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三章 ギルド
分かってはいるんだよ
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村に駐在している憲兵の隊長であるアンドリューと村長のジョージに村人を、そして四人の盗賊をミラに任せたカールとスージィが村に先行すると、逃げ遅れたり怪我をして動けなかった村人を一か所に集めるチューヤとマリアンヌの姿が見えた。
村は基本的に木造平屋の家屋が散在していて、それぞれがそれなりに大きな敷地を持っていた。そこを畑にしたり畜舎を置いたりと、どの家も似たような構造になっている。
そんな中で一軒だけ毛色が違っているのがチューヤ達が村人を集めている場所だ。敷地はそれほど広くはないが、石造りの二階建てで建屋自体が大きい。
「あれが憲兵さん達の詰め所かしらね?」
「ああ。恐らくな」
そんな様子を見たスージィとカールが言葉を交わしながらその建物に近付いていく。それを見つけたチューヤが二人に声を掛けて来る。
「よう、そっちはどうだった?」
「ああ、一頭向かって来たヤツがいたが、問題ない」
それを聞いたチューヤが頭を掻く。都合が悪い話になるといつも出てしまう彼の癖だ。
「あちゃー、そっか、わりぃな」
「んー、ていうか、無理だったんじゃないかな?」
申し訳なさそうに言うチューヤの脇に、建物から出て来たマリアンヌがひょっこり現れて彼を擁護する。そして自分達二人が村に突入した時の様子を話して聞かせた。
「……状況に対する相性の問題か」
一通りの話を聞いたあと、カールがそう呟いた。
アストレイズとは、結局の所たった四人で活動する組織だ。個々の力がいくら高くても多数を相手取るには手数が足りない。そんな状況を解決できてしまうのが広範囲魔法なのだが、今回先行したのはチューヤとマリアンヌ。チューヤは魔法と似たような事が出来るが汎用性は低いし、マリアンヌに至っては後方指揮官タイプなので相性は最悪と言っていい。
つまり各個撃破というならチューヤ達の突入で問題は無かったのだが、村人を守りつつ敵の足止めとなると明らかに無理があった。
「もしも別行動する時は、バディを考えないとダメかもね……」
「ちっ」
「フン」
「あははは……」
スージィの一言が何を意味するのか三人は瞬時に理解した。バディとは相棒の事。ここまでは成り行きでチューヤとマリアンヌ、カールとスージィというコンビが暗黙の了解になっていた。しかし、本人たちも分かってはいたのだ。状況に応じてフレキシブルな対応をしなければならない事を。
攻撃、守備、遊撃、それぞれに有利な編成というものがある。またはメインとサブに部隊を分ける場合。いずれにしても、チューヤとカールがコンビを組めば、様々な場面で使い勝手が良くなるのは想像に難くない。しかし、チューヤとカールだ。頭では分かっていても、感情はまた別の話だ。
そんな悩ましい雰囲気の中、村人を引き連れたアンドリューとジョージ達が戻ってきた。
「ありがとうございます。助かりました」
ジョージがそう言って頭を下げた。怪我人は出たものの、幸い死者は出ていないとの事だ。村の建物や畑などに被害が出ているが、これから総出で復旧にあたるらしい。
「俺はこれからウェル村とスコティ村に掛け合って、応援を頼みに行ってくる」
アンドリューはそんな事を言う。しかし時間はすでに夕刻に近い。いかに憲兵隊の隊長とは言え、これから暗くなるというのに一人での移動は危険が伴う。しかし、今の状況ではこれ以上人員を割く余裕はないし、応援が必要なのもまた事実だ。
そんな雰囲気を感じ取ったジョージをはじめとした村人達は微妙な表情になる。そこで胸を張りながら発言したのはミラだった。
「それなら私が隊長さんの護衛に付きます! よろしいですか、チューヤ様?」
「おう、それなら安心だ。頼むぜ。こっちの事は任せとけ」
「はいっ!」
マンセルの指導を受けたミラならば夜間の移動でも不意打ちを受ける事はない。それに個人の戦闘力も相当なものだ。それを分かっているチューヤが了承の言葉を出すと村人がざわつくが、ジョージがそれを抑える。
「みんな。この人達を普通の物差しで測ってはいかんぞ。まだ若いがこの村を必ず救ってくださる」
流石に村長といったところか。ジョージの話を聞いた村人達が鎮まった。アンドリューもミラの見た目から護衛として同行させるのには戸惑っていたようだが、チューヤや他のメンバーが一切心配していない様子から考えを改めた。
「ではミラさん、同行を頼む。流石にこの田舎でそうそう盗賊は出ないだろうが、変異種には警戒しないといけない」
「はい! お任せですっ!」
フンス! と気合を入れたミラを見て、チューヤは自分達のギルドメンバーの方に向き直った。
「さて、今夜は忙しいぜ。やるぞー!」
そう号令を掛けると、四人はゾロゾロと村の外へと動いていく。
まずはチューヤが倒したバーサク・シープの遺骸を移動する。ここは身体強化を施したチューヤ、カール、マリアンヌが村の中へと運び込んだ。そしてスージィはというと。
「あたしは村の周囲に防壁を造るから。多分それで魔力空っぽになるからあとはお願いね!」
そう言って別行動を始めた。
村は基本的に木造平屋の家屋が散在していて、それぞれがそれなりに大きな敷地を持っていた。そこを畑にしたり畜舎を置いたりと、どの家も似たような構造になっている。
そんな中で一軒だけ毛色が違っているのがチューヤ達が村人を集めている場所だ。敷地はそれほど広くはないが、石造りの二階建てで建屋自体が大きい。
「あれが憲兵さん達の詰め所かしらね?」
「ああ。恐らくな」
そんな様子を見たスージィとカールが言葉を交わしながらその建物に近付いていく。それを見つけたチューヤが二人に声を掛けて来る。
「よう、そっちはどうだった?」
「ああ、一頭向かって来たヤツがいたが、問題ない」
それを聞いたチューヤが頭を掻く。都合が悪い話になるといつも出てしまう彼の癖だ。
「あちゃー、そっか、わりぃな」
「んー、ていうか、無理だったんじゃないかな?」
申し訳なさそうに言うチューヤの脇に、建物から出て来たマリアンヌがひょっこり現れて彼を擁護する。そして自分達二人が村に突入した時の様子を話して聞かせた。
「……状況に対する相性の問題か」
一通りの話を聞いたあと、カールがそう呟いた。
アストレイズとは、結局の所たった四人で活動する組織だ。個々の力がいくら高くても多数を相手取るには手数が足りない。そんな状況を解決できてしまうのが広範囲魔法なのだが、今回先行したのはチューヤとマリアンヌ。チューヤは魔法と似たような事が出来るが汎用性は低いし、マリアンヌに至っては後方指揮官タイプなので相性は最悪と言っていい。
つまり各個撃破というならチューヤ達の突入で問題は無かったのだが、村人を守りつつ敵の足止めとなると明らかに無理があった。
「もしも別行動する時は、バディを考えないとダメかもね……」
「ちっ」
「フン」
「あははは……」
スージィの一言が何を意味するのか三人は瞬時に理解した。バディとは相棒の事。ここまでは成り行きでチューヤとマリアンヌ、カールとスージィというコンビが暗黙の了解になっていた。しかし、本人たちも分かってはいたのだ。状況に応じてフレキシブルな対応をしなければならない事を。
攻撃、守備、遊撃、それぞれに有利な編成というものがある。またはメインとサブに部隊を分ける場合。いずれにしても、チューヤとカールがコンビを組めば、様々な場面で使い勝手が良くなるのは想像に難くない。しかし、チューヤとカールだ。頭では分かっていても、感情はまた別の話だ。
そんな悩ましい雰囲気の中、村人を引き連れたアンドリューとジョージ達が戻ってきた。
「ありがとうございます。助かりました」
ジョージがそう言って頭を下げた。怪我人は出たものの、幸い死者は出ていないとの事だ。村の建物や畑などに被害が出ているが、これから総出で復旧にあたるらしい。
「俺はこれからウェル村とスコティ村に掛け合って、応援を頼みに行ってくる」
アンドリューはそんな事を言う。しかし時間はすでに夕刻に近い。いかに憲兵隊の隊長とは言え、これから暗くなるというのに一人での移動は危険が伴う。しかし、今の状況ではこれ以上人員を割く余裕はないし、応援が必要なのもまた事実だ。
そんな雰囲気を感じ取ったジョージをはじめとした村人達は微妙な表情になる。そこで胸を張りながら発言したのはミラだった。
「それなら私が隊長さんの護衛に付きます! よろしいですか、チューヤ様?」
「おう、それなら安心だ。頼むぜ。こっちの事は任せとけ」
「はいっ!」
マンセルの指導を受けたミラならば夜間の移動でも不意打ちを受ける事はない。それに個人の戦闘力も相当なものだ。それを分かっているチューヤが了承の言葉を出すと村人がざわつくが、ジョージがそれを抑える。
「みんな。この人達を普通の物差しで測ってはいかんぞ。まだ若いがこの村を必ず救ってくださる」
流石に村長といったところか。ジョージの話を聞いた村人達が鎮まった。アンドリューもミラの見た目から護衛として同行させるのには戸惑っていたようだが、チューヤや他のメンバーが一切心配していない様子から考えを改めた。
「ではミラさん、同行を頼む。流石にこの田舎でそうそう盗賊は出ないだろうが、変異種には警戒しないといけない」
「はい! お任せですっ!」
フンス! と気合を入れたミラを見て、チューヤは自分達のギルドメンバーの方に向き直った。
「さて、今夜は忙しいぜ。やるぞー!」
そう号令を掛けると、四人はゾロゾロと村の外へと動いていく。
まずはチューヤが倒したバーサク・シープの遺骸を移動する。ここは身体強化を施したチューヤ、カール、マリアンヌが村の中へと運び込んだ。そしてスージィはというと。
「あたしは村の周囲に防壁を造るから。多分それで魔力空っぽになるからあとはお願いね!」
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