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一章
僕は『黒』
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「お前達に指名依頼を出す数日前の事だ。私の寝室の窓に一羽の白い梟が現れた」
侯爵は梟について話し始めた。白、という時点で例の神梟だろうけど、内容にはとても興味がある。僕達は侯爵の話に聞き入った。
「その梟は人語を話し、私に言ったのだ。先日ゴールドランクに上がった冒険者に指名依頼を出し、ダンジョンを完全に攻略させろと」
白い梟。その姿で人語を話す。その時点で侯爵は神獣の存在に思い当たったらしい。そう、僕の隣にいる神狼と対を成す存在。
「だが、いかに神梟の言葉とは言え、ゴールドランクに昇格したばかりの単独パーティに依頼を出すにはギャンブルが過ぎると考えた。そこで実力が確かで経験も豊富なギルドのトップ二人にも動いてもらった」
そうなんだ。侯爵も半信半疑だったって事だね。もしかしてダンジョン攻略の件も、必ずしも必要ではなかったのかもしれないね。
「スタンピードの件は済まなかった。まさか間引きをした直後に起こるとは思いも寄らなんだ」
そう言って侯爵が頭を下げた。貴族って、もっと偉そうなものだと思ってたけど、そうでもないのかな?
「しかし、古の神狼が冒険者と共に行動しているのは理解に苦しむが、その力があればダンジョン攻略も容易いという訳だな」
うんうん。侯爵もなんとなく納得しているし、大丈夫そうだ。
「それは否と言わせてもらおう」
え? アーテル? 何で立ち上がって侯爵を睨むの?
「そうですね。見当違いも甚だしいと言わざるを得ません」
ええ!? ノワールまで何言っちゃってくれてんの?
当然侯爵は怪訝な顔をする。
「ダンジョンを攻略したのもスタンピードを鎮めたのも、そこの神狼の力ではないと申すか?」
そんな侯爵に、アーテルが呆れたように溜息をついてから、腰に手を当てながら大きな胸を張って言い放つ。
「我が主人に付き従うのは主人が我より強いからだ」
「そうです。ご主人様は五つの属性を使いこなす偉大なウィザードです」
それに追加するように、ノワールがドヤ顔で言う。こっちはなんか微笑ましい。
「ほう、神狼すら認める偉大なウィザードとな――いや、今五属性と言ったか?」
(ギクッ)
侯爵のツッコミに、僕等は一瞬硬直する。
「ご、ご主人様は魔法の扱いにも長けておりますが、自ら武器を手に取り前線でも戦える戦士でもあるのです!」
さっき口を滑らせたノワールが、冷や汗をかきながら何とか話を逸らそうと頑張っているけどなぁ。
「魔法を使いながら武器を取って戦うか。魔法剣士のようなものか?」
あ、これは侯爵家の開祖がそうだったらしいからね!
侯爵の目が輝いた。これはうまく話を逸らせそう?
「そんな大層なものではございません。魔法の技術が拙い故、無理矢理身体を張って戦っているだけでございます」
僕はそう話して誤魔化した。本当の事を話す訳にも行かない。この侯爵が、四大精霊王達を唆した黒幕と関係がないとは言えない。味方と確信できるならまだしもね。
「して、前線で戦う時は、身体強化か? 武器の強化はエンチャントか? それとも武器そのものがアーティファクトであるか?」
「はい。身体強化を施して戦いますが、それでは武器がもたないのでエンチャントを――あ」
侯爵がまるで流れるように質問を投げかけてくるので、思わず僕もスルスルと答えてしまった。そこで決定的なミスを犯してしまった事に気付く。
「ふふふ……並外れた力を持っていようともまだまだ子供か。腹芸は不得意と見えるな。して、お前は白か? それとも黒か?」
やはり、侯爵は知っている。封じられた光と闇、二つの属性の事を。
「ああ、答える前にしばし待て。人払いをしよう。将軍、衛兵共をみな下がらせろ」
「いえ、しかし――」
「構わん。こやつらの前では領軍を総動員しても無意味だ」
「は! 者共、退室して待機! 聞き耳を立てる者は容赦なく罰する!」
将軍と呼ばれた甲冑の男性が衛兵達を下がらせる。全員が引き払い、謁見の間には僕達七人と、侯爵、そして将軍、あとは狐顔の男性。この十人だけだ。
「世界には四つの属性の精霊が満ち溢れ、人間はその力を享受して栄えてきた」
侯爵はそう切り出した。
「……という常識になっている。だが、我が祖は、四大属性の魔法では説明が付かぬ力を振るっていたという」
例の魔法剣士の話だね。
侯爵の話によれば、そのご先祖様の魔法剣士は、どこぞで手に入れた不思議な剣を持ってから魔法剣士として覚醒したという。
それまではごく普通のソードファイターだったのに、その剣を持った時から突如として動きが変わった。速く、強く。
しかも、その剣からは魔法のようなものも発せられたらしい。時にそれは敵を屠り、己や味方を癒した。
「その剣が原因である事は明らかだろう。しかし、我が祖以外にその剣を使いこなせる者は誰一人としておらなんだ」
ああ、分かる。それは剣に施されたエンチャントだね。それも、光か闇か、失われた属性の魔力にしか反応しないタイプの。
恐らくデライラと同じく四大属性の魔力を持たず、ソードファイターのジョブを得たんだろうね。そして、侯爵の御先祖様の魔力に反応した剣が超常的な力を発揮させた。そんなところじゃないかな。
「閣下、その剣は今は?」
「爵位とこの地を賜った際、時の国王陛下に献上したらしい。王城の宝物庫あたりにあるのではないか?」
そしてそれ以来、侯爵の御先祖様は魔法剣士としての力を発揮する事は無かったという。
「当時から今に至るまで、その剣も祖の力も謎のままだ。だが、お前達は我が祖と同類ではないのか。そう思えてならんのだ」
そうだね。僕もそう思う。そして侯爵の御先祖様似た力を振るうのは、恐らくデライラの方だね。ルークスが言っていた光属性の特徴と一致する。
「僕は、『黒』です」
侯爵を真っ直ぐ見据えてそう答えた。侯爵としてもこの問題はデリケートなだけに、王家にすら口外していない可能性が高い。信用できると思う。
侯爵は梟について話し始めた。白、という時点で例の神梟だろうけど、内容にはとても興味がある。僕達は侯爵の話に聞き入った。
「その梟は人語を話し、私に言ったのだ。先日ゴールドランクに上がった冒険者に指名依頼を出し、ダンジョンを完全に攻略させろと」
白い梟。その姿で人語を話す。その時点で侯爵は神獣の存在に思い当たったらしい。そう、僕の隣にいる神狼と対を成す存在。
「だが、いかに神梟の言葉とは言え、ゴールドランクに昇格したばかりの単独パーティに依頼を出すにはギャンブルが過ぎると考えた。そこで実力が確かで経験も豊富なギルドのトップ二人にも動いてもらった」
そうなんだ。侯爵も半信半疑だったって事だね。もしかしてダンジョン攻略の件も、必ずしも必要ではなかったのかもしれないね。
「スタンピードの件は済まなかった。まさか間引きをした直後に起こるとは思いも寄らなんだ」
そう言って侯爵が頭を下げた。貴族って、もっと偉そうなものだと思ってたけど、そうでもないのかな?
「しかし、古の神狼が冒険者と共に行動しているのは理解に苦しむが、その力があればダンジョン攻略も容易いという訳だな」
うんうん。侯爵もなんとなく納得しているし、大丈夫そうだ。
「それは否と言わせてもらおう」
え? アーテル? 何で立ち上がって侯爵を睨むの?
「そうですね。見当違いも甚だしいと言わざるを得ません」
ええ!? ノワールまで何言っちゃってくれてんの?
当然侯爵は怪訝な顔をする。
「ダンジョンを攻略したのもスタンピードを鎮めたのも、そこの神狼の力ではないと申すか?」
そんな侯爵に、アーテルが呆れたように溜息をついてから、腰に手を当てながら大きな胸を張って言い放つ。
「我が主人に付き従うのは主人が我より強いからだ」
「そうです。ご主人様は五つの属性を使いこなす偉大なウィザードです」
それに追加するように、ノワールがドヤ顔で言う。こっちはなんか微笑ましい。
「ほう、神狼すら認める偉大なウィザードとな――いや、今五属性と言ったか?」
(ギクッ)
侯爵のツッコミに、僕等は一瞬硬直する。
「ご、ご主人様は魔法の扱いにも長けておりますが、自ら武器を手に取り前線でも戦える戦士でもあるのです!」
さっき口を滑らせたノワールが、冷や汗をかきながら何とか話を逸らそうと頑張っているけどなぁ。
「魔法を使いながら武器を取って戦うか。魔法剣士のようなものか?」
あ、これは侯爵家の開祖がそうだったらしいからね!
侯爵の目が輝いた。これはうまく話を逸らせそう?
「そんな大層なものではございません。魔法の技術が拙い故、無理矢理身体を張って戦っているだけでございます」
僕はそう話して誤魔化した。本当の事を話す訳にも行かない。この侯爵が、四大精霊王達を唆した黒幕と関係がないとは言えない。味方と確信できるならまだしもね。
「して、前線で戦う時は、身体強化か? 武器の強化はエンチャントか? それとも武器そのものがアーティファクトであるか?」
「はい。身体強化を施して戦いますが、それでは武器がもたないのでエンチャントを――あ」
侯爵がまるで流れるように質問を投げかけてくるので、思わず僕もスルスルと答えてしまった。そこで決定的なミスを犯してしまった事に気付く。
「ふふふ……並外れた力を持っていようともまだまだ子供か。腹芸は不得意と見えるな。して、お前は白か? それとも黒か?」
やはり、侯爵は知っている。封じられた光と闇、二つの属性の事を。
「ああ、答える前にしばし待て。人払いをしよう。将軍、衛兵共をみな下がらせろ」
「いえ、しかし――」
「構わん。こやつらの前では領軍を総動員しても無意味だ」
「は! 者共、退室して待機! 聞き耳を立てる者は容赦なく罰する!」
将軍と呼ばれた甲冑の男性が衛兵達を下がらせる。全員が引き払い、謁見の間には僕達七人と、侯爵、そして将軍、あとは狐顔の男性。この十人だけだ。
「世界には四つの属性の精霊が満ち溢れ、人間はその力を享受して栄えてきた」
侯爵はそう切り出した。
「……という常識になっている。だが、我が祖は、四大属性の魔法では説明が付かぬ力を振るっていたという」
例の魔法剣士の話だね。
侯爵の話によれば、そのご先祖様の魔法剣士は、どこぞで手に入れた不思議な剣を持ってから魔法剣士として覚醒したという。
それまではごく普通のソードファイターだったのに、その剣を持った時から突如として動きが変わった。速く、強く。
しかも、その剣からは魔法のようなものも発せられたらしい。時にそれは敵を屠り、己や味方を癒した。
「その剣が原因である事は明らかだろう。しかし、我が祖以外にその剣を使いこなせる者は誰一人としておらなんだ」
ああ、分かる。それは剣に施されたエンチャントだね。それも、光か闇か、失われた属性の魔力にしか反応しないタイプの。
恐らくデライラと同じく四大属性の魔力を持たず、ソードファイターのジョブを得たんだろうね。そして、侯爵の御先祖様の魔力に反応した剣が超常的な力を発揮させた。そんなところじゃないかな。
「閣下、その剣は今は?」
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そしてそれ以来、侯爵の御先祖様は魔法剣士としての力を発揮する事は無かったという。
「当時から今に至るまで、その剣も祖の力も謎のままだ。だが、お前達は我が祖と同類ではないのか。そう思えてならんのだ」
そうだね。僕もそう思う。そして侯爵の御先祖様似た力を振るうのは、恐らくデライラの方だね。ルークスが言っていた光属性の特徴と一致する。
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