70 / 151
AD1855
69話 危機一髪
しおりを挟む
地表を滑るように迫りくるもう一つの瘴気の穴。二つ同時に出現したことも脅威だが、それよりも事態を深刻にしているのは。
(このままヘキサゴンの真下まで来ちまったら……)
三戸は脳内で最悪のケースを想定してしまった。難民も、自分達も、魔界へ通じていると思われる瘴気の穴へと飲み込まれてしまう。
瘴気はそれだけで人体には有害だ。そしてそれは救世者も例外ではない。
「アンジー! 雑魚は後回しでいい! あの巣穴に全弾ぶち込め!」
「ウィルコ!」
三戸の指示で、アンジーが装備しているミサイルと機関砲を次々と撃ち込んでいく。
「ダメです! 止まりません!」
アンジーが悲痛な表情で絶え間なく撃ち込むも、瘴気の穴は止まる気配を見せず、どんどんヘキサゴンへ近付いてくる。
「儂が時間を稼ぐかのぅ……長くはもたぬじゃろうから、手早く片付けてもらえると助かるのう」
ジャンヌは空中の敵へ、関羽は地上の敵への対処に追われている中、焦燥感に襲われる三戸を余所に、サラディンがいつものような飄々とした口調でそう言うと、その場にどかりと座り込みジハードの柄に手をかけ精神を集中し始めた。
徐々にサラディンの額に汗が玉のように浮き始め、その表情は厳しくなっていく。これを見た三戸は既視感を覚えていた。
(そうか。リチャードと同じだ)
先程リチャードが見せた決死の表情。自らが空っぽになるまで力を注ぎこみ、ヘキサゴンを移動させた時と同じだ。
あの時のリチャードは自分が動けなくなるのを承知の上で、民を守る為に行動を起こした。その後始まるであろう戦いの中、無力に横たわるしかできない事を見越してだ。それは三戸達を信じていなければ出来る事ではない。
そして今、サラディンも同じ覚悟を見せている。
(そんな覚悟見せられたら、なんとかしなくちゃいけねえよなぁ!)
それぞれ民を率いて戦った二人の『王』の覚悟を見せられた三戸は、冷静になり頭の中がクリアになった。
「アンジー!」
三戸はアンジーに指示を送る。まずは瘴気の穴を止めなければならない。それには中にいるボスを引き摺り出す事が必要だ。そしてボスを引き摺り出すには大火力での巣穴への攻撃。
三戸の指示を受けたアンジーが、一瞬キラキラした視線を彼に返す。しかしすぐさま巣穴の直上に移動し、チヌークを三機出現させた。
「みんな! アンジーがアレを落としたら伏せろ!」
三戸の叫びがヘキサゴンに響き渡る。またそれを確認したアンジーが、巣穴に落下を始めるチヌークに向けて狙いを定めた。
そしてチヌーク三機が瘴気の穴に飲み込まれた直後、アンジーが装備している全て火器が火を噴いた。
――!!
巨大な火柱と共に耳をつんざくような爆音が響き渡り、やや遅れて突風が吹き荒れる。瘴気の穴の中で途轍もない爆発が起こったのが原因だ。
「今のはあのへりこぷたーというやつが爆発したものか? なんという爆発力か……」
あまりの凄まじさに、何事にも動じなそうな関羽ですら目を丸くして驚いている。しかし、そのヘリコプターが三機まとめて爆発したにしても、あまりに激しい爆発。
「いや、あれはチヌークの中にミサイルやら爆弾やら……まあ、誘爆を引き起こすものを満載してたんだ。街の一つや二つ、軽く吹っ飛ぶかもな」
ふむふむと関羽が頷き、やや離れていた所で伏せていたジャンヌが引き攣った笑顔を浮かべていた。タイミング一つ間違えば巻き込まれていたかもしれないのだ。事実、防壁上で伏せていた自分達は無事だったが、多くの魔物が業火と爆風に巻き込まれて死傷している。
「マスター! ダメです! 止まりません!」
しかしそこにアンジーの悲壮な声が響く。全員が防壁から下を見るが、移動速度こそ落ちているものの、瘴気の穴は引き続きヘキサゴンに向かって移動を続けていた。
「くっ! だめか!」
誰しもが諦めかけた瞬間、大地の揺れが収まった。
「ふう、間に合ったわい」
三戸達がその声に振り向くと、そこには安堵の表情を浮かべながら大の字になり、激しく息をしているサラディンの姿があった。
(このままヘキサゴンの真下まで来ちまったら……)
三戸は脳内で最悪のケースを想定してしまった。難民も、自分達も、魔界へ通じていると思われる瘴気の穴へと飲み込まれてしまう。
瘴気はそれだけで人体には有害だ。そしてそれは救世者も例外ではない。
「アンジー! 雑魚は後回しでいい! あの巣穴に全弾ぶち込め!」
「ウィルコ!」
三戸の指示で、アンジーが装備しているミサイルと機関砲を次々と撃ち込んでいく。
「ダメです! 止まりません!」
アンジーが悲痛な表情で絶え間なく撃ち込むも、瘴気の穴は止まる気配を見せず、どんどんヘキサゴンへ近付いてくる。
「儂が時間を稼ぐかのぅ……長くはもたぬじゃろうから、手早く片付けてもらえると助かるのう」
ジャンヌは空中の敵へ、関羽は地上の敵への対処に追われている中、焦燥感に襲われる三戸を余所に、サラディンがいつものような飄々とした口調でそう言うと、その場にどかりと座り込みジハードの柄に手をかけ精神を集中し始めた。
徐々にサラディンの額に汗が玉のように浮き始め、その表情は厳しくなっていく。これを見た三戸は既視感を覚えていた。
(そうか。リチャードと同じだ)
先程リチャードが見せた決死の表情。自らが空っぽになるまで力を注ぎこみ、ヘキサゴンを移動させた時と同じだ。
あの時のリチャードは自分が動けなくなるのを承知の上で、民を守る為に行動を起こした。その後始まるであろう戦いの中、無力に横たわるしかできない事を見越してだ。それは三戸達を信じていなければ出来る事ではない。
そして今、サラディンも同じ覚悟を見せている。
(そんな覚悟見せられたら、なんとかしなくちゃいけねえよなぁ!)
それぞれ民を率いて戦った二人の『王』の覚悟を見せられた三戸は、冷静になり頭の中がクリアになった。
「アンジー!」
三戸はアンジーに指示を送る。まずは瘴気の穴を止めなければならない。それには中にいるボスを引き摺り出す事が必要だ。そしてボスを引き摺り出すには大火力での巣穴への攻撃。
三戸の指示を受けたアンジーが、一瞬キラキラした視線を彼に返す。しかしすぐさま巣穴の直上に移動し、チヌークを三機出現させた。
「みんな! アンジーがアレを落としたら伏せろ!」
三戸の叫びがヘキサゴンに響き渡る。またそれを確認したアンジーが、巣穴に落下を始めるチヌークに向けて狙いを定めた。
そしてチヌーク三機が瘴気の穴に飲み込まれた直後、アンジーが装備している全て火器が火を噴いた。
――!!
巨大な火柱と共に耳をつんざくような爆音が響き渡り、やや遅れて突風が吹き荒れる。瘴気の穴の中で途轍もない爆発が起こったのが原因だ。
「今のはあのへりこぷたーというやつが爆発したものか? なんという爆発力か……」
あまりの凄まじさに、何事にも動じなそうな関羽ですら目を丸くして驚いている。しかし、そのヘリコプターが三機まとめて爆発したにしても、あまりに激しい爆発。
「いや、あれはチヌークの中にミサイルやら爆弾やら……まあ、誘爆を引き起こすものを満載してたんだ。街の一つや二つ、軽く吹っ飛ぶかもな」
ふむふむと関羽が頷き、やや離れていた所で伏せていたジャンヌが引き攣った笑顔を浮かべていた。タイミング一つ間違えば巻き込まれていたかもしれないのだ。事実、防壁上で伏せていた自分達は無事だったが、多くの魔物が業火と爆風に巻き込まれて死傷している。
「マスター! ダメです! 止まりません!」
しかしそこにアンジーの悲壮な声が響く。全員が防壁から下を見るが、移動速度こそ落ちているものの、瘴気の穴は引き続きヘキサゴンに向かって移動を続けていた。
「くっ! だめか!」
誰しもが諦めかけた瞬間、大地の揺れが収まった。
「ふう、間に合ったわい」
三戸達がその声に振り向くと、そこには安堵の表情を浮かべながら大の字になり、激しく息をしているサラディンの姿があった。
0
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる