残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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四章

ダンジョン突入

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 ダンジョンへ行く前の関所にて、台帳にパーティ名とメンバーの名前を記入する。そうしている間にも、他の冒険者達から忌諱と奇異、両方の視線を浴びていた。主にノワールとシェラさんがだけど。
 ただし、気付いた事もある。その視線を浴びせて来る者と、全く気にしない者の二種類がいるという事だ。
 僕達は今まで、グリペン領でも王都でも、またその他の領内でも、ノワールが褐色の肌を持つからと言って不愉快になるような視線や言動を浴びせられた事はない。という事は、そう言った悪意のある視線は全て、地元ドラケン領の冒険者という事になる。
 褐色が呪いだというデマがドラケン領に限定されているならば、思ったより払拭は苦労しないかもしれないね。これが国中に広がっているとなると大事になるんだろうけど。

「見かけない顔だな。余所の領から来たのか?」

 記帳している時に職員さんからそう声を掛けられた。

「ええ、グリペン領からです。あそこはダンジョンが無くなってしまったので」
「あ……、なるほどな。人数は揃っているみたいだが油断しないようにな。ここのダンジョンは他とはちょっと違うんだ」
「そうなんですね。気を付けます」

 関所の職員がそう言って送り出してくれた。僕達が地元の冒険者じゃない事を分かったみたいだ。今の対応を見ると、台帳には正直に名前を書いたんだけどシェラさんが公女だとはバレていないらしい。ただ、視線は険しいものだったけどね。
 それと、やはり僕達がグリペンのダンジョンを攻略してしまったので、他領を拠点にしていた冒険者がこちらに流れてきているらしい事が窺われた。
 実はここのダンジョンが他と違うという事は事前にシェラさんから聞いていたし、ノワールが実際に探ってきてくれている。

 あくまで一般的な話をすれば、ダンジョンというのは洞窟や巨大な塔など、天然や人工物に関わらず、『閉じられた空間』に存在しているものが殆どだ。そして洞窟なら最奥部、塔なら最上階にダンジョンボスがいる、と相場が決まっている。
 しかしここドラケンのダンジョンは全く様相が異なっている。

「そろそろ気を引き締めて行きましょう」

 先頭のノワールがそう注意を促した。なにしろ、これ見よがしに立て札が立てられている。

【この先ダンジョンエリア】

 ダンジョンという書き方。しかし見た目には今までと変わらない雑木林が広がっているだけ。
 つまり、明確な境界は分からないけど、目の前に広がる空間全体がダンジョンという事だ。それだけに、ダンジョンの中心がどこで終着点がどこなのか、ボスはどこにいるのかなど、詳細は一切分かっていないらしく、未だに攻略の糸口すら掴めていないという。

「――!!」

 ある場所から一歩足を踏み入れた途端、纏う空気の質が変わった。じっとりと重苦しい、外とはまるで違う粘っこい空気。しかし周囲の風景に変わった所はない。薄暗い林の中だ。
 それでも、どこかで聞こえて来る剣戟の音や魔物の咆哮、冒険者の叫び声。紛れもなくここはダンジョンなんだ。

「ノワール、君でも分からないのかい?」
「ええ、私の視界から外れたエリアは索敵しようとしても出来ないようです。どうやらダンジョン内には何等かのジャミングが掛けられているようですね」

 ノワールお得意の、影のある場所は全て自分の領域。その中にある者は全て位置を把握できる。その能力は残念ながら使えないようだ。
 それでも、ノワールの視線が届く範囲ならば、三百六十度敵の位置は捕捉出来る訳だから、不意打ちを食らう心配は少ない。ただ、逆に言えば今まで魔物を倒して通過してきたからと言って、背後が安全になる訳でもない。常に全方位警戒が必要になる。

「フォーメーションを変えようか。前衛にヨシュア君、その後ろにシェラさん、左右にノワール、アーテル、後方警戒と支援砲撃は僕が引き受ける」

 守るべきシェラさんは中央へ。その周囲を僕達で固める。

「捕捉しました。半径三百メートル内に魔物の群れが四つ。その内の一つは戦闘中のようです。後方に反応はありません」

 ノワールの目は人間のものより遥かに優れている。それなのに彼女の視界がわずか三百メートルとはね。やっぱりダンジョン内では不思議な力が働いているんだろう。

「だが、我の鼻は誤魔化せん。それ、そこの大木。あれはトレントだな」

 アーテルの視線の先を追えば他の木々よりも一回りは大きな木が一本聳え立っている。トレントとは、木の魔物だ。見た目は木そのままで、木が魔物化したものなのか、魔物が木に擬態したものなのかはよく分かっていない。
 何しろ見た目が木そのものなので、初見殺しとも言われる。植物のクセにかなりのスピードで動き回るし、枝は鋭い刃を持った鞭のようだ。さらに水属性や土属性の魔法に対して耐性が強いという中々の曲者。

「なるほど、これは盲点でした。全く動かないものは魔物として認識できないようです。申し訳ありません、ご主人様」

 擬態しているトレントを見抜けなかった事でしょんぼりしてしまったノワール。しかしアーテルと補完し合えば大した問題じゃないかな。

「大丈夫さ、ノワール。この調子でいこう」

 僕はそう言いながら、風の魔法をトレントに叩き込み、切り刻んでやった。
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