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二章
覚悟の違い
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伯爵領の兵達の騎馬が先導する中、僕が乗るマシューさんの馬車はその最後尾に連なる。今日は僕が手綱を握り、御者の真似事だ。ここ数日、マシューさんにお願いして時折代わってもらっているんだ。
僕の左右にはノワール、そしてアーテル。荷台ではマシューさんとリンちゃんが親子水入らずだ。そしてなぜかグランツ。リンちゃんもグランツには懐いていて、まるで孫とお爺ちゃんみたいだ。
「マルセル・ボー伯爵よ」
僕達の馬車と並走する馬上から、僕の問いかけにデライラが答えた。ちなみに、反対側を並走するのはルークスが乗る馬だ。
「グリペン侯爵からは、あまりいい話は聞いてないわね。保身的で、典型的な貴族みたい」
なるほどなぁ。典型的貴族ってもう、僕達平民には理解不能の生き物だよね、きっと。
「ところでショーン。あんたの属性の事は?」
ここで重要な事を聞いてくるあたり、デライラもちょっと抜けているというか。もっと人目に付かないとか声が聞こえないとか、そういう場所を選べばいいのに。
もちろん闇属性の事は明かしていない。僕とデライラがレアな属性の適応者だという事は、侯爵の側近とサマンサギルド長、イヴァン副ギルド長。そして元デライラのパーティメンバーの二人。さらにポーターの二人もいたっけ。
元パーティメンバーに関しては生きている間は出てこられない場所で働かせているって話だし、ポーターの二人もきつく口止めをした上で、密かにギルド長が監視を付けているらしい。
「言う訳ないでしょ」
「ま、そりゃそうよねー」
そう言って満足気に頷いたあと、彼女は馬を寄せて来た。そして小声で言う。
「命の危機に瀕した時は、伝家の宝刀を抜きなさいって侯爵が」
「ふむ」
どうも侯爵は僕達を切り札として取り込みたい思惑があると思ってたんだけど、まずは僕達自身の事を一番に考えていいって事は……
「あたし達の特異性がバレて面倒事になっても、ある程度は後ろ盾になってくれるって事でしょ」
デライラが前を向きながら表情を変えずに言う。なんだろう。別に侯爵の後ろ盾がなくても、その時がくれば覚悟を決める。そんな感じなのかな。
「いくらグリペン侯爵でも、他の五大侯爵家や公爵家、それに王家にはそうそう抗えないだろうから、国を相手にする覚悟が要りそうだね」
僕はそう言って苦笑する。
デライラは果たして覚悟の意味を正しく受け取ってるのかな?
この場合の本当の覚悟とは、大きな力に抗う覚悟や自らの命をかける覚悟じゃない。この国の人間を殺す覚悟だよ、デライラ。
僕は既に一度、デライラすら殺す覚悟をした。自分に徒成す者に手を掛ける事に何の戸惑いもないさ。
かれこれ四時間ほど馬車に揺られただろうか。もう日は沈みかけようという頃に、ポー伯爵の居城が見えて来た。グリペン侯爵領とは違ってそれほど広く無いようで、わずか一日で領都に到着してしまった。
領都の造りも、グリフォバーグとは違ってそれほど重厚な防壁などはなく、木製の柵で囲んである程度のものだった。国境ではない為か、はたまた領内にダンジョンがないからなのか、随分と警戒が緩い感じはするね。
「あれがマルセル・ポー伯爵の居城、ポーバーグ城だよ」
馬車の荷台からマシューさんが教えてくれた。街の中心にある、一際立派な建物。一応城壁に囲まれてはいるけど、軍事要塞という感じじゃないね。豪華な館って感じだ。
そして城を囲むように、この街の重要な施設が建てられてるんだって。各ギルドやお役所、官憲等の施設とかね。
「デライラ、この時間じゃ伯爵にお会い出来るのは明日以降だろう。僕達は宿を取りたい」
「ええ、そうね」
「ケルナーさんに、冒険者ギルドと商業ギルドに寄って行きたい事を伝えてくれるかい?」
「なるほど、分かったわ!」
前方を先導しているケルナーさんに、デライラが馬の脚を早めて近付いていく。やがて先導する馬達が止まり、合わせて馬車も停車させた。すると、すぐにデライラとケルナー隊長がやって来た。
「宿はそちらで自由に決めて構わないが、宿泊場所は官憲か軍の詰め所に伝えて置いてくれ。そうすれば明日にでもこちらから日程を伝えに行こう」
「分かりました。ただし、あまり待たされるようだと……」
「分かっている。グリペン侯爵の顔も立たないだろうからな。なるべく急ぐよう伝えておこう」
ケルナーさんとそんなやり取りをして、先導の騎兵たちは僕達から離れて行った。
「マシューさん、ギルドと、それから宿への案内、お願いしますね」
「お任せ下さい!」
こうして波乱の一日は幕を閉じようとしていた。
僕の左右にはノワール、そしてアーテル。荷台ではマシューさんとリンちゃんが親子水入らずだ。そしてなぜかグランツ。リンちゃんもグランツには懐いていて、まるで孫とお爺ちゃんみたいだ。
「マルセル・ボー伯爵よ」
僕達の馬車と並走する馬上から、僕の問いかけにデライラが答えた。ちなみに、反対側を並走するのはルークスが乗る馬だ。
「グリペン侯爵からは、あまりいい話は聞いてないわね。保身的で、典型的な貴族みたい」
なるほどなぁ。典型的貴族ってもう、僕達平民には理解不能の生き物だよね、きっと。
「ところでショーン。あんたの属性の事は?」
ここで重要な事を聞いてくるあたり、デライラもちょっと抜けているというか。もっと人目に付かないとか声が聞こえないとか、そういう場所を選べばいいのに。
もちろん闇属性の事は明かしていない。僕とデライラがレアな属性の適応者だという事は、侯爵の側近とサマンサギルド長、イヴァン副ギルド長。そして元デライラのパーティメンバーの二人。さらにポーターの二人もいたっけ。
元パーティメンバーに関しては生きている間は出てこられない場所で働かせているって話だし、ポーターの二人もきつく口止めをした上で、密かにギルド長が監視を付けているらしい。
「言う訳ないでしょ」
「ま、そりゃそうよねー」
そう言って満足気に頷いたあと、彼女は馬を寄せて来た。そして小声で言う。
「命の危機に瀕した時は、伝家の宝刀を抜きなさいって侯爵が」
「ふむ」
どうも侯爵は僕達を切り札として取り込みたい思惑があると思ってたんだけど、まずは僕達自身の事を一番に考えていいって事は……
「あたし達の特異性がバレて面倒事になっても、ある程度は後ろ盾になってくれるって事でしょ」
デライラが前を向きながら表情を変えずに言う。なんだろう。別に侯爵の後ろ盾がなくても、その時がくれば覚悟を決める。そんな感じなのかな。
「いくらグリペン侯爵でも、他の五大侯爵家や公爵家、それに王家にはそうそう抗えないだろうから、国を相手にする覚悟が要りそうだね」
僕はそう言って苦笑する。
デライラは果たして覚悟の意味を正しく受け取ってるのかな?
この場合の本当の覚悟とは、大きな力に抗う覚悟や自らの命をかける覚悟じゃない。この国の人間を殺す覚悟だよ、デライラ。
僕は既に一度、デライラすら殺す覚悟をした。自分に徒成す者に手を掛ける事に何の戸惑いもないさ。
かれこれ四時間ほど馬車に揺られただろうか。もう日は沈みかけようという頃に、ポー伯爵の居城が見えて来た。グリペン侯爵領とは違ってそれほど広く無いようで、わずか一日で領都に到着してしまった。
領都の造りも、グリフォバーグとは違ってそれほど重厚な防壁などはなく、木製の柵で囲んである程度のものだった。国境ではない為か、はたまた領内にダンジョンがないからなのか、随分と警戒が緩い感じはするね。
「あれがマルセル・ポー伯爵の居城、ポーバーグ城だよ」
馬車の荷台からマシューさんが教えてくれた。街の中心にある、一際立派な建物。一応城壁に囲まれてはいるけど、軍事要塞という感じじゃないね。豪華な館って感じだ。
そして城を囲むように、この街の重要な施設が建てられてるんだって。各ギルドやお役所、官憲等の施設とかね。
「デライラ、この時間じゃ伯爵にお会い出来るのは明日以降だろう。僕達は宿を取りたい」
「ええ、そうね」
「ケルナーさんに、冒険者ギルドと商業ギルドに寄って行きたい事を伝えてくれるかい?」
「なるほど、分かったわ!」
前方を先導しているケルナーさんに、デライラが馬の脚を早めて近付いていく。やがて先導する馬達が止まり、合わせて馬車も停車させた。すると、すぐにデライラとケルナー隊長がやって来た。
「宿はそちらで自由に決めて構わないが、宿泊場所は官憲か軍の詰め所に伝えて置いてくれ。そうすれば明日にでもこちらから日程を伝えに行こう」
「分かりました。ただし、あまり待たされるようだと……」
「分かっている。グリペン侯爵の顔も立たないだろうからな。なるべく急ぐよう伝えておこう」
ケルナーさんとそんなやり取りをして、先導の騎兵たちは僕達から離れて行った。
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「お任せ下さい!」
こうして波乱の一日は幕を閉じようとしていた。
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