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一章 魔法戦士養成学校編
ゲームは命を懸けるモンじゃねえ
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シンディは魔法の水晶でフィールド全体を監視していた。宙に浮かべた水晶球は全方向の視界をカバーし、魔法によりその情報をシンディへと伝達する。
そんな彼女に見えていたのは、各チームの編成が戦闘の内容に見事に反映されている様子だった。
前衛と後衛をバランスよく編成しているチームは総じて安定した戦闘内容になっているのに対し、前衛ばかりが固まっているチームはやはり所々に綻びが見えてくる場合がある。
個の能力で編成のハンデを帳消しにしているチームも中にはあるのだが、これでこの訓練に参加した者達はそれぞれの役割分担というものを少なからず理解してくれるハズだ。それぞれの得意分野を生かす場所があるという事も。
「……そして、魔法を使えないからと言って、戦士として劣っている訳ではないって事もな」
眼前に展開されている各チームの戦闘状態を映し出している魔法のモニターを見ながら、シンディはそう呟いた。
「ただ、編成のバランスに固執するあまり、このゲームのキモを見落としてるヤツが殆どなんだよなぁ。ヤツを除いて」
戦闘自体はソツなくこなしていても、肝心の獲物を見つける事が上手くいっていない。
このゲームは獲物を狩ってポイントを稼ぎ、最終的にそのポイントを競うルールだ。言ってしまえば、戦いが下手でも数さえこなせば優勝のチャンスはあるし、戦闘技術は評価に一切繁栄されない。
そんな中で、明らかに他のチームとは違う動きを見せているのがチューヤとマリアンヌのチームだった。
戦力的には、一人足りないくらいではハンデにもならない程チューヤの戦闘力は飛びぬけているが、戦闘においてはお荷物と言えるマリアンヌを敢えてパートナーに選んだその意図ははっきりしている。
それは、索敵。
一切の迷いを見せずにフィールドを移動する様子は、明らかに何かを見つけてその場所を目指している。
「ヤツの事だ。初めから大物狙い一本に絞ってやがるんだろうが……だが、大物相手じゃマリアンヌはお荷物になっちまうぞぉ?」
索敵能力に長けたマリアンヌを仲間に入れたのは流石。このゲームに関わらず、実戦においてもイニシアティブを取る為には索敵能力というのは重要な要素だ。しかしその後チューヤはどう動くのか。
シンディは良くも悪くも今年一番の注目株の様子を、面白そうに見ていた。しかしその直後、シンディの顔色が変わる。
「なっ! バカ、ヤツはやべえ! ちっ! 間に合うか?」
モニターに映し出されたものを見た瞬間、シンディは血相を変えて駆け出した。
▼△▼
「まずは……利き腕を貰っとくか。それに、変異種の熊ってのもなんかカッコわりーな。バーサク・ベアと呼称しよう」
チューヤは魔力を体内に循環させ、身体能力を爆発的に上昇させる。その上でバーサク・ベアに一気に迫る。
チューヤを迎え撃たんとしたバーサク・ベアは、予想通り右腕でチューヤを薙ぎ払いに来た。
「ふん」
来ると分かっている攻撃を捌く事など造作もない。チューヤは鼻で笑いながらバーサク・ベアの攻撃を掻い潜る。そして右側に回り込み、跳躍する。さらに落下エネルギーをも加えてバーサク・ベアの右肩に全力で剣を振り下ろした。
「グガアァァァァ!」
バーサク・ベアが絶叫を上げると同時に、右肩から先がボトリと地面に落ちる。
「む?」
しかしチューヤは今の一撃に違和感を感じた。苦しみ悶えているバーサク・ベアから一旦距離を取り、違和感の原因である剣を見る。
「あっちゃあ……」
視線の先にある刃を歪んでおり、刃毀れを超えたレベルで損傷していた。これでは切れ味など期待できそうもなく、それどころかあと一撃で折れてしまうかもしれない。チューヤは大きくため息をついた。
「チューヤ! 右ッ!」
その時樹上から声が響く。どうやらマリアンヌが覚醒したらしく、バーサク・ベアが迫っているというのに呑気に剣を眺めているチューヤに向かって叫んだ。半狂乱と言っていい程に取り乱してる。
左腕を振りかぶり、その凶悪な爪でチューヤを切り刻まんと、バーサク・ベアが大きく跳躍した。その巨体には似つかわしくない俊敏性に、マリアンヌはチューヤが血みどろになる光景を幻視し思わず目を伏せる。
「おっと」
しかしチューヤは敢えてバーサク・ベアの方向に前転する事で攻撃を躱し、しかも背後を取った。
(背後を取ったはいいが、この剣じゃあと一撃が限界だ。確実に仕留めるには……どうする?)
剣がもたない。良くてあと一撃。その一撃で如何にして目の前のバーサク・ベアを倒すか。その答えを見出す為に、チューヤは回避に専念する。
「ちょっ! チューヤ! なんで攻撃しないのっ!?」
あまりにも消極的に見えたチューヤの戦い方に業を煮やしたのか、樹上からマリアンヌが叫んだ。
チューヤの能力なら、バーサク・ベアの攻撃を掻い潜りながら反撃する事だって出来る筈なのだ。ところがそれをしないチューヤは、マリアンヌの目にはじれったく映った。それに、ギリギリで回避を続ける彼が危なっかしくも見えた。
「あっ、バカ!」
しかしその叫びは、バーサク・ベアの意識を自分に向ける事になった。強烈な殺気がマリアンヌに向けられる。
(ひっ……怖い! なにこれ怖い! こんな恐ろしい相手とチューヤは……)
バーサク・ベアの殺気をまともに浴びたマリアンヌは、一気に身体中の血の気が引く思いをした。意識せずとも膝はガクガクと震え、奥歯がガチガチと鳴る。
「……あんなの相手に、無理だよチューヤ……逃げて……」
そこまで言った所でマリアンヌは意識を手放し、枝から落下した。
そんな彼女に見えていたのは、各チームの編成が戦闘の内容に見事に反映されている様子だった。
前衛と後衛をバランスよく編成しているチームは総じて安定した戦闘内容になっているのに対し、前衛ばかりが固まっているチームはやはり所々に綻びが見えてくる場合がある。
個の能力で編成のハンデを帳消しにしているチームも中にはあるのだが、これでこの訓練に参加した者達はそれぞれの役割分担というものを少なからず理解してくれるハズだ。それぞれの得意分野を生かす場所があるという事も。
「……そして、魔法を使えないからと言って、戦士として劣っている訳ではないって事もな」
眼前に展開されている各チームの戦闘状態を映し出している魔法のモニターを見ながら、シンディはそう呟いた。
「ただ、編成のバランスに固執するあまり、このゲームのキモを見落としてるヤツが殆どなんだよなぁ。ヤツを除いて」
戦闘自体はソツなくこなしていても、肝心の獲物を見つける事が上手くいっていない。
このゲームは獲物を狩ってポイントを稼ぎ、最終的にそのポイントを競うルールだ。言ってしまえば、戦いが下手でも数さえこなせば優勝のチャンスはあるし、戦闘技術は評価に一切繁栄されない。
そんな中で、明らかに他のチームとは違う動きを見せているのがチューヤとマリアンヌのチームだった。
戦力的には、一人足りないくらいではハンデにもならない程チューヤの戦闘力は飛びぬけているが、戦闘においてはお荷物と言えるマリアンヌを敢えてパートナーに選んだその意図ははっきりしている。
それは、索敵。
一切の迷いを見せずにフィールドを移動する様子は、明らかに何かを見つけてその場所を目指している。
「ヤツの事だ。初めから大物狙い一本に絞ってやがるんだろうが……だが、大物相手じゃマリアンヌはお荷物になっちまうぞぉ?」
索敵能力に長けたマリアンヌを仲間に入れたのは流石。このゲームに関わらず、実戦においてもイニシアティブを取る為には索敵能力というのは重要な要素だ。しかしその後チューヤはどう動くのか。
シンディは良くも悪くも今年一番の注目株の様子を、面白そうに見ていた。しかしその直後、シンディの顔色が変わる。
「なっ! バカ、ヤツはやべえ! ちっ! 間に合うか?」
モニターに映し出されたものを見た瞬間、シンディは血相を変えて駆け出した。
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「まずは……利き腕を貰っとくか。それに、変異種の熊ってのもなんかカッコわりーな。バーサク・ベアと呼称しよう」
チューヤは魔力を体内に循環させ、身体能力を爆発的に上昇させる。その上でバーサク・ベアに一気に迫る。
チューヤを迎え撃たんとしたバーサク・ベアは、予想通り右腕でチューヤを薙ぎ払いに来た。
「ふん」
来ると分かっている攻撃を捌く事など造作もない。チューヤは鼻で笑いながらバーサク・ベアの攻撃を掻い潜る。そして右側に回り込み、跳躍する。さらに落下エネルギーをも加えてバーサク・ベアの右肩に全力で剣を振り下ろした。
「グガアァァァァ!」
バーサク・ベアが絶叫を上げると同時に、右肩から先がボトリと地面に落ちる。
「む?」
しかしチューヤは今の一撃に違和感を感じた。苦しみ悶えているバーサク・ベアから一旦距離を取り、違和感の原因である剣を見る。
「あっちゃあ……」
視線の先にある刃を歪んでおり、刃毀れを超えたレベルで損傷していた。これでは切れ味など期待できそうもなく、それどころかあと一撃で折れてしまうかもしれない。チューヤは大きくため息をついた。
「チューヤ! 右ッ!」
その時樹上から声が響く。どうやらマリアンヌが覚醒したらしく、バーサク・ベアが迫っているというのに呑気に剣を眺めているチューヤに向かって叫んだ。半狂乱と言っていい程に取り乱してる。
左腕を振りかぶり、その凶悪な爪でチューヤを切り刻まんと、バーサク・ベアが大きく跳躍した。その巨体には似つかわしくない俊敏性に、マリアンヌはチューヤが血みどろになる光景を幻視し思わず目を伏せる。
「おっと」
しかしチューヤは敢えてバーサク・ベアの方向に前転する事で攻撃を躱し、しかも背後を取った。
(背後を取ったはいいが、この剣じゃあと一撃が限界だ。確実に仕留めるには……どうする?)
剣がもたない。良くてあと一撃。その一撃で如何にして目の前のバーサク・ベアを倒すか。その答えを見出す為に、チューヤは回避に専念する。
「ちょっ! チューヤ! なんで攻撃しないのっ!?」
あまりにも消極的に見えたチューヤの戦い方に業を煮やしたのか、樹上からマリアンヌが叫んだ。
チューヤの能力なら、バーサク・ベアの攻撃を掻い潜りながら反撃する事だって出来る筈なのだ。ところがそれをしないチューヤは、マリアンヌの目にはじれったく映った。それに、ギリギリで回避を続ける彼が危なっかしくも見えた。
「あっ、バカ!」
しかしその叫びは、バーサク・ベアの意識を自分に向ける事になった。強烈な殺気がマリアンヌに向けられる。
(ひっ……怖い! なにこれ怖い! こんな恐ろしい相手とチューヤは……)
バーサク・ベアの殺気をまともに浴びたマリアンヌは、一気に身体中の血の気が引く思いをした。意識せずとも膝はガクガクと震え、奥歯がガチガチと鳴る。
「……あんなの相手に、無理だよチューヤ……逃げて……」
そこまで言った所でマリアンヌは意識を手放し、枝から落下した。
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