残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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二章

オストバーグ

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 オスト領の騎兵に案内され、馬車で揺られながら窓の外を眺める。長閑な風景もが見え始めると様相が一変する。
 他の都市の造りに詳しい訳ではないけど、流石にここは一目で異様だと分かる。普通は、街道からほど近い場所、且つ防衛面も考慮した地形に城や館を作り、そこが街として発展したのが領主達が拠点としている場所だ。
 もしくは、拠点として作られた施設が街となり、そこを通るように街道が整備されたとか。とにかく、街道は主要な街の
 だけどここ、オストバーグは発想が全く違う。

「凄いですね。街道が街の中を突っ切っているんですか」

 僕は思わず口に出してしまっていた。オストバーグの街が街道を中心に発展していった、とでも言えばいいのかな。街道を動物の背骨に例えれば、街の主要な道路は背骨から派生したあばら骨とでも言ったらいいだろうか。
 地形的には特に防衛に適した場所という訳ではない。平地、水源となっている川。小高い丘。その丘の上には領主であるオスト公の館。城という感じではなく、本当に館だね。

「このオストバーグ自体が、王都への敵を足止めする砦のような発想で造られたのさ」
「では、王都の四方にある四公家の街はこのような?」
「ああ、大体似た感じだな」

 僕の独り言に答えてくれたのはタッカーさんだ。確かに市街地は半月状に区画され、その外周は全て防壁で囲まれており、街の外見は見るからに物々しい。恐らく街の入り口はこの街道しかないのだろう。その街道も、重厚な街門があり、夜間は閉鎖されるそうだ。

「四公家の領地も丸々含めて、王都の要塞……そんな感じの発想なんですね」
「そうだな。小国なら丸々一つ入ってしまいそうな、巨大な要塞さ」

 街門で案内の騎兵が何事か衛兵とやり取りしている間、僕とタッカーさんはそんな会話をしていた。
やがて馬車が街道を左に折れると、人々の暮らしがつぶさに見えてくる。どうやら街道を挟んで向こう側は平民達の居住区、こちら側は貴族や軍人の居住区や産業区域になっているみたいだ。
 今馬車は商業区と思われるところを走っている。しっかりとした大店おおだなや小規模の商店、あるいは露店。職人が工房を構えているのも見て取れる。そこを多くの人々が行き来しており、グリフォバーグよりも栄えている印象だね。

「ご主人様、ここは人々の活気があります」
「そうだな! 何か美味い物をたくさん買い込んで行こう!」

 そんな街の様子を見たノワールが微笑まし気に言えば、アーテルは早くも食欲を全開にしている。

「人々の表情を見れば、オスト公は悪い領主という訳ではなさそうですね」
「まあ、な。領民の事を考えるいい領主だよ。ただ、頭が固くて融通が利かねえだけだ」

 幼い頃の仕打ちが余程恨めしいのか、タッカーさんがつまらなそうに言う。そこに付け足すようにケルナーさんが口を開いた。

「このオストバーグにはスラムがないんだ。珍しいだろ?」

 それは確かに珍しい。どんな大きな街でも社会の仕組みからドロップアウトした連中が集まって、スラムを形成していく。

「それは何故なんです?」
「公爵の性格さ」

 ケルナーさんの話によれば、オスト公爵はスラム発生となる要因を徹底的に排除しようとした。雇用や医療、衣食住といったところの充実のみならず、犯罪を厳しく取り締まった。ある種苛烈とも言える手段を取ったらしい。

「特に犯罪に対しては無慈悲と言っていい。おかげでこの街の治安は素晴らしい。他の領と比べれば税は重いが、それを補って余りある平穏があるから民から不平が出る事もない」

 そんなケルナーさんの言葉に続いて、タッカーさんも口を開く。

「で、その重い税の使い道が治安維持と福利厚生ってやつだ。なので公爵自身は質素な暮らしをしてるらしいぜ?」

 なるほど、為政者としてはかなり優秀みたいだ。さらに、風の加護を持つオスト家の当主か。同じウィザードとして興味はあるよね。
 会ってみたい気がするけど、僕みたいな冒険者が公爵と直接面会なんて出来る訳ないか。

「ご主人様。それはふらぐというものです」

 あっ……
 ノワール、心の声を読まないで。
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