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大陸の闇編
ここに乗り込んだ理由?
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イセカイ号の運用はゴーレム達に任せ、俺達クルーは全員船から陸へと飛び降りた。船縁から陸までは軽く五メートルを超えているが、ウチのメンバー助走なしでも軽い跳躍で飛び越える程度の身体能力は備えている。陸地へ飛び降りてからもイセカイ号からの砲撃は続いており、敵兵も迂闊に接近して来る事は出来ない。
「それじゃあ行くぞ、みんな。サンタナ、風で防壁張ってくれ」
『お任せ下さい』
四大精霊は皆俺の意識の中にいる。ランとチェロに騎乗した俺とライムを先頭に、両脇にはフェンリルのエスプリと九尾の白狐の蘭丸が侍る。蘭丸は九本の尾の先に何か魔力球のようなモノを灯しているな。色とりどりで中々綺麗だ。
そして俺たちの後ろにはスタリオンの背中の輿に乗ったセリカと護衛のソアラ。そして周囲を囲むようにサニー、グロリア、ローレル、ガイア、ビート、段蔵、千代女。最後尾にはムスタングに騎乗したテルとユキ。俺達の戦力はたったこれだけだ。これだけの人数で十七万の敵を圧倒する存在感を放つ。
(おい、あれは伝説の狐狸精様では?)
(いや、大昔に大陸を恐怖のどん底に叩き落した妖狐ではないのか?)
(それにあの銀色の巨大な狼は神狼か!)
(先頭の二頭の馬を見ろ!ユニコーンとバイコーンだぞ!)
(まさか地竜までも手懐けているのか!?)
(お、おおお俺達はとんでもない相手に戦争を吹っ掛けちまったんじゃないのか!?)
(冗談じゃねえ!神王様の女漁りの為に死んでたまるかよ!)
(お、俺は逃げるぞ!)
(お、俺もだ!)
俺達が数歩歩みを進めると立ち塞がっていた敵兵が二つに割れ、神王に至る一本の道が出来上がる。ゲンの雑兵共にもはや戦意は無い。俺達が通り過ぎた後も背後を突くような事はせずそのまま逃亡しているようだ。一部の上官らしき人物がなにやら喚いているが誰も耳を貸すことなく兵達は散っていった。
「想像以上の忠誠度の低さと言っていいのかな?まさか上陸後一戦も交えないとか予想外もいいとこなんだけど」
敵とは言えあまりの不甲斐なさにライムがちょっとご立腹だ。
『主の言わんとする事も分かる。十七万の敵と聞いてこちらもそれなりに気合を入れて来たのだからな』
エスプリも肩透かしを食らって機嫌が悪い。必要以上の殺気を放ちながら手当たり次第に睨みつけるもんだから腰を抜かして逃げ出せない奴もいる。
『ほう…逃げ出さない連中もいるようだね。少しは骨がありそうだが…どうする?おにいちゃん?』
…子狐の時ならいざ知らず、馬と同等の体格になった狐におにいちゃん呼ばわりされるのは違和感しかねえ…
かなり進んだところで、兵が奥にいるであろう神王を守るために立ち塞がる。顔は恐怖で引き攣っているが逃げるつもりはないようだな。蘭丸が言ってたのはこいつらの事だ。どうすると言われても、やっぱり最初は警告か説得かだよな。面倒だけど。
「あー、ゲンの諸君聞こえるか?お前ら邪魔だからちょっとどいてくれ。俺が殴りたいのは神王とかいう助平だけなんだ」
「かずと…もうちょっと違う言い回しもあると思うんだ…」
〈貴様は何者だ!?〉
おお、そう言えば名乗ってなかったか。
「これは失敬。俺はヘイアンの女帝、ボーラ=マセラティから依頼を受けて来た冒険者のカズトだ。ちなみに依頼の内容ははた迷惑な助平から世界の女を守る事だ!」
「セリカ、そうだっけ?」
「はて…大筋では間違いでもないような?」
「いえ、マスターは売られた喧嘩を買っただけで理由なんて後付けですからね。強いて申し上げればライムさんや陛下を彼奴の毒牙から守るためでしょうか」
「あれあれ?他人事みたいに。ソアラだって守られるリストに入ってるよ?」
「それならライムさん。今夜マスターを貸して下さい!」
「あっ、ズルいですよソアラ!私が先でしょう?」
「いえ!こればかりは陛下と言えども!」
なにか女子が集まってやらかしてるんだがそこに俺の意思はいらないのか?
《いい加減にしやがれ山ザルどもがぁぁぁぁ!!》
その時前方から大音声が聞こえた。同時に自分の兵を巻き込みながら大出力の魔力が飛んで来る。俺は右手を翳して受け止めようとするが。
『あーしに任せな。おにいちゃん』
蘭丸が九尾の中の一本が灯していた赤い魔力球を迫ってくる魔力の奔流にぶつけた。蘭丸の小さな魔力球など簡単に飲み込んでしまうかと思われた巨大な魔力の奔流だが、意外にもその力は拮抗し爆発を起こす。
『もう少し弱くても止められたかね?』
蘭丸はニヤリと嗤う。その視線が見据える先には憤怒の表情の偉丈夫が一人、肩に何か武器を構えてこちらを睨みつけていた。
奴が神王か。
「それじゃあ行くぞ、みんな。サンタナ、風で防壁張ってくれ」
『お任せ下さい』
四大精霊は皆俺の意識の中にいる。ランとチェロに騎乗した俺とライムを先頭に、両脇にはフェンリルのエスプリと九尾の白狐の蘭丸が侍る。蘭丸は九本の尾の先に何か魔力球のようなモノを灯しているな。色とりどりで中々綺麗だ。
そして俺たちの後ろにはスタリオンの背中の輿に乗ったセリカと護衛のソアラ。そして周囲を囲むようにサニー、グロリア、ローレル、ガイア、ビート、段蔵、千代女。最後尾にはムスタングに騎乗したテルとユキ。俺達の戦力はたったこれだけだ。これだけの人数で十七万の敵を圧倒する存在感を放つ。
(おい、あれは伝説の狐狸精様では?)
(いや、大昔に大陸を恐怖のどん底に叩き落した妖狐ではないのか?)
(それにあの銀色の巨大な狼は神狼か!)
(先頭の二頭の馬を見ろ!ユニコーンとバイコーンだぞ!)
(まさか地竜までも手懐けているのか!?)
(お、おおお俺達はとんでもない相手に戦争を吹っ掛けちまったんじゃないのか!?)
(冗談じゃねえ!神王様の女漁りの為に死んでたまるかよ!)
(お、俺は逃げるぞ!)
(お、俺もだ!)
俺達が数歩歩みを進めると立ち塞がっていた敵兵が二つに割れ、神王に至る一本の道が出来上がる。ゲンの雑兵共にもはや戦意は無い。俺達が通り過ぎた後も背後を突くような事はせずそのまま逃亡しているようだ。一部の上官らしき人物がなにやら喚いているが誰も耳を貸すことなく兵達は散っていった。
「想像以上の忠誠度の低さと言っていいのかな?まさか上陸後一戦も交えないとか予想外もいいとこなんだけど」
敵とは言えあまりの不甲斐なさにライムがちょっとご立腹だ。
『主の言わんとする事も分かる。十七万の敵と聞いてこちらもそれなりに気合を入れて来たのだからな』
エスプリも肩透かしを食らって機嫌が悪い。必要以上の殺気を放ちながら手当たり次第に睨みつけるもんだから腰を抜かして逃げ出せない奴もいる。
『ほう…逃げ出さない連中もいるようだね。少しは骨がありそうだが…どうする?おにいちゃん?』
…子狐の時ならいざ知らず、馬と同等の体格になった狐におにいちゃん呼ばわりされるのは違和感しかねえ…
かなり進んだところで、兵が奥にいるであろう神王を守るために立ち塞がる。顔は恐怖で引き攣っているが逃げるつもりはないようだな。蘭丸が言ってたのはこいつらの事だ。どうすると言われても、やっぱり最初は警告か説得かだよな。面倒だけど。
「あー、ゲンの諸君聞こえるか?お前ら邪魔だからちょっとどいてくれ。俺が殴りたいのは神王とかいう助平だけなんだ」
「かずと…もうちょっと違う言い回しもあると思うんだ…」
〈貴様は何者だ!?〉
おお、そう言えば名乗ってなかったか。
「これは失敬。俺はヘイアンの女帝、ボーラ=マセラティから依頼を受けて来た冒険者のカズトだ。ちなみに依頼の内容ははた迷惑な助平から世界の女を守る事だ!」
「セリカ、そうだっけ?」
「はて…大筋では間違いでもないような?」
「いえ、マスターは売られた喧嘩を買っただけで理由なんて後付けですからね。強いて申し上げればライムさんや陛下を彼奴の毒牙から守るためでしょうか」
「あれあれ?他人事みたいに。ソアラだって守られるリストに入ってるよ?」
「それならライムさん。今夜マスターを貸して下さい!」
「あっ、ズルいですよソアラ!私が先でしょう?」
「いえ!こればかりは陛下と言えども!」
なにか女子が集まってやらかしてるんだがそこに俺の意思はいらないのか?
《いい加減にしやがれ山ザルどもがぁぁぁぁ!!》
その時前方から大音声が聞こえた。同時に自分の兵を巻き込みながら大出力の魔力が飛んで来る。俺は右手を翳して受け止めようとするが。
『あーしに任せな。おにいちゃん』
蘭丸が九尾の中の一本が灯していた赤い魔力球を迫ってくる魔力の奔流にぶつけた。蘭丸の小さな魔力球など簡単に飲み込んでしまうかと思われた巨大な魔力の奔流だが、意外にもその力は拮抗し爆発を起こす。
『もう少し弱くても止められたかね?』
蘭丸はニヤリと嗤う。その視線が見据える先には憤怒の表情の偉丈夫が一人、肩に何か武器を構えてこちらを睨みつけていた。
奴が神王か。
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