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二章
ご対面
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やがて馬車は市街地を抜け、高級住宅街とも言えそうな区域に入った。ここがこの街の支配者層が集まっている所か。
でも、確かに土地が広かったり建物が立派だったりするけど、贅沢をしているっていう感じはしない。こういうところにもオスト公の意向が反映されてるのかもね。
「気付いたか? 派手さはないが質素という訳でもない。公爵自身は質素倹約を旨としているらしいが、それを部下や領民に強制している訳じゃないんだ。家臣達が自主的にあの爺さんに目を付けられないギリギリの線を見極めて、こうなったって感じだな」
ふうん? 自分には厳しいけど他人にはそうでもないのかな? むしろ罪人に対する苛烈な仕置きも領民を思っての事であり、自分を殺して厳しく当たっている。ただそれが、家臣や領民達には恐ろしい領主として写ってしまっている。そんな印象を受けてしまった。
うーん。ちょっと好意的に見すぎだろうか。
「おいショーン。あの爺いを善人だとか思うんじゃねえぞ? あれはガキの俺にあんな! あんな!!」
「ちょっ、落ち着いて下さい! タッカー様!? タッカー様!?」
昔のトラウマを抉られたのか、タッカーさんが青筋を浮かべて怒り出した。それをケルナーさんが必死に宥める。
「お静かにして下さい。馬車が揺れてはご主人様が不快な思いをしてしまいます」
「「あ、ハイ」」
それを見ていたノワールが、絶対零度の視線で射抜きながら静かに語る。怖い。ホントに怖い。タッカーさんもケルナーさんも、借りて来た猫のようにおとなしくなった。
「おい、お前んトコのメンバー、ホントにおっかねえな……」
ケルナーさんが耳打ちしてくる。
「僕には甘々ですけどね。でも怒らせたら僕でも手に負えないかも知れないので、気を付けて下さいね?」
「お、おう」
ケルナーさんは、僕達を拘束した役人の部下がどうなったか、その目で見ている。僕が頬ゲタを砕いた相手に、さらに追撃のスタンピングを延々と繰り出してたっけ。その容赦のなさは、うん。怖いよね。
そんな楽しい雰囲気の馬車は緩いカーブの九十九折の坂道を登っていき、やがて頂上にある館に到着した。
館の四方は人間の背より幾分高い塀に囲まれているが、逆に言えば館を守るのはその塀だけのシンプルなものだ。国の中でも上から数えた方が早いくらいの偉い人が住んでいるとは思えないな。
門の前で停まると、案内の隊長さんが下馬してから馬車に寄ってきた。
「これより敷地内は徒歩にてお願いいたします。護衛の皆さんと馬車の方はこちらでお預かりしますのでご安心を」
その言葉が安心できるかどうかは別として、やっぱり敷地内を馬や馬車で徘徊するのはよろしくないんだろうね。ここは従うしかないだろう。
馬車から降りると、護衛兵達に混じってデライラ、ルークス、グランツも僕等に合流してきた。
タッカーさんを前列に、その隣が隊長のケルナーさん。その後ろに僕達ダークネスとデライラ達。さらにその両翼に護衛兵達が並ぶ。
って、なんだこの位置関係は。護衛の戦士団が僕達を上官扱いしている感が凄い。
「それでは参りましょう」
案内の隊長さんが先導し、僕達は二列縦隊になってそれに従う。出迎えの他の兵達は馬車や馬の片付けに向かったみたいだ。
緑の芝生を引き裂くように敷かれた石畳の通路を進み、屋敷の扉へと向かう。そこでは家令さんらしき紳士が待っていた。
「お待ちしておりました。どうぞお入り下さい」
その紳士が扉を開いて招き入れる。中には二人のメイドさんが控えている。その二人のうち、一人が護衛の兵士達に声を掛けた。
「護衛の皆様は、別室でお控え下さいませ」
その声に従って、戦士団のみんなや僕達が付いて行こうとするが。
「タッカー様、ケルナー様、並びにショーン様とデライラ様はこちらに。公爵がお待ちです」
もう一人のメイドさんが引き止めるように言った。というか、僕とデライラも?
(ご主人様、心配無用です。私が影からお守りします)
ノワールが脳内に話しかけてきた。おそらくデライラにも聞こえていたのだろう。彼女と顔を見合わせると、互いに頷き合った。
取り敢えずパーティメンバーと別れ、僕とデライラはタッカーさん、そしてケルナーに従いメイドさんの後ろを付いて行く。
上品なブルーを基調としたカーペットが敷かれた階段を上り、二階のある一室の前。メイドさんが扉をノックすると、中から『どうぞ』と声がかかる。
てっきりオスト公の老人っぽい声が返ってくると考えていたのに、予想に反して声は若々しい。
メイドさんが扉を開き、僕達に入るよう促す。そして部屋の中に見えたのは、四人の人物の姿。
「よく来てくれた。オスト家当主のトロンべ・オストだ」
はじめに挨拶したのは、車椅子に乗った、グレー頭髪とグレーの口髭をたたえた老人だった。この人がオスト公爵か。大きな魔力を内包しているのが分かる。
車椅子に乗ってはいるけど、弱々しい感じは全くない。目付きも鋭く、覇気が溢れている感じすらある。
続いて、その車椅子を押している人物が口を開いた。
「僕はトロンべおじい様の孫で、ヴィルベルヴィントだ。一応オスト家の跡取りとなっている。よろしく頼むよ」
さっきの室内からの返事は恐らくこの人のものだろう。歳の頃はタッカーさんと同じくらいだろうか。高く見積もっても二十代半ばくらいだ。オスト公と同じグレーの髪をナチュラルに流し、グリーンの瞳が印象的なイケメンだね。彼からも大きな魔力を感じる。流石は四公家の跡取りって訳か。
そして二人の両脇には一歩下がった位置に、護衛と思しき男が二人。
公爵家の方の自己紹介が終わり、ずっと首を垂れたままの僕達を代表して、タッカーさんがそれに答えた。
「本日はお招きいただきありがとうございます。私は現在ポー伯爵家の臨時代表を務めております、タッカー・ポーと申します。公爵閣下にはご機嫌麗しゅう――麗しゅう? はぁ!?」
自分の名前を名乗った所で頭を上げたらしいタッカーさんが、何かに驚いて言葉を止めた。
でも、確かに土地が広かったり建物が立派だったりするけど、贅沢をしているっていう感じはしない。こういうところにもオスト公の意向が反映されてるのかもね。
「気付いたか? 派手さはないが質素という訳でもない。公爵自身は質素倹約を旨としているらしいが、それを部下や領民に強制している訳じゃないんだ。家臣達が自主的にあの爺さんに目を付けられないギリギリの線を見極めて、こうなったって感じだな」
ふうん? 自分には厳しいけど他人にはそうでもないのかな? むしろ罪人に対する苛烈な仕置きも領民を思っての事であり、自分を殺して厳しく当たっている。ただそれが、家臣や領民達には恐ろしい領主として写ってしまっている。そんな印象を受けてしまった。
うーん。ちょっと好意的に見すぎだろうか。
「おいショーン。あの爺いを善人だとか思うんじゃねえぞ? あれはガキの俺にあんな! あんな!!」
「ちょっ、落ち着いて下さい! タッカー様!? タッカー様!?」
昔のトラウマを抉られたのか、タッカーさんが青筋を浮かべて怒り出した。それをケルナーさんが必死に宥める。
「お静かにして下さい。馬車が揺れてはご主人様が不快な思いをしてしまいます」
「「あ、ハイ」」
それを見ていたノワールが、絶対零度の視線で射抜きながら静かに語る。怖い。ホントに怖い。タッカーさんもケルナーさんも、借りて来た猫のようにおとなしくなった。
「おい、お前んトコのメンバー、ホントにおっかねえな……」
ケルナーさんが耳打ちしてくる。
「僕には甘々ですけどね。でも怒らせたら僕でも手に負えないかも知れないので、気を付けて下さいね?」
「お、おう」
ケルナーさんは、僕達を拘束した役人の部下がどうなったか、その目で見ている。僕が頬ゲタを砕いた相手に、さらに追撃のスタンピングを延々と繰り出してたっけ。その容赦のなさは、うん。怖いよね。
そんな楽しい雰囲気の馬車は緩いカーブの九十九折の坂道を登っていき、やがて頂上にある館に到着した。
館の四方は人間の背より幾分高い塀に囲まれているが、逆に言えば館を守るのはその塀だけのシンプルなものだ。国の中でも上から数えた方が早いくらいの偉い人が住んでいるとは思えないな。
門の前で停まると、案内の隊長さんが下馬してから馬車に寄ってきた。
「これより敷地内は徒歩にてお願いいたします。護衛の皆さんと馬車の方はこちらでお預かりしますのでご安心を」
その言葉が安心できるかどうかは別として、やっぱり敷地内を馬や馬車で徘徊するのはよろしくないんだろうね。ここは従うしかないだろう。
馬車から降りると、護衛兵達に混じってデライラ、ルークス、グランツも僕等に合流してきた。
タッカーさんを前列に、その隣が隊長のケルナーさん。その後ろに僕達ダークネスとデライラ達。さらにその両翼に護衛兵達が並ぶ。
って、なんだこの位置関係は。護衛の戦士団が僕達を上官扱いしている感が凄い。
「それでは参りましょう」
案内の隊長さんが先導し、僕達は二列縦隊になってそれに従う。出迎えの他の兵達は馬車や馬の片付けに向かったみたいだ。
緑の芝生を引き裂くように敷かれた石畳の通路を進み、屋敷の扉へと向かう。そこでは家令さんらしき紳士が待っていた。
「お待ちしておりました。どうぞお入り下さい」
その紳士が扉を開いて招き入れる。中には二人のメイドさんが控えている。その二人のうち、一人が護衛の兵士達に声を掛けた。
「護衛の皆様は、別室でお控え下さいませ」
その声に従って、戦士団のみんなや僕達が付いて行こうとするが。
「タッカー様、ケルナー様、並びにショーン様とデライラ様はこちらに。公爵がお待ちです」
もう一人のメイドさんが引き止めるように言った。というか、僕とデライラも?
(ご主人様、心配無用です。私が影からお守りします)
ノワールが脳内に話しかけてきた。おそらくデライラにも聞こえていたのだろう。彼女と顔を見合わせると、互いに頷き合った。
取り敢えずパーティメンバーと別れ、僕とデライラはタッカーさん、そしてケルナーに従いメイドさんの後ろを付いて行く。
上品なブルーを基調としたカーペットが敷かれた階段を上り、二階のある一室の前。メイドさんが扉をノックすると、中から『どうぞ』と声がかかる。
てっきりオスト公の老人っぽい声が返ってくると考えていたのに、予想に反して声は若々しい。
メイドさんが扉を開き、僕達に入るよう促す。そして部屋の中に見えたのは、四人の人物の姿。
「よく来てくれた。オスト家当主のトロンべ・オストだ」
はじめに挨拶したのは、車椅子に乗った、グレー頭髪とグレーの口髭をたたえた老人だった。この人がオスト公爵か。大きな魔力を内包しているのが分かる。
車椅子に乗ってはいるけど、弱々しい感じは全くない。目付きも鋭く、覇気が溢れている感じすらある。
続いて、その車椅子を押している人物が口を開いた。
「僕はトロンべおじい様の孫で、ヴィルベルヴィントだ。一応オスト家の跡取りとなっている。よろしく頼むよ」
さっきの室内からの返事は恐らくこの人のものだろう。歳の頃はタッカーさんと同じくらいだろうか。高く見積もっても二十代半ばくらいだ。オスト公と同じグレーの髪をナチュラルに流し、グリーンの瞳が印象的なイケメンだね。彼からも大きな魔力を感じる。流石は四公家の跡取りって訳か。
そして二人の両脇には一歩下がった位置に、護衛と思しき男が二人。
公爵家の方の自己紹介が終わり、ずっと首を垂れたままの僕達を代表して、タッカーさんがそれに答えた。
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