残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
90 / 206
二章

公爵家の夜

しおりを挟む
 立食パーティー形式の晩餐会は何事もなく終わり、僕達は割り振られた部屋で休んでいた。そして誰もが寝静まった深夜。

(ご主人様。公爵が動き出しました。いえ、正確にはヴィルベルヴィントと武装した兵ですね)

 眠りを必要としないノワールが、僕の意識の中に語り掛けてくる。そうか。なら、三人で影に潜りながら待つとしようか。

(承知いたしました)

 僕達三人は影泳ぎの応用で影に潜み、ヴィルベルヴィント御一行様が部屋に踏み込んで来るのを待つ。

(ちょっと、あんたの部屋の前で、若様が兵を連れて踏み込むとこよ?)

 そんな時、デライラの方も動きを察知したらしく、頭の中に話しかけてきた。グランツあたりが監視してたんだろうね。

(ああ、分かってる。少しばかり、脅かしてやろうかと思ってね。大丈夫だから寝てていいよ?)
(そう? あんたがそう言うならそうなんでしょうね。それじゃ、健闘を祈るわ。おやすみ)
(ああ、おやすみ)

 デライラの謎の信頼の厚さに苦笑しながら、僕達は襲撃を待つ。
 やがて、静かに扉が開かれ、ヴィルベルヴィント様に先立って六人の兵が入って来た。僕と、ノワール、アーテルのベッドにそれぞれ二人。皆剣を抜いている。

「若様! いません!」
「なんだと!?」

 あ、今叫んだのは僕達一行を出迎えに来た隊長さんだね。なるほどなぁ。

「こんな夜更けに何の御用ですか? 武器まで抜いて物騒ですね?」
「なっ!?」

 影泳ぎで音もなく彼等の背後に回り込み、静かに姿を現した僕達に、ヴィルベルヴィント様――もう呼び捨てでいいか。ヴィルベルヴィントは驚いて振り返った。
 寝込みを襲うという絶対有利な状況を覆され、更には室内に誘い込まれて逃げ場を無くしたのは自分の方だという現実を受け入れたのか、彼は苦い顔をする。

「この状況は……まさか、暗殺とかしようと思っちゃいました?」
「……やれ。奴らは丸腰だ」

 ヴィルベルヴィントは僕の問いに行動で答えた。問答無用で殺せと。端正な顔にこれと言って表情の変化はなく、僕達を始末する事に特別感情を動かされる事がないらしい。
 ――残念だ。

「ノワール、アーテル」

 僕が一声掛けると、彼女達はまるで黒い疾風のようにヴィルベルヴィントの両脇を駆け抜けた。

「なっ……」

 そのあまりのスピードは彼に反応する事すら許さず、駆け抜けた際の風圧は彼の髪を靡かせた。

「丸腰が僕等の弱みになるとでも思いましたか?」

 僕がそう一言口にした時には、彼女達は既に三人ずつ、計六人の兵を倒していた。それぞれ殴り倒され、蹴り倒されたのだろう。全員泡を吹いているが、まだ死んではないようだね。

「くっ!」

 往生際が悪いなあ。
 ヴィルベルヴィントは右手を上に翳し、魔力を集め始めた。中々の魔力量をつぎ込んでいるみたいだけど。

「そうやって、っていうアクションを取る事自体がウィザードとして未熟なんですよ」

 僕は身体強化で瞬時にヴィルベルヴィントの懐に入り、影収納から出した短双戟の刃を首筋に突き付けた。彼の首筋から一筋の血が流れ落ちる。

「抵抗するならこのまま殺します。場合によっては公爵家丸ごと潰します」

(ご主人様、オスト公爵がこちらに向かって来ております)

 館の中の動きを把握しているノワールが、頭の中に話しかけてきた。さてと、オスト公はこの件には噛んでいるのかな?
暫くすると、メイドに車椅子を押されたオスト公が現れた。

「館の中で精霊が騒いでいるかと思えば、これは何の騒ぎだ?」

 僕達の部屋の外、廊下の部分で車椅子を止めたオスト公が僕の背後から話しかけてきた。何の騒ぎも何も、見ての通りなんだけどなあ。

「夜陰に紛れて僕達の部屋に入り込み、襲撃してきたを制圧していた所ですよ」
「賊だと? それは我が孫のヴィルベルヴィントだぞ!」
「この人が何者かなんて関係ないでしょう? 僕達は襲われました。そして襲われたからには反撃します。オスト公、あなたも僕の敵ですか?」

 僕は身体から魔力を溢れ出させた。勿論、闇属性の魔力だ。流石のオスト公も、今まで感じた事のない精霊の力に冷や汗を流している事だろうね。

「ま、待て! お祖父《じい》様は関係ない! 私の独断でした事だ!」

 ここでヴィルベルヴィントが吐いた。

「……話せ。全てだ」

 据わった視線でオスト公が声を出した。まるで腹に直接響いてくるような、昏い声だった。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...