残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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三章

女王の思惑

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「ふぉふぉふぉ、お任せあれ」

 デライラが肩に乗るグランツに一言告げると、室内にいた全ての人が眠りこけてしまった。ユーイングさんですら。ここで起きているのは僕達ダークネスだけ。

「ルークス、女王陛下を起こしてくれる?」
「承知いたしました」

 続いて、恐怖で失神してしまった女王陛下に、ルークスが指先から発した光を浴びせた。すると、彼女は静かに瞼を開いた。

「ひっ……」

 でも最初に彼女の視界に映ったのが僕だったせいか、いきなりこの反応だ。傷付くなぁ。

「君達が脅しすぎるから、僕が怖がられてるじゃないか」
「う……申し訳ありません」
「し、しかしだな、主人を利用するなぞ……」

 僕に窘められたノワールとアーテルがしょんぼりだ。
 僕自身は、女王陛下に嵌められたとか利用されたとかでそんなに不快な思いをした訳じゃない。僕が望んでした事が女王陛下の利になっただけの話だ。でもあれだね、ノワールとアーテルを従えている事で僕を脅威と見なしてくれるなら、それはそれでアリかも知れない。

「さて、女王陛下。僕達は少々込み入った話をする必要がありそうですね。お互いに聞かれてはまずい話もあるでしょうから、全員眠らせてあります」
「はい……とんだ失態をお見せして申し訳ありません。ご配慮痛み入ります」

 女王陛下はそのままペタンと床に座り込んだまま、話し始めた。自らオニールを手打ちにするとか、かなりの覚悟が必要だったんだろうね。その上ノワールとアーテルの殺気に当てられて、身体に力が入らないんだろう。

「どうぞご無理をなさらずに」
「ええ……」

 そのまま女王陛下は話し始めた。
 商才を生かして大きな財を手に入れたブンドルは、手始めに困窮する貴族の支援をする事から始めた。それが貴族のネットワークに深く入り込む余地を与える事になり、要職にある者が買収されていく。
 その貴族や要職にある者達によって先代の王の信を得る事に成功したブンドルは、この国の経済を牛耳っていく事になる。その手腕は巧妙であり、先王がその悪辣さに気付く事はなかった。

「私がブンドルの悪行を知る事になったのは、街の視察に出た時でした」

 女王陛下は続ける。

「父上が体調を崩され、容体が急変し崩御されるまでは、まさにあっという間でした。間もなく私が王位を継いだのですが、祭り上げられただけで何も出来はしません」

 そうだね。急に王様になれって言われても、簡単な話じゃないだろうね。王族として最低限の教育は受けていたとしても、実務は文官や役人達に任せるしかないんじゃないかな。

「そこで私は、侍女と共にお忍びで王都の第三区画まで視察に行ったのです」

 第三区画とは王都の一番外周にあたる区画で、最も庶民らしいところだ。国民の生活の実態を知るなら第三区画だろうね。それでも、他の農村部や田舎町と比べれば、随分と豊かな生活をしてるんだけど。

「王たる者、庶民の暮らしを知らねばならない。そういう事ですね」
「ええ。でも私は、そこで見てしまったのです。夜逃げ同然で店を畳み、王都を去った商人が何と多い事かを」

 閉店して空き家になった商店が多く、さらにそれらの商店を改装している物件も多かったので、陛下はその近隣の住民に話を聞いてみたという。

「ブンドルに妨害され、商売が立ち行かなくなったんですね」
「ええ」

 僕達がグリフォバーグで出会ったマシューさん親子のような人達が、他にもたくさんいて、そうやってブンドルはどんどん影響力を増していく。それで得た金で貴族や役人を買収し、やがて誰も逆らえない存在になり上がってしまった。
 陛下は悔しそうにそう言った。

「それは余りにも不健全で歪なあり方ではありませんか。ですが王位に就いたばかりの私には、ブンドルを排除する力などありません。それどころか、王城内にも政権内部にも、私の味方は殆どいないのです」

 それは、察する。もっと言えば、陛下は怪しい動きをすれば消されてしまう危険性だってあったんじゃないかな。

「そんな折だ。プラチナランクの昇格試験を受けるヤツが王都に来るって話が来たのは」
「えっ!? ユーイングさん!?」

 これは驚いた。てっきり眠っていると思っていたユーイングさんが、しっかりと話を聞いていたらしい。

「ほう? 儂の術に抗うとは。さすがプラチナランクと言ったところか。ふぉっふぉっふぉ」

 グランツが面白そうに目を細める。それにユーイングさんが肩を竦めて答えた。

「まあ、一応な。お前らが陛下に手を出そうとしたら、止めなきゃなんねえだろ?」
「ははは、まさかそんな」

 僕は乾いた笑いで答えた。ノワールとアーテルは結構ガチで怒ってたからね。あ、ほら、二人とも目を逸らした。

「味方が少ない私は、冒険者ギルドと誼を通じました。取締大臣があの体たらくですし、軍だって私の事など小娘程度にしか思っていないでしょう。私には力が必要でした」
「なるほど。それで僕とブンドルのトラブルを知った上で、コイツを潰させようとした」
「ええ、まさか目の前で殺してしまうとは思いませんでしたが」

 見た目が弱そうな僕が、あんな強硬な手段に出るとは思っていなかったらしい。商会を潰すまでは予想していたが、僕が無力化したブンドルを陛下に突き出して終わり。そういう筋書きだったのかも知れないね。

「私の都合であなたを利用した事についての後ろめたさはあります。だからこそ、自らの手でオニールを処し、覚悟を示しました」

 これからは、自分の手を汚す事を厭わず戦っていく覚悟だろうか。確かにオニールを一刀両断とか、なかなかショッキングだった。陛下本人も相当なストレスを抱えてるんじゃないかな。

「本格的な手続きはユーイングに任せますが、あなたはこれよりプラチナランカーです。王侯貴族ですら一目置く存在になりました。そんなあなたにどうかお願い申し上げます! どうか、私と、この国を正常に戻す為にお力を貸していただけないでしょうか!」

 女王陛下が僕に平伏する。いくらプラチナランカー相手でもこれはないだろう。

 ――つまり、光と闇の眷属を従えている僕とデライラの存在は、他のプラチナランカーとは一線を画すって事だよね。陛下は何かを知っている。

「無条件という訳にはいきません。僕等としても、陛下が味方かどうかを見極めなければならないですから」

 僕がそう言うと、彼女は神妙に頷いた。
 さあ、交渉のステージに移行だね。
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