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二章
余裕綽々
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ここ、ボーバーグの冒険者ギルドと、商業ギルドに滞在の連絡と宿泊する宿屋を伝え、マシューさんのおススメ宿へとやってきた。
いつものように高級宿といった感じではなく、いかにも庶民的で肩ひじ張らずに過ごせそうな、いい雰囲気の宿だね。
宿の食事も家庭料理が中心で、美味しくてリーズナブル。健啖家のアーテルはいつものように大量にお代わりを注文していた。調理された人間の食事というものにすっかりハマってしまったみたいだね。
やがて、お腹が膨れたリンちゃんがウトウトと船をこぎ出したので、全員でホールのソファへと移動して話し始めた。マシューさんはデライラ達とは今日が初対面なので、お互いの自己紹介も兼ねて。
そしてマシューさんの身の上話へとシフトしていった。
「リンがどんどん妻に似て来ましてね。妻だけは私の弱音を受け止めて励ましてくれました」
そう話しながら、マシューさんの視線が自分を膝枕にして寝息を立てているリンちゃんに向く。
「だから時々、りんには弱音を吐きたくなる……んですけどね」
そう言ってマシューさんは苦笑する。今、リンちゃんの呼び方が、いつもと違ってすごく優しかった気がするな。
そっか。マシューさんと初めて会った時はリンちゃんに弱みを見せないように気を張っていたように見えたし、僕はそれを凄いと思った。でもそれは、かなり無理をしての事だったのかな。
「大丈夫。リンは強い子」
「そうだな。あの豚に蹴飛ばされた時を見ても、なかなか根性がある」
ノワールとアーテルがリンちゃんを優しい目で見ながらそう言う。
その二人が、その時のシチュエーションを聞きたがっているデライラ達に説明を始めた。マシューさんは恥ずかしそうな顔だけどね。
「なるほどね~。で、あんたはリンちゃんに絆されたってワケね! この、ロリコンめ!」
「なっ!? ちがっ!」
「まあ、分かるわよ。断片的な話を聞いた時は、あのバカ何やってんのよって思ったけど、あたしでも同じ事するわね。例え国を相手に戦って、多くの人を傷付けてもね」
僕をからかっていたデライラが、ふと真面目な表情になって言った。
なんだ。ちゃんと覚悟は出来てたのか。どうやら僕はデライラを見くびっていたみたいだね。
リンちゃん一人のかすり傷と、僕達が戦って傷付く人達。どちらが重要かと問われれば正直答えに詰まる。でもあのブンドルのやり方を見ていれば、多くの人が苦しんでいるのは明らかだ。僕は僕の信じた道を進むさ。
△▼△
部屋割りは、僕とデライラがそれぞれ一部屋。ノワール、アーテル。そしてルークスとグランツが二人でそれぞれ一部屋。マシューさんとリンちゃんで一部屋。もっとも、僕とノワールは影泳ぎがあるから部屋割りなんて意味はないんだけどね。実際、今ここに、影泳ぎでアーテルを連れて来たノワールがいる。
「ご主人様。この宿全体が囲まれていますね。三十人です」
つまり、危機的状況を人知れず伝えに来てくれた訳だ。夜陰に紛れて、宿ごと襲撃して僕達を始末するつもりか。
「夜襲だなんて、僕達に勝てる訳ないのにね」
「全くだ。で、どうするのだ? 主人よ」
うーん、どうしようか。
「全員ぴちゅんするのが手っ取り早いですね」
「なぶり殺しも悪くない」
君達、物騒だね……
「だってご主人様を殺そうとする者ですから」
「だって主人を殺そうとする者だからな」
若干口調は違うものの、二人の台詞が見事にシンクロして笑ってしまう。
――コンコン
その時ノックの音がする。デライラ達だろう。
「どうぞ」
入って来たのはデライラとルークスだ。
「囲まれてるわね。グランツは梟の姿で外を見ているわ」
なるほど。梟は夜目が利くもんね。
「で、どうするの?」
「そうだな……取り敢えず無力化して宿の外にでも晒しておくか」
殺しても構わないんだけど、もし正規兵なら顔見知りもいるだろうし、首謀者が伯爵である事の証明になるからね。冒険者を雇った可能性もあるけど、それなら口を割るはずだ。もっとも、こんな野盗まがいの真似を冒険者がするとも思えないけど。
もしも本物の野盗なら、それはそれでいいさ。官憲なりギルドに引き渡して金一封でも貰っておこう。
最後に、非正規の、暗部的な組織だった場合。これはまあ仕方ない。絶対口を割らないだろうしね。その場合、伯爵の差し金である事が逆にハッキリする訳だし。
「随分簡単に言うわね……ま、あんた達なら出来ちゃうんでしょうけど」
デライラが呆れたように言う。彼女は実際にダンジョンの中で僕等の力を目の当たりにしてるからね。
「デライラ。引き返すなら今の内だ。ここに参加したらもう後戻りは出来ないよ?」
「バカ言わないで。あたしは光の戦士なの! あんな健気な親子をほっとける訳ないでしょ!」
ふふ。そうだよね。権力を背景に悪行三昧の連中を潰して世直しするのも悪くないかな。
いつものように高級宿といった感じではなく、いかにも庶民的で肩ひじ張らずに過ごせそうな、いい雰囲気の宿だね。
宿の食事も家庭料理が中心で、美味しくてリーズナブル。健啖家のアーテルはいつものように大量にお代わりを注文していた。調理された人間の食事というものにすっかりハマってしまったみたいだね。
やがて、お腹が膨れたリンちゃんがウトウトと船をこぎ出したので、全員でホールのソファへと移動して話し始めた。マシューさんはデライラ達とは今日が初対面なので、お互いの自己紹介も兼ねて。
そしてマシューさんの身の上話へとシフトしていった。
「リンがどんどん妻に似て来ましてね。妻だけは私の弱音を受け止めて励ましてくれました」
そう話しながら、マシューさんの視線が自分を膝枕にして寝息を立てているリンちゃんに向く。
「だから時々、りんには弱音を吐きたくなる……んですけどね」
そう言ってマシューさんは苦笑する。今、リンちゃんの呼び方が、いつもと違ってすごく優しかった気がするな。
そっか。マシューさんと初めて会った時はリンちゃんに弱みを見せないように気を張っていたように見えたし、僕はそれを凄いと思った。でもそれは、かなり無理をしての事だったのかな。
「大丈夫。リンは強い子」
「そうだな。あの豚に蹴飛ばされた時を見ても、なかなか根性がある」
ノワールとアーテルがリンちゃんを優しい目で見ながらそう言う。
その二人が、その時のシチュエーションを聞きたがっているデライラ達に説明を始めた。マシューさんは恥ずかしそうな顔だけどね。
「なるほどね~。で、あんたはリンちゃんに絆されたってワケね! この、ロリコンめ!」
「なっ!? ちがっ!」
「まあ、分かるわよ。断片的な話を聞いた時は、あのバカ何やってんのよって思ったけど、あたしでも同じ事するわね。例え国を相手に戦って、多くの人を傷付けてもね」
僕をからかっていたデライラが、ふと真面目な表情になって言った。
なんだ。ちゃんと覚悟は出来てたのか。どうやら僕はデライラを見くびっていたみたいだね。
リンちゃん一人のかすり傷と、僕達が戦って傷付く人達。どちらが重要かと問われれば正直答えに詰まる。でもあのブンドルのやり方を見ていれば、多くの人が苦しんでいるのは明らかだ。僕は僕の信じた道を進むさ。
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部屋割りは、僕とデライラがそれぞれ一部屋。ノワール、アーテル。そしてルークスとグランツが二人でそれぞれ一部屋。マシューさんとリンちゃんで一部屋。もっとも、僕とノワールは影泳ぎがあるから部屋割りなんて意味はないんだけどね。実際、今ここに、影泳ぎでアーテルを連れて来たノワールがいる。
「ご主人様。この宿全体が囲まれていますね。三十人です」
つまり、危機的状況を人知れず伝えに来てくれた訳だ。夜陰に紛れて、宿ごと襲撃して僕達を始末するつもりか。
「夜襲だなんて、僕達に勝てる訳ないのにね」
「全くだ。で、どうするのだ? 主人よ」
うーん、どうしようか。
「全員ぴちゅんするのが手っ取り早いですね」
「なぶり殺しも悪くない」
君達、物騒だね……
「だってご主人様を殺そうとする者ですから」
「だって主人を殺そうとする者だからな」
若干口調は違うものの、二人の台詞が見事にシンクロして笑ってしまう。
――コンコン
その時ノックの音がする。デライラ達だろう。
「どうぞ」
入って来たのはデライラとルークスだ。
「囲まれてるわね。グランツは梟の姿で外を見ているわ」
なるほど。梟は夜目が利くもんね。
「で、どうするの?」
「そうだな……取り敢えず無力化して宿の外にでも晒しておくか」
殺しても構わないんだけど、もし正規兵なら顔見知りもいるだろうし、首謀者が伯爵である事の証明になるからね。冒険者を雇った可能性もあるけど、それなら口を割るはずだ。もっとも、こんな野盗まがいの真似を冒険者がするとも思えないけど。
もしも本物の野盗なら、それはそれでいいさ。官憲なりギルドに引き渡して金一封でも貰っておこう。
最後に、非正規の、暗部的な組織だった場合。これはまあ仕方ない。絶対口を割らないだろうしね。その場合、伯爵の差し金である事が逆にハッキリする訳だし。
「随分簡単に言うわね……ま、あんた達なら出来ちゃうんでしょうけど」
デライラが呆れたように言う。彼女は実際にダンジョンの中で僕等の力を目の当たりにしてるからね。
「デライラ。引き返すなら今の内だ。ここに参加したらもう後戻りは出来ないよ?」
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