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四章
イケメンの演出
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少しの間ノワールをモフモフしていると、やり切った表情のヨシュア君と、ほんのりと頬を染めたシェラ公女が部屋に入ってきた。僕達はそれを生温かい視線で出迎える。
詳しい結果までは分からないけど、あの感じでは前進した事は間違いない。
「役者も揃ったようですし、そろそろ侯爵閣下の所へ……」
主要人物が揃った所で僕がそう促すと、シェラ公女がルークスへと視線を移して訊ねた。
「ええ、そうですわね。でもこちらの方は?」
ノワールの素性も明かしているし、正体を明かしても構わないだろう。
「彼は光の大精霊。僕と共に行動していたデライラという冒険者が封印を解き、今は彼女の眷属となっています」
「初めまして、人の子よ。デライラ様よりルークスという名を頂いている」
そう言って爽やかなイケメンスマイルでルークスが自己紹介をする。なんか歯がキラッて輝いているぞ。すごいなイケメン効果。
対してシェラ公女が慌てて跪く。
「まさか大精霊様とは! 私はこの地を治めるドラケン侯爵家が一子、シェラと申します。どうぞお見知りおきを」
ただの冒険者である僕とデライラが、大精霊を眷属としている。支配者層が頭を垂れる相手を従えている僕達って、すごく微妙な立場なんだけど、ここでそういった上下関係をつべこべ言っても始まらない。
「シェラ様……」
「は、はい! それでは父のもとへと案内致します」
シェラ公女が案内してくれたのは城の中央にそびえる塔の上層。螺旋階段を登って行くと、何層目かは分からないけどかなりの高さにあるだろう部屋の前に辿り着いた。
――コンコン
「シェラです。お客様をお連れしました」
「儂は気分が優れぬ」
「いえ、そういう訳にも参りません」
シェラ公女は、そう言って強引に入室してしまった。その後を僕等もついていく。
部屋はそう広くない。ただししっかりと窓がある。恐らく最上階か。満月の光が差し込む天蓋付きのベッドには、男性が上体を起こして窓の外の月を眺めている。
「ふう、こんな夜更けに病人の下を訪れるとは無粋な連中だな。儂がドラケンの当主、モーゼスだ」
ゴホゴホと咳き込みながらドラケン侯爵がそう名乗る。
「シェラ。お前がヴェールを外すとはな」
「はい。それだけ信用に足る方々です、父上」
シェラ公女が素顔を晒している事に驚いたドラケン侯爵が目を見張る。
さて、今度はこちらから名乗るトコなんだけど、本来先に名乗るべきヨシュア君が僕を見る。そしてシェラ公女までも。
うーん、これは大精霊の主としての立場上、そうなってしまうんだろうか?
「コホン。僕はショーン。プラチナランクの冒険者です」
「ふむ。噂はここまで届いておる。そのプラチナランカーが儂に何の用だ?」
おっと、病人とは思えない眼光の鋭さだな。
「直接の要件があるのは僕ではありません。ですが、侯爵閣下が健康を害しているとお聞きしまして、何か力になれないかと思いまして」
「領内の名医と呼ばれた者も難儀をしておる病ぞ。冒険者が治せるのか?」
「さあ。ですが治すのは僕ではないので。ルークス、頼む」
病の状態がないところまで戻す事ならノワールなら可能かもしれない。僕もこの先の修行でもしかしたら出来る可能性はある。何しろ、時空を操る闇魔法だ。
しかしそれでは病の根本的な原因を取り去っている訳ではないので、時間の経過と共に発症する可能性はある訳だ。なので、完治させるためには僕やノワールよりもむしろ光属性のルークスが適任なんだ。
僕に促されたルークスが音もなく侯爵のベッドに歩み寄る。
「人の子よ、そのまま動かぬように」
「む……」
いきなりルークスの不遜な物言いに侯爵も戸惑うが、そんな事はお構いなしとばかりにルークスは侯爵の身体に手を翳していく。
頭、胸、腹部、下腹部、手足に至るまで、念入りに診ているようだ。
「ふむ、喉から肺に至るまでですか。あとは過度の咳き込みが原因に一部の骨にヒビが入っていますね」
ルークスが僕に語るように診察結果を口にする。なるほど、主に呼吸器が。
「触れずに手を翳しただけでそこまで分かるのか」
「いや、すでに治しておいた。人の子よ。他ならぬ主の御友人の頼みである。ショーン様に感謝するがよい」
どうしてルークスは権力者には上から目線なのに、僕達には丁寧なんだろうね。ちょっとおかしくなってしまう。
「ご主人様。確かに封印を直接解除したのはデライラですが、そのデライラをダンジョンの最下層まで導いたのご主人様です。つまりご主人様なくしてルークスの復活はありませんでした」
「まあ、そういう事ですよ、ショーン様」
僕の感情を読み取ったノワールがそう言うと、ルークスもイケメンスマイルを浮かべて同意した。でも君達の正体を知らない偉い人は多分気分を害すると思うんだよなぁ。
「いいではないか。その後で我々の正体を明かせばよい。逆に首を垂れるのは人の子の方だ」
アーテルも面白そうにそう言う。なんとも意地の悪い事だね。
一方でシェラ公女はドラケン侯爵の背中をさすりながら気遣っている。
「お加減はいかがですか?」
「ふむ、今までの胸の苦しさが嘘のようだ。呼吸も苦しくない」
そこまで言って侯爵は、背中をさするシェラ公女を制して立ち上がった。
「その方ら、何者だ? いや、冒険者という肩書ではない。もっと根本的な存在が何かという事だ」
立ち上がったドラケン侯爵は長身痩躯。今まで病んでいたのでかなりやつれてはいるが、目に覇気はある。流石は二候四伯家のツートップの片翼というべきか。
「父上、今癒しの魔法を使ったのは――」
「待て、癒しの魔法だとッ!? まさか貴方様は、レベッカ陛下に光の加護を授けられたという……」
「うむ。私は光の大精霊。主人であるデライラ様よりルークスの名を頂いている」
ルークスがそう答えながら、全身を発光させている。いかにも光の精霊だという演出が憎らしいイケメンだ。
「なんと……」
ドラケン侯爵はしばし呆然としたままだった。
詳しい結果までは分からないけど、あの感じでは前進した事は間違いない。
「役者も揃ったようですし、そろそろ侯爵閣下の所へ……」
主要人物が揃った所で僕がそう促すと、シェラ公女がルークスへと視線を移して訊ねた。
「ええ、そうですわね。でもこちらの方は?」
ノワールの素性も明かしているし、正体を明かしても構わないだろう。
「彼は光の大精霊。僕と共に行動していたデライラという冒険者が封印を解き、今は彼女の眷属となっています」
「初めまして、人の子よ。デライラ様よりルークスという名を頂いている」
そう言って爽やかなイケメンスマイルでルークスが自己紹介をする。なんか歯がキラッて輝いているぞ。すごいなイケメン効果。
対してシェラ公女が慌てて跪く。
「まさか大精霊様とは! 私はこの地を治めるドラケン侯爵家が一子、シェラと申します。どうぞお見知りおきを」
ただの冒険者である僕とデライラが、大精霊を眷属としている。支配者層が頭を垂れる相手を従えている僕達って、すごく微妙な立場なんだけど、ここでそういった上下関係をつべこべ言っても始まらない。
「シェラ様……」
「は、はい! それでは父のもとへと案内致します」
シェラ公女が案内してくれたのは城の中央にそびえる塔の上層。螺旋階段を登って行くと、何層目かは分からないけどかなりの高さにあるだろう部屋の前に辿り着いた。
――コンコン
「シェラです。お客様をお連れしました」
「儂は気分が優れぬ」
「いえ、そういう訳にも参りません」
シェラ公女は、そう言って強引に入室してしまった。その後を僕等もついていく。
部屋はそう広くない。ただししっかりと窓がある。恐らく最上階か。満月の光が差し込む天蓋付きのベッドには、男性が上体を起こして窓の外の月を眺めている。
「ふう、こんな夜更けに病人の下を訪れるとは無粋な連中だな。儂がドラケンの当主、モーゼスだ」
ゴホゴホと咳き込みながらドラケン侯爵がそう名乗る。
「シェラ。お前がヴェールを外すとはな」
「はい。それだけ信用に足る方々です、父上」
シェラ公女が素顔を晒している事に驚いたドラケン侯爵が目を見張る。
さて、今度はこちらから名乗るトコなんだけど、本来先に名乗るべきヨシュア君が僕を見る。そしてシェラ公女までも。
うーん、これは大精霊の主としての立場上、そうなってしまうんだろうか?
「コホン。僕はショーン。プラチナランクの冒険者です」
「ふむ。噂はここまで届いておる。そのプラチナランカーが儂に何の用だ?」
おっと、病人とは思えない眼光の鋭さだな。
「直接の要件があるのは僕ではありません。ですが、侯爵閣下が健康を害しているとお聞きしまして、何か力になれないかと思いまして」
「領内の名医と呼ばれた者も難儀をしておる病ぞ。冒険者が治せるのか?」
「さあ。ですが治すのは僕ではないので。ルークス、頼む」
病の状態がないところまで戻す事ならノワールなら可能かもしれない。僕もこの先の修行でもしかしたら出来る可能性はある。何しろ、時空を操る闇魔法だ。
しかしそれでは病の根本的な原因を取り去っている訳ではないので、時間の経過と共に発症する可能性はある訳だ。なので、完治させるためには僕やノワールよりもむしろ光属性のルークスが適任なんだ。
僕に促されたルークスが音もなく侯爵のベッドに歩み寄る。
「人の子よ、そのまま動かぬように」
「む……」
いきなりルークスの不遜な物言いに侯爵も戸惑うが、そんな事はお構いなしとばかりにルークスは侯爵の身体に手を翳していく。
頭、胸、腹部、下腹部、手足に至るまで、念入りに診ているようだ。
「ふむ、喉から肺に至るまでですか。あとは過度の咳き込みが原因に一部の骨にヒビが入っていますね」
ルークスが僕に語るように診察結果を口にする。なるほど、主に呼吸器が。
「触れずに手を翳しただけでそこまで分かるのか」
「いや、すでに治しておいた。人の子よ。他ならぬ主の御友人の頼みである。ショーン様に感謝するがよい」
どうしてルークスは権力者には上から目線なのに、僕達には丁寧なんだろうね。ちょっとおかしくなってしまう。
「ご主人様。確かに封印を直接解除したのはデライラですが、そのデライラをダンジョンの最下層まで導いたのご主人様です。つまりご主人様なくしてルークスの復活はありませんでした」
「まあ、そういう事ですよ、ショーン様」
僕の感情を読み取ったノワールがそう言うと、ルークスもイケメンスマイルを浮かべて同意した。でも君達の正体を知らない偉い人は多分気分を害すると思うんだよなぁ。
「いいではないか。その後で我々の正体を明かせばよい。逆に首を垂れるのは人の子の方だ」
アーテルも面白そうにそう言う。なんとも意地の悪い事だね。
一方でシェラ公女はドラケン侯爵の背中をさすりながら気遣っている。
「お加減はいかがですか?」
「ふむ、今までの胸の苦しさが嘘のようだ。呼吸も苦しくない」
そこまで言って侯爵は、背中をさするシェラ公女を制して立ち上がった。
「その方ら、何者だ? いや、冒険者という肩書ではない。もっと根本的な存在が何かという事だ」
立ち上がったドラケン侯爵は長身痩躯。今まで病んでいたのでかなりやつれてはいるが、目に覇気はある。流石は二候四伯家のツートップの片翼というべきか。
「父上、今癒しの魔法を使ったのは――」
「待て、癒しの魔法だとッ!? まさか貴方様は、レベッカ陛下に光の加護を授けられたという……」
「うむ。私は光の大精霊。主人であるデライラ様よりルークスの名を頂いている」
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※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
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