残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
56 / 206
一章

グリフォバーグ城にて

しおりを挟む
 ここはグリフォバーグ城、謁見の間。
 石造りの頑丈そうな壁に囲まれた部屋の中には豪華だけども上品な調度品が置かれ、カーペットやカーテンの生地ひとつとっても一般の市民には一生縁がなさそうな上等なものっぽい。いや、正直僕も目利きじゃないから分からないけど、少なくとも今まで見た事もないような生地だ。
 部屋の中央奥は二段程高くなっていて、玉座とでも言ったらいいのだろうか、豪華な椅子が二つ。侯爵と夫人が座る為のものだろうか。

 部屋の両サイドには衛兵が並び、中々威圧感がある――ように見えるけど、実は冷や汗をダラダラと流しているのは衛兵の方だったりするんだよね。

(こら、ノワール、アーテル。衛兵さん達が怖がっているよ?)

 そう、この二人がかなりの殺気を放出しているんだよね。衛兵さん達に向かって。

(いえ、そもそもこの者達がご主人様を見下した視線を投げかけなければ良かったのです)
(そうだな。この謁見が終わるまで、こやつらには怖い思いをしてもらおう)

 つまり、ありがちな展開だったんだ。入室する前に案内してくれた執事さんとメイド隊に武器を預け、入室した途端に不躾な視線が集まって来たんだ。特に僕にね。
 サマンサギルド長とイヴァン副ギルド長は街のギルドのトップという事で、一定の敬意みたいなものは払われている気がした。あと、デライラとルークスは見た目が麗しいので蔑むような視線はない。どちらかと言えばデライラに対する値踏みするような下卑た視線だったね。
 そして僕に対してはどうか。
 うん、鼻で笑われたね。誰も口に出してはいないけど、『なんだこの冴えないガキは』。『こんなのがゴールドランカーなんて冗談だろう』。そんな視線だったね。
 それに怒った僕の眷属二人が、衛兵さんを威圧しまくっている訳なんだ。

「ノア・グリペン侯爵閣下のお出ましである!」

 衛兵の中でも一番偉そうな、ちょっと年長の男性が声を張り上げた。僕達七人は一列に並び、膝を付き首を垂れる。事前に執事さんと打ち合わせしていた通りだ。
 やがて、部屋の左奥にある扉が開き、数人の男性が入室してきた。

「ご苦労だったな。楽にせよ」

 着席した男性が声を掛けてきた。
 五十代に差し掛かった頃だろうか。白髪交じりの長髪を背中で纏め、カイゼル髭が厳めしい目付きの鋭い男性だ。この方がグリペン侯爵か。
 その右には甲冑姿でバトルアックスを背負った大柄な男性だ。顔の作りは厳ついけど、人好きのする笑顔を浮かべながらこちらを見ている。
 さらに左には長めの顎鬚を蓄えた長身痩躯の男性だ。こちらは武器は申し訳程度の短剣しか持っておらず、手には書類を携えている。表情はなんだろう? 狐っぽい。糸目だからかな?
 その後には近衛兵だろうか。四人程の騎士が並ぶ。

「報告書は読ませてもらった。その上でこちらから質問させてもらおう」
「御意に」

 侯爵の言葉にサマンサギルド長が答えた。基本的にはこのスタイルで行く事になる。

「まず、ダンジョン攻略成功、労わせてもらおう。報酬は期待してよいぞ」

 そう言う侯爵の視線が僕を刺す。口角を僅かに上げたそう表情は、面白いものを見つけた好奇心に満ちているみたい。

「ダンジョンの主を倒しただけではダンジョンの機能は停止せず、ダンジョンコアなるものを破壊せねばならなかったというのは真か」
「は。先に提出致しました、水晶がそれでございます」
「ふむ」

 侯爵は狐顔の男から資料を受け取り、パラパラとめくって確認している。

「それにしてもスタンピードにマンティコアか。お前達はたった七人で、何故生きて帰って来れたのだ?」

 この質問は色々と鋭い。たった一言で全部明かさなければならなくなったような気がする。さて、サマンサギルド長はどう答えるのかな?

「マンティコアはゴールドランカーが束になって掛かっても、犠牲者を出さねば討伐出来ぬ魔物だ。そこをよく考えて返答せよ」

 侯爵がニヤリと笑みを浮かべながらも鋭い目つきでギルド長を見る。
 ああ、これは言い逃れは許さない、そういう意思表示だ。ゴールドランカーのサマンサギルド長ですら、汗を浮かべてしまうほどの重圧を発するとはね。侯爵個人の強さなのか、貴族のオーラみたいなものなのか。

「それは……先代のダンジョンの主が味方に付いたからでございます」
「ほう? 何か言いたい事はあるか? そこの少年」

 あーあ、完全に僕をロックオンしてるね。オーガの素材を売却した件は知られているから、指定された地下五階層より下に潜った事もバレているだろう。

「ゴールドランク冒険者のショーンです」
「うむ、ショーンとやら。直答を許す」
「は。先日、ギルドで行った合同クエストの際、僕とパーティメンバーのノワールは、ダンジョンの最下層まで到達致しました」

 僕の答えに、侯爵は無言ながら目を見開いて驚いていた。そう、たった二人でダンジョンの最奥部に行ったんだからね。

「その最奥の部屋にいたのは一頭のミスティウルフでした」

 僕の答えに侯爵が思わず立ち上がる。左右に控えていた甲冑の男性も狐顔の男性も驚きを隠せないみたい。さらに室内の衛兵達からはどよめきも聞こえる。

「ミスティウルフと言えば、古より生きる伝説の神狼。あのような存在が人間に手を貸すだと?」
「証拠は必要でしょうか?」

 疑われているのは分かるよ。でも何て言うかな……あのニヤけた顔を蒼白にしてやりたい。そんな悪戯心がむくむくと湧き上がってくる。

「アーテル」
「うむ」

 今まで僕達は片膝を付いたまま応対していたが、アーテルがスッと立ち上がった。衛兵が武器を構えていきり立つが、侯爵がそれを諫める。
 それを確認した上で、アーテルの姿がブレ始め、黒い靄に包まれた。やがてその靄が晴れると、そこには僕の背丈よりもまだ高い所に頭がある、巨大な黒狼が姿を現した。

「――!!」

 アーテルは何もしていない。ただ侯爵を見据えているだけだ。でもね、ただそれだけの事がとんでもないプレッシャーになるんだよね。それが神狼っていう生き物なんだ。
 アーテルの視線を浴び続けた侯爵が、思わずといった感じで椅子にへたり込んだ。それを見て我に返ったのか、甲冑の男性がバトルアックスを構えて一歩前に出た。
 さらに、狐顔の男性が表情を厳しくして甲高い声を上げる。

「貴様! 閣下に対して無礼であるぞ!」

 こっちの人はアーテルのプレッシャーを感じていないのかな?
 だけど、そこで侯爵が手で二人を制した。

「よい。抗ってどうにかなる相手でもあるまい。ショーンよ、疑って悪かった。済まぬが、抑えてくれぬか」
「は。アーテル、もう戻っていいよ」
「承知した、主人よ」

 再び靄に包まれたアーテルが人間の姿に戻ると、僕と同じように片膝を付いて敬意を示す。

「あの梟が言っていた事は正しかったか」
 梟だって!?
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...