残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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四章

アーテルの食欲

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 結局、シェラ公女やヨシュア君、そして僕の説得が功を奏して、シェラ公女のダンジョン行きは許された。
正直な所、ドラケン侯爵が許可を出したのは、ヨシュア君の熱意や政治的意図よりも、僕と共にノワールとアーテルがダンジョンに同行する、という事が大きかったように思える。
 本来闇属性の系譜であるドラケンが、ノワールと闇属性の神獣であるアーテルに敬意を払うのは当然の事だし、また彼女らの主である僕に対してもある種の尊敬の念を抱いているようだったしね。
 昨夜はドラグーン城で一泊し、朝食も侯爵家の皆様と一緒に摂った。侯爵はシェラ公女の母親以外には奥様はおらず、子供はシェラ公女以外にはいない為、このような大人数での食事は久しぶりだと言って上機嫌だった。
 その後、城の宝物庫の中からシェラ公女用の装備品を選ぶ事になった。
 あ、ルークスは昨夜のうちにノワールが王都に連れて帰ったよ。

「城の宝物庫より好きなものを持っていくがいい」

 そういう侯爵の有難いお言葉。もちろん僕等にではなくて、シェラ公女に向けられた言葉だ。
 彼女は今まで武術などとは無縁の生活だったため、体力も筋力も女性冒険者に比べて平均以下しかない。そのため、防御力と軽量という相反するものを選ばなければならず、中々苦労する事になった。

「アーマーはやっぱり革系にするとして、やっぱり盾は持つべきだよね」
「そうだね。軽くて取り回しがいいヤツを探そう」

 僕の意見にヨシュア君が同意する。防御なんて考えていないノワールとアーテルは、こういう時にはあんまり役に立たないかな。
 はっきり言えばシェラ公女は攻撃に関しては計算に入れていない。最低限自分の身を守ってもらう為には盾が有効だろう。

「これなんてどうだろう?」

 一つのバックラーを手に取ったヨシュア君が僕に手渡してきた。あ、これは……
 同じものが二つある。

「ははは、気付いたかい?」
「これを作った人は一体何を考えていたんだろうね? でもシェラ公女にはピッタリだよ」

 本当に何を考えていたのか、このバックラーは二個でセット。つまり両手に盾を持つという、何しに戦場に出て来たと言われそうな装備だ。

「それにしても、金属でも木でもない、なんだろうこの素材?」

 やけに軽い。質感は金属でも木材でもない、なんとなく有機的な感じがするけど、今まで見た事がない材質だな。宝物庫にある以上、希少なものなんだろうけど……

「ああ、それは滅亡した巨人族の肩甲骨か何かを削って作ったものだろう」

 しばらく悩んでいた僕達を見兼ねたアーテルが近付いてきて、バックラーを僕からひょいと取り上げた。

「そっか、肩甲骨なら二つ取れるもんね。それで一対の盾を作ったのかな。でも昔は巨人族なんていたの?」
「うむ。大昔に滅亡してしまったがな。個体数が少ない割には繁殖力が弱かったからだろう。それに、美味くて一体倒すとたらふく食える」
「え、食べたの?」
「肉は美味いぞ。滅亡したのはなんとも惜しかったが、こやつらに繁殖力があれば、人間は滅びていたであろうな」

 アーテルの食料扱いと聞いてなんとも微妙な気持ちになるが、彼女の口ぶりでは人間とは敵対していて、個体の力は強大だった事を偲ばせる。

「あの、アーテル様が食べ尽くしたのですか?」

 恐る恐るという感じでシェラ公女が訊ねると、アーテルは途端に視線を泳がせた。

「ば、ばかを言うな! 人間と巨人族の争いで、人間側が劣勢だったゆえに少しばかり加勢したのだ! うん、そう、加勢だ! 肉はその報酬みたいなものだな!」

 つまり肉食べたさに巨人族と人間の争いに介入して、巨人族を喰い尽くしてしまったと。なるほど、怖すぎるぞアーテル。

「ご主人様。アーテルが巨人族を滅ぼさなければ、人間は今よりずっと少数で、隠れて暮らさねばならない程の弱小種族になっていた可能性があります」

 ふむ。アーテルが暴れまわっていたという事は、ノワールも当然当時の状況を知っているだろうね。彼女の補足に従えば、アーテルは人類の救世主って事になる。

「つまり巨人族はそれほど人間にとって脅威であり、もしもアーテルの食欲が無かったら今の人間の繁栄は無かったって事?」
「ええ、その通りです」
「ちょっ! 我の食欲のせいにするな!」

 そんなやり取りでちょっと笑いが沸き起こる。

「ところで、巨人族の骨って、そんなに固いの?」

 盾として加工するくらいだから強度はそれなりにあるんだろうけど、経年劣化という事もあるだろうし、このまま持って行って実戦というのはちょっと怖いかな。

「うむ、固いぞ。流石に我も骨まで喰らおうとは思わん。それに魔力の通りも良くてな。ある程度なら自己再生してしまうのだ、あやつらは」
「え? それならこの盾に魔力を流したら……?」
「あまりに古いもの故、やってみなくては分からぬが……試してみる価値はあろう」

 そっか、じゃあ試してみよう。
僕は両手にそれぞれバックラーを持ち、魔力を流し込んでみる。なるほどこれはスムーズだな。魔力がスルスル流れ込んでいく感覚だ。
 するとどうだろう? 今まで古びて黄ばんでいたバックラーが、見違えるような純白に輝き始めた。

「おお、これは凄いね」
「うむ、新品同様の輝きだ」
「流石はご主人様です」

 ヨシュア君、アーテル、ノワールが覗き込んできて、目を見張っている。ノワールだけは僕を見てるけど。

「あれ? ちょっと待って下さい」

 おかしいな。見た目は新品同様に蘇っているのに、まだまだ魔力が吸われていくんだ。なんだこれ?

「おい、ショーン君、これは……」

 ヨシュア君がバックラーの中央部に注目している。なんと、中央部がムクムクと盛り上がってきているじゃないか。なんだこれ?
 まだまだ魔力には余裕があるので、引き続き魔力を流していく。するとどうだろう? 盾から湾曲した刃のようなものが出てきてしまった。

「これはあれだ、守りながら相手を斬りつけられる、攻防一体のバックラーなんだ!」

 両手に装備したバックラーで防御しつつ、両手を振り回すとそのまま攻撃になる。いいんじゃないかな。




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