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AD1855
70話 ヴァイパー・ゼロ
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その時ヘキサゴン内部にいる全員が、揺れが収まったと思った。
「いや、サラディンがヘキサゴン全体を浮かせたのか」
防壁から地上を見下ろせば、地面は未だにうねるように揺れている。そしてその地上がゆっくりと遠くなっていくのだ。
飛行型の魔物達も、浮上を始めたヘキサゴンを呆気に取られて見ている事しか出来ず、地表から二十メートル程浮き上がった所で止まった。ヘキサゴンの中にいたのでは分からないが、元々ヘキサゴンがあった場所には六芒星の形の巨大な穴が空いている。それはつまり、サラディンがヘキサゴンの基礎となる部分ごと浮上させたという事だ。
「これだけの範囲の重力を制御するのも骨じゃが、この高度を維持するのはもっと骨なのじゃ。なにせ、少しでも気を緩めれば、このまま空の彼方まで浮いていくか、地表に墜落するか、どっちかじゃからな」
今尚荒い息をしながらサラディンが説明した。そして丁度そのタイミングで、近付いてきていた瘴気の穴が動きを止めた。場所はまさにヘキサゴンの真下。もしもサラディンがいなければ、ヘキサゴン内部の人間は間違いなく瘴気の穴へと飲み込まれていただろう。まさに間一髪だった。
そして六芒星型にぽっかりと空いた穴の中央で停止した瘴気の穴から、巨大な魔物が這い出てこようとしていた。同時に、空に出現した瘴気の穴からも。
「なるほどな。巣穴が移動してくる振動だったって訳か」
三戸が言うように、地表を移動してきた巣穴が動きを止めると同時に地上の揺れも沈静化した。
「よーし! 全隊迎撃開始だ! 目についたヤツは片っ端からハチの巣にしてやれ!」
三戸が志願兵達に指示を出す。こうなれば作戦もなにもあったものではない。ヘキサゴンを浮かせているサラディンの限界が来る前にケリを付けなければならない。
「マスター! ちょっと失礼しますね!」
後ろからアンジーの声が聞こえたかと思えば、三戸はそのままアンジーに抱きかかえられ垂直に浮上した。
ヘキサゴンがかなり小さく見える高度。三戸の脳裏に不安がよぎる。
「な、なあ、アンジー?」
恐る恐る振り向いてアンジーを見れば、アンジーはいつもと変わらぬ輝くような笑顔で言った。
「マスター、今日はコレで我慢してくださいね? アンジーはちょっと忙しくなりそうなので」
そう言い終えると、彼女は抱えていた手をふっと解放した。
「どわああああぁぁぁぁぁぁ!?」
当然の如く、三戸は落下を始めた。『地球での自由落下というやつは言葉でいう程自由ではないのだ』。そんな誰かの言葉が頭を過る。
――キーーン
するとその時、後方からジェットエンジンの音が聞こえてきた。
「やっぱりこうなるのかぁぁぁぁ!!」
落下の途中でストンとシートに収まる三戸。キャノピーが自動で閉まる。アンジーの仕業か。しかし計器類、操縦桿、モニターパネル。どこを見ても愛機ファントムではない。
「ヴァイパー・ゼロ……か?」
F-2戦闘機。通称ヴァイパー・ゼロ。平成のゼロ戦とも言われる自衛隊の戦闘機だ。これは単座型のA型。
老朽化により退役が進んでいるファントムとは違い、こちらは現役バリバリだ。対空戦闘だけではなく、地上や艦船も攻撃できる優等生。
「それではマスター、グッドラック! 若い子に浮気しちゃ嫌ですよ?」
アンジーからそう通信が入る。突如出現した半透明のパネルには、ウインクしているアンジーの姿が映し出されていた。
(ゼロにもこんなモン仕込んでたのか。ま、アンジーだからな)
自らを魔改造したファントムならともかく、まさかF-2にまでこんな未来装備を仕込んでいたアンジーに思わず苦笑しながら、魔物に20mmバルカン砲を浴びせていく。
三戸がいくら優秀なパイロットだと言っても、勝手の違う戦闘機となればその特性を掴む必要がある。
ヘリコプターや車両などは『なんとなく熟していた』三戸だが、戦闘機となると話は別だ。機体性能を余すところ無く発揮させ、最高のパフォーマンスを叩き出す。それが彼のプロ意識だ。
機体に自分を慣らしながら、ついでに魔物を落としていく三戸を見ていたアンジーが、ふんす! と気合を入れる。
「さすがはマスターです! よぉーし! アンジーも頑張っちゃいますよっ!」
アンジーはこれから忙しくなる。三戸はその言葉を思い起こしながら、自分をこの機体に乗せた意味を考えていた。
彼女はヘキサゴンの中央付近、つまり居住区を覆うドームの頂点に着地した。そして防壁上に次々と火器を並べていく。
「なるほど、そういう事か。それじゃあ仕方ない」
現状でも六基のciws、二台のガンタンクを操作しながら、更に火器を増やしていこうというのだから、アンジーの意図はただひとつ。自分が火器管制を一手に引き受けようというのだろう。
「関羽様! ジャンヌ様! お二人はボス戦に向けてお力を温存しておいてくださいね! 雑魚はアンジーにお任せ下さいっ!」
アンジーがそう叫ぶと、防壁上に所狭しと並べられたミサイルや迫撃砲などが火を噴いていく。今この時、防壁を巡らし魔物から身を守るだけだったヘキサゴンは、軍事基地と化した。
「いや、サラディンがヘキサゴン全体を浮かせたのか」
防壁から地上を見下ろせば、地面は未だにうねるように揺れている。そしてその地上がゆっくりと遠くなっていくのだ。
飛行型の魔物達も、浮上を始めたヘキサゴンを呆気に取られて見ている事しか出来ず、地表から二十メートル程浮き上がった所で止まった。ヘキサゴンの中にいたのでは分からないが、元々ヘキサゴンがあった場所には六芒星の形の巨大な穴が空いている。それはつまり、サラディンがヘキサゴンの基礎となる部分ごと浮上させたという事だ。
「これだけの範囲の重力を制御するのも骨じゃが、この高度を維持するのはもっと骨なのじゃ。なにせ、少しでも気を緩めれば、このまま空の彼方まで浮いていくか、地表に墜落するか、どっちかじゃからな」
今尚荒い息をしながらサラディンが説明した。そして丁度そのタイミングで、近付いてきていた瘴気の穴が動きを止めた。場所はまさにヘキサゴンの真下。もしもサラディンがいなければ、ヘキサゴン内部の人間は間違いなく瘴気の穴へと飲み込まれていただろう。まさに間一髪だった。
そして六芒星型にぽっかりと空いた穴の中央で停止した瘴気の穴から、巨大な魔物が這い出てこようとしていた。同時に、空に出現した瘴気の穴からも。
「なるほどな。巣穴が移動してくる振動だったって訳か」
三戸が言うように、地表を移動してきた巣穴が動きを止めると同時に地上の揺れも沈静化した。
「よーし! 全隊迎撃開始だ! 目についたヤツは片っ端からハチの巣にしてやれ!」
三戸が志願兵達に指示を出す。こうなれば作戦もなにもあったものではない。ヘキサゴンを浮かせているサラディンの限界が来る前にケリを付けなければならない。
「マスター! ちょっと失礼しますね!」
後ろからアンジーの声が聞こえたかと思えば、三戸はそのままアンジーに抱きかかえられ垂直に浮上した。
ヘキサゴンがかなり小さく見える高度。三戸の脳裏に不安がよぎる。
「な、なあ、アンジー?」
恐る恐る振り向いてアンジーを見れば、アンジーはいつもと変わらぬ輝くような笑顔で言った。
「マスター、今日はコレで我慢してくださいね? アンジーはちょっと忙しくなりそうなので」
そう言い終えると、彼女は抱えていた手をふっと解放した。
「どわああああぁぁぁぁぁぁ!?」
当然の如く、三戸は落下を始めた。『地球での自由落下というやつは言葉でいう程自由ではないのだ』。そんな誰かの言葉が頭を過る。
――キーーン
するとその時、後方からジェットエンジンの音が聞こえてきた。
「やっぱりこうなるのかぁぁぁぁ!!」
落下の途中でストンとシートに収まる三戸。キャノピーが自動で閉まる。アンジーの仕業か。しかし計器類、操縦桿、モニターパネル。どこを見ても愛機ファントムではない。
「ヴァイパー・ゼロ……か?」
F-2戦闘機。通称ヴァイパー・ゼロ。平成のゼロ戦とも言われる自衛隊の戦闘機だ。これは単座型のA型。
老朽化により退役が進んでいるファントムとは違い、こちらは現役バリバリだ。対空戦闘だけではなく、地上や艦船も攻撃できる優等生。
「それではマスター、グッドラック! 若い子に浮気しちゃ嫌ですよ?」
アンジーからそう通信が入る。突如出現した半透明のパネルには、ウインクしているアンジーの姿が映し出されていた。
(ゼロにもこんなモン仕込んでたのか。ま、アンジーだからな)
自らを魔改造したファントムならともかく、まさかF-2にまでこんな未来装備を仕込んでいたアンジーに思わず苦笑しながら、魔物に20mmバルカン砲を浴びせていく。
三戸がいくら優秀なパイロットだと言っても、勝手の違う戦闘機となればその特性を掴む必要がある。
ヘリコプターや車両などは『なんとなく熟していた』三戸だが、戦闘機となると話は別だ。機体性能を余すところ無く発揮させ、最高のパフォーマンスを叩き出す。それが彼のプロ意識だ。
機体に自分を慣らしながら、ついでに魔物を落としていく三戸を見ていたアンジーが、ふんす! と気合を入れる。
「さすがはマスターです! よぉーし! アンジーも頑張っちゃいますよっ!」
アンジーはこれから忙しくなる。三戸はその言葉を思い起こしながら、自分をこの機体に乗せた意味を考えていた。
彼女はヘキサゴンの中央付近、つまり居住区を覆うドームの頂点に着地した。そして防壁上に次々と火器を並べていく。
「なるほど、そういう事か。それじゃあ仕方ない」
現状でも六基のciws、二台のガンタンクを操作しながら、更に火器を増やしていこうというのだから、アンジーの意図はただひとつ。自分が火器管制を一手に引き受けようというのだろう。
「関羽様! ジャンヌ様! お二人はボス戦に向けてお力を温存しておいてくださいね! 雑魚はアンジーにお任せ下さいっ!」
アンジーがそう叫ぶと、防壁上に所狭しと並べられたミサイルや迫撃砲などが火を噴いていく。今この時、防壁を巡らし魔物から身を守るだけだったヘキサゴンは、軍事基地と化した。
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