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AD1855
77話 三戸、回収
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サラディンと、仔犬を従えた幼女姿のジハードは選択を迫られた。イフリートに対峙しているジャンヌと関羽に加勢すべきか、撃墜された三戸の救援に向かうか。
アンジーは三戸の元に飛び去ったが、ciwsをはじめとした防衛用の火器は稼働しているし、まだまだ志願兵達も頑張っている。となれば、当面のアンジーはまだ健在だし、地上の雑魚魔物は任せても大丈夫だろうという結論に至る。
「ふむ。ならば……こっちかの」
サラディンとジハードが防壁から降りようとするその時、背後から声が掛かる。
「待たんか爺」
「ほ? なんじゃい。起きたのか死にぞこないが」
声を掛けたのは巨大な黒馬に跨ったリチャードだった。その傍らにはナイチンゲールもいる。
「どうやら……手間をかけたようだな」
リチャードは、サラディンとジハード双方に視線を移しながら、神妙な顔でそう語った。六匹の仔犬を従えた少女を見て、ジハードが具現化したのだろうと察したからだ。つまり、サラディンが覚醒したという事は、それなりに修羅場を潜ったという事に他ならない。
「なに。貸しにしとくわい。それよりお主、この真下にある巣穴をどうにか出来んか?」
「うむ。貴様の負担を減らすくらいの事はしてやろう」
リチャードも目覚めてからエクスカリバーから事の顛末を聞いていた。このヘキサゴンがサラディンの力で浮いている事。そしてこの真下に瘴気の穴が存在している事。そして、三戸が落とされた事。
「少し待っておれ」
リチャードはそう言うと、エクスカリバーに乗ったまま防壁上から飛び降りた。
「さて、エクスカリバーよ。今少し、余に力を貸してくれ」
「ふ。分かっている」
二人の間でほんの少しのやり取りがあり、その後リチャードが精神を集中する。
「むうん!」
リチャードがさらに気合を込める。すると、ヘキサゴン直下の地面がスライドしだした。瘴気の穴がある地面を丸ごと動かしてしまおうという意図らしい。
「あの穴は違う次元に存在しているのではないのかの?」
動く地面を見てサラディンがそう言うと、傍らにいるジハードが答える。
「移動している時は確かにそう。見えてはいるけど違う次元に存在している。でもあの魔界の穴から出てくるためには、こちらの世界に座標を固定しなくてはならない」
「……なるほどのう」
座標がこちらの世界に固定されているのであれば、地面をズラせば瘴気の穴も一緒にズレるという訳だ。この辺りの知識はジハードがスキュラという魔物の一種だから分かる事なのかもしれない。
仲間が全て善性のものだけではないメリットもあるという事だ。
やがてリチャードによる『土木作業』が終えると、防壁の下から大きな声が響いた。
「おい爺! ヘキサゴンを降下させるがよい! こちらの事は余に任せて早く行けい!」
その声を受けて、サラディンが薄く笑いながらナイチンゲールに声を掛ける。
「そのうちアンジー嬢ちゃんがミトを連れて来るじゃろう。そちらの事は任せたぞい」
「承知しています。ご武運を。死なない限りはお助けしますので」
ナイチンゲールがそれにクールな笑みを浮かべながら答えた。
*****
10式戦車の砲撃によりその身体を文字通り崩されていく黒翼の天使は、身体を丸めてその黒い翼で包み込む。すると、常時身体を覆っていた透明な膜のようなものが密度を増し、薄緑色の半透明な球体となって全身を包み込んだ。
「……? 再生、でしょうか? でも今はマスターの方が先ですね!」
アンジーはそれでも構わず、黒翼の天使を包み込んだ球体に向けて砲撃を継続させた。しかし10式の主砲をもってしても、密度を増したあのバリアは突破できない。
「滑腔砲でもノーダメージですか……それでも!」
アンジーは三戸をそっと抱き上げ、球体に向けてミサイルを発射しながらヘキサゴンへと飛び立つ。ここで攻撃の手を緩めては黒翼の天使に再生のスキを与えてしまうかもしれない。
断続的な攻撃を継続しつつ、アンジーはミトと共にヘキサゴンへ帰還した。
「? ヘキサゴンが着地している?」
浮上していたはずのヘキサゴンが着地しているのを見て、アンジーは一瞬最悪のシナリオが頭を過る。まさかサラディンが力尽き、難民達が瘴気の穴に飲み込まれてしまったのか。
しかし防壁に近付くと、自分に向けて手を振るナイチンゲールを見つけて安堵する。
「ナイチンゲール様! マスターが! マスターが!!」
アンジーはミトを静かに横たえると、ナイチンゲールに懇願するように縋りつく。
「大丈夫です。ミトを死なせはしません」
ナイチンゲールはアンジーを優しく抱き寄せながら、子供をあやすように頭を撫でる。
「さあ、治療を始めます。あなたはミトの手を握って言葉をかけてあげなさい」
「はいっ!」
ナイチンゲールは『ドクターセット』の木箱から、聴診器と注射器を出し、ミトに治療を開始した。
アンジーは三戸の元に飛び去ったが、ciwsをはじめとした防衛用の火器は稼働しているし、まだまだ志願兵達も頑張っている。となれば、当面のアンジーはまだ健在だし、地上の雑魚魔物は任せても大丈夫だろうという結論に至る。
「ふむ。ならば……こっちかの」
サラディンとジハードが防壁から降りようとするその時、背後から声が掛かる。
「待たんか爺」
「ほ? なんじゃい。起きたのか死にぞこないが」
声を掛けたのは巨大な黒馬に跨ったリチャードだった。その傍らにはナイチンゲールもいる。
「どうやら……手間をかけたようだな」
リチャードは、サラディンとジハード双方に視線を移しながら、神妙な顔でそう語った。六匹の仔犬を従えた少女を見て、ジハードが具現化したのだろうと察したからだ。つまり、サラディンが覚醒したという事は、それなりに修羅場を潜ったという事に他ならない。
「なに。貸しにしとくわい。それよりお主、この真下にある巣穴をどうにか出来んか?」
「うむ。貴様の負担を減らすくらいの事はしてやろう」
リチャードも目覚めてからエクスカリバーから事の顛末を聞いていた。このヘキサゴンがサラディンの力で浮いている事。そしてこの真下に瘴気の穴が存在している事。そして、三戸が落とされた事。
「少し待っておれ」
リチャードはそう言うと、エクスカリバーに乗ったまま防壁上から飛び降りた。
「さて、エクスカリバーよ。今少し、余に力を貸してくれ」
「ふ。分かっている」
二人の間でほんの少しのやり取りがあり、その後リチャードが精神を集中する。
「むうん!」
リチャードがさらに気合を込める。すると、ヘキサゴン直下の地面がスライドしだした。瘴気の穴がある地面を丸ごと動かしてしまおうという意図らしい。
「あの穴は違う次元に存在しているのではないのかの?」
動く地面を見てサラディンがそう言うと、傍らにいるジハードが答える。
「移動している時は確かにそう。見えてはいるけど違う次元に存在している。でもあの魔界の穴から出てくるためには、こちらの世界に座標を固定しなくてはならない」
「……なるほどのう」
座標がこちらの世界に固定されているのであれば、地面をズラせば瘴気の穴も一緒にズレるという訳だ。この辺りの知識はジハードがスキュラという魔物の一種だから分かる事なのかもしれない。
仲間が全て善性のものだけではないメリットもあるという事だ。
やがてリチャードによる『土木作業』が終えると、防壁の下から大きな声が響いた。
「おい爺! ヘキサゴンを降下させるがよい! こちらの事は余に任せて早く行けい!」
その声を受けて、サラディンが薄く笑いながらナイチンゲールに声を掛ける。
「そのうちアンジー嬢ちゃんがミトを連れて来るじゃろう。そちらの事は任せたぞい」
「承知しています。ご武運を。死なない限りはお助けしますので」
ナイチンゲールがそれにクールな笑みを浮かべながら答えた。
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10式戦車の砲撃によりその身体を文字通り崩されていく黒翼の天使は、身体を丸めてその黒い翼で包み込む。すると、常時身体を覆っていた透明な膜のようなものが密度を増し、薄緑色の半透明な球体となって全身を包み込んだ。
「……? 再生、でしょうか? でも今はマスターの方が先ですね!」
アンジーはそれでも構わず、黒翼の天使を包み込んだ球体に向けて砲撃を継続させた。しかし10式の主砲をもってしても、密度を増したあのバリアは突破できない。
「滑腔砲でもノーダメージですか……それでも!」
アンジーは三戸をそっと抱き上げ、球体に向けてミサイルを発射しながらヘキサゴンへと飛び立つ。ここで攻撃の手を緩めては黒翼の天使に再生のスキを与えてしまうかもしれない。
断続的な攻撃を継続しつつ、アンジーはミトと共にヘキサゴンへ帰還した。
「? ヘキサゴンが着地している?」
浮上していたはずのヘキサゴンが着地しているのを見て、アンジーは一瞬最悪のシナリオが頭を過る。まさかサラディンが力尽き、難民達が瘴気の穴に飲み込まれてしまったのか。
しかし防壁に近付くと、自分に向けて手を振るナイチンゲールを見つけて安堵する。
「ナイチンゲール様! マスターが! マスターが!!」
アンジーはミトを静かに横たえると、ナイチンゲールに懇願するように縋りつく。
「大丈夫です。ミトを死なせはしません」
ナイチンゲールはアンジーを優しく抱き寄せながら、子供をあやすように頭を撫でる。
「さあ、治療を始めます。あなたはミトの手を握って言葉をかけてあげなさい」
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