神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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134話 交渉決裂

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 赤い粒子となって消えたファントムがいたその場所に、赤と銀。二つの翼がルシフェルを見据えていた。

「へえ、何だい? それは」
「おい堕天使」

 ギアを纏った三戸は、ルシフェルの問いには答えずに据わった目付きで話しかけた。

「てめえ、何で人間に八つ当たりしやがる。人間の存在を認めたくねえなら神ンとこ行ってぶっ飛ばしてくりゃいいじゃねえか。ヤツをぶっ飛ばすってんなら、俺も一緒に行ってやんぞ?」
「あはははっ、君は面白い事を言うね? 八つ当たり? 違うよ。君達人間は、偉大なるあのお方が作り出した偉大なる失敗作なのさ! だから僕は、失敗作である人間を消さなければならないんだよ」

 この言葉を聞いて、三戸は納得してしまった。ルシフェルは神の狂信者なのだ。神への愛が深すぎる故にそれが歪み、忌諱されたしまったのだ。
 この手合いは人間の中にも沢山いる。自分が悪いなどとは考えずに、ひたすら神への忠誠や信仰を間違った形で暴走させる迷惑な手合いだ。
 そしてこのルシフェルは、を抹殺する事が自分に与えられた試練であり、名誉挽回のチャンスでもあると考えている節がある。

「それに、君達では僕には勝てないんだ」

 ルシフェルがそう言うと、基地を構成していた施設や防壁、砲台などが元の土へと戻っていく。

「これは! リチャードの能力!?」

 三戸が驚いているが、衝撃はまだ続く。

「全く……神がお造りになられたこの箱庭に、無粋な物を造るのはやめて欲しいなあ」

 更に、全てが更地になった場所を埋めるように、草木が移動を始めた。

「コレは……青龍さんの力……」

 救世者メサイアの能力のみならず、の能力すら自在に使いこなすルシフェルに、アンジーも驚きを隠せない。

「さあ、これでアダムとエヴァを守るものはいなくなったよ? どうだい? 引き渡す気になってくれたかい?」

 相変わらず、瞳に狂気を宿した笑みを浮かべながら、ルシフェルは二人の引き渡しを要求してくる。
 確かに基地は無くなり、アダムとエヴァを守る者は自分達と四体のデーモンのみ。三戸の脳内で最善の策を探し求める作業がひっきりなしに行われている。

「僕はね、あまり気が長い方じゃないんだ」

 ルシフェルの右手の指が光った。

『グギャアアアア……!』
「何だ!?」
「エレファント!」

 三戸達が一斉に悲鳴の方向を振り向くと、そこにはアダムとエヴァの前で壁になっていたエレファントが息絶えていた。

「分かったかい? やろうと思えばいつでもやれるんだ。でもボクは無駄な戦いを好まない」
「そうかい。ウチの連中と違って好戦的じゃないのはよく分かった。けど、どうあってもあの二人をやらせる訳にはいかねえんだ!」

 三戸はそう言い放つと、アンジーと二人、ルシフェルの左右へ移動し挟み込むポジションをとった。

「ふう、残念だよ」

 それを見たルシフェルは、心底悲しそうな表情で瞼を閉じ、ゆっくりと頭を左右に振る。戦いたくはない。それは本心なのかもしれない。そこにいた誰もそう思った。

「たとえお前に戦う理由が無くても! 俺には戦って守らなきゃならねえものがあるんだよ!」

 しかしその迷いを振り切るように、三戸の絶叫が響き渡る。
 両肩の四連装ランチャーのカバーが開き、計八発のミサイルがルシフェル目掛けて発射された。また、逆方向からはアンジーが放った空対空ミサイルが発射されていた。二人はそれで攻撃の手を緩める事なく、20mm機関砲を放ちながら高速でルシフェルに迫る。

「そんな物は効かないよ? さっき見せたよね?」

 ルシフェルの左手が動く。先程のように重力操作でミサイルを止めて落とすつもりか。

「させんよ」

 しかしルシフェルの重力操作は発動しなかった。いや、正確に言えば発動はした。だがそれはサラディンによって相殺されたのだ。

「あれ?」

 すでに回避不能な距離まで迫っているミサイルに、ルシフェルは焦る。

「ちっ!」

 回避が間に合わないと見るや、彼は両腕をクロスし、身体を丸めた。そして六枚の黒い翼が彼を包み込む。直後に、ミサイルが全弾命中し大爆発が起こった。
 額発の燃焼と煙で視界が遮られている間に、三戸とアンジーはそれぞれ直上と真下に移動し20mm機関砲を構えた。この辺りは打ち合わせもしていないのに、阿吽の呼吸で相手がしたい事が分かってしまう。

 しかし、爆発が収まった時、三戸とアンジーは目を見開いた。
 ルシフェルは全くの無傷で、左右の腕をそれぞれ上と下に向け、三戸とアンジーに狙いを定めていた。

「ふう、驚いたなあ。無傷なのはいいけど、爆発に巻き込まれるのは精神衛生上よくないね!」
 
 そう言いながら、彼は指先を光らせた。
 




 
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