残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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四章

シェラ、覚悟を示す

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 炎の竜巻が収まる頃、トレントの森も消失していた。マザーに吸収されたもの。そしてアーテル達に討伐されたもの。どちらが多いかは定かではないけれど……

「まだ幹の大部分が焼け残っているとはね。あの木の実が全部成長していたら完全再生されていたかも」

 僕が途中から影の中に強引に収納した木の実もかなりの量だ。あれが全てトレントとなり、さらにそれがマザートレントの血肉となっていれば、さらにストックの魔法を減らさなければならなかった。

「うむ、主人のお陰でかなり楽になっていたが……まだトドメの必要がありそうだな」
「そうですね。ですがあれほどの火力を叩き込んでもこの程度のダメージでは、時間が掛かりそうです」

 そうなんだよね。このまま戦闘を継続してマザートレントを倒しきるのがベストだ。しかし実際問題、僕の魔法ストックを大盤振る舞いする以外にはちょっと糸口が見えないかな。
 もちろん、ノワール、アーテルが本気でやれば楽勝かもしれないけど、本来これはシェラさんがやるべき事なんだよね。呪いだなんて間違った風聞を消し去る為に。
 僕としてもダンジョン制覇後、コア破壊をする事で闇か光の精霊が解放できるかもしれないという事で行動しているんだけど。

「なあノワール。コイツを内部から倒す方法はないかな?」

 そう、外部からの攻撃に対しては滅法強いこのマザートレントだ。外がダメなら内部からって単純な理由なんだけど、実際問題としてこんな樹木……いや魔物の内部に直接攻撃する事が出来るかどうか。
 いや、ノワールならば時空を操りどうとでもしてしまうのだろうけど。正直に言えば、彼女にサポートをしてもらいつつ、自力でどうにかしたい。それが自分を高める事になるだろうしね。

「そうですね……以前私がご主人様に復活させていただいた直後の事を思い出して下さい」

 ああ、あの時は確か、闇属性魔法を覚える為、そしてに魔力で身体能力を強化し、その動きに慣れるため、ノワールが僕に憑依する感じだったっけ。
 僕が頷いてそれに答えると、ノワールは更に続けた。

「さすがにご主人様といえども時空を操るにはまだ経験が足りません。かと言って肉体を持ったままマザートレントの内部に入り込む事も不可能です」
「そう、か。じゃあ、やっぱり外側から全力で破壊するしかないね」
「いえ、あの訓練の逆の事も出来なくはないのです。条件は厳しいですが、私とご主人様なら可能かと」

 それから僕は、ノワールに、具体的にはどういった事になるのか、そして厳しい条件とは何なのか、その事を訊ねた。
 まず条件に関しては、まずは闇属性の適正がある事。そして互いの信頼関係が強固である事。いかなる事態になろうとも、相手に身を任せる覚悟がある事。
 それに関しては今更かな。ノワールの件で復讐を誓った時から、僕とノワールは一心同体だ。世界を敵に回す覚悟だって彼女を眷属に迎えた時に出来ている。
 そしてもう一つ。

「私がトレントを倒した時のように、魔力そのものになる事。これは人にとって意識だけの存在になる、ある意味恐ろしい事です。それに耐えられる精神力が求められます」

 そうか。意識だけの存在になるなんて、普通なら死ぬまで体験する事はないだろうね。それに、再び元の肉体に戻れる事が出来るかどうか。それを考えたら相当に恐ろしい事だろうと思う。

「僕なら大丈夫だよ。ノワールに任せておけば間違いない」
「ご主人様……」

 そう言ってノワールを見ると、彼女がうるうるした視線で僕を見上げてくる。改めて僕に信頼されている事を確認出来て、感極まっているのだろうか。
 そこへヨシュア君に伴われて、シェラさんがおずおずと話し掛けてきた。

「あの……私にも、その……出来ますでしょうか?」

 うん? どうだろう。信頼度の高さと精神力。それがノワールの言う基準点に達しているかどうか。闇属性への適正は問題なさそうだけれど。
 そこでノワールがシェラさんをじっと見る。そして自分の魔力の一部をシェラさんへ憑依させた。少しして、その魔力がノワールへと戻ってきた。

「ご主人様。この人の子は、闇属性への適正は問題ありません。しかし互いの信頼関係はお察しですね。ただ、このダンジョンにて何かを為さねばならないという強い意志は感じられました。ご主人様のお許しさえあれば、可能かと存じます」
「なるほど……」

 それなら、シェラさんの覚悟が決まっているなら答えはひとつ。

「僕と一緒にこのマザートレントを倒しますか?」
「はい! 私も何かのお役に立ってみせます!」
「という事だ。ノワール、頼むよ」
「お任せ下さい」

 そして僕とシェラは、霊体化したノワールを受け入れた。
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