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三章
デライラ、女王とご対面②
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レベッカは運ばれて来たそれの布をめくりあげる。その下に隠れていたものは一振りの剣だった。
「これはグリペン侯爵家の始祖たる人物が、時の国王に献上したと言われる剣です」
レベッカはその剣をデライラに見るように促しながら、短く説明した。もっとも、デライラのその剣の話はグリペン侯爵から聞いている。味方を鼓舞し、味方を癒し、不思議な力で敵を屠ったという剣。
「もっとも、その剣の力を発現出来たものはそれ以降誰一人として現れなかったため、事の真偽は分かりません」
まあ、今では伝説の類ですね。レベッカはそう付け加えて薄く笑う。
デライラは光属性の魔力を持つ自分ならば使えるかもしれないとは思っていたが、王城の宝物庫に眠っていた宝剣など、自分には縁がないと思っていたので興味深くその剣を見つめていた。
「どうぞ、手に取って御覧なさい」
「よろしいのですか?」
レベッカに促されるもデライラは逡巡する。しかしその後もレベッカは無言で『手に取って鞘から剣を抜いてみろ』と圧力を掛けて来るので、デライラは恐る恐る剣の柄を握り鞘から抜いた。
無理矢理分類すればショートソードだろうか。刃渡りは六十センチ程、柄は拳一握り半程の片手剣。幅広の両刃で思ったよりは重い。
「グラディウスですか」
ルークスはデライラが持つ刃を見つめながらそう呟いた。
グラディウスとは古代の闘剣士が用いたとされる剣で、主に盾と共に運用されていた。今では古代遺跡から発掘された骨董品ぐらいでしかお目に掛かる事はなく、実戦で使う者も皆無だ。
「さあ? 生憎剣には明るくないので分かりません。で、どうですか?」
「どう、とは?」
疑問形で話しかけて来るレベッカに、デライラは意図が読めずに首を傾げる。
「その剣から何か感じる事はありませんか?」
見た目は装飾も何もない、シンプルな古い剣だ。しかしデライラは持ってみると妙に手に馴染む事に気が付く。
彼女は更に魔力を込めてみた。
「これは……!!」
魔力が込められたグラディウスを見てレベッカが息を呑む。刃が薄く光を纏っているのだ。しかもその光は部屋全体を柔らかく、そして温かく包み込むようであり、気分が落ち着くような、それでいて勇気が湧いてくるような、不思議な感覚に見舞われた。
「バフが発動したようじゃな」
「そのようですね」
ここで初めてグランツが口を開き、ルークスがそれに同意した。
「まさか、本当に剣の力を発動させるとは……」
そこまで言ってレベッカが絶句する。
「あ、あの?」
それを見たデライラがオロオロするが、その様子がかえってレベッカを冷静にさせたようだ。
「ごめんなさい。落ち着きました。実は侯爵の書状に――」
レベッカはグリペン侯爵の書状の内容を話し始めた。
ブンドルの横暴はすでに別ルートから聞き及んでいたし、王都に居ても黒い噂は耳に入ってくる。また役人や貴族のみならず、要職に就いている者もブンドルに買収されている噂もある。言ってみれば、ショーンに関わる一連の騒動はグリペン侯爵に言われるまでもない事だった。
書状にはもう一点、ショーンとデライラの事柄が記されていた。
「デライラ。あなたは失われた光属性を持つ者だと書かれています。しかし残念な事に、光と闇の属性に関わるもの全てが喪失してしまい、それを確かめる術はありません。ですが、光属性だけは、あるものがそれを証明出来る事に思い至りました」
「それがこの剣……」
「ええ」
厳密に言えばグリペン家の始祖が光属性だと一般的に認識されている訳ではないが、光と闇の失われた二属性の存在を知る者だけは、その始祖の力が光属性の魔法ではないかと疑っていた。
そしてここに、グリペンの宝剣の力をデライラが発動させた事で、光属性の存在と力が証明されたのである。
「その剣はそのままあなたがお持ちなさい。このまま宝物庫に置いていてもただの骨董品ですから」
しかしデライラはそのレベッカの言葉に迷う。使えない者にとってはただの骨董品なのは間違いないが、こんなものが世の中に出ればとんでもない高値で取引されるお宝なのには間違いない。そのお宝を何故自分に託そうというのか、レベッカの真意を量りかねているのだ。
しかしそこでグランツがズイと一歩進み出た。いつもの軽薄な雰囲気はどこへやら、国の最高権力者であるレベッカまでもが一瞬息を呑むほどの威厳が溢れている。
「人の王よ。我が主は何故その宝剣を託されるのか困惑しておる。真意を述べよ」
しかしその発言に護衛の二人がいきり立つ。
「貴様! 陛下の御前で無礼であるぞ!」
今まではデライラの付き人の如く後ろで控えていた老人が、女王をすら見下すような発言をしたのだから護衛の反応も無理はないのだが、そこでデライラには一つの疑問が持ち上がる。
「あの、レベッカ陛下?」
「なんでしょう?」
「グリペン侯爵の書状を読ませていただく事は可能でしょうか」
「ええ」
レベッカはデライラに書状を手渡し、デライラはそれに目を通す。そして大きくため息をついた。
「どうかしましたか?」
その様子を怪訝に思ったレベッカが首を傾げる。
その書状の内容には、神梟が現れた事や光の大精霊が復活した事は記されていたが、それがルークスやグランツである事は一切書かれていなかった。この調子ではノワールやアーテルの事も同様かも知れない。
それがグリペン侯爵のいたずら心なのか単なる書き忘れなのかは知らないが、大切な事ではないのか、とレベッカは呆れてしまった。
「グリペン侯爵が光の属性について書かれているので今更隠す事でもないですよね」
「はあ……?」
デライラが何を言わんとしているのか、今度はレベッカが分からない。
「グランツ、本当の姿を」
「ほっほっほ。お嬢の命とあらば」
一瞬グランツの姿が光に包まれ視界が遮られる。そして光が収まったあとには神々しく輝く白い梟がデライラの肩に泊まっていた。
「これはグリペン侯爵家の始祖たる人物が、時の国王に献上したと言われる剣です」
レベッカはその剣をデライラに見るように促しながら、短く説明した。もっとも、デライラのその剣の話はグリペン侯爵から聞いている。味方を鼓舞し、味方を癒し、不思議な力で敵を屠ったという剣。
「もっとも、その剣の力を発現出来たものはそれ以降誰一人として現れなかったため、事の真偽は分かりません」
まあ、今では伝説の類ですね。レベッカはそう付け加えて薄く笑う。
デライラは光属性の魔力を持つ自分ならば使えるかもしれないとは思っていたが、王城の宝物庫に眠っていた宝剣など、自分には縁がないと思っていたので興味深くその剣を見つめていた。
「どうぞ、手に取って御覧なさい」
「よろしいのですか?」
レベッカに促されるもデライラは逡巡する。しかしその後もレベッカは無言で『手に取って鞘から剣を抜いてみろ』と圧力を掛けて来るので、デライラは恐る恐る剣の柄を握り鞘から抜いた。
無理矢理分類すればショートソードだろうか。刃渡りは六十センチ程、柄は拳一握り半程の片手剣。幅広の両刃で思ったよりは重い。
「グラディウスですか」
ルークスはデライラが持つ刃を見つめながらそう呟いた。
グラディウスとは古代の闘剣士が用いたとされる剣で、主に盾と共に運用されていた。今では古代遺跡から発掘された骨董品ぐらいでしかお目に掛かる事はなく、実戦で使う者も皆無だ。
「さあ? 生憎剣には明るくないので分かりません。で、どうですか?」
「どう、とは?」
疑問形で話しかけて来るレベッカに、デライラは意図が読めずに首を傾げる。
「その剣から何か感じる事はありませんか?」
見た目は装飾も何もない、シンプルな古い剣だ。しかしデライラは持ってみると妙に手に馴染む事に気が付く。
彼女は更に魔力を込めてみた。
「これは……!!」
魔力が込められたグラディウスを見てレベッカが息を呑む。刃が薄く光を纏っているのだ。しかもその光は部屋全体を柔らかく、そして温かく包み込むようであり、気分が落ち着くような、それでいて勇気が湧いてくるような、不思議な感覚に見舞われた。
「バフが発動したようじゃな」
「そのようですね」
ここで初めてグランツが口を開き、ルークスがそれに同意した。
「まさか、本当に剣の力を発動させるとは……」
そこまで言ってレベッカが絶句する。
「あ、あの?」
それを見たデライラがオロオロするが、その様子がかえってレベッカを冷静にさせたようだ。
「ごめんなさい。落ち着きました。実は侯爵の書状に――」
レベッカはグリペン侯爵の書状の内容を話し始めた。
ブンドルの横暴はすでに別ルートから聞き及んでいたし、王都に居ても黒い噂は耳に入ってくる。また役人や貴族のみならず、要職に就いている者もブンドルに買収されている噂もある。言ってみれば、ショーンに関わる一連の騒動はグリペン侯爵に言われるまでもない事だった。
書状にはもう一点、ショーンとデライラの事柄が記されていた。
「デライラ。あなたは失われた光属性を持つ者だと書かれています。しかし残念な事に、光と闇の属性に関わるもの全てが喪失してしまい、それを確かめる術はありません。ですが、光属性だけは、あるものがそれを証明出来る事に思い至りました」
「それがこの剣……」
「ええ」
厳密に言えばグリペン家の始祖が光属性だと一般的に認識されている訳ではないが、光と闇の失われた二属性の存在を知る者だけは、その始祖の力が光属性の魔法ではないかと疑っていた。
そしてここに、グリペンの宝剣の力をデライラが発動させた事で、光属性の存在と力が証明されたのである。
「その剣はそのままあなたがお持ちなさい。このまま宝物庫に置いていてもただの骨董品ですから」
しかしデライラはそのレベッカの言葉に迷う。使えない者にとってはただの骨董品なのは間違いないが、こんなものが世の中に出ればとんでもない高値で取引されるお宝なのには間違いない。そのお宝を何故自分に託そうというのか、レベッカの真意を量りかねているのだ。
しかしそこでグランツがズイと一歩進み出た。いつもの軽薄な雰囲気はどこへやら、国の最高権力者であるレベッカまでもが一瞬息を呑むほどの威厳が溢れている。
「人の王よ。我が主は何故その宝剣を託されるのか困惑しておる。真意を述べよ」
しかしその発言に護衛の二人がいきり立つ。
「貴様! 陛下の御前で無礼であるぞ!」
今まではデライラの付き人の如く後ろで控えていた老人が、女王をすら見下すような発言をしたのだから護衛の反応も無理はないのだが、そこでデライラには一つの疑問が持ち上がる。
「あの、レベッカ陛下?」
「なんでしょう?」
「グリペン侯爵の書状を読ませていただく事は可能でしょうか」
「ええ」
レベッカはデライラに書状を手渡し、デライラはそれに目を通す。そして大きくため息をついた。
「どうかしましたか?」
その様子を怪訝に思ったレベッカが首を傾げる。
その書状の内容には、神梟が現れた事や光の大精霊が復活した事は記されていたが、それがルークスやグランツである事は一切書かれていなかった。この調子ではノワールやアーテルの事も同様かも知れない。
それがグリペン侯爵のいたずら心なのか単なる書き忘れなのかは知らないが、大切な事ではないのか、とレベッカは呆れてしまった。
「グリペン侯爵が光の属性について書かれているので今更隠す事でもないですよね」
「はあ……?」
デライラが何を言わんとしているのか、今度はレベッカが分からない。
「グランツ、本当の姿を」
「ほっほっほ。お嬢の命とあらば」
一瞬グランツの姿が光に包まれ視界が遮られる。そして光が収まったあとには神々しく輝く白い梟がデライラの肩に泊まっていた。
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