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AD1855
58話 ヘキサゴン大攻防戦
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既に日は沈み、周囲は夜の帳に包まれている。ヘキサゴン内部の難民集落では、殆どの世帯が夕食を終えているが、いつもと違い団らんの時間とはなっていない。
テント内でのランタンの明かり、そして外では松明がパチパチと爆ぜる音。それ以外の動きはなく、緊張感に包まれている。
たっぷりと三戸から『ご主人様成分』を吸収したアンジーは見事に復活し、ヘキサゴン周辺の広い範囲をレーダーによって監視していた。その結果、西からの魔物の大群はヘキサゴンから十数キロの地点で進軍を止めていることが分かっている。これがヘキサゴン全体が緊張感に包まれている理由だ。
明らかに夜襲を狙っていると思われるその動き。もっとも、関羽とジャンヌのたった二人での奮戦や、巨大なデーモンクラスを複数倒してしまう三戸やナイチンゲールの戦う姿を目の当たりにしている為、難民達の間には悲観的な空気はない。
さらにはリチャードが防壁を作ったり空堀を作ったりする様子も見ている上に、数は少ないが正規軍の協力。自分達は決して見捨てられてなどいない。その思いが、難民達の心を強くしていた。
そして、救世者を始めとする戦闘員達は、三戸によって全員防壁上に集められていた。
「こいつを顔に付けてくれ。そいつよりも夜目が効くって奴は外しても構わない」
四角い箱型の物に、二つの筒型のものが突き出している。微光暗視眼鏡JGVS-V3。双眼式のナイトスコープだ。
有効距離はそれほど長くはないが、暗闇でも敵を識別できるのは大きなアドバンテージになる。アンジーがポンポンと出現させたそれを、三戸が全員に配っていく。
それに、有効距離がそれほど長くはないと言っても、こちらの世界の銃の性能を考えればそれほど能力不足という訳でもない。
志願兵の隊長がターキーの所からかき集めてきた銃を見る限り、それは三戸から見て数世代前の代物だった。弾倉などは存在せず、銃身に弾丸と装薬を詰めてから発射するという方式は火縄銃と変わらない。流石に火縄を使っている訳ではないが、ライフリングは施されておらず、射程も長くないし精度も低い。
しかしそれでも、一旦は魔物を撤退させた事から、その殺傷力は十分なものであることは間違いない。
「おお! すげー見えるぜこれ!」
「ホント! これで夜でも魔物に鉛玉を喰らわせられるわ!」
志願兵以外の有志の者達にもそれは配布され、暗視スコープの性能にわいわいと盛り上がりを見せる。
「あー儂はいらんかの」
「うむ。それがしも夜目は効く」
サラディンと関羽がそう言うと、ジャンヌとナイチンゲールも同意するように頷いた。
(なるほど。救世者は夜間戦闘にも困らない仕様だってか)
自分を含めた救世者のチートな能力に、神様に魔改造されたのではないかと疑いたくなる三戸。しかし、その救世者の中で一人、普段と違い大人しいものがいる。
「どうした? 調子でも悪いのか?」
リチャードである。胡坐をかいてどっかりと座り、瞑目したまま動かない。心配になった三戸が声を掛けた。
「いや、余はどこも悪くはない。だが、エクスカリバーがヘソを曲げておるようでな」
「ほう? アンジー、ちょっと来てくれ!」
「はいっ!」
リチャードの言葉に興味を引かれた三戸がアンジーを呼び寄せると、見えない尻尾を振りながらトテトテと駆けてくる。
「エクスカリバーと話が出来るか?」
「はいっ! ちょっとお話してみますね!」
ふむふむ。へー。そうなんですかー。 そうですよねー、わかります!
アンジーはしゃがみ込んで、地面に置いてあるエクスカリバーと会話していた。聞こえるのはアンジーの声のみだが、リチャードは苦々しい顔でそれを聞いている。
「えーとですね、エクスカリバーさんが言うにはですね……あ、ごめんなさい、この話はまた後で! 魔物が動き出しました!」
エクスカリバーとの会話の内容を自ら遮り、アンジーが西を見た。レーダーが表示する魔物に動きがあったらしい。
「よーし、全員迎撃準備! 慌てるなよ! こっちの方が射程は長い!」
三戸の指示を受けて、MINIMIを構えた志願兵が二十名、難民から選抜されて有志の兵が五十余名、防壁の上から銃を構える。
「やはりデーモンクラスが何体かいるようです」
レーダーから得た情報を解析していたアンジーから情報がもたらされた。
「よし、情報をリンクする。それからパンツッァーファウストを」
「はいっ!」
110mm個人携帯対戦車弾。通称パンツッァーファウスト。三戸はそれを構え、後方を確認する。発射の際の衝撃を緩和するため、後方に爆風が放たれる。人間が巻き込まれればかなりのダメージを喰らうため、後方確認を怠る訳にはいかない。
「よーっし、デカいのブッ放すぞ! 俺の後ろに立つんじゃねえぞ!?」
三戸が叫びながら弾頭を発射する。狙いはデーモンクラス。火線を引きながら飛翔していく弾頭は、やがてはるか前方で爆発を巻き起こした。これが引き金となり、ヘキサゴン大攻防戦の幕が開けた。
テント内でのランタンの明かり、そして外では松明がパチパチと爆ぜる音。それ以外の動きはなく、緊張感に包まれている。
たっぷりと三戸から『ご主人様成分』を吸収したアンジーは見事に復活し、ヘキサゴン周辺の広い範囲をレーダーによって監視していた。その結果、西からの魔物の大群はヘキサゴンから十数キロの地点で進軍を止めていることが分かっている。これがヘキサゴン全体が緊張感に包まれている理由だ。
明らかに夜襲を狙っていると思われるその動き。もっとも、関羽とジャンヌのたった二人での奮戦や、巨大なデーモンクラスを複数倒してしまう三戸やナイチンゲールの戦う姿を目の当たりにしている為、難民達の間には悲観的な空気はない。
さらにはリチャードが防壁を作ったり空堀を作ったりする様子も見ている上に、数は少ないが正規軍の協力。自分達は決して見捨てられてなどいない。その思いが、難民達の心を強くしていた。
そして、救世者を始めとする戦闘員達は、三戸によって全員防壁上に集められていた。
「こいつを顔に付けてくれ。そいつよりも夜目が効くって奴は外しても構わない」
四角い箱型の物に、二つの筒型のものが突き出している。微光暗視眼鏡JGVS-V3。双眼式のナイトスコープだ。
有効距離はそれほど長くはないが、暗闇でも敵を識別できるのは大きなアドバンテージになる。アンジーがポンポンと出現させたそれを、三戸が全員に配っていく。
それに、有効距離がそれほど長くはないと言っても、こちらの世界の銃の性能を考えればそれほど能力不足という訳でもない。
志願兵の隊長がターキーの所からかき集めてきた銃を見る限り、それは三戸から見て数世代前の代物だった。弾倉などは存在せず、銃身に弾丸と装薬を詰めてから発射するという方式は火縄銃と変わらない。流石に火縄を使っている訳ではないが、ライフリングは施されておらず、射程も長くないし精度も低い。
しかしそれでも、一旦は魔物を撤退させた事から、その殺傷力は十分なものであることは間違いない。
「おお! すげー見えるぜこれ!」
「ホント! これで夜でも魔物に鉛玉を喰らわせられるわ!」
志願兵以外の有志の者達にもそれは配布され、暗視スコープの性能にわいわいと盛り上がりを見せる。
「あー儂はいらんかの」
「うむ。それがしも夜目は効く」
サラディンと関羽がそう言うと、ジャンヌとナイチンゲールも同意するように頷いた。
(なるほど。救世者は夜間戦闘にも困らない仕様だってか)
自分を含めた救世者のチートな能力に、神様に魔改造されたのではないかと疑いたくなる三戸。しかし、その救世者の中で一人、普段と違い大人しいものがいる。
「どうした? 調子でも悪いのか?」
リチャードである。胡坐をかいてどっかりと座り、瞑目したまま動かない。心配になった三戸が声を掛けた。
「いや、余はどこも悪くはない。だが、エクスカリバーがヘソを曲げておるようでな」
「ほう? アンジー、ちょっと来てくれ!」
「はいっ!」
リチャードの言葉に興味を引かれた三戸がアンジーを呼び寄せると、見えない尻尾を振りながらトテトテと駆けてくる。
「エクスカリバーと話が出来るか?」
「はいっ! ちょっとお話してみますね!」
ふむふむ。へー。そうなんですかー。 そうですよねー、わかります!
アンジーはしゃがみ込んで、地面に置いてあるエクスカリバーと会話していた。聞こえるのはアンジーの声のみだが、リチャードは苦々しい顔でそれを聞いている。
「えーとですね、エクスカリバーさんが言うにはですね……あ、ごめんなさい、この話はまた後で! 魔物が動き出しました!」
エクスカリバーとの会話の内容を自ら遮り、アンジーが西を見た。レーダーが表示する魔物に動きがあったらしい。
「よーし、全員迎撃準備! 慌てるなよ! こっちの方が射程は長い!」
三戸の指示を受けて、MINIMIを構えた志願兵が二十名、難民から選抜されて有志の兵が五十余名、防壁の上から銃を構える。
「やはりデーモンクラスが何体かいるようです」
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「よし、情報をリンクする。それからパンツッァーファウストを」
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