残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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四章

帰還

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「約三か月ぶりかな」

 タッカーさん――ポー子爵の指名依頼を受け、彼の護衛を戦士団のみんなと熟しながら子爵領へと送り届けた後、のんびりとした旅を楽しみながらようやくグリフォバーグへと戻ってきた。

「以前と比べて活気がありますね」
「うむ。なんだかゴツイ連中も増えていんじゃないか?」

 領都グリフォバーグ。僕をプラチナランカーに推薦してくれた、グリペン侯爵のお膝元だ。前から賑やかで活気がある街だったけど、ノワールやアーテルが言うように、増して人間の数が多い。きっと鉱山の再開と軍備の強化が本格的になっているからだろう。
 そういう事業は経済を回すからね。商業も活発になるし、そこを目敏く狙って一山当てようって人もいるだろう。だからグリペン領は人口が増えているはずだ。

「さて、最初はギルドかな」
「そうですね。サマンサギルド長やイヴァン副ギルド長、お元気でしょうか」
「うむ。凱旋報告といくか!」

 僕達は、懐かしく感じるグリフォバーグの街並みを歩いて行く。中には知った顔もいて、声を掛けてくる人達もいる。
 のんびりとした旅路だったせいか、もうプラチナ昇格の件は知れ渡っているようで、祝福してくれた。でもそれは殆どが街で商売を営んでいる人達で。
 以前僕を蔑んでいた冒険者なんかは顔を青くして目を逸らしていく。それはまだいいんだけど……

「ようようにいちゃん! いい女連れて――へぶッ!?」

 ノワールが蹴り飛ばして撃退。
 さらに五分も歩くと……

「そんななよなよした野郎なんかより、俺達とパーティ組まねえk――おごッ!?」

 アーテルが腹パンで黙らせる。
 ギルドに辿り着くまでなんと十二回だよ。むさくてごつい男達が、ノワールとアーテルに声を掛けてきた回数だ。そして例外なく下心満載だから、例外なく悶絶しながら逃げていく事になる。

「ご主人様、さすがに面倒なので、タグをお見せした方がよろしいのでは?」

 ノワールが可愛らしく見上げながらそう言ってきた。僕としてはプラチナになった事を誇りたい訳でも自慢したい訳でもないし、もっと言えば目立ちたくない。だからタグはシャツの襟で隠れるようにしてたんだけどなぁ。

「もう王侯貴族ですら簡単にモノを言えない立場なのだ。堂々としていた方がむしろトラブル防止になるだろう? まあ、そういう奥ゆかしいところが主人らしくていいのだが」

 うーん。確かにアーテルの言う通りなんだけど。仕方ないか。僕はプラチナランカーを示すタグを見えるように、襟元のボタンを外す。タグが見えないように、わざわざ首が隠れるような服を揃えたのになぁ。
 それを見たノワールとアーテルも、ゴールドのタグを見えるようにした。すると、流石に絡んでくる連中もいなくなり、ギルドまでの道中は順調なものになった。

「あ! ショーンさん!」

 ギルドに入って、最初に声を掛けてくれたのは馴染みの受付嬢のパトラさん。中々の美人さんなので、冒険者の人気も高い。残滓と呼ばれて蔑まれていた僕にも良くしてくれた人だ。

「ただいま戻りました。ギルド長はいますか?」
「は、はい! 少々お待ちください!」

 慌ただしいな。大急ぎで奥に行ってしまったパトラさんが、大声でギルド長を探しながら建物の中を駆け回っている。
 その様子から、ギルド内にいた冒険者達も騒めき始めた。

「おい、あれ残滓じゃねえ?」
「バカ、アイツはもうプラチナ様だぜ? 残滓なんて言ってっと、殺されちまうぞ!」

 そんな声もばっちり聞こえてくる。失礼だなぁ。そんな事で殺したりしないよ。

「よう! 久しぶりだな! 裏に馬車を準備してる。サマンサも来るから乗って待っててくれ」

 そんな時、カウンターの奥からイヴァン副ギルド長が現れた。彼の登場でギルド内が静かになり、ちょっとホッとする。

「ノワールとアーテルも一緒で?」
「ああ、もちろんだ。パーティ丸ごと関係がある話もあるからな」

 そういう事なら、という事で、イヴァン副ギルド長の後に続いて裏口から外に出ていく。ああ、これは以前グリフォバーグ城に行く時に乗った馬車だね。結構立派な箱馬車だ。

「どこへ行くんです?」

 馬車に乗り込み席に着く。僕達三人が並び、対面にはイヴァン副ギルド長だ。この馬車がどこに行くのか聞いてないんだよね。

「どうせ領主様ンとこに行く予定だったんだろ? それなら一緒に済ましちまった方がいいだろ」
「ああ、そうですね」
「まあ、詳しい話は城で聞かせてもらうとしてだ」

 そこでイヴァン副ギルド長の顔が悪戯を仕出かした少年のように崩れる。そんなに楽しい事でもあったのだろうか?

「お前がのんびり帰って来てる間にな、デライラのヤツ、ゴールドランクに上がったらしいぜ?」
「へえ!」

 光属性に覚醒してからというもの、彼女の成長は著しい。ルークスやグランツのサポートもあるだろうが、依頼を熟す時の魔物との戦闘は全く危なげがない。
 僕と同じパーティにいる事で得られるバフ効果を抜きにしても、自前で身体強化も出来るようになっているし、拙いながらもを媒体にして魔法も使えるようになってきている。近いうちに昇格はするだろうなと思っていたけど、想像よりずっと早かったな。

「でよ、教会でジョブを調べたらしいんだよ。それがなんと……」

 なんだろ? ドキドキするぞ?
 魔法も使える剣士――魔法剣士マジカルソードマンとかなら有り得そう。かなり珍しいジョブだけどね。

聖剣士マグナ・ソードだってよ」

 勿体付けて、しばらく引っ張っていたイヴァン副ギルド長がようやく口を開くと、聞き覚えのないジョブの名前が飛び出した。

「聞いた事がありませんね」
「そうだろうな。過去、記録にあるのはグリペン侯爵の始祖だけらしい」
「何ですかそれ。もう伝説みたいなものじゃないですか!」

 これにはさすがに僕も驚いたなあ。
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