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二章 立志
傭兵組合とは
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ジルが護衛の二人に何やら声を掛けると、その護衛がそれぞれ後続の二台の荷馬車へと駆けていく。
その荷馬車から二人ずつ、革製の防具を装備した体格のいい男達が降りて来た。そして綺麗に二分割されたまま冷凍保存されているバーサク・ファングの死体を荷馬車に積み込み始めた。
「連中に指示を出しに行ったのは私の商会が専属で雇っている、いわば私の私兵って奴さ。前後を警戒している騎馬兵もそうだね」
ジルが、チューヤ達の戦利品を積み込む男達を見ながらそう語る。
「じゃあ、あの荷馬車から降りてきたのは?」
「ああ、あれは傭兵組合から借りてる連中だね」
スージィの質問にジルが答えた。
四人は今の短いやり取りの中に、いくつか重要な情報が含まれている事に気付く。
キャラバンは多くの金品を輸送する為、賊の類のターゲットになりやすい。故に、運ぶ物品の価値や規模に見合った護衛と共に旅をするのが普通だ。もっとも、小規模なキャラバンに不相応な大部隊を護衛に付けると、それは貴重品を輸送していますというアピールをしているようなものだから、そこは情報操作や駆け引きが必要となってくる。
護衛を雇うのもタダではないのだから。
「傭兵組合?」
そこでカールが疑問の言葉を口にした。
スクーデリア王国には、そのような組織がある事など聞いた事がなかったからだが、事実、スクーデリアには傭兵組合などは存在していない。
では、スクーデリア王国の商人達はどうしているのかと言うと、自力で護衛を集める為に募集を掛けているのである。若しくは、国や領主にとって重要な取引案件である場合は、軍から護衛が派遣されるケースもある。
「ああ、こっちには組合はないんだったかね。ミナルディにはあるんだよ、そういう便利な組織が」
上品な外見に似つかわしくない口調でジルがカールの疑問に答えていく。
ジルの説明によると、傭兵組合とはミナルディ独自の組織で、国内の傭兵に仕事を斡旋する事を主な目的としているらしい。
傭兵というのは戦争時には仕事に困らないが、平和な世の中が続くと盗賊紛いの真似をしたり、暴力沙汰を働いたりと、とかく厄介な存在になってしまうらしい。
定職を持たず、戦時には消耗品のように扱われ、平和になると食うに困る。そんな傭兵をうまく取り込めないかと考えたミナルディ王国の上層部が、傭兵組合という組織を設立した。れっきとした国家機関という訳である。
「おっと、続きは馬車に乗ってからにしようか」
説明の途中で、バーサク・ファングが荷馬車に積み込まれた事を確認したジルが、チューヤ達四人に馬車に乗るよう促す。
「お邪魔しまっス!」
無遠慮というか、物怖じせずに馬車に乗り込むチューヤに苦笑を浮かべながら、マリアンヌとスージィが続く。そして最後にカールがジルに軽く頭を下げ、乗り込んだ。
馬車は人員輸送専用に作られたもので、両サイドにベンチシートのような座席が備え付けられていた。また、軽食や飲み物を保管しているらしい収納ボックスが片隅に設置されていた。
外観は質素だが、中は想像以上に広く、シートもクッション性の高い上等なものだ。十人程なら余裕を持って座れるスペースがある。
「まあ、貴族様の馬車に比べたら見劣りするだろうが、適当に掛けてくれ」
ちらりとカールに視線を送りながらジルがそう言うと、四人も各々柔らかいシートに腰かけた。
丁度そのタイミングで、護衛の二人が馬車に戻って来た。
「積み込み完了です。いつでも出発出来ます!」
「ん、ご苦労さん。それじゃ、出してくれ」
「はっ!」
こうして聞いていると、まるで軍の上官と部下のやり取りのようだが、実際そのような上下関係なのだろう。
金も権力同様、人を動かす重要な要素である事を四人は改めて認識していた。
「それで……傭兵組合の続きだが」
馬車が動き出し、一同が揺れに慣れた頃、ジルが説明を再開した。
「ミナルディでは、仕事にあぶれた傭兵が悪さをしないように、組合に登録させるんだ」
傭兵として食っていきたいのであれば、傭兵組合に登録する事。未登録の者は仕事を斡旋してもらえないのでデメリットが大きい。中には凄腕の傭兵がモグリで仕事を受けているケースもあるらしいが。
登録された傭兵は、実力に応じてランク分けされ、その力量に応じた仕事を組合から回してもらえる。その仕事はおおよそ傭兵のものとは思えないものもある。
戦闘とは無関係な雑用と言っていい仕事も社会には必要だ。そういった仕事を受けて食い繋ぐために、荒事が苦手な者も傭兵組合に登録しているケースも多い。
「聞いてる限りじゃいい事ばっかりじゃねえか?」
脚を組み、そこに肘を乗せて顔をあずけながら、チューヤが言うが、それに首を振りながらジルが答える。
「いい事ばかりじゃないよ。傭兵の本分は戦争だ。戦争時には強制的に招集される。それが傭兵組合ってやつだ」
その荷馬車から二人ずつ、革製の防具を装備した体格のいい男達が降りて来た。そして綺麗に二分割されたまま冷凍保存されているバーサク・ファングの死体を荷馬車に積み込み始めた。
「連中に指示を出しに行ったのは私の商会が専属で雇っている、いわば私の私兵って奴さ。前後を警戒している騎馬兵もそうだね」
ジルが、チューヤ達の戦利品を積み込む男達を見ながらそう語る。
「じゃあ、あの荷馬車から降りてきたのは?」
「ああ、あれは傭兵組合から借りてる連中だね」
スージィの質問にジルが答えた。
四人は今の短いやり取りの中に、いくつか重要な情報が含まれている事に気付く。
キャラバンは多くの金品を輸送する為、賊の類のターゲットになりやすい。故に、運ぶ物品の価値や規模に見合った護衛と共に旅をするのが普通だ。もっとも、小規模なキャラバンに不相応な大部隊を護衛に付けると、それは貴重品を輸送していますというアピールをしているようなものだから、そこは情報操作や駆け引きが必要となってくる。
護衛を雇うのもタダではないのだから。
「傭兵組合?」
そこでカールが疑問の言葉を口にした。
スクーデリア王国には、そのような組織がある事など聞いた事がなかったからだが、事実、スクーデリアには傭兵組合などは存在していない。
では、スクーデリア王国の商人達はどうしているのかと言うと、自力で護衛を集める為に募集を掛けているのである。若しくは、国や領主にとって重要な取引案件である場合は、軍から護衛が派遣されるケースもある。
「ああ、こっちには組合はないんだったかね。ミナルディにはあるんだよ、そういう便利な組織が」
上品な外見に似つかわしくない口調でジルがカールの疑問に答えていく。
ジルの説明によると、傭兵組合とはミナルディ独自の組織で、国内の傭兵に仕事を斡旋する事を主な目的としているらしい。
傭兵というのは戦争時には仕事に困らないが、平和な世の中が続くと盗賊紛いの真似をしたり、暴力沙汰を働いたりと、とかく厄介な存在になってしまうらしい。
定職を持たず、戦時には消耗品のように扱われ、平和になると食うに困る。そんな傭兵をうまく取り込めないかと考えたミナルディ王国の上層部が、傭兵組合という組織を設立した。れっきとした国家機関という訳である。
「おっと、続きは馬車に乗ってからにしようか」
説明の途中で、バーサク・ファングが荷馬車に積み込まれた事を確認したジルが、チューヤ達四人に馬車に乗るよう促す。
「お邪魔しまっス!」
無遠慮というか、物怖じせずに馬車に乗り込むチューヤに苦笑を浮かべながら、マリアンヌとスージィが続く。そして最後にカールがジルに軽く頭を下げ、乗り込んだ。
馬車は人員輸送専用に作られたもので、両サイドにベンチシートのような座席が備え付けられていた。また、軽食や飲み物を保管しているらしい収納ボックスが片隅に設置されていた。
外観は質素だが、中は想像以上に広く、シートもクッション性の高い上等なものだ。十人程なら余裕を持って座れるスペースがある。
「まあ、貴族様の馬車に比べたら見劣りするだろうが、適当に掛けてくれ」
ちらりとカールに視線を送りながらジルがそう言うと、四人も各々柔らかいシートに腰かけた。
丁度そのタイミングで、護衛の二人が馬車に戻って来た。
「積み込み完了です。いつでも出発出来ます!」
「ん、ご苦労さん。それじゃ、出してくれ」
「はっ!」
こうして聞いていると、まるで軍の上官と部下のやり取りのようだが、実際そのような上下関係なのだろう。
金も権力同様、人を動かす重要な要素である事を四人は改めて認識していた。
「それで……傭兵組合の続きだが」
馬車が動き出し、一同が揺れに慣れた頃、ジルが説明を再開した。
「ミナルディでは、仕事にあぶれた傭兵が悪さをしないように、組合に登録させるんだ」
傭兵として食っていきたいのであれば、傭兵組合に登録する事。未登録の者は仕事を斡旋してもらえないのでデメリットが大きい。中には凄腕の傭兵がモグリで仕事を受けているケースもあるらしいが。
登録された傭兵は、実力に応じてランク分けされ、その力量に応じた仕事を組合から回してもらえる。その仕事はおおよそ傭兵のものとは思えないものもある。
戦闘とは無関係な雑用と言っていい仕事も社会には必要だ。そういった仕事を受けて食い繋ぐために、荒事が苦手な者も傭兵組合に登録しているケースも多い。
「聞いてる限りじゃいい事ばっかりじゃねえか?」
脚を組み、そこに肘を乗せて顔をあずけながら、チューヤが言うが、それに首を振りながらジルが答える。
「いい事ばかりじゃないよ。傭兵の本分は戦争だ。戦争時には強制的に招集される。それが傭兵組合ってやつだ」
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