残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
58 / 206
一章

ノア・グリペン

しおりを挟む
 四大属性しかなかった事になっている現代、第五、第六の属性である光と闇が存在する事。これをハッキリと認識しているのは僕一人だと思っていた。
 そして、ダンジョンを一緒に攻略したデライラと、ギルド長達。彼等は事実として漸く認識できたという感じだろうか。
 しかし、意外な大物がその事に深く関与していた。

「そうか、お前は闇属性の者か。ならば聞くが、なぜお前は闇の力を行使できるのだ? そちらの少女が先程五属性と口を滑らせていたが」

 その侯爵が、ノワールに視線を移してそう言い、尚も続けた。

「ある日を境に、この世界から光と闇の精霊が姿を消したと聞く。お前の闇の力は何処から出ずるものか」

 僕がウィザードを名乗っている以上、その力の源が精霊によるものなのは言い逃れ出来ない事実だ。そして僕は闇属性の魔力を持つウィザードである事を晒している。

「僕は、とあるきっかけで封印されていた闇の大精霊を解放しました。以降、その力を行使する事ができます」

 そう言ってノワールを見る。ノワール自身は表情を変えずに侯爵を見ていた。

「理解できたか? この大精霊ノワールは、主人に助けられた故に主人に忠誠を誓っている。そして我もまた、主人がノワールを解き放ってくれた事で力を取り戻した。ならば、我も主人に忠誠を誓うのが筋であろう?」

 さらにアーテルが尊大にそう言い放つ。すでに神狼である事を明かしているため咎められる事はないけど、ヒヤヒヤするなぁ。僕みたいな一般人が、領主様のと直接話す事すら一生に一度もない事だから、内心かなりビビってるのに。

「そうか。それを知った上で私を焚きつけてきたのだな、あの神梟しんきょうは」

 してやられたとでも言いたげな表情で、侯爵は背もたれにぐっと背を預けた。
 その時だ。何か強力な力を持った何者かが、この謁見の間の天井から音もなく舞い降りて来た。
 それは白銀に輝く美しい羽根を持つ梟だった。やはり羽ばたく音をさせずにそれはルークスの肩に泊まる。

「おお、そんな所におったのか。探しても見つからぬ故に、いずこかへ飛び去ったしまったのかと思ったぞ」

 侯爵がその白銀の梟を見てそう語る。あれが古の神梟なんだね。美しく気品があり、神々しさすら感じる。一目見ただけで普通の存在ではない事が分かるね。

「久しいな、神狼よ。それに大精霊達よ」

 その梟がしわがれた老人のような声で、でもどこか愛嬌のある軽妙な口ぶりで人間の言葉を話した。

「無事に生きていたようで何よりだな。もう老いぼれてくたばっているのかと思っていたぞ」
 
 そんな憎まれ口を叩きながらも、アーテルは指先で梟の喉元をくりくりと撫でてやる。梟の方は気持ち良さげに目を瞑りながら答えた。

「無事とは言い難いがな。今まで長きに渡り、世界中を飛び回り情報を集め、天敵から身を隠し生きてきたのじゃ。何しろ光の精霊が消えてしまっては、儂は途轍もなく目立つタダの梟じゃからの」

 梟は、聞くも涙語るも涙といった感じで、芝居がかった言い回しをする。
 野生の動物や魔物だけでなく、その美しい姿は人間からも格好の標的とされたらしい。それでも必死に生き延びてきたのは決して大袈裟な表現じゃないんだろうね。数百年か、数千年か分からないけど、本当に気が遠くなる年月をそうして生き抜いてきたんだから。

「すまんが、しばらくここで霊気を補充させてくれんか。詳しい話はそこの侯爵から聞くがいい」

 ダンジョンの奥で引きこもっていたアーテルとは違い、外を飛び回っていた彼(彼女?)は本当に消耗していたのだろう。ルークスの肩に泊ったまま目を閉じ、じっと動かなくなってしまった。
 それを見た侯爵が、苦笑しながら説明をしてくれた。見た目は厳めしい感じだけど、意外とフランクな人かもしれないね、この侯爵さん。

 そして彼の説明では、過去、四大精霊王達に反乱を促し世界を混乱に陥れようとした者の遺志を継ぐ者達が存在し、あらゆる場所に紛れ込んでいると。
 それはどこにでもいる村人から軍人や商人、貴族にすら取り入っており、この世界から争いが絶えぬよう仕向けているらしい。
 その黒幕が何者かまでは分からないし、何が目的でそんな事をしているのかも不明だけど、そうした組織や個人が存在しているのは間違いないそうだ。

「実は、私がダンジョンを潰すよう依頼したのもその事と全く無関係ではないのだ」

 侯爵が難しい顔でそう言う。
 神梟とは別に侯爵独自の情報網で、ある有力貴族の数人にきな臭い動きがあるという事を察した。

「反乱、ですか」
「はっきりとは言えんが、私はそう考えている。今はその貴族の名前は出せん」

 サマンサギルド長の質問に侯爵が答えるが、今一つ歯切れが悪い。不確定な事が多すぎるしデリケートな問題だから、名言するのは憚れるんだろうか。

「それでだ、有事には備えておかねばならん。そして装備を整えるには鉄や鉱石が不可欠だ。だが、残念ながら我が領には鉱山はない。そして鉱石を依存しているのがその怪しい貴族という訳だ」

 そっか。僕やデライラ、光と闇の精霊とは別の次元の問題があって、どの道あのダンジョンを潰す必要があったって訳なんだね。

「まあ、複雑な事情が絡み合った今回の件だが、お前達が古の神獣や精霊を復活させた功績、そして鉱山の復活。これには最大限の誠意をもって報いよう」

 その一言に、僕等は頭を下げて礼を取った。

「創世の女神ルーベラ様の意に沿わぬ輩が跋扈しているならば、それを捨て置く事は出来ぬ。グリペンの名を持つ者としてな」

 かつての戦乱で功績を上げた六人の戦士がいた。彼等はそれぞれ爵位と領地を与えられ、現在も二候四伯家とか六功家とか言われている。つまり、二つの侯爵家と四つの伯爵家。その内の一角を占めるのがグリペン侯爵という訳だ。そのような家格だからね。プライドや誇りもあるんだと思うよ。
 それに、自分は光の戦士の末裔だと明らかになった訳だしね。

「今宵は宴の場を設けよう。そこで報酬の子細も伝える。ああ、畏まらずともよい。私が私的に開く宴故な。それまで城下でのんびりするがよいぞ」

 それだけ言うと、侯爵は退室していった。
 どうやら彼は敵ではないようだね。そして神梟という知己も得た。中々濃ゆい謁見だったね。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...