114 / 206
三章
トラブルの後で
しおりを挟む
第二区画にある冒険者支部でのトラブルは、良くも悪くも僕達の顔と名前を盛大に宣伝してしまった。ゴールドランクで二つ名持ちのアナークを赤子の手を捻るように無力化し、ギルドマスターであるドレクスラーですら黙らせた。
しかしそれ以上に、僕達が売却した魔物の素材の量が話題になっているようで。
カウンターで買い取り依頼をした時に、かなりの量があるからこの場では出せない事を受付嬢さんに告げると、別フロアにある倉庫で出すように言われたんだ。そしてデライラが持つマジックバッグから出すフリをして影収納から素材をポンポン出したんだけど……
「ちょ、ちょっとお待ちください! これ以上は今日中に査定が終わりません!」
焦ったを通り越して、半泣きになった受付嬢さんがそう叫んだ。
ロクな荷物も持っていない僕達が出す素材なんてどうという事はないだろう。そう高を括っていたのが見え見えだったので、僕は遠慮なしに影収納の中にある素材を取り出していったんだけど。
「それに大金を手に入れたところで、あなた方はこの王都で――ひっ!?」
「は?」
不機嫌そうな顔で何かを言いかけた受付嬢さんに殺気を浴びせる。
「どうせブンドルに睨まれている僕達に、モノを売ってくれる店なんかないって事ですか? それとも僕からの買い取りはしないよう、ブンドルから圧力でも掛かっているのかな?」
「い、いえ……」
そんな僕の追及に、受付嬢さんはしどろもどろになる。
「生憎、第一区画の各ギルド本部で話をつけてありましてね。問題なく買い物は出来ますので。それに、ほらこれ」
ニッコリと笑いながら、商業ギルド本部のカートライトさんから受け取った戦利品、全品二割引のカードを見せた。
「そ、それは! 全市民憧れのビップカード!」
「まあ、そういう事なんで、査定お願いしますね。お金は明日受け取りにきます」
僕のそんな言葉に、受付嬢さんはがっくりと肩を落とし『はい』とだけ短く答えた。影収納の中身はまだまだたくさんあるけど、今日はこれくらいで勘弁してあげよう。今日のところはね。
▼△▼
そして僕達はその後も王都内を散策しながら買い物をしたり、装備を整えたり、美味しいものを食べたりする毎日を送っていた。
時にはギルドの依頼で王都の外に出る事もある。主に魔物討伐だけど、ダンジョンでもないところに出る野生の魔物なんて僕達にとっては大した脅威にはならない。いいお小遣い稼ぎだね。その度に大量の魔物の素材をギルドに持っていくものだから、あの受付嬢さんは僕等の姿を見るだけで涙目になるようになった。
そして僕はと言えば、ノワール、アーテルを相手に模擬戦を繰り返していた。短双戟に魔法を織り交ぜたトリッキーな戦法がメインだけど、シルフのおかげで風の大魔法を使えるようにもなったため、その制御の特訓もしている。
今日はその特訓を、王都郊外の平原で行っているんだ。
「ぐあっ!?」
ノワールを相手に接近戦を繰り広げながら、アーテルに牽制の風魔法を放ったその瞬間、背中に激痛が走る。ルークスが放った光魔法、ライトカノンだ。光の魔力を撃ち出すだけの初歩的な魔法だけど、撃ち出したのが光の大精霊ともなればその威力は半端じゃない。
「ご主人様、後ろにも目を付けるのです!」
ノワールが心配そうな顔をしながらも随分と無茶な要求をする。精霊の君なら可能なんだろうけど、僕って一応人間だからね?
とは言っても、プラチナランク昇格試験の内容が分からない上、グランドマスターのユーイングさんからは万全を期すように言われているので、『対多数の凄腕との戦闘』という模擬戦のシチュエーションを望んだのは僕だ。もっとも、今のルークスの攻撃はまったくの不意打ちで、まさにこれ以上ない実戦的な訓練になっている。
「善処する」
僕はそう言って立ち上がり、短双戟を構えた。どうせ相手は大精霊と神獣だ。僕がいくら本気を出したって敵いっこない。それなら全力でいくだけだ。
その翌日、僕は疲労と打撲などでボロボロの身体を宿で癒していた。デライラとルークス、グランツはギルドの依頼を受けに出かけているので、今ここにいるのは僕とノワール、アーテルの三人。そんなタイミングで、一人の女性が訪ねて来た。
「こんにちは。お休みのところを申し訳ありません」
そう言ってペコリと頭を下げる女性は見覚えがある。
「ギルド本部の……」
そう、冒険者ギルド本部で僕達の応対をしてくれた受付のお姉さんだった。
「はい。早速で申し訳ありませんが、本部までご一緒願えませんか?」
あらら、本部からの呼び出しか。アナークやドレクスラーの事かな? それとも昇格試験の事かな。心当たりがいっぱいあるぞ。
とにかく、僕は急いで支度をした。
しかしそれ以上に、僕達が売却した魔物の素材の量が話題になっているようで。
カウンターで買い取り依頼をした時に、かなりの量があるからこの場では出せない事を受付嬢さんに告げると、別フロアにある倉庫で出すように言われたんだ。そしてデライラが持つマジックバッグから出すフリをして影収納から素材をポンポン出したんだけど……
「ちょ、ちょっとお待ちください! これ以上は今日中に査定が終わりません!」
焦ったを通り越して、半泣きになった受付嬢さんがそう叫んだ。
ロクな荷物も持っていない僕達が出す素材なんてどうという事はないだろう。そう高を括っていたのが見え見えだったので、僕は遠慮なしに影収納の中にある素材を取り出していったんだけど。
「それに大金を手に入れたところで、あなた方はこの王都で――ひっ!?」
「は?」
不機嫌そうな顔で何かを言いかけた受付嬢さんに殺気を浴びせる。
「どうせブンドルに睨まれている僕達に、モノを売ってくれる店なんかないって事ですか? それとも僕からの買い取りはしないよう、ブンドルから圧力でも掛かっているのかな?」
「い、いえ……」
そんな僕の追及に、受付嬢さんはしどろもどろになる。
「生憎、第一区画の各ギルド本部で話をつけてありましてね。問題なく買い物は出来ますので。それに、ほらこれ」
ニッコリと笑いながら、商業ギルド本部のカートライトさんから受け取った戦利品、全品二割引のカードを見せた。
「そ、それは! 全市民憧れのビップカード!」
「まあ、そういう事なんで、査定お願いしますね。お金は明日受け取りにきます」
僕のそんな言葉に、受付嬢さんはがっくりと肩を落とし『はい』とだけ短く答えた。影収納の中身はまだまだたくさんあるけど、今日はこれくらいで勘弁してあげよう。今日のところはね。
▼△▼
そして僕達はその後も王都内を散策しながら買い物をしたり、装備を整えたり、美味しいものを食べたりする毎日を送っていた。
時にはギルドの依頼で王都の外に出る事もある。主に魔物討伐だけど、ダンジョンでもないところに出る野生の魔物なんて僕達にとっては大した脅威にはならない。いいお小遣い稼ぎだね。その度に大量の魔物の素材をギルドに持っていくものだから、あの受付嬢さんは僕等の姿を見るだけで涙目になるようになった。
そして僕はと言えば、ノワール、アーテルを相手に模擬戦を繰り返していた。短双戟に魔法を織り交ぜたトリッキーな戦法がメインだけど、シルフのおかげで風の大魔法を使えるようにもなったため、その制御の特訓もしている。
今日はその特訓を、王都郊外の平原で行っているんだ。
「ぐあっ!?」
ノワールを相手に接近戦を繰り広げながら、アーテルに牽制の風魔法を放ったその瞬間、背中に激痛が走る。ルークスが放った光魔法、ライトカノンだ。光の魔力を撃ち出すだけの初歩的な魔法だけど、撃ち出したのが光の大精霊ともなればその威力は半端じゃない。
「ご主人様、後ろにも目を付けるのです!」
ノワールが心配そうな顔をしながらも随分と無茶な要求をする。精霊の君なら可能なんだろうけど、僕って一応人間だからね?
とは言っても、プラチナランク昇格試験の内容が分からない上、グランドマスターのユーイングさんからは万全を期すように言われているので、『対多数の凄腕との戦闘』という模擬戦のシチュエーションを望んだのは僕だ。もっとも、今のルークスの攻撃はまったくの不意打ちで、まさにこれ以上ない実戦的な訓練になっている。
「善処する」
僕はそう言って立ち上がり、短双戟を構えた。どうせ相手は大精霊と神獣だ。僕がいくら本気を出したって敵いっこない。それなら全力でいくだけだ。
その翌日、僕は疲労と打撲などでボロボロの身体を宿で癒していた。デライラとルークス、グランツはギルドの依頼を受けに出かけているので、今ここにいるのは僕とノワール、アーテルの三人。そんなタイミングで、一人の女性が訪ねて来た。
「こんにちは。お休みのところを申し訳ありません」
そう言ってペコリと頭を下げる女性は見覚えがある。
「ギルド本部の……」
そう、冒険者ギルド本部で僕達の応対をしてくれた受付のお姉さんだった。
「はい。早速で申し訳ありませんが、本部までご一緒願えませんか?」
あらら、本部からの呼び出しか。アナークやドレクスラーの事かな? それとも昇格試験の事かな。心当たりがいっぱいあるぞ。
とにかく、僕は急いで支度をした。
1
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる