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90話 再会
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「くっ……」
三戸は立ち上がり拳を握りしめ、噛みしめた唇からは血が滲み、それは顎を伝って滴り落ちる。
一面真っ白な世界にやけに目立つ赤い跡。
それは、次々と撃墜されていくF-15Jの翼に描かれた日の丸のようであった。
それでも、かなり高度な連携を取りながら敵機を撃墜するF-15Jの三機編隊がいた。性能と戦力差を考えれば、それは大健闘、いや、奇跡と言った方がいいかもしれない。
巧みな操縦で三機のスホイを撃墜。しかし、そこまでだった。敵機が放った空対空ミサイルが直撃し一機が堕とされると、連携が崩された残りの二機は逃げ場を失い、奮闘虚しく海に落ちた。
脳内に流れる映像はそこで途切れる。
ギリリと奥歯を噛みしめ、全身を震わせながら俯く三戸と、それを見守るしか出来ない救世者達。
しばらくの沈黙の後、三戸が声を絞り出した。
「この後、どうなったんだ……」
やや間を置いて、『神』が答える。
『基地を攻撃してから撤退した。その後は極東にいた米軍の空母が増援に来て、どうにか持ち堪えておる。そしてこの戦闘を契機に、全世界で軍事行動が活発になっている』
「基地は! 基地の被害は!?」
『……壊滅じゃな』
さすがの『神』も、三戸に対して痛ましそうな声色で答えた。そして続ける。
『見ての通り、今世界は破滅へと一直線に進んでおる。もはや猶予はない。少しばかりの力を与えておく。並行世界を頼んだぞ』
そう言い残すと、救世者達の視界は再びホワイトアウトした。
「待て!」
三戸の叫びも虚しく……
*****
救世者達の視界が回復すると、そこは一面の緑だった。
柔らかな日差しを反射して煌めく緑の光線。草花が揺らぎ、小川のせせらぎも聞こえるそこは、先程見せられた凄惨な光景を忘れさせるように優しかった。
「マスター!」
自分を呼ぶ声に三戸が振り返れば、そこにはアンジーを始め、それぞれの相棒が心配そうな顔で立っていた。
「……神様の所に行っておられたのですね?」
「……ああ」
「マスター? 顔色が優れませんが……」
心底心配そうなアンジーの表情を見て、三戸も自分がどんな顔をしていたのか理解したのだろう。無理に笑顔を作ってアンジーの頭をくしゃりと撫でる。
「ああ、大丈夫だ。ただ、向こうの世界でちょっと、な……」
再び三戸の笑顔が曇る。
「はい。お話は向こうの三人からお聞きしました……」
いつもは元気なアンジーも表情を曇らせた。
「は? 三人?」
アンジーの言葉に引っ掛かりを覚えた三戸は、アンジーの背後に視線を移す。
そこには敬礼をしながら整列しているパイロットスーツの三人の男がいた。
「お、前ら、まさか……」
「三戸さん! お久しぶりです。随分若くなりましたね!」
この男は中谷。三戸の現役時代、ファントムの後部座席を担当していた男だ。
「お前は老けたな」
「ははは! 仕方ないっすよ。三戸さんが辞めてから十年経ってますからね!」
そして口髭を生やし、頭にはちらほらと白いものが目立ち始めた男が中谷に続いた。
「三戸さん、すみません。やられちまいました」
この男は藤井。三戸の僚機、アンジーⅡのメインパイロットだった男だ。
「……随分貫禄が付いたな。一端の指揮官って面構えになってるぞ」
「……ありがとうございます! これも三戸さんの教えのお陰です! でも……基地は守れませんでした」
尊敬する隊長だった三戸から褒められ、一瞬表情を輝かせた藤井だが、すぐに肩を落としてしまう。だが、ここまできて三戸は理解した。性能で劣るF-15Jで、スホイを撃墜した小隊はこの三人なのだと。そして指揮していたのはこの藤井だろう。
「イーグルでスホイを落としたのはお前らだろ? 大したもんだよ。腕を上げたな。岡本もな!」
「三戸さん……!」
目に涙を浮かべて顔を上げたのは岡本だ。当時はまだルーキーで、藤井の後ろに乗っていた。あの頃より顔つきが精悍になり、頼もしさを覚える三戸。
他の救世者達とその相棒は、その様子を温かく見守っていた。
外見上は一番年下に見える三戸に、いい大人が敬意を持って接している光景は少しばかり違和感があるが、ナイチンゲール以外は軍に所属していた為、これが階級差によるものだろうという事は察しがつく。
恐らく、三戸は生前この三人の上官だったのであろう。そう思うと、死後にこうして再会を喜ぶ光景を見るのは少々羨ましくもある。彼らも戦場で多くの仲間を失ってきた。それはナイチンゲールも例外ではなかった。
「それで、三戸さん。俺達がスホイの編隊に撃墜されたのは分かるんですけど、それ以外は何が何だかなんですよ」
そんな藤井の疑問に、三戸はゆっくりと今までの経緯を含めて説明を始めた。そして合間を挟んでジャンヌ、関羽、リチャード、サラディン、ナイチンゲールの順の紹介していった。
さすがに歴史の教科書に出てくるような人物と、物語上にしかいないと思われていた聖獣や怪物が目の前にいる事に、藤井達は驚きを隠せないでいる。それでも、三戸が自分の盟友だと紹介すると、救世者達も打ち解けるのに時間は掛からなかった。
三戸は立ち上がり拳を握りしめ、噛みしめた唇からは血が滲み、それは顎を伝って滴り落ちる。
一面真っ白な世界にやけに目立つ赤い跡。
それは、次々と撃墜されていくF-15Jの翼に描かれた日の丸のようであった。
それでも、かなり高度な連携を取りながら敵機を撃墜するF-15Jの三機編隊がいた。性能と戦力差を考えれば、それは大健闘、いや、奇跡と言った方がいいかもしれない。
巧みな操縦で三機のスホイを撃墜。しかし、そこまでだった。敵機が放った空対空ミサイルが直撃し一機が堕とされると、連携が崩された残りの二機は逃げ場を失い、奮闘虚しく海に落ちた。
脳内に流れる映像はそこで途切れる。
ギリリと奥歯を噛みしめ、全身を震わせながら俯く三戸と、それを見守るしか出来ない救世者達。
しばらくの沈黙の後、三戸が声を絞り出した。
「この後、どうなったんだ……」
やや間を置いて、『神』が答える。
『基地を攻撃してから撤退した。その後は極東にいた米軍の空母が増援に来て、どうにか持ち堪えておる。そしてこの戦闘を契機に、全世界で軍事行動が活発になっている』
「基地は! 基地の被害は!?」
『……壊滅じゃな』
さすがの『神』も、三戸に対して痛ましそうな声色で答えた。そして続ける。
『見ての通り、今世界は破滅へと一直線に進んでおる。もはや猶予はない。少しばかりの力を与えておく。並行世界を頼んだぞ』
そう言い残すと、救世者達の視界は再びホワイトアウトした。
「待て!」
三戸の叫びも虚しく……
*****
救世者達の視界が回復すると、そこは一面の緑だった。
柔らかな日差しを反射して煌めく緑の光線。草花が揺らぎ、小川のせせらぎも聞こえるそこは、先程見せられた凄惨な光景を忘れさせるように優しかった。
「マスター!」
自分を呼ぶ声に三戸が振り返れば、そこにはアンジーを始め、それぞれの相棒が心配そうな顔で立っていた。
「……神様の所に行っておられたのですね?」
「……ああ」
「マスター? 顔色が優れませんが……」
心底心配そうなアンジーの表情を見て、三戸も自分がどんな顔をしていたのか理解したのだろう。無理に笑顔を作ってアンジーの頭をくしゃりと撫でる。
「ああ、大丈夫だ。ただ、向こうの世界でちょっと、な……」
再び三戸の笑顔が曇る。
「はい。お話は向こうの三人からお聞きしました……」
いつもは元気なアンジーも表情を曇らせた。
「は? 三人?」
アンジーの言葉に引っ掛かりを覚えた三戸は、アンジーの背後に視線を移す。
そこには敬礼をしながら整列しているパイロットスーツの三人の男がいた。
「お、前ら、まさか……」
「三戸さん! お久しぶりです。随分若くなりましたね!」
この男は中谷。三戸の現役時代、ファントムの後部座席を担当していた男だ。
「お前は老けたな」
「ははは! 仕方ないっすよ。三戸さんが辞めてから十年経ってますからね!」
そして口髭を生やし、頭にはちらほらと白いものが目立ち始めた男が中谷に続いた。
「三戸さん、すみません。やられちまいました」
この男は藤井。三戸の僚機、アンジーⅡのメインパイロットだった男だ。
「……随分貫禄が付いたな。一端の指揮官って面構えになってるぞ」
「……ありがとうございます! これも三戸さんの教えのお陰です! でも……基地は守れませんでした」
尊敬する隊長だった三戸から褒められ、一瞬表情を輝かせた藤井だが、すぐに肩を落としてしまう。だが、ここまできて三戸は理解した。性能で劣るF-15Jで、スホイを撃墜した小隊はこの三人なのだと。そして指揮していたのはこの藤井だろう。
「イーグルでスホイを落としたのはお前らだろ? 大したもんだよ。腕を上げたな。岡本もな!」
「三戸さん……!」
目に涙を浮かべて顔を上げたのは岡本だ。当時はまだルーキーで、藤井の後ろに乗っていた。あの頃より顔つきが精悍になり、頼もしさを覚える三戸。
他の救世者達とその相棒は、その様子を温かく見守っていた。
外見上は一番年下に見える三戸に、いい大人が敬意を持って接している光景は少しばかり違和感があるが、ナイチンゲール以外は軍に所属していた為、これが階級差によるものだろうという事は察しがつく。
恐らく、三戸は生前この三人の上官だったのであろう。そう思うと、死後にこうして再会を喜ぶ光景を見るのは少々羨ましくもある。彼らも戦場で多くの仲間を失ってきた。それはナイチンゲールも例外ではなかった。
「それで、三戸さん。俺達がスホイの編隊に撃墜されたのは分かるんですけど、それ以外は何が何だかなんですよ」
そんな藤井の疑問に、三戸はゆっくりと今までの経緯を含めて説明を始めた。そして合間を挟んでジャンヌ、関羽、リチャード、サラディン、ナイチンゲールの順の紹介していった。
さすがに歴史の教科書に出てくるような人物と、物語上にしかいないと思われていた聖獣や怪物が目の前にいる事に、藤井達は驚きを隠せないでいる。それでも、三戸が自分の盟友だと紹介すると、救世者達も打ち解けるのに時間は掛からなかった。
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