残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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四章

侯爵との再会

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「待たせちゃったかしら?」

 少しばかり息を弾ませたサマンサギルド長が馬車に乗り込んできた。モノクルにアップに纏められた髪。濃紺のパンツスーツという出で立ち。相変わらず出来る女って雰囲気がプンプンするね。

「ほら、領主様の施策でグリペン領も人の出入りが多くなってね。その分問題も……はぁ」

 なるほど。タダでさえ忙しい立場なのに、最近は輪を掛けて、か。
 鉱山の再開で物流が盛んになった分、護衛の仕事をする冒険者や、ウッドランカーなんかは直接鉱山で採掘なんて仕事をするかもしれない。仕事を探して鉱夫になろうとする人達もたくさん流入してきているだろう。そういう人達は血の気が多そうだもんね。

「だからショーン、あんまり問題を起こさないでね?」

 心外です。僕は何もしてません。彼女達が魅力的だからです。仕方ないんです。

「そうだぞショーン? もうお前らにブッ飛ばされたって報告が数件――いてっ!?」
「あなたは他人を注意するより少しは手伝いなさい!」

 なんだこれ。夫婦漫才か。
 イヴァン副ギルド長にツッコミでドツキをいれるサマンサギルド長のタイミングが絶妙すぎる。
 それからは他愛もない会話で時間を潰しながら、グリフォバーグ城までの道程を馬車に揺られていく。やがて城門へ到着したところで、二人の門番が近付いてきた。以前も見た事がある顔だ。

「領主様がお待ちです。ご案内します」

 そう言って馬車を先導していく。それにしても、グリフォバーグに到着したのが今朝の話なのに、もうグリペン侯爵が待ってるとか、僕達どれだけ監視されてるの?

「普通、貴族様って忙しいんじゃないんですか……」

 思わずそんな言葉が口から零れ落ちてしまう。

「ええ、とても忙しいわよ? でも何にも優先して面会すべき相手があなただって事でしょ」

 サマンサギルド長が表情も変えずにそう言う。僕ってそんな重要人物になったんでしょうか……

「人間に貴族は数多くいますが、ご主人様は数人しかいないプラチナランカーです。重要度や希少度度で言えばご主人様の方が上ですっ!」

 なんというか、ノワールが珍しくテンションが高い話し方だ。しかも両手をグーにしてこっちを見る。アーテルもそれを聞いてウンウンと頷いているんだけど。

「ま、そういう事だ。お前もその辺を自覚して、もっと顔と実績を売り込んで有名になりな。じゃねえとお嬢ちゃん方にブッ飛ばされるバカが後を絶たねえ」
「「それは自業自得」」

 イヴァン副ギルド長がせっかく二人に同意したのに、最後の言葉に間髪入れずに突っ込む二人。

「まあ、やりすぎないようにね」
「「善処はする」」

 苦笑しながらサマンサギルド長がそう言えば、そっと目を逸らしながら二人が即答。これにはギルドの幹部二人が溜息だった。

△▼△

「よく来てくれた。まだ旅の疲れも癒えておらぬところをすまんが、話を聞かせてくれ」

 グリペン侯爵との会見の場所は、謁見の間のような畏まった所ではなく、応接室のような部屋だった。リラックスできるように椅子とテーブルがあり、軽い食事と飲み物も用意されている。無礼講と言った感じかな。
 護衛の類はおらず、離れた場所に侍女が一人待機しているだけ。これに関しては、プラチナランカーを相手にいくら護衛を置いても無駄、という事らしい。それに加えて、僕は侯爵が自ら推薦してプラチナランカーになった冒険者だ。そんな人物を侯爵が信頼しないでどうする。といった事でもあるらしい。
 聞けば聞く程とんでもない地位に上り詰めちゃった気がするな。

 それにしても、おそらくグリペン侯爵は、僕が街に入ったらすぐ知らせが入るよう手配してたんだろうね。それだけ僕の帰りを待ちこがれていた訳だ。
 ……というより、僕に対して話したい事があるみたいだけどね。
 僕は侯爵に対して推薦してくれた事に対するお礼と、無事にランクアップできた事の報告をした。ついでにブンドルを始末し、ヤツを擁護する派閥も牽制しておいた事も。

「うむ。大儀だった。これですぐに正常化とはいかぬだろうが、少しでもまともになる兆しがある事は良き事よ。で、女王陛下の信も得られたのだな?」

 それはどうだろう。どちらかと言えばデライラの方がそういうポジションだよね。それに彼女にも『光』が付いている。僕と同等の重要人物のはずだ。しかも例のジョブの件もあるし。

「僕の方はまだ陛下を信用しきれていませんので何とも……しかしデライラがお側にいるので」
「うむ……恐らく世間的にはプラチナランカーの誕生より、陛下のお側にいる冒険者が希少なジョブを得たという話題の方で持ち切りになるだろう」

 うん、それはそれでいいと思うよ。デライラは見栄えもいいし、女王陛下の横に立っても見劣りしない。彼女は表で輝くタイプだと思う。

「それで、貴公との面会を急いだのはいくつか話があってな」
「はい」
「儂の想定を上回る厄介事が起きそうなのだ」

 うわあ、ブンドルの件より面倒事になる予感がするよ……
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