残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
184 / 206
四章

ドラケン候、陥落

しおりを挟む
「よもやよもや、光と闇の大精霊殿が人間の眷属になっておられるとは……」

 ルークスの癒しによって病は全快し、今しばらく体力回復などに努める必要はあるとは言え、この大貴族の当主の健在振りを示す事は領民にも王国全体にも、大きな影響を及ぼすだろう。そんな重要人物が、今僕の前で恐縮している。
 ルークスとノワールが封印されて久しい大精霊であり、そして特に、闇属性のノワールの主人が僕である事。そしてドラケン家の始祖は闇属性の戦士だった事から考えれば、致し方ないといった所だろうか。

「父上、それにこの方々は、ザフト公爵の企みから領民を救って下さったのです」
「なんと!」

 ハンセン村の襲撃をはじめ、ザフト公爵配下の貴族を誅殺した事。シェラ公女はその事を言っている。

「このモーゼス、恩には恩で返す。あのグリペン候の御曹司まで来られているという事は、なんぞ重要な事があるのだろう? 出来る限り力になろう」
「は、有難きお言葉。父からの書状は既にシェラ公女がお読みになっておりますが、用向きというのは我等二候四伯家の連携についてです」

 ここにきて漸く本題に入れる空気になったので、ここから先はヨシュア君の出番だ。
 まずは四大精霊王が何者かに唆されて反逆した事で、光と闇の精霊が封印され、世界から無かった事にされた事。
 そのせいで人心に芽生えた悪や負の感情が行き所を無くし、世が乱れた事。
 直接対決によって風の精霊王は自我を取り戻し味方となっているが、他の三属性は未だ敵であり、公爵家という大勢力が連携して女王陛下に対抗しようとしている事。

「その事を憂えた父が、三つの公爵家に対抗する為に、まず二候四伯家が一つに纏まるべきだと」
「なるほど。確かに二候四伯家とオスト公爵家が連合すれば、残る三つの公爵家もおいそれとは動けなくなるであろうな」

 うん、話は順調に進んでいる。現状敵に囲まれている状態の王都だけど、二候四伯家が連携すれば、逆に三つの公爵家を王都の勢力と挟み撃ちにする事が出来る。これで膠着状態を生み出せるし、力関係も拮抗するだろうね。
 後は遊撃戦力とも呼べる僕達が、各個撃破して行けばいい。それは闇属性の強みでもある。

「そこで父上にお願いがございます」
「申してみよ」
「私をダンジョンに行かせて下さい!」
「ダンジョンだと!?」

 流石にシェラ公女の申し出には侯爵も目を丸くして驚いていた。どうも聞いた感じではシェラ公女には戦闘能力は無さそうだし、侯爵の反応もさもありなん。

「私は領内に蔓延る褐色の肌に対する偏見を無くしたいのです。私が顔を隠す必要のない世の中にしたいのです!」

 シェラ公女がそう言ってチラリとノワールと僕を見る。

「ノワールも僕もこの街に来て随分とイヤな目に遭ったのは事実です。ですから僕は全面的にシェラ公女に賛成ですね」
「しかし、それとダンジョンに潜る事にどんな関係があるというのだ?」

 まずは闇の巫女が呪いの象徴みたいに言われている事を何とかしなければならない。むしろ魔物が溢れ出る事を押さえていたんだから、領民はシェラ公女の母親の恩恵を受けてさえいた。その結果がこれでは、あんまりにも悲しいじゃないか。
 しかしそれには何らかのインパクトを以てシェラ公女の功績としなければならない。そこで公女自らがダンジョンに入り、潰してしまう。それで闇の巫女が魔物を溢れさせたなどという世迷い事は払拭できるだろう。

「私は素顔を晒し、この肌の色が呪いなどではない事を領民に知らしめたい! そのためにはダンジョンを攻略し、力を得たいのです! そしてお母さまの汚名を晴らしたい!」
「むぅ……」

 シェラ公女は熱く語る。しかし侯爵はまだ納得はしていないようだ。

「ダンジョン付近には微弱ながら闇の魔力が漂っていたのでしょう。呪術師カース・ソーサラーである公女のお母さまがその力で魔物を抑えていたのならばそれは確実です」
「……」

 僕はシェラ公女に助け舟を出した。さすがの侯爵も、ノワールの主である僕の言葉には耳を傾けざるを得ないようだ。

「ダンジョンの中に、闇の精霊が封じられている可能性は高いと思います。その精霊を解放し、公女の力になってもらいましょう」
「なるほど……シェラに闇精霊の力を、か」
「父上、どうかお許しを!」

 僕の言葉に考え込む侯爵。そこにシェラ公女が深々と頭を下げる。

「閣下!公女の御身はこの身に代えてもお守り致します! どうかご許可を!」

 さらにヨシュア君も追撃を掛ける。
まあ、ここで侯爵が首を縦に振らなくても、無理矢理シェラ公女を連れて行くだけなんだけどね。と言うか、こんな状態に陥ったのは明らかに侯爵の失策でもある。いくら闇属性の事を明るみに出せなかったからと言って、もう少しやりようはあっただろうに。

「ところでヨシュア公子。そなたがそれほどまでに必死になるのは何故じゃ?」
「それは、シェラ公女こそ、十年前より探し求めていた初恋の君だからです!」
「ほう? そなたはグリペン候の第二子であったな?」
「は」

 ドラケン侯爵の表情が幾分緩み、面白いものを見つけた子供のような視線になる。

「ならばそなたはシェラと共にドラケンを盛り立てていくつもりがあると申すか」
「ダンジョンにてシェラ公女を無事に守り抜いた暁には、何卒認めていただきたく」

 ヨシュア君の答えに、侯爵がふっと笑みを零した。

「娘は世間に顔を晒せば呪われた子と言われるであろうな。それでも娶る覚悟があるなら願ったりだ。それにドラケンとグリペン。光と闇の結び付きも強くなろう。見事娘を守りきってみせよ」
「はっ!」

 ヨシュア君のゴリゴリな感じがいい方向に転んだみたいだね。シェラ公女自身がどう思っているのかは分からないけど、とりあえずはヨシュア君の願いも、シェラ公女の希望も聞き入れてもらえそうだし、今夜はグッスリと休めそうだ。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...