残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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三章

出頭命令

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 冒険者ギルド本部から出た後、僕達は影潜りで、今度ケビンさん夫妻が入居する予定の物件にこっそりと立ち寄った。
 物件は決まっても、家財道具は何もないだろうからね。ブンドルからした家具なんかを適当に置いてきた。少しでも罪滅ぼしになればいいんだけどな。
 その後、少しばかり屋台で買い物をしてアーテルの小腹を満たし、宿に戻った。
 部屋には戻らず、ロビーのソファに腰掛けてお茶を飲みながら、他の宿泊客の噂話なんかに耳を傾ける。やはり噂はブンドルの商会だけが狙われて壊滅した事や、彼自身は屋敷に引きこもり姿を見せなくなった事がメインだ。
 でも不穏な、というか、まあそうなるだろうなっていう噂もチラホラと聞こえて来る。

「どうも、官憲や国軍が、ブンドルの商会を潰した犯人を捕縛しに動くらしいぜ?」
「どうしてよ? ブンドルがいなくなって、市民は大喜びじゃない?」
「だからブンドルからたっぷり袖の下を貰ってたお偉いさんが怒り心頭なんだろうよ」

 なんて言う噂。
 それはもうオニール大臣とやらが激怒してたから、そうなる流れはまあ予想はしてた。ただ、この国はそれを許しちゃうのかなって思うと、なんだか悲しくなるね。

「ただいま。もう街中凄い噂よ?」

 そこへデライラ達三人が帰ってきた。噂の内容は敢えて聞かない。どうせブンドルの件だろうし。

「ケビンさん達はどうだった?」

 ケビンさん夫妻は彼等の行きつけの病院に夫婦で入院している。
 ホントは瀕死の重傷だったんだけど、ノワールの時空を操る闇魔法で『そこそこの火傷』の状態まで巻き戻し、ルークスの治癒魔法で軽傷にまで回復させた。流石に無傷じゃあ不自然すぎるからね。
 あとの処置はそこのお医者様に任せ、デライラはそこにお見舞いに行ってたって訳だ。

「あと数日で退院できるそうよ。でも工房があれじゃあね……」

 順調に回復してるのなら喜ばしい事だけど、デライラはその表情に暗い影を落とす。

「それなら大丈夫だよ。職人ギルドのグラマスに掛け合って、いい物件を探してもらったんだ。明日にでも住めると思うよ?」

 僕がそう言うと、デライラは目を丸くした。

「朝から出かけるって言うから何かと思ったら……用意周到ねえ」

 それよりも、報告しなくちゃいけない事は別にある。

「それとは別に、冒険者ギルド本部へ行って来たんだ」
「ああ、あの官憲の隊長の件?」
「そうそう。でもそこにお客さんがいてね」

 僕はギルド本部で今日あった事を話した。

「そう……その侯爵がブンドルとズブズブだったって訳ね」
「多分、今度はそのオニール侯爵がトラブルを持ち込んで来ると思うから、そのつもりでね」
「そのつもりって、あんたねえ……」

 そんな僕等のやり取りを、眷属達四人は肩を揺らして笑いながら聞いている。
 ついでに、商業ギルドのカートライトが全面降伏した事を伝える。ちょうどそのタイミングで、僕等のところに来客が来た。
 
「よう、さっきぶりだな」

 筋肉ではち切れそうなシャツの上に腕まくりしたジャケットを着崩し、ユーイングさんが現れた。

「どうしました?」

 用ならさっきギルド本部で済ませたはず。だとすれば別件で用ができたか、あるいは他に何かあるのか……
 思い当たるとすれば、あのオニールとかいう大臣絡みかな。

「まあな、さっきのやり取りがあった後だ。警戒すんのはよく分かるぜ」

 そう言って、一枚の封書を無造作に投げてよこした。そして顎をしゃくって読むように促してくる。

「はぁ、なるほど。随分フットワークが軽いんですね、あの大臣」
「こんな時だけな」

 僕とユーイングさんは、顔を見合わせながら苦笑した。

「なによ、どうしたの?」

 興味深そうにデライラが封書の中身に顔を寄せてきた。ちょ、近い近い!

「デライラ様、ちょっと近いです」
「ふふん」

 ノワールがその距離感にクレームを入れると、なぜかデライラが勝ち誇った顔をする。止めるんだ、煽るんじゃないってば。

「二人ともやめなさい。王都取締大臣から王城へ出頭命令が来たんだよ」
「へえ、随分偉い人が出て来たのね。濡れ衣着せて亡き者にするつもりかしら?」
「多分そんなトコじゃないかな?」

 王家御用達のブンドルと事を構えた時からこういう事態も予想はしてたし、それほど驚く事はない。

「お前さんたち、あんまり驚かねえんだな」

 ユーイングさんだけは、デライラが意外に肝が据わっているので逆に驚いている。

「まあ、侯爵だろうが大臣だろうが、そのくらいじゃ今更よね。あたし、女王陛下とお話ししてきたし」
「はあ!?」

 そっか、デライラがグリペン侯爵の使者として書状を携えて王都に来たの、ユーイングさんには言ってなかったっけ。

「彼女、グリペン侯爵の使者として僕達に同行してるんですよ。僕の無実を訴えるグリペン侯爵の書状を持ってね」
「ほう……そりゃあ面白い事になりそうだな」

 僕の説明を聞いたユーイングさんが、ニヤリと口角を吊り上げた。

「王城じゃあ、色んなお偉方に囲まれて陛下に謁見する事になる。で、お偉方がショーンの罪状を陛下に訴えるだろう。既にグリペン候から報告が上がっているとも知らずにな」

 ふむ。
 これは敵味方を判別できるいい機会かも知れないね。いいだろう。女王陛下の出頭命令に応じようじゃないか。
 期日は、王都に来てからちょうど一か月目の日だ。
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