残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
69 / 206
二章

覚悟の違い

しおりを挟む
 伯爵領の兵達の騎馬が先導する中、僕が乗るマシューさんの馬車はその最後尾に連なる。今日は僕が手綱を握り、御者の真似事だ。ここ数日、マシューさんにお願いして時折代わってもらっているんだ。
 僕の左右にはノワール、そしてアーテル。荷台ではマシューさんとリンちゃんが親子水入らずだ。そしてなぜかグランツ。リンちゃんもグランツには懐いていて、まるで孫とお爺ちゃんみたいだ。

「マルセル・ボー伯爵よ」

 僕達の馬車と並走する馬上から、僕の問いかけにデライラが答えた。ちなみに、反対側を並走するのはルークスが乗る馬だ。

「グリペン侯爵からは、あまりいい話は聞いてないわね。保身的で、典型的な貴族みたい」

 なるほどなぁ。典型的貴族ってもう、僕達平民には理解不能の生き物だよね、きっと。

「ところでショーン。あんたの属性の事は?」

 ここで重要な事を聞いてくるあたり、デライラもちょっと抜けているというか。もっと人目に付かないとか声が聞こえないとか、そういう場所を選べばいいのに。
 もちろん闇属性の事は明かしていない。僕とデライラがレアな属性の適応者だという事は、侯爵の側近とサマンサギルド長、イヴァン副ギルド長。そして元デライラのパーティメンバーの二人。さらにポーターの二人もいたっけ。
 元パーティメンバーに関しては生きている間は出てこられない場所で働かせているって話だし、ポーターの二人もきつく口止めをした上で、密かにギルド長が監視を付けているらしい。

「言う訳ないでしょ」
「ま、そりゃそうよねー」

 そう言って満足気に頷いたあと、彼女は馬を寄せて来た。そして小声で言う。

「命の危機に瀕した時は、伝家の宝刀を抜きなさいって侯爵が」
「ふむ」

 どうも侯爵は僕達を切り札として取り込みたい思惑があると思ってたんだけど、まずは僕達自身の事を一番に考えていいって事は……

「あたし達の特異性がバレて面倒事になっても、ある程度は後ろ盾になってくれるって事でしょ」

 デライラが前を向きながら表情を変えずに言う。なんだろう。別に侯爵の後ろ盾がなくても、その時がくれば覚悟を決める。そんな感じなのかな。

「いくらグリペン侯爵でも、他の五大侯爵家や公爵家、それに王家にはそうそう抗えないだろうから、国を相手にする覚悟が要りそうだね」

 僕はそう言って苦笑する。
 デライラは果たして覚悟の意味を正しく受け取ってるのかな?
この場合の本当の覚悟とは、大きな力に抗う覚悟や自らの命をかける覚悟じゃない。この国の人間を殺す覚悟だよ、デライラ。
 僕は既に一度、デライラすら殺す覚悟をした。自分に徒成す者に手を掛ける事に何の戸惑いもないさ。

 かれこれ四時間ほど馬車に揺られただろうか。もう日は沈みかけようという頃に、ポー伯爵の居城が見えて来た。グリペン侯爵領とは違ってそれほど広く無いようで、わずか一日で領都に到着してしまった。
 領都の造りも、グリフォバーグとは違ってそれほど重厚な防壁などはなく、木製の柵で囲んである程度のものだった。国境ではない為か、はたまた領内にダンジョンがないからなのか、随分と警戒が緩い感じはするね。

「あれがマルセル・ポー伯爵の居城、ポーバーグ城だよ」

 馬車の荷台からマシューさんが教えてくれた。街の中心にある、一際立派な建物。一応城壁に囲まれてはいるけど、軍事要塞という感じじゃないね。豪華な館って感じだ。
 そして城を囲むように、この街の重要な施設が建てられてるんだって。各ギルドやお役所、官憲等の施設とかね。

「デライラ、この時間じゃ伯爵にお会い出来るのは明日以降だろう。僕達は宿を取りたい」
「ええ、そうね」
「ケルナーさんに、冒険者ギルドと商業ギルドに寄って行きたい事を伝えてくれるかい?」
「なるほど、分かったわ!」

 前方を先導しているケルナーさんに、デライラが馬の脚を早めて近付いていく。やがて先導する馬達が止まり、合わせて馬車も停車させた。すると、すぐにデライラとケルナー隊長がやって来た。

「宿はそちらで自由に決めて構わないが、宿泊場所は官憲か軍の詰め所に伝えて置いてくれ。そうすれば明日にでもこちらから日程を伝えに行こう」
「分かりました。ただし、あまり待たされるようだと……」
「分かっている。グリペン侯爵の顔も立たないだろうからな。なるべく急ぐよう伝えておこう」

 ケルナーさんとそんなやり取りをして、先導の騎兵たちは僕達から離れて行った。

「マシューさん、ギルドと、それから宿への案内、お願いしますね」
「お任せ下さい!」

 こうして波乱の一日は幕を閉じようとしていた。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...