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三章 ギルド
マリアンヌ、奮戦!
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バーサク・シープの突進や体当たりで、建物や柵に一部被害、畑や農作物は大ダメージ。そして二人だけ残っていた憲兵はバーサク・シープとの戦闘で負傷。その村人の軽傷者多数。
マリアンヌが飛び込んだのはそんな混乱の坩堝の中だった。
「いち、に……三頭か。よし!」
素早く村落に侵入したバーサク・シープの数を数える。そして村の外側に立ち昇った炎の壁を視認すると、チューヤがこれ以上村の中にバーサク・シープを入れる事がないという確信を持った。
(それなら、ボクは村人を守りながらこの三頭の気を引けばいい!)
村から伸びる道には、こちらへ馬車を飛ばしているカール達がいる。村人達が一番安全なのは間違いなくそちらだろう。
マリアンヌは手始めに、体当たりを受けてダメージを受けている村人に襲い掛かろうとしている一頭に向かって馬を走らせた。身体強化を施した彼女はバーサク・シープに馬乗りになり、左手で角を掴んで振り落とされないように必死で踏ん張る。
「ここかな!?」
空いた右手で腰から短剣を抜き、一気にバーサク・シープに眉間に突き刺した。体毛は武器を通さない。そう聞いていた彼女は眉間を狙ったのだが、思いの他あっさりと突き刺さった。そしてバーサク・シープが棹立ちになったと思うと、断末魔の悲鳴を上げてそのまま倒れてしまう。
マリアンヌはその寸前に飛び降り、逃げ遅れている村人へと駆け寄った。
「街道へ向かう道へ逃げて! 村長さん達が来てるから」
「あ、ああ」
村人がよろよろと立ち上がり、どうにか駆け出して行くのを見送ると、次いで畑を荒らしている一頭が視界に入る。彼女は迷わずその一頭に向かって走った。
農作物を食らうのに夢中なバーサク・シープの背後から一気に近付き、そのまま背中に飛び乗る。あとはさっきと同じ要領で眉間に一突きだ。
「メ”ェェェェ……」
先程のリプレイのように棹立ちになり、ズシンと地響きをたてながら倒れるバーサク・シープ。マリアンヌは荒らされた畑に思わず舌打ちする。
「ちっ……ボク達がもう少し早く来ていれば!」
村に侵入したのは少なくとも三頭はいたはずだ。彼女は他のバーサク・シープを探す。こういう時の彼女の魔眼は本当に役に立つ。
「いた!」
一件の家の扉に向かって突撃を繰り返している。そしてついに扉が破壊され、家の中に突入しようとしている所にマリアンヌが介入した。
「キミの相手はボクだよ!」
手頃な石ころを拾い、全力で投げつける。狙うのは勿論顔面だ。
ゴウッ! という、小石を投げたとは思えない風切り音を残しながら飛んで行ったそれは、もはや投石などという生温いものではなかった。
重い打撃音を残してバーサク・シープの横っ面に直撃した石が砕けてしまう。かなりの痛撃だったのか、バーサク・シープは怒りに瞳を赤く輝かせながらマリアンヌに向きを変えて突進してくる。
上手くヘイトを自分に向けたマリアンヌが叫ぶ。
「家の中にいる人! 今の内に逃げて!」
すると、まだ幼い兄妹が恐る恐る扉からひょっこりと顔をだす。
「街道へ向かう道に逃げて! 村長さん達が来てるから! 出来るよね!」
突進してくるバーサク・シープを躱しながらそう叫ぶマリアンヌにむかって力強く頷いた兄の方が、妹の手を引いて駆け出した。兄妹が無事だった事に胸を撫でおろしたマリアンヌは、右手に短剣を逆手に持ち、向かってくるバーサク・シープに対して構える。
(流石に全力で走ってくる相手に飛び乗るのは難しいかな。だとすれば……!)
マリアンヌの戦いは、基本的には接近戦によるカウンター攻撃一辺倒だ。魔眼白による相手の動きを先読みする力は絶大だが、その反面質量が大きく上回る相手に対してはいくら身体強化を施しても打撃力不足に陥る場合もあり得る。特に今回のバーサク・シープの場合は質量以外にも体毛という硬い鎧がある為、彼女に求められるのは急所に対してピンポイントに刺突を食らわせるという難易度が高いものだ。
「くっ!」
時に恐怖はその動きに僅かな狂いを生じさせる。正面から突進を迎え撃ちながら、眉間に一突き入れて離脱。今彼女が取れる戦法はそれだけだ。しかし巨大なバーサク・シープが鋭い角を向けながら迫って来るのは相当なプレッシャーがあるのだろう。突進を躱しながら突き出した短剣の切っ先は僅かに眉間を逸れ、バーサク・シープの右目に突き刺さった。
『メエエエエエエ!』
怒りの炎にさらに油を注いだ形になったマリアンヌの攻撃。ダメージを与えはしたが致命傷には至っていない。手負いの獣。厄介な事になったと彼女は内心舌打ちをする。
「次で、決める!」
腰から残り一本の短剣を抜く。しかしマリアンヌの戦法を読んでいたバーサク・シープは、角で短剣を弾いてしまった。この学習能力の高さも変異種の特徴の一つで、知能も元々の動物よりもかなり高い。
辛うじて躱したマリアンヌ自身は無傷だが、丸腰となってしまう。
「くっ……それなら、強化したボクの身体とキミ、どっちが頑丈か勝負だ」
ファイティングポーズを取るマリアンヌ。しかしその眼前でバーサク・シープの首がずり落ちた。
「……へ?」
「よう、よく頑張ったな。いい根性見せてもらったぜ?」
そこには『シンシア』を手にしたチューヤがいた。
「あ、あははは……」
緊張が解けたマリアンヌがその場にぺたんと座り込んだ。そしてその股の部分から地面に沁みが広がっていく。
「ボ、ボクッたら緊張が解けちゃって……見ないで?」
「お、おう、済まねえ」
マリアンヌは両手で顔を覆い、チューヤは慌てて井戸を探しに行った。
マリアンヌが飛び込んだのはそんな混乱の坩堝の中だった。
「いち、に……三頭か。よし!」
素早く村落に侵入したバーサク・シープの数を数える。そして村の外側に立ち昇った炎の壁を視認すると、チューヤがこれ以上村の中にバーサク・シープを入れる事がないという確信を持った。
(それなら、ボクは村人を守りながらこの三頭の気を引けばいい!)
村から伸びる道には、こちらへ馬車を飛ばしているカール達がいる。村人達が一番安全なのは間違いなくそちらだろう。
マリアンヌは手始めに、体当たりを受けてダメージを受けている村人に襲い掛かろうとしている一頭に向かって馬を走らせた。身体強化を施した彼女はバーサク・シープに馬乗りになり、左手で角を掴んで振り落とされないように必死で踏ん張る。
「ここかな!?」
空いた右手で腰から短剣を抜き、一気にバーサク・シープに眉間に突き刺した。体毛は武器を通さない。そう聞いていた彼女は眉間を狙ったのだが、思いの他あっさりと突き刺さった。そしてバーサク・シープが棹立ちになったと思うと、断末魔の悲鳴を上げてそのまま倒れてしまう。
マリアンヌはその寸前に飛び降り、逃げ遅れている村人へと駆け寄った。
「街道へ向かう道へ逃げて! 村長さん達が来てるから」
「あ、ああ」
村人がよろよろと立ち上がり、どうにか駆け出して行くのを見送ると、次いで畑を荒らしている一頭が視界に入る。彼女は迷わずその一頭に向かって走った。
農作物を食らうのに夢中なバーサク・シープの背後から一気に近付き、そのまま背中に飛び乗る。あとはさっきと同じ要領で眉間に一突きだ。
「メ”ェェェェ……」
先程のリプレイのように棹立ちになり、ズシンと地響きをたてながら倒れるバーサク・シープ。マリアンヌは荒らされた畑に思わず舌打ちする。
「ちっ……ボク達がもう少し早く来ていれば!」
村に侵入したのは少なくとも三頭はいたはずだ。彼女は他のバーサク・シープを探す。こういう時の彼女の魔眼は本当に役に立つ。
「いた!」
一件の家の扉に向かって突撃を繰り返している。そしてついに扉が破壊され、家の中に突入しようとしている所にマリアンヌが介入した。
「キミの相手はボクだよ!」
手頃な石ころを拾い、全力で投げつける。狙うのは勿論顔面だ。
ゴウッ! という、小石を投げたとは思えない風切り音を残しながら飛んで行ったそれは、もはや投石などという生温いものではなかった。
重い打撃音を残してバーサク・シープの横っ面に直撃した石が砕けてしまう。かなりの痛撃だったのか、バーサク・シープは怒りに瞳を赤く輝かせながらマリアンヌに向きを変えて突進してくる。
上手くヘイトを自分に向けたマリアンヌが叫ぶ。
「家の中にいる人! 今の内に逃げて!」
すると、まだ幼い兄妹が恐る恐る扉からひょっこりと顔をだす。
「街道へ向かう道に逃げて! 村長さん達が来てるから! 出来るよね!」
突進してくるバーサク・シープを躱しながらそう叫ぶマリアンヌにむかって力強く頷いた兄の方が、妹の手を引いて駆け出した。兄妹が無事だった事に胸を撫でおろしたマリアンヌは、右手に短剣を逆手に持ち、向かってくるバーサク・シープに対して構える。
(流石に全力で走ってくる相手に飛び乗るのは難しいかな。だとすれば……!)
マリアンヌの戦いは、基本的には接近戦によるカウンター攻撃一辺倒だ。魔眼白による相手の動きを先読みする力は絶大だが、その反面質量が大きく上回る相手に対してはいくら身体強化を施しても打撃力不足に陥る場合もあり得る。特に今回のバーサク・シープの場合は質量以外にも体毛という硬い鎧がある為、彼女に求められるのは急所に対してピンポイントに刺突を食らわせるという難易度が高いものだ。
「くっ!」
時に恐怖はその動きに僅かな狂いを生じさせる。正面から突進を迎え撃ちながら、眉間に一突き入れて離脱。今彼女が取れる戦法はそれだけだ。しかし巨大なバーサク・シープが鋭い角を向けながら迫って来るのは相当なプレッシャーがあるのだろう。突進を躱しながら突き出した短剣の切っ先は僅かに眉間を逸れ、バーサク・シープの右目に突き刺さった。
『メエエエエエエ!』
怒りの炎にさらに油を注いだ形になったマリアンヌの攻撃。ダメージを与えはしたが致命傷には至っていない。手負いの獣。厄介な事になったと彼女は内心舌打ちをする。
「次で、決める!」
腰から残り一本の短剣を抜く。しかしマリアンヌの戦法を読んでいたバーサク・シープは、角で短剣を弾いてしまった。この学習能力の高さも変異種の特徴の一つで、知能も元々の動物よりもかなり高い。
辛うじて躱したマリアンヌ自身は無傷だが、丸腰となってしまう。
「くっ……それなら、強化したボクの身体とキミ、どっちが頑丈か勝負だ」
ファイティングポーズを取るマリアンヌ。しかしその眼前でバーサク・シープの首がずり落ちた。
「……へ?」
「よう、よく頑張ったな。いい根性見せてもらったぜ?」
そこには『シンシア』を手にしたチューヤがいた。
「あ、あははは……」
緊張が解けたマリアンヌがその場にぺたんと座り込んだ。そしてその股の部分から地面に沁みが広がっていく。
「ボ、ボクッたら緊張が解けちゃって……見ないで?」
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