん聞いてた? この街にはエンチャント出来るウィザードがいるなんて聞いた事もない。

「うむ。そもそもの話なのだが、いくら優秀な術者がいたとしても、この時代においては我が言う方法は無理だろう。何しろ闇属性そのものが無きものとされているのではな」

 なるほど、武器に闇属性のエンチャントを施すって事か。もういきなり詰んでるね!

「そうでもないぞ?」
「ん? どういう事だい?」

 ふふ、と得意気に笑いながらアーテルが胸を張る。立派な胸部装甲ですね。

「簡単な術式なら我が知っている。魔法陣を刻むのは主人がやればよかろう」

 なるほど。エンチャント自体は特に専門職じゃなきゃ出来ないって訳じゃない。攻撃魔法や治癒魔法などではなく、そういった術式を専門に学んだウィザードやウィッチじゃなきゃ知識が足りないってだけだ。その知識をアーテルが持っているならば可能か。
 でも待てよ?

「それならアーテルがやったらいいんじゃない?」
「ああ、それは無理だな」

 急に都合が悪くなったようで、アーテルはソッポを向いてしまった。

「ご主人様。エンチャントの為の魔法陣は、非常に精緻なものです。手先の器用さが求められるのですよ」

 そこでニヤニヤしたノワールから補足が入った。なるほどね。アーテルは不器用なのか。

「しっ、しかたあるまい? 我は狼なのだ。本来我の前脚は肉球ぷにぷになのだぞ!?」
「ははは。分かった分かった。武器を見繕ったら、僕に教えてくれるかい?」
「うむ! もちろんなのだ」

 それにしても、武器に闇属性魔法のエンチャントを施す事は分かった。でもそれが、僕が行使した魔法を武器に纏わせるのとどう関係があるのか分からない。

「ご主人様、確かに四大属性の魔法を付与する事は現状難しいです。ですが、私達が使っている魔力によるコーティングを施していれば、魔法を纏わせても武器が損傷する事は――無いとは言えませんが、かなり耐久性は上がるはずです」

 んん? なんかちょっと間があったのが気になるけど、つまり闇属性による強化のエンチャントを施しておけば、魔法を纏わせてもそうそう簡単に武器が壊れる事はないと。

「そういう事だな。我等がコーティングしているのは耐久力の上昇と切れ味の上昇の為。主の武器も同様の効果をエンチャントしておけばよい」

 なるほど。でもそれエンチャント必要かな?

「「は!?」」

 僕が内心思った疑問に、二人がぎょっとしたような反応を示した。

「え? なんで? 僕も君達と同じように武器を強化しながら戦えばいいんじゃない?」

 そんな僕の言葉に、二人はポカンと口を開けたまま固まってしまった。うん、可愛いね。

「いや、主人よ。身体強化と武器強化に魔力を使った上で、さらに四大属性魔法も複数行使しながら戦うつもりか?」
「普通の人間にそんな事が出来る訳が……いえ、ご主人様は私を封印から解き放った偉大なお方……もしかすると……」

 う~ん、出来そうな気がするんだよなぁ。
 おっ? ちょうどいい実験台が近付いてきたみたいだね。

「ちょっと試してくるよ」

 現れたのはゴブリンが四匹。今の僕なら素手でも制圧できる相手だ。仮に上手く行かなくても負ける事はない。それじゃあちょっとやってみましょうか!
 魔力を体内に巡らせての身体強化。さらにその延長で短槍にも魔力を流す。僕の魔力で槍全体を包み込むようなイメージでいいのかな?
 おお、見える。短槍全体が黒い魔力でいる。黒いのに光っているとはおかしい話だけど、そうとしか表現のしようがないなよなぁ。取り敢えずはこれでいってみようか。
 まずは短槍の穂先に風魔法を纏わせる。穂先全体を風が螺旋状に渦巻きながら高速回転するように。そのまま一番近くのゴブリン目掛けて駆け出しながら、他の三匹にも視線をやる。
 せっかくだから属性違いの似たような魔法を披露してみよう。
 僕は瞬時に精霊達に命令した。ゴブリンの足下から穿て、と。すると、僕が向かったゴブリン以外の三匹が立っている地面から、ぞれぞれ炎、氷、岩が噴き上がり、ゴブリンの身体を貫いた。同時に僕も風の螺旋を纏わせた短槍で正面のゴブリンを貫く。

「おいおいおい! 我が主人は天才なのか?」
「ええ……正直私も驚いています。まさか五属性を全て、ほぼ同時に行使するだなんて……」

 アーテルとノワールが呆然としながら驚くという器用な事をしていてなんだかおかしい。でもなんだろう? あれ? ちょっと眩暈がするな。
 僕はその場で膝を付いた。

「ご主人様!?」
「大丈夫か!」

 二人が慌てて駆け寄ってくる。うーん、大した事はないんだけど、何て言うかな……身体ではなくて頭に対する負担が大きいというか……通常の戦闘ではあまり使えないな、これは。

「ああ、大丈夫だ。だけどちょっと負担が大きいみたいだね。やはりそこそこ上等な武器を買って、エンチャントを施そう」

 僕の側で気遣ってくれる二人にそう言うと、アーテルは大きく頷き、ノワールは僕の頭を優しく抱きしめてくれた。柔らかいぞ。
 この後僕の回復を待ってから街に戻り、武器屋でちょっとした掘り出し物を見つけて購入。家に戻ってからはアーテルの指導のもと、エンチャントの為の魔法陣を掘った。
 これが中々に地道な作業で、複雑な古代文字と図形を組み合わせた魔法陣を描ききるまでに、三回ほどノワールのタレ耳をモフらせていただいた。
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