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AD1189
20話 アンジー、テンション突き抜ける
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「難民を守る役目、魔界の穴を塞ぐ役目。この二つに分けて作戦を実施したい」
厳密に言えば、死海を目指している難民達をエルサレムに帰還させつつ、魔物の襲来から守る、という難易度の高い作戦になる。
「穴を塞ぎに行く攻め手の方に敵が釣られて行くなら、防衛部隊はより安全に難民を撤退させられるし、逆に防衛部隊に敵が集まるなら、穴の方は手薄になる。そういう事ですね?」
ジャンヌはしっかりと理解しているようだ。問題は脳筋達か。
「なるほど。では火力と機動性を兼ね備えたミト殿とアンジーで敵本丸を攻撃、残った我らが難民の防衛でいかがか?」
顎鬚を撫で付けながらそう話す関羽に、リチャード一世とサラディンも大きく頷いて意見を述べる。
「うむ、良いのではないか? なにしろ高速で移動できるのは途轍もないアドバンテージだからな! 魔物がこちらに辿り着く前に魔界の穴を塞いでしまうやも知れんぞ?」
「そうじゃな。ミトが早めに穴を塞いでしまえば、魔物共を挟撃する事も可能じゃ」
どうやら作戦の本質は理解していたようで、三戸は一安心する。
「……誰一人として苦戦するとか負けるとか、そういうリスクは考えてないのですね」
「「「「「あ……」」」」」
「マスターまで!?」
やや能天気に過ぎる救世者達にチクリと入れたアンジーだったが、よもや自分のマスターである三戸までがそうだった事に驚き禁じ得ない。
「いや、アンジーと一緒に戦って、負けるトコなんて想像できないだろ……」
「はっ!? そ、そうですね! もちろんですっ!」
しかしそれは、自分への信頼の証。それを他ならぬ三戸本人の口から聞いたことで、アンジーのテンションは限界突破だ。
「こうしてはいられません! さ! 行きますよマスター!」
「お、おう?」
銀色の装甲を身に纏ったアンジーは、腰部のバーニアからジェット噴射しながら急上昇する。ただし、脇に三戸を抱えた状態でだ。
どれくらいの高度だろうか。もはや地上のジャンヌ達を視認することすら困難になった頃――
「ちゃんと、私に乗って下さいね? マスター?」
そう言って、アンジーは空中で三戸から手を離した。
「おいバカ! やめ! おおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?」
そのまま三戸は悲鳴を上げながら自由落下を始める。口で言う程自由落下とは自由ではないと言ったのは誰だっけ。そんな事が脳裏によぎる。
このまま地上に激突して自分は終わりかと思ったが、突如として尻から腰、背中へと、懐かしい接地感を感じた。
「やはり、マスターには操縦桿がお似合いですよ」
「これは……コックピット?」
「はいっ! あなたのアンジー1ですっ!」
空中で落下していた三戸を拾い上げたのは、懐かしい愛機、ファントムだった。
△▼△
「あの空飛ぶ巨大な鉄の鳥がアンジーの真の姿……」
超スピードで飛び去っていくファントムを見送りながら、感嘆した様子でジャンヌが呟く。
「あの姿のアンジーを見るのは、ジャンヌ殿も初めてか?」
「ええ……」
同じように空を見上げながらの関羽の問いに、ジャンヌは短く答えた。
三戸の一行で最初に仲間になったのはジャンヌだが、今までは人型で戦うアンジーしか見た事がない。
「うむ。ミトの方は心配いらぬな! あの速度では魔物の攻撃など当たるまい。こちらはこちらの役目を果たそうではないか!」
「その通りじゃな。我らが後ろには難民がおる。ここからは一歩も通さぬわい!」
一方、飛び去るファントムを見送ったリチャード一世とサラディンが不敵に笑う。
そんな彼らの元へ、難民キャンプの方から近付いてくる者達がいた。おっかなびっくりではあるが好奇心も抑えられない、そんな様子である。
「あ、あのう……これは一体?」
そんな中で、子連れの父親らしき男がおずおずと話しかけてきた。
「おう、丁度よいところに来た。お主、キャンプへ戻って皆に伝えてくれぬかのう? これよりここは魔物との戦場になる。全員で急ぎエルサレムへ戻れとな」
そう言うサラディンに、男は困惑しながら答えた。
「ですがエルサレムには魔物の巣が……」
「うむ。それならばもう消えておるよ。確認済みじゃ。今のエルサレムは魔物一匹おらん安全な場所になっておる」
「では、ここにいる方が危険……?」
「そういう事じゃな」
サラディンに言われて、男は他の三人を見渡す。関羽とリチャード一世は黙って頷き、ジャンヌは微笑みながら言った。
「お急ぎなさい。魔物はここから一歩も通しませんから」
「わっ、分かりました!」
ジャンヌに諭され、男は難民キャンプへと戻っていった。それを見ながらサラディンがボソリと呟く。
「やはり見目麗しいおなごの話の方が聞き入れやすいのかのう……」
「当たり前だ! 貴様のような爺より美人の話の方が信用できるのは当然!」
そこにリチャード一世がトドメを刺す。
「うふふ。お二人共、そこまでですよ。どうやら敵が近付いてきたようです」
ジャンヌがそう言った直後、アンジーが設置していったciwsが咆哮をあげた。
厳密に言えば、死海を目指している難民達をエルサレムに帰還させつつ、魔物の襲来から守る、という難易度の高い作戦になる。
「穴を塞ぎに行く攻め手の方に敵が釣られて行くなら、防衛部隊はより安全に難民を撤退させられるし、逆に防衛部隊に敵が集まるなら、穴の方は手薄になる。そういう事ですね?」
ジャンヌはしっかりと理解しているようだ。問題は脳筋達か。
「なるほど。では火力と機動性を兼ね備えたミト殿とアンジーで敵本丸を攻撃、残った我らが難民の防衛でいかがか?」
顎鬚を撫で付けながらそう話す関羽に、リチャード一世とサラディンも大きく頷いて意見を述べる。
「うむ、良いのではないか? なにしろ高速で移動できるのは途轍もないアドバンテージだからな! 魔物がこちらに辿り着く前に魔界の穴を塞いでしまうやも知れんぞ?」
「そうじゃな。ミトが早めに穴を塞いでしまえば、魔物共を挟撃する事も可能じゃ」
どうやら作戦の本質は理解していたようで、三戸は一安心する。
「……誰一人として苦戦するとか負けるとか、そういうリスクは考えてないのですね」
「「「「「あ……」」」」」
「マスターまで!?」
やや能天気に過ぎる救世者達にチクリと入れたアンジーだったが、よもや自分のマスターである三戸までがそうだった事に驚き禁じ得ない。
「いや、アンジーと一緒に戦って、負けるトコなんて想像できないだろ……」
「はっ!? そ、そうですね! もちろんですっ!」
しかしそれは、自分への信頼の証。それを他ならぬ三戸本人の口から聞いたことで、アンジーのテンションは限界突破だ。
「こうしてはいられません! さ! 行きますよマスター!」
「お、おう?」
銀色の装甲を身に纏ったアンジーは、腰部のバーニアからジェット噴射しながら急上昇する。ただし、脇に三戸を抱えた状態でだ。
どれくらいの高度だろうか。もはや地上のジャンヌ達を視認することすら困難になった頃――
「ちゃんと、私に乗って下さいね? マスター?」
そう言って、アンジーは空中で三戸から手を離した。
「おいバカ! やめ! おおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?」
そのまま三戸は悲鳴を上げながら自由落下を始める。口で言う程自由落下とは自由ではないと言ったのは誰だっけ。そんな事が脳裏によぎる。
このまま地上に激突して自分は終わりかと思ったが、突如として尻から腰、背中へと、懐かしい接地感を感じた。
「やはり、マスターには操縦桿がお似合いですよ」
「これは……コックピット?」
「はいっ! あなたのアンジー1ですっ!」
空中で落下していた三戸を拾い上げたのは、懐かしい愛機、ファントムだった。
△▼△
「あの空飛ぶ巨大な鉄の鳥がアンジーの真の姿……」
超スピードで飛び去っていくファントムを見送りながら、感嘆した様子でジャンヌが呟く。
「あの姿のアンジーを見るのは、ジャンヌ殿も初めてか?」
「ええ……」
同じように空を見上げながらの関羽の問いに、ジャンヌは短く答えた。
三戸の一行で最初に仲間になったのはジャンヌだが、今までは人型で戦うアンジーしか見た事がない。
「うむ。ミトの方は心配いらぬな! あの速度では魔物の攻撃など当たるまい。こちらはこちらの役目を果たそうではないか!」
「その通りじゃな。我らが後ろには難民がおる。ここからは一歩も通さぬわい!」
一方、飛び去るファントムを見送ったリチャード一世とサラディンが不敵に笑う。
そんな彼らの元へ、難民キャンプの方から近付いてくる者達がいた。おっかなびっくりではあるが好奇心も抑えられない、そんな様子である。
「あ、あのう……これは一体?」
そんな中で、子連れの父親らしき男がおずおずと話しかけてきた。
「おう、丁度よいところに来た。お主、キャンプへ戻って皆に伝えてくれぬかのう? これよりここは魔物との戦場になる。全員で急ぎエルサレムへ戻れとな」
そう言うサラディンに、男は困惑しながら答えた。
「ですがエルサレムには魔物の巣が……」
「うむ。それならばもう消えておるよ。確認済みじゃ。今のエルサレムは魔物一匹おらん安全な場所になっておる」
「では、ここにいる方が危険……?」
「そういう事じゃな」
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「お急ぎなさい。魔物はここから一歩も通しませんから」
「わっ、分かりました!」
ジャンヌに諭され、男は難民キャンプへと戻っていった。それを見ながらサラディンがボソリと呟く。
「やはり見目麗しいおなごの話の方が聞き入れやすいのかのう……」
「当たり前だ! 貴様のような爺より美人の話の方が信用できるのは当然!」
そこにリチャード一世がトドメを刺す。
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