残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
179 / 206
四章

黒曜の君

しおりを挟む
 領民から疎まれ、半ば追放に近い形でダンジョン近くの森の中で暮らしていた母娘。その母親が闇属性に親和性がある者しか授からない、呪術師カース・ソーサラーのジョブを得ていた事。これは本当に衝撃的だった。
 僕より昔にそんな人がいただなんて……

「ここにいる皆さんは既にご存知の事を思いますが、未だに光属性、闇属性の二つは世界では周知されていない亡き者にされた属性です。故に、その母親が授かったジョブも、どういうものかは不明のままでした」

 そうか、ほぼ闇属性専門のジョブだからそれは無理もない事だろうね。それがまた迫害に拍車をかけた事も想像に難くない。

「しかしその母親には、自分のやるべき事が分かっていたようです」
「それがつまり、ダンジョンの魔物を抑える事だと?」
「はい」

 主に会話はヨシュア君とシェラ公女で進められているので、僕達はそれを注意深く聞いている。そこでノワールが、僕の袖をちょいちょいと引っ張った。

「ん? どうしたの?」
「ご主人様、恐らくその呪術師カース・ソーサラーは、ダンジョンから出てこようとする魔物達に呪いを掛けていたのでしょう」
「うん、それは何となく」

 どういった呪いかは分からないけど、ダンジョンの外へ出て来たくなくなるような感じだろうか。

呪術師カース・ソーサラーが力を発揮していたという事は、そのダンジョンに闇属性の精霊がいたという事になります」
「なるほど!」

 これはますますダンジョンに行く必要性が出てきた。

「その通りです。ですがその属性云々に関しては、王家や上位貴族の中でも秘中の秘とされてきた事柄ゆえ、公にする事は出来ませんでした。それに、ダンジョンを制圧する程の戦力も当時は無かったと聞きますし、ダンジョンを潰してしまっては魔物の素材という重要な財源が無くなってしまう為、難しい問題でもありました」

 うん、それは分かる。その点、グリペン侯爵は思い切った決断をしたと言えるよね。それに、鉱山を復活させたことで逆に経済を活性化させてもいる。

「そんなある時、ダンジョンを視察に訪れたドラケン侯爵が、その呪術師カース・ソーサラーを見初めて夫人として迎え入れたのだそうです」
「え? それがなぜ……侯爵夫人がなぜダンジョン近くの森で迫害されながら暮らす事に?」

 シェラ公女の話を聞いていたヨシュア君が首を傾げる。

「二人の間に、一人の娘が生まれました。しかしその娘の肌は褐色。闇属性の力を受け継いだ事は明らかでした」

 ただでさえ、自分は人々に迫害され森でひっそり生きてきた身。実際は違うとしても、人々は呪われた女として自分を見る。そんな自分を見初めてくれた侯爵には感謝もしているし愛してもいた。しかし自分はともかく、娘までもがこのような見た目では、侯爵に迷惑が掛かるだろう。
 そう考えた呪術師カース・ソーサラーの女は、生まれて間もない娘を連れて、ひっそりと城を抜け出し森で暮らすようになった。
 そう話すシェラ公女の声色はどこか切ない。

「もちろんドラケン侯爵はお二人を探したのですよね?」
「……いいえ」
「なぜ!」

 城を抜け出した母娘を侯爵が探さなかったと聞いて、ヨシュア君の語気が荒くなる。

「その母親は侯爵に手紙を認めて行きました」

 自分にはダンジョンの魔物を抑えるという使命がある。また褐色の肌を持って生まれた娘も同様の宿命を背負っているはずだ。だから自分達は城で暮らすよりも、ダンジョンの近くで暮らす方が民の、そして侯爵の為になる、と。

「それは本音が半分、建て前が半分くらいなのでしょうね」

 話を聞いた僕はそう呟いた。本当は侯爵と共に暮らしたかったんだろう。だけど、ダンジョンを抑えるという建て前で自分の本心を偽った。

「ええ。しかしそれは、私人としてのモーゼス・ドラケンはともかく、領主として、為政者としてのドラケン侯爵として、ダンジョンの魔物から人々を守る事は自分の使命でもあったのです」

 分からなくはない話だなぁ。なんとも切ない話だ。お互いの使命の為に、幸せな生活を投げ打って……って感じなんだろう。ちなみにモーゼス・ドラケンとは、今は病床にあるドラケン侯爵その人だ。

「それから数年、侯爵が呪われた女を捨てたという噂が広がりました。もっとも、それが侯爵の悪評に繋がったという訳ではなかったようです」
「……」
「そして捨てられた事を恨みに思った母親が、ダンジョンを溢れさせ、スタンピードを巻き起こしたと。ですが実際は、ダンジョン内は魔物で溢れ返り、これ以上ダンジョンを抑える事は不可能な状態になっていました。これはダンジョンの魔物の間引きという仕事を怠った、領主と冒険者ギルドの失策でもあります」

 シェラ公女から伝えられる真実に、僕達は言葉が出なかった。

「スタンピードの直後、その母娘は侯爵配下の精鋭部隊によって救出されました。ですが母親は魔物を抑えるために力を使い果たし、瀕死の状態でした。そしてそのまま……」
「それでその娘さんは……?」

 恐る恐るヨシュア君が訪ねる。するとシェラ公女が意を決したように被っていたヴェールを脱いだ。
 はらりと零れるクリーム色の長い髪。健康的な褐色の肌。黒曜のようなつぶらな瞳。見た目は僕やヨシュア君と同じくらいの年齢の、神秘的で美しい女性だった。

「――!!」

 ヨシュア君が思わず立ち上がる。

「あなた、だったのですね……!」

 そう、ヨシュア君が探し求めていた黒曜の君。シェラ公女、彼女こそがその人だった。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...