残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
134 / 206
三章

女王の思惑

しおりを挟む
「ふぉふぉふぉ、お任せあれ」

 デライラが肩に乗るグランツに一言告げると、室内にいた全ての人が眠りこけてしまった。ユーイングさんですら。ここで起きているのは僕達ダークネスだけ。

「ルークス、女王陛下を起こしてくれる?」
「承知いたしました」

 続いて、恐怖で失神してしまった女王陛下に、ルークスが指先から発した光を浴びせた。すると、彼女は静かに瞼を開いた。

「ひっ……」

 でも最初に彼女の視界に映ったのが僕だったせいか、いきなりこの反応だ。傷付くなぁ。

「君達が脅しすぎるから、僕が怖がられてるじゃないか」
「う……申し訳ありません」
「し、しかしだな、主人を利用するなぞ……」

 僕に窘められたノワールとアーテルがしょんぼりだ。
 僕自身は、女王陛下に嵌められたとか利用されたとかでそんなに不快な思いをした訳じゃない。僕が望んでした事が女王陛下の利になっただけの話だ。でもあれだね、ノワールとアーテルを従えている事で僕を脅威と見なしてくれるなら、それはそれでアリかも知れない。

「さて、女王陛下。僕達は少々込み入った話をする必要がありそうですね。お互いに聞かれてはまずい話もあるでしょうから、全員眠らせてあります」
「はい……とんだ失態をお見せして申し訳ありません。ご配慮痛み入ります」

 女王陛下はそのままペタンと床に座り込んだまま、話し始めた。自らオニールを手打ちにするとか、かなりの覚悟が必要だったんだろうね。その上ノワールとアーテルの殺気に当てられて、身体に力が入らないんだろう。

「どうぞご無理をなさらずに」
「ええ……」

 そのまま女王陛下は話し始めた。
 商才を生かして大きな財を手に入れたブンドルは、手始めに困窮する貴族の支援をする事から始めた。それが貴族のネットワークに深く入り込む余地を与える事になり、要職にある者が買収されていく。
 その貴族や要職にある者達によって先代の王の信を得る事に成功したブンドルは、この国の経済を牛耳っていく事になる。その手腕は巧妙であり、先王がその悪辣さに気付く事はなかった。

「私がブンドルの悪行を知る事になったのは、街の視察に出た時でした」

 女王陛下は続ける。

「父上が体調を崩され、容体が急変し崩御されるまでは、まさにあっという間でした。間もなく私が王位を継いだのですが、祭り上げられただけで何も出来はしません」

 そうだね。急に王様になれって言われても、簡単な話じゃないだろうね。王族として最低限の教育は受けていたとしても、実務は文官や役人達に任せるしかないんじゃないかな。

「そこで私は、侍女と共にお忍びで王都の第三区画まで視察に行ったのです」

 第三区画とは王都の一番外周にあたる区画で、最も庶民らしいところだ。国民の生活の実態を知るなら第三区画だろうね。それでも、他の農村部や田舎町と比べれば、随分と豊かな生活をしてるんだけど。

「王たる者、庶民の暮らしを知らねばならない。そういう事ですね」
「ええ。でも私は、そこで見てしまったのです。夜逃げ同然で店を畳み、王都を去った商人が何と多い事かを」

 閉店して空き家になった商店が多く、さらにそれらの商店を改装している物件も多かったので、陛下はその近隣の住民に話を聞いてみたという。

「ブンドルに妨害され、商売が立ち行かなくなったんですね」
「ええ」

 僕達がグリフォバーグで出会ったマシューさん親子のような人達が、他にもたくさんいて、そうやってブンドルはどんどん影響力を増していく。それで得た金で貴族や役人を買収し、やがて誰も逆らえない存在になり上がってしまった。
 陛下は悔しそうにそう言った。

「それは余りにも不健全で歪なあり方ではありませんか。ですが王位に就いたばかりの私には、ブンドルを排除する力などありません。それどころか、王城内にも政権内部にも、私の味方は殆どいないのです」

 それは、察する。もっと言えば、陛下は怪しい動きをすれば消されてしまう危険性だってあったんじゃないかな。

「そんな折だ。プラチナランクの昇格試験を受けるヤツが王都に来るって話が来たのは」
「えっ!? ユーイングさん!?」

 これは驚いた。てっきり眠っていると思っていたユーイングさんが、しっかりと話を聞いていたらしい。

「ほう? 儂の術に抗うとは。さすがプラチナランクと言ったところか。ふぉっふぉっふぉ」

 グランツが面白そうに目を細める。それにユーイングさんが肩を竦めて答えた。

「まあ、一応な。お前らが陛下に手を出そうとしたら、止めなきゃなんねえだろ?」
「ははは、まさかそんな」

 僕は乾いた笑いで答えた。ノワールとアーテルは結構ガチで怒ってたからね。あ、ほら、二人とも目を逸らした。

「味方が少ない私は、冒険者ギルドと誼を通じました。取締大臣があの体たらくですし、軍だって私の事など小娘程度にしか思っていないでしょう。私には力が必要でした」
「なるほど。それで僕とブンドルのトラブルを知った上で、コイツを潰させようとした」
「ええ、まさか目の前で殺してしまうとは思いませんでしたが」

 見た目が弱そうな僕が、あんな強硬な手段に出るとは思っていなかったらしい。商会を潰すまでは予想していたが、僕が無力化したブンドルを陛下に突き出して終わり。そういう筋書きだったのかも知れないね。

「私の都合であなたを利用した事についての後ろめたさはあります。だからこそ、自らの手でオニールを処し、覚悟を示しました」

 これからは、自分の手を汚す事を厭わず戦っていく覚悟だろうか。確かにオニールを一刀両断とか、なかなかショッキングだった。陛下本人も相当なストレスを抱えてるんじゃないかな。

「本格的な手続きはユーイングに任せますが、あなたはこれよりプラチナランカーです。王侯貴族ですら一目置く存在になりました。そんなあなたにどうかお願い申し上げます! どうか、私と、この国を正常に戻す為にお力を貸していただけないでしょうか!」

 女王陛下が僕に平伏する。いくらプラチナランカー相手でもこれはないだろう。

 ――つまり、光と闇の眷属を従えている僕とデライラの存在は、他のプラチナランカーとは一線を画すって事だよね。陛下は何かを知っている。

「無条件という訳にはいきません。僕等としても、陛下が味方かどうかを見極めなければならないですから」

 僕がそう言うと、彼女は神妙に頷いた。
 さあ、交渉のステージに移行だね。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...