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一章
ノア・グリペン
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四大属性しかなかった事になっている現代、第五、第六の属性である光と闇が存在する事。これをハッキリと認識しているのは僕一人だと思っていた。
そして、ダンジョンを一緒に攻略したデライラと、ギルド長達。彼等は事実として漸く認識できたという感じだろうか。
しかし、意外な大物がその事に深く関与していた。
「そうか、お前は闇属性の者か。ならば聞くが、なぜお前は闇の力を行使できるのだ? そちらの少女が先程五属性と口を滑らせていたが」
その侯爵が、ノワールに視線を移してそう言い、尚も続けた。
「ある日を境に、この世界から光と闇の精霊が姿を消したと聞く。お前の闇の力は何処から出ずるものか」
僕がウィザードを名乗っている以上、その力の源が精霊によるものなのは言い逃れ出来ない事実だ。そして僕は闇属性の魔力を持つウィザードである事を晒している。
「僕は、とあるきっかけで封印されていた闇の大精霊を解放しました。以降、その力を行使する事ができます」
そう言ってノワールを見る。ノワール自身は表情を変えずに侯爵を見ていた。
「理解できたか? この大精霊ノワールは、主人に助けられた故に主人に忠誠を誓っている。そして我もまた、主人がノワールを解き放ってくれた事で力を取り戻した。ならば、我も主人に忠誠を誓うのが筋であろう?」
さらにアーテルが尊大にそう言い放つ。すでに神狼である事を明かしているため咎められる事はないけど、ヒヤヒヤするなぁ。僕みたいな一般人が、領主様のと直接話す事すら一生に一度もない事だから、内心かなりビビってるのに。
「そうか。それを知った上で私を焚きつけてきたのだな、あの神梟は」
してやられたとでも言いたげな表情で、侯爵は背もたれにぐっと背を預けた。
その時だ。何か強力な力を持った何者かが、この謁見の間の天井から音もなく舞い降りて来た。
それは白銀に輝く美しい羽根を持つ梟だった。やはり羽ばたく音をさせずにそれはルークスの肩に泊まる。
「おお、そんな所におったのか。探しても見つからぬ故に、いずこかへ飛び去ったしまったのかと思ったぞ」
侯爵がその白銀の梟を見てそう語る。あれが古の神梟なんだね。美しく気品があり、神々しさすら感じる。一目見ただけで普通の存在ではない事が分かるね。
「久しいな、神狼よ。それに大精霊達よ」
その梟がしわがれた老人のような声で、でもどこか愛嬌のある軽妙な口ぶりで人間の言葉を話した。
「無事に生きていたようで何よりだな。もう老いぼれてくたばっているのかと思っていたぞ」
そんな憎まれ口を叩きながらも、アーテルは指先で梟の喉元をくりくりと撫でてやる。梟の方は気持ち良さげに目を瞑りながら答えた。
「無事とは言い難いがな。今まで長きに渡り、世界中を飛び回り情報を集め、天敵から身を隠し生きてきたのじゃ。何しろ光の精霊が消えてしまっては、儂は途轍もなく目立つタダの梟じゃからの」
梟は、聞くも涙語るも涙といった感じで、芝居がかった言い回しをする。
野生の動物や魔物だけでなく、その美しい姿は人間からも格好の標的とされたらしい。それでも必死に生き延びてきたのは決して大袈裟な表現じゃないんだろうね。数百年か、数千年か分からないけど、本当に気が遠くなる年月をそうして生き抜いてきたんだから。
「すまんが、しばらくここで霊気を補充させてくれんか。詳しい話はそこの侯爵から聞くがいい」
ダンジョンの奥で引きこもっていたアーテルとは違い、外を飛び回っていた彼(彼女?)は本当に消耗していたのだろう。ルークスの肩に泊ったまま目を閉じ、じっと動かなくなってしまった。
それを見た侯爵が、苦笑しながら説明をしてくれた。見た目は厳めしい感じだけど、意外とフランクな人かもしれないね、この侯爵さん。
そして彼の説明では、過去、四大精霊王達に反乱を促し世界を混乱に陥れようとした者の遺志を継ぐ者達が存在し、あらゆる場所に紛れ込んでいると。
それはどこにでもいる村人から軍人や商人、貴族にすら取り入っており、この世界から争いが絶えぬよう仕向けているらしい。
その黒幕が何者かまでは分からないし、何が目的でそんな事をしているのかも不明だけど、そうした組織や個人が存在しているのは間違いないそうだ。
「実は、私がダンジョンを潰すよう依頼したのもその事と全く無関係ではないのだ」
侯爵が難しい顔でそう言う。
神梟とは別に侯爵独自の情報網で、ある有力貴族の数人にきな臭い動きがあるという事を察した。
「反乱、ですか」
「はっきりとは言えんが、私はそう考えている。今はその貴族の名前は出せん」
サマンサギルド長の質問に侯爵が答えるが、今一つ歯切れが悪い。不確定な事が多すぎるしデリケートな問題だから、名言するのは憚れるんだろうか。
「それでだ、有事には備えておかねばならん。そして装備を整えるには鉄や鉱石が不可欠だ。だが、残念ながら我が領には鉱山はない。そして鉱石を依存しているのがその怪しい貴族という訳だ」
そっか。僕やデライラ、光と闇の精霊とは別の次元の問題があって、どの道あのダンジョンを潰す必要があったって訳なんだね。
「まあ、複雑な事情が絡み合った今回の件だが、お前達が古の神獣や精霊を復活させた功績、そして鉱山の復活。これには最大限の誠意をもって報いよう」
その一言に、僕等は頭を下げて礼を取った。
「創世の女神ルーベラ様の意に沿わぬ輩が跋扈しているならば、それを捨て置く事は出来ぬ。グリペンの名を持つ者としてな」
かつての戦乱で功績を上げた六人の戦士がいた。彼等はそれぞれ爵位と領地を与えられ、現在も二候四伯家とか六功家とか言われている。つまり、二つの侯爵家と四つの伯爵家。その内の一角を占めるのがグリペン侯爵という訳だ。そのような家格だからね。プライドや誇りもあるんだと思うよ。
それに、自分は光の戦士の末裔だと明らかになった訳だしね。
「今宵は宴の場を設けよう。そこで報酬の子細も伝える。ああ、畏まらずともよい。私が私的に開く宴故な。それまで城下でのんびりするがよいぞ」
それだけ言うと、侯爵は退室していった。
どうやら彼は敵ではないようだね。そして神梟という知己も得た。中々濃ゆい謁見だったね。
そして、ダンジョンを一緒に攻略したデライラと、ギルド長達。彼等は事実として漸く認識できたという感じだろうか。
しかし、意外な大物がその事に深く関与していた。
「そうか、お前は闇属性の者か。ならば聞くが、なぜお前は闇の力を行使できるのだ? そちらの少女が先程五属性と口を滑らせていたが」
その侯爵が、ノワールに視線を移してそう言い、尚も続けた。
「ある日を境に、この世界から光と闇の精霊が姿を消したと聞く。お前の闇の力は何処から出ずるものか」
僕がウィザードを名乗っている以上、その力の源が精霊によるものなのは言い逃れ出来ない事実だ。そして僕は闇属性の魔力を持つウィザードである事を晒している。
「僕は、とあるきっかけで封印されていた闇の大精霊を解放しました。以降、その力を行使する事ができます」
そう言ってノワールを見る。ノワール自身は表情を変えずに侯爵を見ていた。
「理解できたか? この大精霊ノワールは、主人に助けられた故に主人に忠誠を誓っている。そして我もまた、主人がノワールを解き放ってくれた事で力を取り戻した。ならば、我も主人に忠誠を誓うのが筋であろう?」
さらにアーテルが尊大にそう言い放つ。すでに神狼である事を明かしているため咎められる事はないけど、ヒヤヒヤするなぁ。僕みたいな一般人が、領主様のと直接話す事すら一生に一度もない事だから、内心かなりビビってるのに。
「そうか。それを知った上で私を焚きつけてきたのだな、あの神梟は」
してやられたとでも言いたげな表情で、侯爵は背もたれにぐっと背を預けた。
その時だ。何か強力な力を持った何者かが、この謁見の間の天井から音もなく舞い降りて来た。
それは白銀に輝く美しい羽根を持つ梟だった。やはり羽ばたく音をさせずにそれはルークスの肩に泊まる。
「おお、そんな所におったのか。探しても見つからぬ故に、いずこかへ飛び去ったしまったのかと思ったぞ」
侯爵がその白銀の梟を見てそう語る。あれが古の神梟なんだね。美しく気品があり、神々しさすら感じる。一目見ただけで普通の存在ではない事が分かるね。
「久しいな、神狼よ。それに大精霊達よ」
その梟がしわがれた老人のような声で、でもどこか愛嬌のある軽妙な口ぶりで人間の言葉を話した。
「無事に生きていたようで何よりだな。もう老いぼれてくたばっているのかと思っていたぞ」
そんな憎まれ口を叩きながらも、アーテルは指先で梟の喉元をくりくりと撫でてやる。梟の方は気持ち良さげに目を瞑りながら答えた。
「無事とは言い難いがな。今まで長きに渡り、世界中を飛び回り情報を集め、天敵から身を隠し生きてきたのじゃ。何しろ光の精霊が消えてしまっては、儂は途轍もなく目立つタダの梟じゃからの」
梟は、聞くも涙語るも涙といった感じで、芝居がかった言い回しをする。
野生の動物や魔物だけでなく、その美しい姿は人間からも格好の標的とされたらしい。それでも必死に生き延びてきたのは決して大袈裟な表現じゃないんだろうね。数百年か、数千年か分からないけど、本当に気が遠くなる年月をそうして生き抜いてきたんだから。
「すまんが、しばらくここで霊気を補充させてくれんか。詳しい話はそこの侯爵から聞くがいい」
ダンジョンの奥で引きこもっていたアーテルとは違い、外を飛び回っていた彼(彼女?)は本当に消耗していたのだろう。ルークスの肩に泊ったまま目を閉じ、じっと動かなくなってしまった。
それを見た侯爵が、苦笑しながら説明をしてくれた。見た目は厳めしい感じだけど、意外とフランクな人かもしれないね、この侯爵さん。
そして彼の説明では、過去、四大精霊王達に反乱を促し世界を混乱に陥れようとした者の遺志を継ぐ者達が存在し、あらゆる場所に紛れ込んでいると。
それはどこにでもいる村人から軍人や商人、貴族にすら取り入っており、この世界から争いが絶えぬよう仕向けているらしい。
その黒幕が何者かまでは分からないし、何が目的でそんな事をしているのかも不明だけど、そうした組織や個人が存在しているのは間違いないそうだ。
「実は、私がダンジョンを潰すよう依頼したのもその事と全く無関係ではないのだ」
侯爵が難しい顔でそう言う。
神梟とは別に侯爵独自の情報網で、ある有力貴族の数人にきな臭い動きがあるという事を察した。
「反乱、ですか」
「はっきりとは言えんが、私はそう考えている。今はその貴族の名前は出せん」
サマンサギルド長の質問に侯爵が答えるが、今一つ歯切れが悪い。不確定な事が多すぎるしデリケートな問題だから、名言するのは憚れるんだろうか。
「それでだ、有事には備えておかねばならん。そして装備を整えるには鉄や鉱石が不可欠だ。だが、残念ながら我が領には鉱山はない。そして鉱石を依存しているのがその怪しい貴族という訳だ」
そっか。僕やデライラ、光と闇の精霊とは別の次元の問題があって、どの道あのダンジョンを潰す必要があったって訳なんだね。
「まあ、複雑な事情が絡み合った今回の件だが、お前達が古の神獣や精霊を復活させた功績、そして鉱山の復活。これには最大限の誠意をもって報いよう」
その一言に、僕等は頭を下げて礼を取った。
「創世の女神ルーベラ様の意に沿わぬ輩が跋扈しているならば、それを捨て置く事は出来ぬ。グリペンの名を持つ者としてな」
かつての戦乱で功績を上げた六人の戦士がいた。彼等はそれぞれ爵位と領地を与えられ、現在も二候四伯家とか六功家とか言われている。つまり、二つの侯爵家と四つの伯爵家。その内の一角を占めるのがグリペン侯爵という訳だ。そのような家格だからね。プライドや誇りもあるんだと思うよ。
それに、自分は光の戦士の末裔だと明らかになった訳だしね。
「今宵は宴の場を設けよう。そこで報酬の子細も伝える。ああ、畏まらずともよい。私が私的に開く宴故な。それまで城下でのんびりするがよいぞ」
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