残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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四章

褐色に対する嫌悪

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 それから暫くはナークさんとの雑談……という名の情報収集合戦だった。彼が主に知りたいのは僕達がドラケン領を訪れた本当の目的、そして中央の情勢みたいだ。逆に僕達が知りたいのはドラケン侯爵家そのもの、と言ったらいいだろうか。
 何しろ国の東端と西端という位置関係の為、お互いに詳細は良く知らない。もしかしたら世俗や文化なんてものも、同じ国家の中でありながらまるで違うという事もあるかもしれないしね。
 そして何より、褐色の肌に関する話。ユーイングさんが以前話したのはあくまでも噂話のレベルだったけど、本当の所はどうなのか。
 ナークさんの方もこちらの真意を知りたいのだろうけれど、肝心のナークさんがどの程度の地位の人で、どれくらい信頼できる人かが掴めていない。だからのらりくらいと躱しながら話している。
 何しろノワールに対する視線があんまり好意的じゃなかったからね。

 暫くして、ナークさんが城に走らせたという部下が戻ってきた。

「シェラ公女が今夜の晩餐に四名様をお招きしたいのとの事です」

 ナークさんが伝令の言葉を僕達に伝えた。二日や三日くらいは待たされると思ったんだけど、随分と反応が早いね。やっぱりヨシュア君の存在が大きいのかな。

「分かりました。それまでの間、僕達は自由にしていても?」
「そうですね……もう昼時ですし、街を案内がてら昼食でもいかがでしょう? そのまま城まで案内いたします」

 こうして僕達はナークさんの案内で、ドラグーンバーグの市街地へと繰り出した。
 街並みは石造りの建物が並ぶが、主に庶民向けの飲食店や商店などは木造も多い印象だ。道路は石畳で舗装されている所とそうでない所があり、舗装された道は全て城へと続いているらしい。その事をナークさんに訊ねると、軍事的な理由、との答えが返ってきた。

「ダンジョンがあると、当然魔物の襲撃に備えなければなりません。舗装路は、その際に戦力の移動をスムーズにする為のものです」

 なるほど、悪天候で地面がぬかるんだりすると機動力にも影響が出るからね。やはりこの街も辺境にあって国土を守る、重要な役割を担っているという事なんだろう。
 そうした会話をしながら歩いている最中でも、道行く人々の視線を感じる。その殆どがノワールに対するもので、やはり好意的なものとは言い難い。

「ナークさん」
「はい、なんでしょう?」
「このドラケンの人々は、ノワールに何か恨みでもあるんですか?」

 意味もなく悪意をぶつけられるのはやっぱり面白くない。ノワールの肌の色が問題で、ここの人達が敵対するようなら僕達のパーティはここで別行動だ。ヨシュア君も恐らくそうするだろうね。何しろ彼の想い人も褐色の肌を持つんだし。

「え、いや、何の事でしょう?」

 ナークさんが額に目を泳がせながらとぼける。

「あなたも明らかにノワールを見る目に悪意がありました。個人的な好みかもと思いましたが、どうやら街の人達もそのようですね」
「そ、そんな事はないかと……」

 僕の不快感が伝わっているんだろう、ノワールもアーテルもかなり抑えてはいるけど圧力を出している。

「やはり、闇の巫女の噂のお陰かな。何もせずにひっそりと暮らしていた親子を、ただ肌の色が違うからといって迫害し、いざ魔物がスタンピードを起こすとその親子に罪を被せる。自分達人間が恨みを買うような事をしておいてだ」

 アーテルがいかにも不機嫌にそう吐き捨てる。

「しかしそのおかげで沢山の人が死んだ!」

 それに反論するようにナークさんが声を荒げた。

「知った事か。ノワールがその張本人ならばいざ知らず。その闇の巫女がやったという証拠でもあるのか?」
「いや、それは……」
「それ見た事か。単なる噂と偏見で、関係ない者をも嫌悪する。我々も悪意をぶつけてくる相手にまで寛容ではないからな?」
「……」

 アーテルの静かで、そして重苦しい雰囲気と共に吐き出した言葉に、それっきりナークさんは反論する事が無かった。

「ナーク殿、私の同行者への無礼は許さない。しかし美味い昼飯を食わせる店を教えてくれたなら手打ちにしようと思うがどうだろう?」

 ここで険悪な雰囲気になったところをヨシュア君がフォローに入る。確かに、ノワールに対する視線は不愉快だけど、これはもうこの人に限った事ではないのだろう。それに基本的には悪い人ではない感じもする。

「貴族のヨシュア様のお口に合うかどうかは分かりませんが、安くて腹いっぱい食わせてくれるお店に行ってみましょうか。もちろん味の方も保証します。ただ、荒くれ者が多いのですが」

 そう言ってナークさんが苦笑した。ダンジョン目当ての冒険者が多く集まる街なんだろうね。冒険者が集まれば、トラブルも日常茶飯事なんだろう。そんな場所に敢えて僕達を連れて行くという事は、余程料理の出来がいいか、それとも別の目的があるのか。

「ここです」

 観音扉を開くと、その中には昼時の喧噪と、食欲をそそる料理の匂い。そして中の客の視線。ああ、これは知っている。初めてのギルドに行った時にありがちなアレだね。
 この後絶対に何かある。
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