残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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三章

冒険者ギルド本部

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 ギルド本部の扉を開き、一歩足を踏み入れてみると、そこは今まで見てきたギルドの中とは全く違う雰囲気だった。
 まず、冒険者がたむろしているような荒々しい空気がまったくない。一応受付カウンターに受付担当はいるものの、依頼表を貼ってある掲示板などは見当たらないし、ありがちな酒場兼食事処なんていうのもない。本当にあるのは受付カウンターだけで、その奥では多くの職員さんが働いている。

「まるでお役所みたいね」

 デライラがそう呟く。皮鎧、そして帯剣。冒険者らしい格好をしているのにこの場違いな感じ。彼女もそう感じているんだろうね。

「取り敢えずあそこで話してみよう」

 僕はそう言って『総合受付』と立て札がしてあるカウンターを指差した。そしてカウンターに向かってツカツカと歩いていく。デライラ達は建物の中を色々見て回るみたいだね。僕の両サイドにはいつものようにノワールとアーテルがいる。

「冒険者ギルドルーバー本部へようこそ。ですが……依頼はここでは取り扱っていないのです」

 受付嬢さんが申し訳なさそうにそう言う。へえ、そうなんだ。やっぱり本部は一般の冒険者にはあんまり縁のないところかのかな?
 でも僕等の用は別に依頼絡みじゃないんだなこれが。

「いえ、僕等の用はこれでして」

 僕はグリペン侯爵の推薦状を手渡した。もちろん、プラチナランクへの昇格試験を受ける為のものだ。
 プラチナランクともなると様々な方面に凄まじい影響力を及ぼす。それだけに、実力以外にも人格を見極めなければならない。それ故領主の推薦が必要になるんだよね。

「これは!」

 グリペン侯爵家の紋章の封蝋を見て、受付嬢さんは目を丸くした。

「少々お待ちください!」

 そして奥へと駆けていった。そして暫くすると緊張した面持ちで戻って来る。

「別室にご案内しますね。ご案内いたします」

 僕達は先導する受付嬢さんに付いて行った。途中でデライラ達にも声を掛け、受付嬢さんを含めた七人は四階まで階段を上っていく。
 見た目は石造りで重厚な建物なんだけど、中身はそれほど堅苦しい感じはしないかな。冒険者だけでなく貴族や商人なんかも利用する施設だからだろう。程よく装飾品が置かれていたり、花が飾られていたり、柔らかな絨毯が敷かれていたりする。
 冒険者ギルドとは思えない武骨さの欠片もない建物の内部だけど、とある飾り気のない扉の前で一人の男が立っていた。
 この男は室内の雰囲気とは真逆で、武骨という言葉がしっくりくる見た目だ。歳の頃は四十がらみかな。筋骨隆々でラフなシャツの上にジャケットを羽織っている。そのジャケットは袖を肘までまくり上げていて、逞しい腕が露わだ。身長は僕より頭一つくらい高い、とても大柄な人だ。
 そんな肉体のゴツさとは裏腹に、顔は中々に爽やかだ。黒髪ははらりと額に掛かるくらいの長さで涼し気な目元が良く見える。

「また! グランドマスターはそのような格好で!」

 案内してくれた受付嬢さんが慌てたように叫んだ。
 ……って、グランドマスター?

「いいじゃねえか。ちゃんとジャケット着てるだろ? よ、お前さん達が噂の『ダークネス』だな? 話は中で聞こう。入ってくれ」

 そう言って、グランドマスターとやらは扉を開いて中に入ってしまった。受付嬢さんがそっと囁く。

「あの方はこのギルド本部のトップ、ユーイングさんです。まったく、まだ冒険者時代のクセが抜けていなくて」

 国内各地にあるギルドを統括する本部のマスターだからグランドマスターか。さっきは普通に佇んでいるだけなのに強者のオーラというか、圧が凄かった。受付嬢さんが平気にしている所を見ると、分かる人にしか分からないようにしてるのかな?

「あんまり堅苦しい方じゃないみたいですね。良かったです」

 受付嬢さんにそう言いながらニコリと笑みを浮かべ、僕達は部屋に入った。


 中に入ると、ユーイングさんが奥のソファにどっしりと座っていた。僕達には手前にあるソファを勧めてきたので、僕とデライラが並んでそれに座る。ノワールにアーテル、それにルークスとグランツはその後ろに控えた。

「俺がグランドマスターのユーイングだ。ま、楽にしてくれ。堅苦しいのは苦手なんだ」
「ショーンです。一応パーティ『ダークネス』のリーダーをしてます」

 人懐っこそうな笑顔で挨拶するユーイングさんに、僕も会釈をしながら自己紹介をし、続いて仲間達を紹介していった。

「聞いてるぜ? ブンドルの野郎をブッ飛ばしたんだってな?」

 彼はそう言って可笑しそうに笑う。

「いいねえ、若いってのは。トシを取るとよ、問題を解決出来る力量があったとしても、いろんなしがらみとかそういうモンが邪魔をして、思ったような事が出来なくなるもんだ」

 更に続けるユーイングさんは、ふと視線を窓の方向に移し、どこか懐かしそうな瞳でそう口にした。
 
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