神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

SHO

文字の大きさ
92 / 151
????

89話 『神』

しおりを挟む
「ここは……」

 自分達を包んでいた光が薄くなっていき、徐々に視界がクリアになっていく。しかし、視界がクリアになっても『景色』は見えてこない。三百六十度、どこを見回しても白一色の世界。
 気付けば、傍らにいたはずのアンジーや他の相棒達が見当たらず、ここにいるのは救世者メサイア達だけのようだ。

場所か……」

 三戸が忌々しそうに吐き捨てた。
 そう、ここは並行世界を救うよう声だけの存在から諭された場所。言い換えれば、妻子の魂を人質に取られて脅迫された場所。
 だが、三戸以外はそれほどこの場所を忌諱していないらしく、あまり表情に変化は見られない。しかし、何故この場所に来たのかという戸惑いだけは隠し切れないようで、辺りをキョロキョロと見回している。

『ハナノスケよ』

 あの時と同じ声が聞こえる。三戸は返事をせず、何もない上方を見上げて目付きを鋭くした。他の救世者メサイア達は三戸をじっと見守っている。

『三度、世界を巻き込む戦争が始まろうとしている』
「なんだと!?」

 さすがにこの情報には三戸も黙ってはいられなかった。三度目の世界大戦が始まろうとしているのであれば、自分達が並行世界で戦ってきた意味はあったのか。そして、自分が死んでから、どれほどの時間が経過していたのか。疑問は尽きない。

『聞くがよい』

 三戸の心を読んだように、声は落ち着き払った深みのある声で告げた。
 三戸は大きく息を吐き、自らの冷静を保とうとする。そしてその場にどっかりと腰を下ろし、胡坐をかいた。
 一同はこの声の主を『神』だと認識している。それぞれ皆が別々の信仰をもっていたが、『神』は『神』。アッラーだろうが、ヤハウェだろうがジーザスだろうがブッダだろうが、この際それはどうでもよい 
 自分達をこのように蘇らせ、力を与えて戦わせる存在。ある意味一方的で理不尽。何とも『神』らしいとも思う。なので、三戸以外の救世者メサイア達は『声』に対して一定の敬意を払っている。しかし三戸にはそれがない。そんな彼の姿に苦笑しながらも、三戸に倣って座り込んだ。

 この様子を別の次元から見ているであろう『神』は話し始めた。
 まずは三戸が並行世界で旅した時間軸。時代を順に追っていくなら最初に出会うべきは関羽だったはず。あるいは遡っていくのであれば最初に出会うべきはナイチンゲール。
 しかし、実際は英仏百年戦争、黄巾の乱、十字軍遠征、クリミア戦争と、かなりランダムな印象を受ける。この辺りは三戸も疑問に思っていたところだ。

『並行世界で開く魔界の穴。これはどの時代のどの場所に開くのか、予知できる類のものではない』

 そんな『神』の言葉に一同は深く考えさせられる。そして、三戸が口を開いた。

「俺達の世界の歴史を踏まえて、あらかじめ影響が大きそうな事変をリストアップはしている。そしてそれに縁故のある人物の魂も準備しておいた。そういう事か」
『うむ。概ね正しい。そして並行世界に開いた魔界の穴。その時代、その場所に相応しい人物を送った』
「つまり、後手に回ってるって事だな」
『ふふ。手厳しいが、その通りだ。じゃが、いつ、どこに開くか分からぬ以上は、開いてから送り込んで被害を抑える。それしかあるまい』

 『神』にそう言われ、三戸はこれ以上何も言わなかった。『神』なんだからどうにかしろという気持ちはある。しかし打てる手は打っているのも分かる。

『そして、ハナノスケ。お前が死んでから十年と少しの時間が経っている』
「――!!」

 三戸の感覚では、並行世界へ送り込まれてから僅か数日しか経っていない。しかし、そのギャップに驚く間もなく彼の脳内に映像が映し出された。それは彼に対してだけではなく、他の救世者メサイア達にも同様のようで、みな一様に目を見開いて驚いていた。

『今から流れる光景はつい数日前のものじゃ』

 滑走路から次々とF-15Jイーグルが離陸していく。



(十年後もまだ現役で飛んでたか。しかし、この滑走路は……)

 F-15Jは三戸が現役だった頃の主力戦闘機だった。それでもすでに就役から三十年近く経過している機体もあった。近代化改修で延命化されていた事を伺わせる。
 そして、その滑走路は三戸にとって馴染み深いものだった。それは三戸が、幾度となくスクランブル発進した滑走路に他ならない。

 やがて映像は場面が切り替わる。基地から発進したF-15Jの編隊の視界の先には、多数の航空機が接近してくる事が認められた。

「スホイ!? 57か!」

 三戸が思わず叫ぶ。Suー57。ロシアが誇る最新鋭のステルス戦闘機。国籍ははっきりとは分からないが、米軍やその同盟国という事はありえない。つまり、敵の可能性が高い。



「無理だ! 逃げろ!」

 十年経過しているとは言え、三戸がいた当時の同僚も出撃している可能性もある。旧式機を無理矢理延命させている自衛隊と、最新鋭機を繰り出してきた敵。機体スペックも、数の上でも、太刀打ちする事は不可能だと三戸には思えた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...