神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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106話 取り敢えず、部下達が調子に乗らないように脅しておく

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 リチャードは三戸に何かの説明を受け、関羽と共に森の中へと踏み入って行った。その後ろから、三戸、アンジー、そしてふぁむちゃんが続く。

「ミトよ、この辺りでよいか?」
「ああ。問題ない。やってくれ」

 三戸の了解を得て、リチャードは腰のエクスカリバーを抜いた。柄を握った手から気を流し込み、集中力を高めている。恐らく三戸から指示された内容を、なるべく克明にイメージしているのだろう。

「ぬん!」

 そしてイメージが固まったのか、勢いよくエクスカリバーを地面に突き刺した。
 すると、ズズズズ……と地響きを立てながら地面が陥没していく。形は長方形。大きさは学校にあるプール程はあるだろうか。

「おお、いい感じだな。アンジー、頼む」
「はいっ!」

 アンジーがその長方形の穴に向かって手を翳す。
 現れたのはいくつもの直方体。それが規律正しくその穴に収まっていった。

「ミト、それは?」
「ああ、こりゃあ、Mk.41垂直発射システムっつってな、この蓋がパカッと開いて中からミサイルがズドドドドッと出る訳だ」



「それで、発射されるミサイルも用途に合わせて色々選べるんですっ!」
 関羽の問いかけに三戸が答え、さらにアンジーが追加で説明。使えるミサイルについては対艦、対空の他に弾道ミサイル迎撃用なんていうのもある。だが、それを細かく説明したところであまり意味はなく、『いろいろ』でいいし、関羽もリチャードもそんなものか、で納得している。

「それじゃあ、リチャードは穴の隙間をぴっちりと埋めて、関さんは草でカモフラージュを頼むよ」
「うむ」
「承った」

 仕上げの作業を指示し、リチャードと関羽が取り掛かっている間に、アンジーは例によってふぁむちゃんにデータ転送をしている。その間、手持無沙汰なのは三戸だ。

「なんか、俺だけ特殊能力が無いんだよなぁ……」

 この場で出来る事がない三戸は、改めてその事実に向き合った。全員が何かしらの属性や特殊能力を持っている。藤井、中谷、岡本ですら、アンジー同様に兵器を出現させる事が出来る。それに引き換え、自分はその用意された兵器を扱うしか出来ない人間だ。

「マスター? マスターの特殊能力は、アンジーを従える事が出来る! これですよ?」

 まるでこれ以上の能力がありますか!? と言いたげに、自分アピールをしてくるアンジー。

「アンジーを従える事が出来るのは、世界にただ一人、マスターだけなんですっ! どうですかっ!」

 そしてついに、腰に手をあて胸を張り、究極に可愛らしいドヤ顔を見せた。

「こりゃこりゃ、何をイチャついとる。終わったぞ」
「うむ。それは後回しにして、最終確認を頼みたい」

 作業が終了した二人が、ニヤニヤしながら三戸達に釘を刺してくる。そんなんじゃねえよと反論しながらミサイル発射ランチを見に行く三戸に、えー、違うんですかー? と不満を述べながらアンジーが付いていく。
 それを見送りながら、ヤレヤレと首を振るリチャードと関羽だった。

△▼△

 基地の方は粗方の施設や設備の設置が終わり、全員がテントに戻って来た頃には既に日が暮れようとしていた。
 豊かで美しい自然の中で、地平線に沈む夕日は元の世界で見ていたそれよりも一際美しく、実はここが楽園なのではないかと思える程だ。
 発電機やポンプ、浄水器なども準備が整い、電気と水がある、ある程度快適な生活環境が整ったところで、一同は用意した椅子に腰かけ、一息入れた。

「へえ、それじゃあこの基地にまるっと護衛艦数隻分の戦力があるって事ですね」

 生活に必要な装置、設備を準備していた藤井達に、ミサイル垂直発射システムを設置した事を説明したところ、そんな反応が返ってきた。ciwsや速射砲、ミサイルの数からいえば、確かに藤井の言う通りだ。この基地には艦隊がいる。
 
「まあ、防衛戦力としては心配いらないと思う。雑魚魔物が数千単位で来ても負ける気がしねえ。ただなぁ……」

 三戸はクリミアで戦ったあの黒翼の天使を思い出していた。全員の能力を全てつぎ込み、漸く倒した難敵。ここまでは場所と時代を移す度に敵が強くなってきている。そのパターンに当て嵌めれば、今回はどんな敵が現れるのか想像するだけで憂鬱になる。

「隊長?」

 浮かない表情の三戸に、中谷が心配そうに声を掛ける。

「ああ。お前らは見てないだろうが、俺はクリミアで死にかけたんだ。ナイチンゲールがいたからこうして生きているが、敵のボスはマジで強ええぞ」

 実際に黒翼の天使と激戦を繰り広げてきた他の救世者メサイア達も、三戸の言葉に黙って頷いている。リチャードやサラディンの覚醒が無ければ、勝負はどちらに転がっていたか分からなかった。
 機関砲は至近距離でなければ効き目は薄く、防御に全フリした場合は戦車の主砲ですら効果がない絶対防御。光ったと認識した時にはすでに貫かれている赤い魔力光線。少なくとも、これらの能力はこの先現れる敵も備えていると思った方がいい。

「隊長達、そんなバケモノ相手によく勝てましたね……」

 感心を通り越して呆れた表情の岡本に、三戸はこう返した。

「敵には頭が一個、腕が二本、翼が二枚しか無かったからな」

 一つのパーツに一人ずつ対応する事によってもぎ取った勝利。そういう事だ。 
 
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