97 / 151
????
94話 アスキーの能力
しおりを挟む
ヒュンヒュンと風切り音を立てながら不規則な動きでデーモンに飛翔していく、蛇杖から放たれた注射器達。
ナイチンゲールは特に操作をしている素振りを見せない。相変わらず自分の『意識』で操作しているようだ。最大十本もの注射器を同時に遠隔操作できる空間認識力はやはり驚異的で、もしもあの注射器が重火器であったなら、と思うと、三戸の背筋に冷たいものが流れる。
デーモンの方も、自分に向けて飛来する注射器はやはり危険なものと認識したか、手にしたトライデントで叩き落そうとしたり、魔弾を放って迎撃しようとしている。
しかし、七本も飛来した注射器を迎撃するのは容易ではない。一本、また一本と照射された光を浴びていく。いつも仲間に浴びせるような暖かい光ではなく、見ているだけで底冷えするような、冷たい光だ。
一本浴びるごとにデーモンの動きは鈍くなっていく。そして最後の一本が照射された時、デーモンは膝から前のめりに倒れ込み、動かなくなった。
「さて。この状態になれば苦も無く倒せてしまうが、それでは私の力を示す事にならないからね。少しばかりデモンストレーションを行うとしよう」
アスキーがそう言い終えると、ふっと彼の姿ブレて見えた。
「ふむ?」
「ほう……」
「ほっほっほ。食えぬヤツじゃな」
次の瞬間、アスキーは十メートル程離れた場所に倒れていたデーモンのすぐ近くに立っていた。その移動のスピードと無駄のない動きに、感嘆した様子の関羽、リチャード、サラディン。
「はぁ、体術に自信がないなんて、どの口が言うのかしら」
ジャンヌはやや呆れ顔だ。確かに、あれだけの動きが出来るなら達人級の使い手だったとしても不思議ではない。
「三戸さん、救世者やその相棒ってのは、バケモノ揃いですか……」
「……お前らもついさっき、そのバケモノの仲間入りをしたんだよ」
また、初めて救世者やその相棒の力を目の当たりにした藤井達はやや困惑していた。人間の限界を遥かに超えた動きを見るのはこれが初めてだったのだから致し方ない。
しかし、その動きを目で追えていたという事は、彼らも十分人外の能力を持っている。
「……なんつーか、済まなかったな。俺と縁があったばっかりに、死んだ後までこんな事に付き合わせる羽目になっちまってよ」
「まぁた隊長はそんな水臭い事を言うんですから」
「隊長!?」
本当に申し訳なく思い謝罪した三戸に藤井がそう返す。しかも隊長呼ばわりだ。他の二人も藤井に同意するように頷き、アンジーに至ってはウインクしながらサムズアップしている。
「だってアンジーちゃんはマスターって呼んでますし。それなら俺達は隊長っすよ!」
「分かんねえよ……」
そんなやり取りをしている三戸達の所へ、アスキーが戻ってきた。
「終わったよ」
またしても白い歯を輝かせながらのイケメンスマイル&サムズアップ。視覚エフェクトに『キラーン』という文字が見せそうな笑顔だ。
終わった。その言葉を聞いて三戸達はデーモンの方へ視線を向ける。
「?」
しかし、見たところデーモンには変わったところがない。麻酔が効いてグッスリと眠っているだけ。そのように見えた。
「はっはっは! あのように眠った状態では、殺す事は容易いからね! 今回は私の力の一端を披露するために、少しばかり外科手術させてもらったのさ!」
「改造、だと?」
「はっはっは! まあ、アレが目を覚ませば分かるよ」
やけに自身たっぷりなアスキーの笑顔にやや胡散臭いものを感じる三戸だが、手術の様子を見ていたジャンヌ達の言葉を聞いて、考えを検めた。
「凄かったわ。僅か数分で頭を開いてまた閉じて。しかも縫合したのに跡も残らないなんて……」
素手だったはずが頭蓋骨を切開して何等かの細工を施し、再び縫合。しかも跡が残らないほどの精密な作業。色々と突っ込みたい所だが、彼の能力がそういうモノであるならば、人間の常識で考えるのはナンセンスな事だ。
問題はその細工がどのようなモノか、という事の方が重要だろう。
「ふむ。そろそろ目覚めそうだ。マイマスター、その蛇杖でアレに何か命じてみたまえ。注射器を操る感覚で構わない」
アスキーがそう言うと、ナイチンゲールが蛇杖の聴診器をデーモンに向け、何かを念じた。
「GRUUUUUU……」
すると、デーモンは立ち上がり、三戸達のいる方へゆっくりと歩き出した。警戒して武器を構える救世者達だが、それをアスキーが片手を上げて制した。
そして、デーモンはナイチンゲールの前まで来ると、持っていたトライデントを前に置き、片膝を付いて首を垂れるのだった。
「臣従、したのか……?」
「正確には違うがね。こちらに臣従するよう、『操作』できるようにしたのさ」
逆らえない奴隷のようなものか。そんな思いが三戸の脳裏を過る。どちらかと言えば外道な行いかもしれない。しかしアスキーは敢えてそれをやって見せたように思える。
それはこの先に待つ激戦に身を投じる覚悟を示されたような気がした。
ナイチンゲールは特に操作をしている素振りを見せない。相変わらず自分の『意識』で操作しているようだ。最大十本もの注射器を同時に遠隔操作できる空間認識力はやはり驚異的で、もしもあの注射器が重火器であったなら、と思うと、三戸の背筋に冷たいものが流れる。
デーモンの方も、自分に向けて飛来する注射器はやはり危険なものと認識したか、手にしたトライデントで叩き落そうとしたり、魔弾を放って迎撃しようとしている。
しかし、七本も飛来した注射器を迎撃するのは容易ではない。一本、また一本と照射された光を浴びていく。いつも仲間に浴びせるような暖かい光ではなく、見ているだけで底冷えするような、冷たい光だ。
一本浴びるごとにデーモンの動きは鈍くなっていく。そして最後の一本が照射された時、デーモンは膝から前のめりに倒れ込み、動かなくなった。
「さて。この状態になれば苦も無く倒せてしまうが、それでは私の力を示す事にならないからね。少しばかりデモンストレーションを行うとしよう」
アスキーがそう言い終えると、ふっと彼の姿ブレて見えた。
「ふむ?」
「ほう……」
「ほっほっほ。食えぬヤツじゃな」
次の瞬間、アスキーは十メートル程離れた場所に倒れていたデーモンのすぐ近くに立っていた。その移動のスピードと無駄のない動きに、感嘆した様子の関羽、リチャード、サラディン。
「はぁ、体術に自信がないなんて、どの口が言うのかしら」
ジャンヌはやや呆れ顔だ。確かに、あれだけの動きが出来るなら達人級の使い手だったとしても不思議ではない。
「三戸さん、救世者やその相棒ってのは、バケモノ揃いですか……」
「……お前らもついさっき、そのバケモノの仲間入りをしたんだよ」
また、初めて救世者やその相棒の力を目の当たりにした藤井達はやや困惑していた。人間の限界を遥かに超えた動きを見るのはこれが初めてだったのだから致し方ない。
しかし、その動きを目で追えていたという事は、彼らも十分人外の能力を持っている。
「……なんつーか、済まなかったな。俺と縁があったばっかりに、死んだ後までこんな事に付き合わせる羽目になっちまってよ」
「まぁた隊長はそんな水臭い事を言うんですから」
「隊長!?」
本当に申し訳なく思い謝罪した三戸に藤井がそう返す。しかも隊長呼ばわりだ。他の二人も藤井に同意するように頷き、アンジーに至ってはウインクしながらサムズアップしている。
「だってアンジーちゃんはマスターって呼んでますし。それなら俺達は隊長っすよ!」
「分かんねえよ……」
そんなやり取りをしている三戸達の所へ、アスキーが戻ってきた。
「終わったよ」
またしても白い歯を輝かせながらのイケメンスマイル&サムズアップ。視覚エフェクトに『キラーン』という文字が見せそうな笑顔だ。
終わった。その言葉を聞いて三戸達はデーモンの方へ視線を向ける。
「?」
しかし、見たところデーモンには変わったところがない。麻酔が効いてグッスリと眠っているだけ。そのように見えた。
「はっはっは! あのように眠った状態では、殺す事は容易いからね! 今回は私の力の一端を披露するために、少しばかり外科手術させてもらったのさ!」
「改造、だと?」
「はっはっは! まあ、アレが目を覚ませば分かるよ」
やけに自身たっぷりなアスキーの笑顔にやや胡散臭いものを感じる三戸だが、手術の様子を見ていたジャンヌ達の言葉を聞いて、考えを検めた。
「凄かったわ。僅か数分で頭を開いてまた閉じて。しかも縫合したのに跡も残らないなんて……」
素手だったはずが頭蓋骨を切開して何等かの細工を施し、再び縫合。しかも跡が残らないほどの精密な作業。色々と突っ込みたい所だが、彼の能力がそういうモノであるならば、人間の常識で考えるのはナンセンスな事だ。
問題はその細工がどのようなモノか、という事の方が重要だろう。
「ふむ。そろそろ目覚めそうだ。マイマスター、その蛇杖でアレに何か命じてみたまえ。注射器を操る感覚で構わない」
アスキーがそう言うと、ナイチンゲールが蛇杖の聴診器をデーモンに向け、何かを念じた。
「GRUUUUUU……」
すると、デーモンは立ち上がり、三戸達のいる方へゆっくりと歩き出した。警戒して武器を構える救世者達だが、それをアスキーが片手を上げて制した。
そして、デーモンはナイチンゲールの前まで来ると、持っていたトライデントを前に置き、片膝を付いて首を垂れるのだった。
「臣従、したのか……?」
「正確には違うがね。こちらに臣従するよう、『操作』できるようにしたのさ」
逆らえない奴隷のようなものか。そんな思いが三戸の脳裏を過る。どちらかと言えば外道な行いかもしれない。しかしアスキーは敢えてそれをやって見せたように思える。
それはこの先に待つ激戦に身を投じる覚悟を示されたような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる