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一章
葬られた歴史①
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その昔、創造の女神ルーベラは生ける者全ての助けとなる存在、精霊を作り給われた。
火、水、風、土。それぞれが人を営みを豊かにするために欠かせないものであるが故、それを安定させるために生み出されたのが所謂四大精霊である。世界中どこにいても人々が暮らせるように、精霊もまた世界に満ち溢れている。
精霊ひとつひとつは微々たる存在だが、それを束ねる者が四大精霊王と呼ばれる存在だ。人間にはとても御する事など不可能な存在。世界はこの四人の精霊王によって正しく導かれるはずであった。
また、女神ルーベラは四大精霊とは別に、二つの属性を作り給われる。それが光と闇である。
光と闇は数こそ少ないが個体の力は強力であり、精霊王以外の四大属性の精霊を使役する事すら可能だった。
何故女神は光と闇の精霊を作られたのか。人は心が弱い生き物だ。善にも悪にも簡単に染まってしまう。
「我々光の精霊は人の心に希望を与え、文字通り光を照らす為。そして闇の精霊は人の悪しき心を取り込み、悪とはいかに恐ろしいものなのかを人々に知らしめるために生み出されたのだ」
村人ファッションに身を包んだシルバーブロンドのイケメンがつらつらと説明している。それを僕等は興味深く聞いていた。
何しろ世界の常識を覆すような話だからね。信じる信じないは別としても、引き込まれる内容だよ。
「断っておくが、光が善、闇が悪という訳ではない。どちらも人の心のバランスを取る為に必要なものだった」
「それなら何故、世界中の誰も光と闇という属性を知らないのかしら?」
ルークスの説明に、サマンサギルド長が当然の疑問をぶつけた。そうだよね。それこそが一番知りたい核心の部分だ。
「四大精霊王が反乱を起こしたのだ」
――!?
精霊王が反乱だって!?
流石にこの発言には全員が目を見開き驚いている。ノワールやアーテルですら、その事実は知らなかったらしい。
「何者かが精霊王どもを唆したらしい。女神ルーベラ様は我等光と闇の精霊に重きを置き、四大精霊を軽視していると」
精霊王を唆せるような存在って何者だろう? あんまり考えたくないなあ。
「とにかく、我等光と闇の精霊は、結託した四大精霊どもに封印されてしまったのだ。そして、世界から光と闇という属性は消え去り、無かった事にされたのだろう」
尚もルークスの話は続いた。
光と闇の精霊が消えた世界では人や獣の心に悪が蔓延るようになり、争いや犯罪が絶えなくなった。また、悪に染まり切った獣や人間はその姿を変え、魔物になってしまったという。
その結果、人々は戦う為、または守る為、生きる為に四大属性の力を崇めるようになった、か。
「にわかには信じらん話だが……納得できる話でもある」
イヴァン副ギルド長がそう言って僕を見る。
「そうね。例えばメカニズムが解明されていないアーティファクトの数々――そのマジックバッグなんかは、ショーンがさっき影から剣を出したような感じにも思えるわよね」
そうか。影の収納とマジックバックの体積を無視して入れられる力。もしかして、闇属性のエンチャントが施されているのかも知れないね。
でも闇属性そのものが認知されていない世界なのだから、解析のしようがない。他にもいろいろありそうだね。例えばデライラが持っている黒い刃の魔剣とか。
「ショーン、この剣って……?」
デライラもその事に思い当たったのか、確認するような目で僕に問いかけてくる。おそらく想像通りだとは思うけど、僕は専門家じゃないから断定はできないよ。だから肩を竦めてみせた。
だけどそこでルークスから助け船が入った。
「デライラよ。その剣で封印を破った時に感じたのだが、紛れもなくそれは闇属性のエンチャントが施された魔剣だ。だが、お前は光属性の魔力を持つものだ。相性はいいとは言えないな。身体に大きな負担が掛かるだろう?」
デライラはコクリと頷く。あれだけの戦闘力を引き出しておいて相性が悪いのか。本来の性能を引き出したらどれだけ凄い事になるのかな。
「本来なら、こぞ――」
「小僧じゃない。ショーン様と呼べ」
僕を小僧と呼びかけたルークスに、間髪入れずにノワールからダメ出しが入った。別に小僧でも構わないんだけど。
「そうだぞ光の。お前はその娘の眷属になるのだろう? 」
ウチの子たちは意外と上下関係に厳しいみたいだ。アーテルまでもがルークスに小言を入れる。
「む……では、ショーン様、本来ならば貴方こそがその剣を使うにふさわしい魔力を持っているのだが?」
「ははは。僕は剣を使えないよ。あくまでもウィザードだからね」
素直に言い直すルークスに苦笑しながら答える。ただ振り回すだけなら双戟の方がいい。
「ふむ。ではショーン様。この剣をデライラ様の為に少々手を加えてもよろしいか?」
「え? ああ。それは構わないよ。僕としてもそれはデライラに譲ったつもりでいたし」
「では拝借する」
デライラから剣を受け取ったルークスは、鞘から剣を抜くと、その柄の部分を集中的に調べ始めた。
「やはりこれは、闇属性の魔力で使用者の能力を大幅に引き上げる術式が施されている。剣自体を強化する以外に、使用者をも強化するとは中々凝った術式だね。ノワールの封印が解けなければただの剣だっただろうが」
ルークスはそう言いながら柄に向かって手を翳し続けている。手のひらからはポウッと白い光が発せられ、薄暗い洞窟内を明るく照らす。
「これでいいだろう。術式を少々書き換えた。先程までは闇属性のブーストがデライラ様の身体に無理を強いていたが、これからはデライラ様に親和性のある光属性の魔力が優しく手助けする事になる」
そうか。ノワールやアーテルがデライラに対して感じていたのはこの事だったのか。
僕と同じく封印されていた属性に親和性を持った人間。それが彼女だ。ここにサマンサギルド長やイヴァン副ギルド長という第三者がいる以上、いつかは世間に知られる時が来る。
そうなれば、この世界を意図的に歪めた何者かが、または四人の精霊王が僕達に害を成してくる事は想像に難くない。その時に、僕とデライラ、ノワールとルークスが協力し合う関係でいた方が何かと都合がいいって事になるもんね。
そして光の大精霊ルークスの力を得たデライラは、この先とんでもない大物になるかもって事だ。
さて、光と闇。今まで封印されてきたものが歴史の表舞台に出て来た瞬間を目の当たりにしてしまったギルドの二人はどうするのかな?
火、水、風、土。それぞれが人を営みを豊かにするために欠かせないものであるが故、それを安定させるために生み出されたのが所謂四大精霊である。世界中どこにいても人々が暮らせるように、精霊もまた世界に満ち溢れている。
精霊ひとつひとつは微々たる存在だが、それを束ねる者が四大精霊王と呼ばれる存在だ。人間にはとても御する事など不可能な存在。世界はこの四人の精霊王によって正しく導かれるはずであった。
また、女神ルーベラは四大精霊とは別に、二つの属性を作り給われる。それが光と闇である。
光と闇は数こそ少ないが個体の力は強力であり、精霊王以外の四大属性の精霊を使役する事すら可能だった。
何故女神は光と闇の精霊を作られたのか。人は心が弱い生き物だ。善にも悪にも簡単に染まってしまう。
「我々光の精霊は人の心に希望を与え、文字通り光を照らす為。そして闇の精霊は人の悪しき心を取り込み、悪とはいかに恐ろしいものなのかを人々に知らしめるために生み出されたのだ」
村人ファッションに身を包んだシルバーブロンドのイケメンがつらつらと説明している。それを僕等は興味深く聞いていた。
何しろ世界の常識を覆すような話だからね。信じる信じないは別としても、引き込まれる内容だよ。
「断っておくが、光が善、闇が悪という訳ではない。どちらも人の心のバランスを取る為に必要なものだった」
「それなら何故、世界中の誰も光と闇という属性を知らないのかしら?」
ルークスの説明に、サマンサギルド長が当然の疑問をぶつけた。そうだよね。それこそが一番知りたい核心の部分だ。
「四大精霊王が反乱を起こしたのだ」
――!?
精霊王が反乱だって!?
流石にこの発言には全員が目を見開き驚いている。ノワールやアーテルですら、その事実は知らなかったらしい。
「何者かが精霊王どもを唆したらしい。女神ルーベラ様は我等光と闇の精霊に重きを置き、四大精霊を軽視していると」
精霊王を唆せるような存在って何者だろう? あんまり考えたくないなあ。
「とにかく、我等光と闇の精霊は、結託した四大精霊どもに封印されてしまったのだ。そして、世界から光と闇という属性は消え去り、無かった事にされたのだろう」
尚もルークスの話は続いた。
光と闇の精霊が消えた世界では人や獣の心に悪が蔓延るようになり、争いや犯罪が絶えなくなった。また、悪に染まり切った獣や人間はその姿を変え、魔物になってしまったという。
その結果、人々は戦う為、または守る為、生きる為に四大属性の力を崇めるようになった、か。
「にわかには信じらん話だが……納得できる話でもある」
イヴァン副ギルド長がそう言って僕を見る。
「そうね。例えばメカニズムが解明されていないアーティファクトの数々――そのマジックバッグなんかは、ショーンがさっき影から剣を出したような感じにも思えるわよね」
そうか。影の収納とマジックバックの体積を無視して入れられる力。もしかして、闇属性のエンチャントが施されているのかも知れないね。
でも闇属性そのものが認知されていない世界なのだから、解析のしようがない。他にもいろいろありそうだね。例えばデライラが持っている黒い刃の魔剣とか。
「ショーン、この剣って……?」
デライラもその事に思い当たったのか、確認するような目で僕に問いかけてくる。おそらく想像通りだとは思うけど、僕は専門家じゃないから断定はできないよ。だから肩を竦めてみせた。
だけどそこでルークスから助け船が入った。
「デライラよ。その剣で封印を破った時に感じたのだが、紛れもなくそれは闇属性のエンチャントが施された魔剣だ。だが、お前は光属性の魔力を持つものだ。相性はいいとは言えないな。身体に大きな負担が掛かるだろう?」
デライラはコクリと頷く。あれだけの戦闘力を引き出しておいて相性が悪いのか。本来の性能を引き出したらどれだけ凄い事になるのかな。
「本来なら、こぞ――」
「小僧じゃない。ショーン様と呼べ」
僕を小僧と呼びかけたルークスに、間髪入れずにノワールからダメ出しが入った。別に小僧でも構わないんだけど。
「そうだぞ光の。お前はその娘の眷属になるのだろう? 」
ウチの子たちは意外と上下関係に厳しいみたいだ。アーテルまでもがルークスに小言を入れる。
「む……では、ショーン様、本来ならば貴方こそがその剣を使うにふさわしい魔力を持っているのだが?」
「ははは。僕は剣を使えないよ。あくまでもウィザードだからね」
素直に言い直すルークスに苦笑しながら答える。ただ振り回すだけなら双戟の方がいい。
「ふむ。ではショーン様。この剣をデライラ様の為に少々手を加えてもよろしいか?」
「え? ああ。それは構わないよ。僕としてもそれはデライラに譲ったつもりでいたし」
「では拝借する」
デライラから剣を受け取ったルークスは、鞘から剣を抜くと、その柄の部分を集中的に調べ始めた。
「やはりこれは、闇属性の魔力で使用者の能力を大幅に引き上げる術式が施されている。剣自体を強化する以外に、使用者をも強化するとは中々凝った術式だね。ノワールの封印が解けなければただの剣だっただろうが」
ルークスはそう言いながら柄に向かって手を翳し続けている。手のひらからはポウッと白い光が発せられ、薄暗い洞窟内を明るく照らす。
「これでいいだろう。術式を少々書き換えた。先程までは闇属性のブーストがデライラ様の身体に無理を強いていたが、これからはデライラ様に親和性のある光属性の魔力が優しく手助けする事になる」
そうか。ノワールやアーテルがデライラに対して感じていたのはこの事だったのか。
僕と同じく封印されていた属性に親和性を持った人間。それが彼女だ。ここにサマンサギルド長やイヴァン副ギルド長という第三者がいる以上、いつかは世間に知られる時が来る。
そうなれば、この世界を意図的に歪めた何者かが、または四人の精霊王が僕達に害を成してくる事は想像に難くない。その時に、僕とデライラ、ノワールとルークスが協力し合う関係でいた方が何かと都合がいいって事になるもんね。
そして光の大精霊ルークスの力を得たデライラは、この先とんでもない大物になるかもって事だ。
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