神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

SHO

文字の大きさ
59 / 151
AD1855

58話 ヘキサゴン大攻防戦

しおりを挟む
 既に日は沈み、周囲は夜のとばりに包まれている。ヘキサゴン内部の難民集落では、殆どの世帯が夕食を終えているが、いつもと違い団らんの時間とはなっていない。
 テント内でのランタンの明かり、そして外では松明がパチパチと爆ぜる音。それ以外の動きはなく、緊張感に包まれている。
 たっぷりと三戸から『ご主人様成分』を吸収したアンジーは見事に復活し、ヘキサゴン周辺の広い範囲をレーダーによって監視していた。その結果、西からの魔物の大群はヘキサゴンから十数キロの地点で進軍を止めていることが分かっている。これがヘキサゴン全体が緊張感に包まれている理由だ。
 明らかに夜襲を狙っていると思われるその動き。もっとも、関羽とジャンヌのたった二人での奮戦や、巨大なデーモンクラスを複数倒してしまう三戸やナイチンゲールの戦う姿を目の当たりにしている為、難民達の間には悲観的な空気はない。
 さらにはリチャードが防壁を作ったり空堀を作ったりする様子も見ている上に、数は少ないが正規軍の協力。自分達は決して見捨てられてなどいない。その思いが、難民達の心を強くしていた。
 そして、救世者メサイアを始めとする戦闘員達は、三戸によって全員防壁上に集められていた。

「こいつを顔に付けてくれ。そいつよりも夜目が効くって奴は外しても構わない」

 四角い箱型の物に、二つの筒型のものが突き出している。微光暗視眼鏡JGVS-V3。双眼式のナイトスコープだ。



 有効距離はそれほど長くはないが、暗闇でも敵を識別できるのは大きなアドバンテージになる。アンジーがポンポンと出現させたそれを、三戸が全員に配っていく。
 それに、有効距離がそれほど長くはないと言っても、こちらの世界の銃の性能を考えればそれほど能力不足という訳でもない。
 志願兵の隊長がターキーの所からかき集めてきた銃を見る限り、それは三戸から見て数世代前の代物だった。弾倉などは存在せず、銃身に弾丸と装薬を詰めてから発射するという方式は火縄銃と変わらない。流石に火縄を使っている訳ではないが、ライフリングは施されておらず、射程も長くないし精度も低い。
 しかしそれでも、一旦は魔物を撤退させた事から、その殺傷力は十分なものであることは間違いない。

「おお! すげー見えるぜこれ!」
「ホント! これで夜でも魔物に鉛玉を喰らわせられるわ!」

 志願兵以外の有志の者達にもそれは配布され、暗視スコープの性能にわいわいと盛り上がりを見せる。

「あー儂はいらんかの」
「うむ。それがしも夜目は効く」

 サラディンと関羽がそう言うと、ジャンヌとナイチンゲールも同意するように頷いた。

(なるほど。救世者メサイアは夜間戦闘にも困らない仕様だってか)

 自分を含めた救世者メサイアのチートな能力に、神様に魔改造されたのではないかと疑いたくなる三戸。しかし、その救世者メサイアの中で一人、普段と違い大人しいものがいる。

「どうした? 調子でも悪いのか?」

 リチャードである。胡坐をかいてどっかりと座り、瞑目したまま動かない。心配になった三戸が声を掛けた。

「いや、余はどこも悪くはない。だが、エクスカリバーがヘソを曲げておるようでな」
「ほう? アンジー、ちょっと来てくれ!」
「はいっ!」

 リチャードの言葉に興味を引かれた三戸がアンジーを呼び寄せると、見えない尻尾を振りながらトテトテと駆けてくる。

「エクスカリバーと話が出来るか?」
「はいっ! ちょっとお話してみますね!」

 ふむふむ。へー。そうなんですかー。 そうですよねー、わかります!
 
 アンジーはしゃがみ込んで、地面に置いてあるエクスカリバーと会話していた。聞こえるのはアンジーの声のみだが、リチャードは苦々しい顔でそれを聞いている。

「えーとですね、エクスカリバーさんが言うにはですね……あ、ごめんなさい、この話はまた後で! 魔物が動き出しました!」
 
 エクスカリバーとの会話の内容を自ら遮り、アンジーが西を見た。レーダーが表示する魔物に動きがあったらしい。

「よーし、全員迎撃準備! 慌てるなよ! こっちの方が射程は長い!」

 三戸の指示を受けて、MINIMIを構えた志願兵が二十名、難民から選抜されて有志の兵が五十余名、防壁の上から銃を構える。

「やはりデーモンクラスが何体かいるようです」

 レーダーから得た情報を解析していたアンジーから情報がもたらされた。

「よし、情報をリンクする。それからパンツッァーファウストを」
「はいっ!」



 110mm個人携帯対戦車弾。通称パンツッァーファウスト。三戸はそれを構え、後方を確認する。発射の際の衝撃を緩和するため、後方に爆風が放たれる。人間が巻き込まれればかなりのダメージを喰らうため、後方確認を怠る訳にはいかない。

「よーっし、デカいのブッ放すぞ! 俺の後ろに立つんじゃねえぞ!?」

 三戸が叫びながら弾頭を発射する。狙いはデーモンクラス。火線を引きながら飛翔していく弾頭は、やがてはるか前方で爆発を巻き起こした。これが引き金となり、ヘキサゴン大攻防戦の幕が開けた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...