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三章 ギルド
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チューヤ達から少し遅れ、ミラが御者を勤める幌馬車が村の入り口へ到着した。前方からは逃げ惑う村人達が必死に駆けてくるのが見える。さらに村と草原の境目辺りには火柱が立ち昇り、先行したチューヤ達が戦闘を開始した事が見て取れた。
幌馬車から駆け降りたジョージとアンドリューが、逃げて来た村人達を誘導しながら話を聞いている。
腕を拘束されたまま馬に乗せられている盗賊達も、思いもよらぬ事態に巻き込まれて顔色が悪い。
「あなた方にはきっちりと報いを受けてもらいますので、おかしな事は考えないで下さいね?」
ニッコリと笑いながらそう釘を刺すミラの手の内には、いつの間にか投げナイフが仕込まれていた。それをチラリと盗賊に見せながら語るあたり、ミラも中々手慣れたものだ。
「む? ヤツめ、逃がしたか」
「まあ、そう言わないの。こうやって村人をちゃんと逃がしてるんだし」
土煙を上げながら自分達に向かって駆けてくる存在を目にしたカールが吐き捨てるように言うと、それをスージィが咎める。カール達は知らない事だが、群れを一人で相手取ったチューヤと、逃げ遅れた村人を守りながら複数のバーサク・シープと戦ったマリアンヌがこの一頭を見落としたのは仕方ない事と言えた。
それでもスージィは向かってくるバーサク・シープに向かい捻じれた木の杖を構える。
「お、おい、ヤツに打撃とかは効きにくいぞ!?」
アンドリューはスージィの土系統魔法の腕前は知っている。それでも土系統の攻撃魔法は石などによる打撃というイメージがあるのか、焦った様子で警告を発した。
「まあ、見ててくださいな」
スージィは自信たっぷりに笑顔を浮かべると、掲げた杖の先に魔法陣を構築させた。その数三つ。土系統である事を表す黄色い魔法陣が二つ。さらに水系統魔法である事を表す青い魔法陣が一つ。
「ほう……三つの魔法、しかも二属性を同時行使とは腕を上げたな」
カールが心底感心したように言う。しかしスージィ本人はまだ納得できるレベルには至っていないらしく、笑顔が消えた。
「……まだまだよ」
スージィが悔し気にそう言うと、黄色い魔法陣の一つが明滅を始めた。そして一際明るく輝いたかと思うと、迫るバーサク・シープの眼前に深い落とし穴が出現した。しかし相手はは変異種。バーサク・シープはその落とし穴を飛び越えようと跳躍した。
「甘い!」
スージィが一声叫ぶと、もう一つの黄色い魔法陣が輝く。同時に地面が隆起しバーサク・シープの前に壁が出現した。
『メ”ッ!?』
壁に跳ね返されたバーサク・シープは落とし穴の中へと転落していく。
「そして、こうよ!」
最後に青い魔法陣が輝くと落とし穴の中が水で満たされていく。深い落とし穴の中でもがき苦しむバーサク・シープが、やがて溺れて息絶えた。
「本当は最後の詰めで氷漬けにしてやりたかったんだけど、水は扱えても氷はあたしにはまだ無理」
同じ水系統でも氷結の魔法は難易度が跳ねあがる。土系統が得意なスージィはまだそこのレベルまでは辿り着いていないと。
それでも十代半ばの魔法使いが二系統を同時に行使など、スクーデリアやミナルディ全土を見回してもどれだけいるだろうか。一連の魔法を見ていたアンドリューは彼女の未来を空恐ろしく感じた。
「まったく、あんたみたいな魔法使いが近くにいると、自分がどれだけ努力しても達成感がないわよ」
スージィに恨めしそうに言われてカールは肩を竦める。しかしカールの考えはまた違っていた。人にそれぞれ得手不得手があるように、魔法にも適したフィールドや状況というものがある。
スージィの魔法は基本的に迎撃や防御に向いている。それに土という、基本的にどこにでもあるものを使うため、魔法のコストが低く抑えられるのだ。地形を変えたりといった大規模な魔法を使っても、見た目に反して魔力の消費量は多くなかったりする。
「私に出来ない事も、お前はたくさん出来るじゃないか」
「そうかしら?」
「そうだ」
まるで冗談ではないカールの言葉に、スージィの表情が柔らかくなった。
カールとしてもこれはお世辞や誇張などではなく、本心からそう思っている。事実、彼等四人の中で一番成長しているのはスージィかもしれない。彼女は他の三人とは違ってシンディの師事を受けていないだけにハンデがある。その差を埋めようと努力した結果、目覚ましい進歩を遂げているのだから。
「うふふ。ありがと。さあ、二人を助けにいきましょ!」
「うむ、助けが必要とは思えんがな」
避難してきた村人やケガ人はジョージとアンドリュー、そしてミラに任せ、二人は村へと急いだ。
幌馬車から駆け降りたジョージとアンドリューが、逃げて来た村人達を誘導しながら話を聞いている。
腕を拘束されたまま馬に乗せられている盗賊達も、思いもよらぬ事態に巻き込まれて顔色が悪い。
「あなた方にはきっちりと報いを受けてもらいますので、おかしな事は考えないで下さいね?」
ニッコリと笑いながらそう釘を刺すミラの手の内には、いつの間にか投げナイフが仕込まれていた。それをチラリと盗賊に見せながら語るあたり、ミラも中々手慣れたものだ。
「む? ヤツめ、逃がしたか」
「まあ、そう言わないの。こうやって村人をちゃんと逃がしてるんだし」
土煙を上げながら自分達に向かって駆けてくる存在を目にしたカールが吐き捨てるように言うと、それをスージィが咎める。カール達は知らない事だが、群れを一人で相手取ったチューヤと、逃げ遅れた村人を守りながら複数のバーサク・シープと戦ったマリアンヌがこの一頭を見落としたのは仕方ない事と言えた。
それでもスージィは向かってくるバーサク・シープに向かい捻じれた木の杖を構える。
「お、おい、ヤツに打撃とかは効きにくいぞ!?」
アンドリューはスージィの土系統魔法の腕前は知っている。それでも土系統の攻撃魔法は石などによる打撃というイメージがあるのか、焦った様子で警告を発した。
「まあ、見ててくださいな」
スージィは自信たっぷりに笑顔を浮かべると、掲げた杖の先に魔法陣を構築させた。その数三つ。土系統である事を表す黄色い魔法陣が二つ。さらに水系統魔法である事を表す青い魔法陣が一つ。
「ほう……三つの魔法、しかも二属性を同時行使とは腕を上げたな」
カールが心底感心したように言う。しかしスージィ本人はまだ納得できるレベルには至っていないらしく、笑顔が消えた。
「……まだまだよ」
スージィが悔し気にそう言うと、黄色い魔法陣の一つが明滅を始めた。そして一際明るく輝いたかと思うと、迫るバーサク・シープの眼前に深い落とし穴が出現した。しかし相手はは変異種。バーサク・シープはその落とし穴を飛び越えようと跳躍した。
「甘い!」
スージィが一声叫ぶと、もう一つの黄色い魔法陣が輝く。同時に地面が隆起しバーサク・シープの前に壁が出現した。
『メ”ッ!?』
壁に跳ね返されたバーサク・シープは落とし穴の中へと転落していく。
「そして、こうよ!」
最後に青い魔法陣が輝くと落とし穴の中が水で満たされていく。深い落とし穴の中でもがき苦しむバーサク・シープが、やがて溺れて息絶えた。
「本当は最後の詰めで氷漬けにしてやりたかったんだけど、水は扱えても氷はあたしにはまだ無理」
同じ水系統でも氷結の魔法は難易度が跳ねあがる。土系統が得意なスージィはまだそこのレベルまでは辿り着いていないと。
それでも十代半ばの魔法使いが二系統を同時に行使など、スクーデリアやミナルディ全土を見回してもどれだけいるだろうか。一連の魔法を見ていたアンドリューは彼女の未来を空恐ろしく感じた。
「まったく、あんたみたいな魔法使いが近くにいると、自分がどれだけ努力しても達成感がないわよ」
スージィに恨めしそうに言われてカールは肩を竦める。しかしカールの考えはまた違っていた。人にそれぞれ得手不得手があるように、魔法にも適したフィールドや状況というものがある。
スージィの魔法は基本的に迎撃や防御に向いている。それに土という、基本的にどこにでもあるものを使うため、魔法のコストが低く抑えられるのだ。地形を変えたりといった大規模な魔法を使っても、見た目に反して魔力の消費量は多くなかったりする。
「私に出来ない事も、お前はたくさん出来るじゃないか」
「そうかしら?」
「そうだ」
まるで冗談ではないカールの言葉に、スージィの表情が柔らかくなった。
カールとしてもこれはお世辞や誇張などではなく、本心からそう思っている。事実、彼等四人の中で一番成長しているのはスージィかもしれない。彼女は他の三人とは違ってシンディの師事を受けていないだけにハンデがある。その差を埋めようと努力した結果、目覚ましい進歩を遂げているのだから。
「うふふ。ありがと。さあ、二人を助けにいきましょ!」
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