神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

SHO

文字の大きさ
20 / 151
AD1189

19話 難民救出作戦

しおりを挟む
 エルサレム市街を出て、アンジーの帰還を待つ一同の視線が上空の煌めきを捉え、目線とはズレた位置から聞こえるジェットエンジンの音を聞く。
 アンジーが音速を超えて飛んできたという事態に、嫌な予感が三戸の頭をよぎる。

「ただいま帰還しました、マスター!」

 銀髪を靡かせ垂直に、ゆっくりと降下してきたアンジーの頭を、三戸はポフポフして労ってやる。

「えへへ……」
「で、どうだった?」
「はい! かなりの規模の難民がキャンプを形成しています。現状は大きな混乱は見受けられませんでしたが……」

 言い淀むようにやや間を置くアンジーの態度に、ジャンヌも嫌な予感がしたのだろう。

「どうしたの? マズイ事態?」
「……はい。死海上空に魔界の穴が出現していました」

(魔界の穴が移動したってのか? なんだよそりゃ! 自由すぎんだろ!)

 心の中で毒づく三戸だが、状況は非常に良くない。難民となった住人達は、目的としている死海方面に魔界の穴が出現した事を知らないだろう。折角エルサレムを放棄してまで逃げ延びようとしているのに、その先には魔物が待っているのだ。

「……急ぐぞ。アンジー。基地防空用SAMを二台出してくれ。分乗していくぞ。一台はお前が運転してくれ」
「はい! ではジャンヌ様、関羽様、こちらへ!」

 さりげなく脳筋二人を除外したアンジーの姿を見て、頬を緩ませる三戸。

「じゃあむさ苦しい二人はこっちだな。早く乗ってくれ。ブッ飛ばして行くぞ!」
「むさ苦しい……?」
「儂ら、嫌われておるのう……」

 ブツブツ文句を言いながらも乗り込んで来るリチャード一世とサラディンだが、いざ走り始めると好奇心に輝く少年のような瞳になる。

「うおおお! この鉄の馬車は馬もなしにこんなに速く走るのか!」
「ほっほっほ、これは愉快じゃの。癖になるわい!」

(戦闘狂はスピード狂でもあったってか。全く、いい歳して心はガキのまんまか)

 車のスピードにはしゃぐ二人を見て三戸は苦笑するが、自分も飛行機に初めて乗った時の事を思えば人の事は笑えない。年甲斐もなく気持ちが高揚したのを昨日のように覚えている。
 三戸は難民の位置は知らされていないので、アンジーの車を先行させて追従している形だが、アンジーから無線連絡が入る。

『マスター、レーダー画像を念送します』

 『念送』とは、三戸とアンジーの間で便宜的に使用している単語で、アンジーの入手した情報を直接三戸の脳内や網膜に伝達する方法の事である。本来ならば、無線機など使わなくてもテレパシーのようなもので会話すら可能なのだが、敢えて無線による会話を選択したという事は、同乗者にも情報を開示した方が良いとの判断なのだろう。

「なるほど……」
「何か動きがあったかの?」
「うむ。そろそろ出番であるか?」
「ああ。出番だな。どうやら魔物が湧きだして難民キャンプへ向かって動き出したみたいだ。少し作戦を練ろう」

 耳聡く無線の会話を聞いていた二人そう告げると、三戸は無線機でアンジーに連絡した。

「難民キャンプに敵を通さないように防衛線を張ろう。その場に集合して作戦会議だ。アンジー、場所の選定は任せる」
『はいっ! お任せ下さい、マスター!!』
「おーおー、お主にはデレデレじゃのう。この果報者めが」
「ふん、爺の癖に妬いておるか」
「ほっほ、お主と違ってまだ枯れてはおらぬでな」

 また始まったか、とややうんざりしながら二人のやり取りを聞いていた三戸だが、前を走るアンジーの車がスピードダウンしてきたのを見て、好機とばかりに二人を諫める。

「もうすぐ作戦会議の場所に到着するぞ? あんたらもいい加減大人にならねえとアンジーに刺されるぞ?」
「うっ……」
「あの娘には敵わんわい……」

 すっかりアンジーに苦手意識を植え込まれた二人が大人しくなった丁度その時、アンジーが停車した。

「なるほど、ここか」

 アンジーが選んだ場所は、遥か東に死海を望む高台。ここなら迫る魔物の群れを一望できるし、後方の難民キャンプを襲う為にはこの高台に築いた防衛線を突破しなければならない。後は自分達が不退転の覚悟で戦うだけだ。

「いい場所じゃないか、アンジー。遮蔽物もないし、俺達の火力が存分に生かされるな」
「えへへ~、ありがとうございますっ! ここにいっぱい火砲並べてしまいますね!」

 三戸に褒められて、本当に嬉しそうに微笑むアンジーの愛くるしさに一同蕩けそうになるが、ドッコンドッコンとCWISやらミサイル類やらを鼻歌まじりに並べて行く姿を見て顔を引き攣らせる。
 
「あー、設置の方はアンジーに任せて、こっちは作戦会議と行こう。折角メンバーも増えた事だし、今回は二面作戦を提案する」

 三戸の提案に一同が興味を引かれた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...