残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
120 / 206
三章

頑固職人

しおりを挟む
 結局分かったのは女王陛下が味方を欲している事くらいか。有力貴族以外にも僕やデライラをも味方に引き入れようとしている事が分かった。まあ、それもグリペン侯爵の進言が陛下の背中を押す事になったんだろうと思っている。
 ところが陛下の誤算はデライラが大精霊と神獣を眷属にしている事。これはいくら女王陛下と言えども制御できる相手じゃない。今後の選択肢次第じゃデライラも僕も敵に回る可能性はあるし、それを止める事は出来ないだろう。
 取り敢えずブンドルを潰すまでは女王陛下と共闘しよう。それが僕達の結論だ。

 そしてもう一つ、ユーイングさんの後悔しないようにしろっていう助言。
 これはもう全く分からない。だから取り敢えずあれこれ考えないでやりたい事をやる。それが二つ目の結論。
 それを受けて、僕等は買い物や訓練、ギルドの依頼を熟すなど、普段とあまり変わらない日々を過ごした。

「おう、あんたらか。ちょっと待っててくれ」

 僕達が今日訪れているのは、第二区画にある防具や装備品を加工する職人さんの工房だ。ここは職人ギルドからおすすめされた工房の一つなんだよね。
 この王都に来て間もなく各ギルド本部を回った訳なんだけど、その中でも比較的初期に来たのがこの工房だ。僕達も折角王都に来た訳だからみんなの装備を整えるつもりだったし、そうなると日数も掛かるだろう。そんな理由もあって、職人さんのところを優先的に訪ねたんだ。
 ここの親方に言われて待っている間、僕は初めてここを訪れた時の事を思い出していた。

▼△▼

「ほう……? あんたらが噂のブンドルに喧嘩を売ったってバカヤローか」

 工房の扉を開くなり、鋭い視線が飛んできた。そしてこの言葉だ。
 カウンター越しにこちらをじろりと見つめるその声の主は、もう老人と言っていい見た目をしている。あれこれ聞かなくても頑固な職人だという雰囲気が伝わってくる。

「なぜ分かったんです?」

 僕はまだ名乗ってないんだよね。

「あん? 黒髪の色気のあるねえちゃんと可愛らしい嬢ちゃんを連れた地味な男っていうお触れが出てっからな」
「ああ……ブンドルが手配書でも出してましたか」

 思わず苦笑してしまう。別に犯罪者って訳でもないだろうに手配書とはね。

「まあ、そんなとこだな。その三人が来ても商売すんなだとよ」
「そうですか。それじゃあ僕達はこれで――」
「待ちやがれ」

 そういう事ならここの工房に迷惑は掛けられない。そう思い立ち去ろうとした僕を、彼は低い声で呼び止める。

「あんたら、客として来たんだろ? ちゃんと金を払ってくれるんなら客として扱うぜ?」

 その言葉を聞いて僕は納得してしまった。この工房は、職人ギルド本部からおすすめされた割には見た目がよろしくない。あまり繁盛しているようには見えないんだよね。
 つまり、この頑固な職人はブンドルの圧力に負ける事なく己の信念を曲げずに仕事をしているんだろう。そのためブンドルの工作で多くの客はこの工房から離れてしまったが、それでもこの工房を贔屓にしている客がいるからギルド本部が勧めて来たって事だ。それだけに、腕の方は確かなんだろうね。

「ええ、装備をグレードアップしようかと思いまして、職人ギルド本部からここを紹介されたんです」
「ほう……」

 すると老人は、立ち上がってスタスタとこちらに歩いて来て、僕とノワール、アーテルのみならず、デライラ達三人が身に着けているものを吟味するように眺めていった。
 なんて言うかな。その動きはテキパキしていて老いを感じさせない。矍鑠かくしゃくとした老人っていうのはこういう人の事を言うんだろうね。これなら仕事の方も安心して任せられる気がしてきた。

「ダメだな」
「ええ?」

 そしていきなりダメ出しされた。

「いいか、冒険者に限った事じゃないが、格に見合ったモンは必要だ。後ろのにいさんと爺さんはともかく、ゴールドの三人とそっちのシルバーの嬢ちゃん。あんたらは見た目が詐欺だぜ」

 僕達がその言葉に首を傾げていると、この老人は熱弁を振るい始めた。僕達のランクもすでに知れ渡っているのか。
 つまり、強くて高ランクの冒険者がみすぼらしい装備を身に着けていると、それだけで舐められていらぬトラブルを呼び込んでしまう。だからちゃんと強さに見合った装備を身に付けろって話らしい。

「ああ、見た目が弱そうだから他の冒険者に絡まれたりしました」

 確かに身に覚えはある。

「そうだろう。で、その絡んで来たバカは逆に捻られて痛い思いをしたんだろう?」
「ええ、まあ」

 図星すぎて苦笑するしかない。

「そういうのはお互いに不幸ってもんだ。だから、儂に任せやがれ」
「え、えっとじゃあ……お願いします?」
「おう! じゃあ早速採寸すっから奥の方へ来てくれや! ああ、ねえちゃん達のは俺のかみさんがやるから坊主は安心しな!」
「……」
「おお、忘れてた! 儂ぁケビンってんだ! よろしく頼むぜ!」

▼△▼

 なんてことがあり、今日が指定された引き渡しの日なんだよね。

「おう、待たせたな! 今回はあんたらが持ち込んだいい素材のおかげで、ここ数年で会心の品が出来たぜ!」

 奥から数人のお弟子さんだろうか? それらの人達が手に手に木箱を持ちながら出て来た。そしてその木箱をカウンターに並べていく。
 でも全部で六箱?
 
「聞いたところじゃ、あんたら六人同じパーティなんだってな。じゃあ六人分相応しいモンを使ってもらわねえとな!」

 第一印象からついさっきまで、愛想のない頑固な爺さんだと思ってたけど、機嫌がいいとこんなにもいい笑顔をする人なんだな。これは出来栄えが期待できそうだ。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...