残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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三章

女王を前に遠慮の欠片もなし

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 僕が使ったのは風魔法。ブンドルの周囲の空気を全て逃がし、真空という状態にした。
 真空という状態になると、人は呼吸が出来ずに死んでしまう。そして音というのは空気が震えて聞こえるので、空気がないと周りに声も伝わらない。
 これらの知識は知恵の象徴であるグランツから聞いたものだ。この世界で誰も知らないような事を、あの梟さんはまだまだたくさん知っているんだろうね。

 傍から見れば、僕は何もしていないのに、ブンドルが勝手に苦しみだして死んだように見えるだろうね。所謂急病による急死ってやつ。
 でも、かなりの魔力を動かしたので、分かる人には分かるだろう。

「お前さん、風魔法でコイツを殺したのか?」

 なんだか難しい表情でそう言って来たのはユーイングさんだ。さすが、プラチナランカー。

「そこは冒険者の企業秘密というヤツですかね」
「……」

 今の会話で、呆然としていたお偉いさんたちや女王陛下が我に返る。そしてお偉いさん方の中でもブンドルに近しい者達が怒声を上げ始めた。

「陛下! 今すぐこの不届き者の捕縛を!」

 その中でも、女王陛下の前に進み寄り、声を荒げたのはオニール大臣だ。そして謁見の間にいる警備の兵が僕を取り囲み、女王陛下の近衛騎士が彼女を守るように立ち塞がる。
 しかし、その女王陛下は静かに、しかし深みのある声で言った。

「静まりなさい」

 謁見の間に彼女の声が響き渡り、お偉いさん方の怒声が止む。しかし彼女の表情自体は怯えを含んでおり、額に汗が浮かんでいた。それでも目の力は失っておらず、何か決意をしたような、そんな強い視線を僕に浴びせてきている。

「冒険者ショーン。私との謁見の場でこのような振舞い、これには後悔はないのですか?」

 その質問に、僕自身改めて考えてみた。ブンドルは敵。敵は倒す。ブンドルは諸悪の権現。こいつの存在は大多数にとって好ましいものじゃあない。こいつがいなくなって困るのは、こいつが好き勝手やりたいが為に買収した一部の権力者のみ。
 確かにこの場所でこういう事をしたのは更なる権力者を敵に回す可能性もあるけれど、だからどうしたという話だ。ここでやらなかったら更に後悔する事になったと思うよ。

「ありませんね。むしろもっと早くこうすべきだったいう後悔はありますが」

 女王陛下は息を呑む。ゴクリ、と生唾を飲み込む音さえ聞こえてきそうだ。

「ああ、これが原因でプラチナランクへの昇格試験がご破算になったとしたら、推薦してくれたグリペン侯爵に申し訳ない気持ちがありますね」
「貴様! 陛下の御前でこのような大罪を犯しながらその言い草か! ええい! 者共! こやつをこの場で処刑せよ!」

 僕の返答が余程気に入らないのか、オニールが激高して護衛兵にそう命じた。うわあ、凄い怒ってるよ。そんなにブンドルが死んだのが悲しいのか、それとも貰っていた賄賂が惜しかったのか。
 しかし、ユーイングさんは僕と背中を合わせるように移動してきた。

「ちっ。確かに後悔しねえようにしろとは言ったがよ。ちょっとは時と場合を考えやがれ」
「どうしたんです? グランドマスターがこんな事をしてはまずいのでは?」

 明らかにユーイングさんは僕の背中を守ろうとしてくれている。そしてこの後の彼の台詞に僕は痺れたんだ。

「グランドマスターだからだよ。お前も冒険者なら、お前を守るのも俺の仕事だ。理不尽に正面から立ち向かってるヤツを見捨てておけるか」
「……ありがとうございます。でも、さすがに冒険者ギルドと国が戦争をするのはまずいですよ」

 上の人が僕を守ってくれるのは本当に嬉しい。でもこういう人が失脚しちゃうのは惜しいよね。だから。

「みんな、出ておいで」

 足下の影に向かってそう声を掛けると、ズブズブと影の中から浮き上がってくるものが二つ……いや、三つ?

「待ちかねましたよ、ご主人様」

 黒髪、タレ耳、そして褐色の可憐な少女、ノワール。

「中々いい場面での呼び出しだな、主人よ!」

 長い黒髪を背中で纏め、妖艶に舌なめずりをしながら笑みを浮かべるアーテル。

「いや、みんなと言ったのはお前だろう?」

 そして淡いブルーの人型のものが宙に浮かぶ。これはシルフか。影の中で休んでいる間にだいぶ力を回復させたみたいだ。

「な……なぁ!?」
「こ、これは一体……」

 この空間にいる全ての人間が感情を上手く言葉に出来ない程、驚嘆していた。まるで床から生まれたかのように出現した三人。人型に擬態しているノワールとアーテルの正体はともかく、一番驚いたのはシルフに対してだろうか。
 思わずひれ伏したくなるような神々しさと、直視するのも憚れるような強烈な魔力。誰が見ても精霊、しかもかなり高位の存在であると分かるだろう。中には思わず跪いている者すらいる。
 しかしその中で女王陛下だけは、気丈にも腰の剣に手を掛けた。それを見たオニールはなんとか強がりの笑みを浮かべ、僕に向かって何かを叫ぶ。

「ふ、ふはははは! 貴様のような不敬の輩は、陛下自らが処断なさるぉぁ?」

 だけど、オニールは最後まで言葉を紡ぐ事は出来なかった。彼の身体は縦に真っ二つに切り裂かれたのだ。そしてその後ろには、返り血で美しい顔を赤く染めた、女王陛下が立っていた。
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